錬鉄と鍛造の贋作者   作:英雄に憧れた一般魔導師

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もう一人の剣

孤立して一時間が経つ。11層ではぐれたパーティーメンバーと合流すべく行動を開始してそれだけの時間が経った。ラグナ、リアーナ、コレットの三人は順番で探知をしながら進んでいた。二人は奇襲を恐れていた。確かに奇襲を受ければひとたまりもない状況は確かである。だが、ラグナが意識していたことは極力戦闘を回避することであった。

 

(それに探知をすり抜けてくる奴がいる以上、奇襲を受けるのはある程度予測はできる。なら……)

 

探知の後に魔法で視界を熱源探知にして周囲を見渡す。すると大型のモンスターの姿を捉えていた。

 

「コレット、リアーナ……モンスターが来る」

 

「どうして!?探知には何も反応無かったのに!」

 

コレットが悲鳴のような声を出す。ラグナは声色を変える事無く。

 

「さっきと似たように探知をすり抜けるタイプのモンスターみたいだ……。けど、さっきと違う。迎撃が出来る」

 

杖を構えるラグナ。身構えた瞬間正面からモンスターが三体現れる。

 

「こいつは」

 

「前にシオンが倒したことになっていた奴だな『イヴィル・センチネル』……!」

 

「イヴィル・センチネル、強敵区分(ファイブオーバー・エネミー)……!」

 

「私達三人で三体も!?」

 

補足するのと同時に襲いかかってくる。ラグナは杖を構えて

 

「雷鳴から逃げること能わず、その歩みは瞬きの監獄にて終わりを告げ、自由を奪われ、果てるまで焦がれて散れ。雷轟の檻撃(ライゼ・ジェイル)

 

三体のイヴィル・センチネルへ雷の柱が降り注ぎ、檻とし、その身を焼き焦がし、痺れさせ動きを止める。

 

「雷属性の中級魔法!」

 

「今、リアーナ!コレット!」

 

ラグナの声に合わせるように二人は

 

「『血統雷伝――騎士甲冑・雷装!!』」

 

「『血統地伝―― 巨剣の斬骸!』」

 

それぞれ魔法でイヴィル・センチネルに攻撃を放つ。その攻撃により二体のイヴィル・センチネルが倒れる。ラグナの攻撃を受けていた事もあり、コレットの土魔法の剣とリアーナの付与魔法の雷撃により仕留めることが出来た。最後の一体も

 

「槍となれ。穂先を纏え。優雅たる冬争。『冬雪の槍(ロットル・ヒエルスノウ)』」

 

白雪の槍を放ち、串刺しにすることで仕留めることができた。

 

「雷魔法に氷魔法。この精度で扱えるのなら、もっと上を目指せたのではないか?」

 

リアーナは驚いた様子で言う。コレットも

 

「そうよ!安定して使えるならそれは」

 

「専門家程じゃない。オレは器用貧乏なんだよ。さっきのも使えるから使っただけだから。大したことじゃない。それに……」

 

ラグナは首を横に振り

 

「オレは魔法の魔力制御が苦手なんだ。だから制限をかけないとろくな事にはならないからな」

 

右腕の赤い布を見せながら言う。

 

「その布は?」

 

リアーナは尋ねる。コレットも気になる様子で頷く。

 

「魔力を制限する布だ。安定して魔法を使う為にな。恥ずかしい話、本来の出力じゃ制御がままならないから」

 

ラグナは苦笑いを浮かべながら話す。事実、本来の魔力では出力も高くなり魔法を扱う際の制御が難しくなる。一部を除いて。

 

「まぁ、今は緊急事態でもあるから少し緩めている。何時もよりほんの少しだけ出力が上がっていると思ってくれたらいい」

 

そう話すラグナにコレットは思い返す。

 

(いつから付けていたんだろう……。少なくとも初めて会った頃には付けていたことがなかった気がする)

 

「そうなのね、でも外した状態で無いと制御の練習にはならないのでは?」

 

リアーナの疑問にラグナは

 

「その通りなんだけど……まぁ……考えさせて欲しい」

 

苦笑いを浮かべながら再び探知をしながら進む。襲撃も探知やラグナが気づき速攻をかける事で消耗を最小限にしながら先に進む。しかし、消耗を最小限にしていると言えど、極限の状況下では消耗の具合は異なる。ラグナにはまだ余力があった。しかしリアーナとコレットの表情には疲労の色が濃くなり始めていた。

 

「……この辺で休憩にしよう。少し待っててくれ」

 

ラグナは小さなポーチから短剣を四本取り出し、刺し地点を決め、四方に刺した。その一本に手を当てて魔力を注ぎ込む。短剣同士が魔力で繋がり結界が出来上がった。

 

「上手く作動したな」

 

「ラグナ何したの!?」

 

コレットが驚いた声を出しながら尋ねる。ラグナは

 

「ああ、鍛造と魔道具の組み合わせで、四方に正確に刺し、魔力を通すとそれなりに堅牢な結界が出来上がる仕組みの物を作ったんだ」

 

「さらっと言っているがラグナは凄いな……」

 

リアーナもラグナを見ながらに言う。ラグナは土属性の魔法を使い岩を並べ、炎魔法で焚き火を起こす。無事だった鍋に魔法で作った氷を入れ、それを溶かして水を作る。さらに火にかけて湯を沸かし、

 

「ココア。飲めるだろ?甘いお菓子でもあればリラックス出来たかもしれないけど、勘弁して欲しい」

 

「いやいや!ここまