錬鉄と鍛造の贋作者   作:英雄に憧れた一般魔導師

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総合実習のパーティー

魔導大祭が終わり、祝勝会がジーナの酒場で行われていた。

 

「よーし、杯は持ったな?じゃあ、オレ達のために戦ってくれたウィル達の勝利を祝して!乾杯!!」

 

『乾杯!!』

 

ドナンの音頭と共に一斉に乾杯をする。そんな祝勝会の中にラグナも居た。ラグナは特に何もしていないが、この場にいることが少しバツが悪く感じているが、居なくて気にさせる方がダメな気がして参加する事にした。

 

「プハーーーッ!それで?ウィルは『塔』にスカウトされたのか?」

 

「無理に決まってるでしょう!仲間割れした挙句競技自体も勝てなかったんだもの!もう!全部シオンのせいなんだから!!」

 

「それで、その仲間割れをした当の本人は?ウィルの事だから誘ったんだろ?」

 

ラグナがウィルの方を見ながら尋ねる。

 

「うん、誘ったんだけど『誰が打ち上げなんか行くか!』って……」

 

「すごく言いそうだな」

 

シオンの事を思い浮かべながらラグナとウィルは苦笑いを浮かべる。

 

「まぁいいじゃねぇか!ウィルが勝負に勝ってオレ達はきちんと謝ってもらったんだ。それに……」

 

ドナンが豪快に笑った後に視線を向けた先には

 

「なぜだぁ!?なぜ私がドワーフの酒場で店員など……!」

 

言葉だけでなく体で返すドワーフ流で働かされているユリウス達の姿もあった。

 

次の日

 

ラグナは午前の授業を終え、午後は履修済みの授業だったため、休みと合わせて、再びドナンの工房に足を運んでいた。そして一角を借りて、鍛造に打ち込む。ただ考えるのは夢に見る鍛冶師の腕前と目指したもの。その人物にどれだけ追いつけるか、辿れるか、何を思い、自分に何が出来るのかを考えながら、その鍛冶師の技法と教わったドワーフの技法で鉄を打つ。

 

(まだ、雑念がある。……まだ、甘い所もある。自分のモノに……もっと奥深く自分を沈めて掴まないと……!)

 

更に集中し取り組む。人から受け継いだだけの力は酷く脆い。ラグナがそれを身をもって経験したのは五年も前。それまでも鍛えていなかった訳ではない、怠った訳でもない。

 

だが、何処か慢心していた。負けるはずが無いと。ダンジョンという過酷な環境。モンスターとの実戦。理想と現実の乖離。思うように動かない身体。振り回される感覚。負けはしなかった、だが、思い知るには十分だった。まだ、未熟、発展途上、愚か。そんな状態で、最強の自分など、まだ想像すら出来ない。見ている相手は常に遥か先に居る赤い外套の人物と刀を打ち続けている鍛冶師に他ならないのだから。

 

妥協なんて許されない。その力を、技量を武器に戦うのなら、一切のイメージ綻び何て許してはいけない。最大の敵は自身のイメージに他ならないのだから。

 

「っ!」

 

反復される動き、ふと我に返ると夜になっていた。乾いた喉で声が出ない、汗は出し尽くしており、自覚するのと同時に疲労が押し寄せてくる。

 

「くっそ……また、入り込みすぎた……」

 

キリがいいところまで作業を進め、道具を片付ける。そして工房で大の字になり考える。

 

(そう言えば……リアーナが『総合実習』組みたいと言ってきてたな……本当にオレが入る余地があるのか?魔法の鍛錬も怠ることは無いが……どうしても上と比べると見劣りはするだろうに。何を考えているんだ?)

 

ラグナはリアーナの真意を理解しきれずに肩で息をして起き上がる。そして工房の施錠を行い、汗を流して寮の自室に寝転がる。

 

(……明日は、休みか。工房で刀……実習の準備……)

 

意識は手放され、夢の中に落ちる。

 

 

夢を見るのは、無限の剣の丘。歯車の空。その人物の心の内、世界を見る。その次に見るのは八重垣築いた千子の刃。求める一刀に至らなかった燃え盛る大地の世界。己を御しきる鋼の意思と身を焦がすような羨望が入り交じった世界達を見る。

 

「体は剣で出来ている」

 

その言葉が自然と口から漏れ、その声が耳に入る事で目が覚めた。

 

「朝か……」

 

気づけば明るく朝を迎えていた。ラグナは起き上がり水を飲み考える。

 

「総合実習の準備物買い揃えておくか。あと、副武装(サブウェポン)の為の剣を予め投影して準備しておくか……」

 

やる事を定めて動き始める。買い物に行くために少しまともな服を着て、街を歩く。そんな時、オシャレな格好をしているコレット、ウィル、ロスティを見かけた。声をかけようとしたが、楽しそうだったのでとりあえず今回は通り過ぎて道具の材料を買い揃えていた。そんな時。

 

「ラグナ」

 

聞き覚えのある声に呼ばれラグナは振り返る。そこにはリアーナとウィルが立っていた。

 

「ウィル、リアーナ、おはよう……もしくはこんにちはか?」

 

「こんにちはの方が適切な時間だな」

 

「はは、こんにちはラグナ」

 

なんとも言い難いやり取りを三人で行いながら挨拶を交わす。リアーナから要件を切り出す。

 

「魔導大祭の時に言っていた事で話がある。少しだけ時間をくれないか。付いてきてほしい」

 

「分かった」

 

そう言うと、ラグナとウィルはリアーナの後について歩き出した。ラグナは疑問に思ったことがあり尋ねてみる。

 

「何処かに行くのなら昨日、行き先を伝えてくれたら良かったのに」

 

ラグナがなんて無い風に言うとリアーナは

 

「探した」

 

「え?」

 

即答に思わず声が漏れるラグナ。

 

「だが見つからなかった」

 

「……」

 

「セルフォルトにもコレットにも聞いた。昼から姿を見ていないと言われた」

 

「昨日僕達の所に来てくれたんだけど、珍しくラグナが見当たらなかったから……」

 

その言葉を聞き、ラグナは昨日のことを振り返る。

 

(そう言えば昨日は昼から工房に籠ってた……忘れてたな)

 

ラグナは苦笑いを浮かべながら

 

「悪かった。少し、用事で出ていたんだ。授業自体は履修済みだったから」

 

「大丈夫。こうして会うことができたから」

 

目的の所に到着する。そこではシオン、ユリウスのウィル被害者の二人とイグノールが先に来て座っていた。

 

(シオンにユリウスにイグノール。学年の最上位層のメンバーだな。オレとウィルか……。何となく要件は分かるけど、上手くまとまるかどうか)

 

ラグナはメンバーに若干のやりにくさを感じながらも全員を見る。そして全員が揃ったと言わんばかりにリアーナは話し始める。

 

「学院の最終学年。この後期から『総合実習』が始まる。この六人でパーティーを組みたい。迷宮進行(ダンジョン・アタック)だ」

 

リアーナがそう言った直後、シオンは机を叩き

 

「落ちこぼれ……!凡人!どうしてここにいるんだ!!」

 

「リアーナ……どういう事だい?私にウィル(こいつ)を氷漬けにしろと言っているのか?」

 

ウィルが半分涙目になりながらリアーナを見ると首を傾げながら

 

「ダメだったか?」

 

天然な返答をする。

 

「おい!僕を無視するな!」

 

「ひぃいっ!?」

 

「シオン……!」

 

ウィルに掴みかかろうとするシオンを止めようとするラグナ。しかし衝突する前に

 

花の夢(ロリア)

 

一瞬にて室内が華やかな花畑へと風景を変える。

 

「いつから魔導士はドワーフのような蛮族に成り下がったんだい?」

 

『幻想魔法』エルフにだけ許された幻の風景を召喚する固有魔法である。イグノールは笑みを浮かべながらに

 

「まずはリアーナの話を聞こうじゃないか」

 

イグノールは魔法を解き話ができる環境を作る。

 

「説明は最初にした通りだ。これから『総合実習』が始まる。学年の中で優れた魔導士に加え、魔導大祭で異彩を放っていた彼を伴いたい。彼は私達に無いものを持っている。そして迷宮(ダンジョン)では役に立つ。私はそう評価した」

 

リアーナの話にラグナは頷きながら聞く。頷いているのはウィルの評価の所だが。

 

「君の眼識を疑うなリアーナ。迷宮で探知も使えない輩なんて足を引っ張るだけさ。珍奇な曲芸に惑わされているんじゃないかい?」

 

「僕もこいつとパーティーを組むなんて御免だ。凡人なら探知(サーチ)が使えるからまだしも」

 

断固反対なウィルに追い詰められたシオンと負けたユリウス。その姿を見てイグノールが

 

「つまらない矜恃に敵愾心……。要は負け犬の遠吠えだろう?君達の言っている事は。敗北した相手をどうして見下すことができるのか品性を疑うよ」

 

容赦ない言葉にシオンが食ってかかるが

 

「蛮族のごとき怪力と魔物と同等の俊敏性。洗練さの欠片も無いとは言え、彼の『剣』に君達の杖は敗れた。それが全てだ」

 

ユリウスも言われっぱなしと言わんばかりに

 

「君だって単位数ではリアーナに後塵を拝しているだろう?妖精閣下?」

 

「そうとも。だから私はリアーナに敬意を払っている。そんな彼女が評価したと言うなら私は二人の抜擢も尊重する。君達と違ってね」

 

私は大人だよと言っているような言い回しだった故にシオンとユリウスは怒りを顔に浮かべる程度だった。

 

「……私はイグノールも貴方達も利用して学年首席で『塔』に上りたい。私は今以上の『評価』と『価値』そして『未来』を欲している」

 

リアーナは静かに告げる。ラグナはリアーナを見据えながら

 

「魔導大祭のスカウトはどうした?ウィルとシオンは仲間割れしたし、そもそもユリウスは負けたから来てないのは分かるけど」

 

その言葉にウィルは少し凹み、二人は今にでも噛みつかんと唸り声をあげている。

 

「雷の派閥からは声をかけられた」

 

その言葉を聞いて今度はウィルが質問をする。

 

「卒業後の進路は確約されているのに……どうしてそこまで?」

 

「今、学院に残っているのは正しく『売れ残り』で…『劣る者』だからだ」

 

リアーナは続ける。リアーナの家オーウェンザウス家は短命であること。リアーナは圧倒的な功績を残し一族の没落を防がないといけない。ただ上るだけでは無く至高の杖に至らないといけないと。

 

「貴方達も野望の類があるのではないか?どちらにも益があると判断したのなら……手元にある硬貨をこの杯に入れて欲しい」

 

「賛同するともこの顔ぶれ以上に戦果を挙げられるパーティーはない」

 

「より単位を求めるなら強制のようなものだろう……これは」

 

「……ふんっ」

 

イグノール、ユリウス、シオンは硬貨を入れる。ラグナはリアーナを見る。

 

(断る理由は無い……。『塔』に上る以上は上を目指した方がいいのは確かだ……それに魔法が見れるなら学べる)

 

ラグナはそう考え杖を出し硬貨を入れる。リアーナの口元が少し嬉しそうに上がったのは誰も気づかなかった。そしてウィルも入れる。その場の六人が同じパーティーになり『総合実習』に挑むこととなった。

 




次回から総合実習本格スタートです!

そう言えば、ラグナの容姿についてですが銀髪の青眼の少年です。
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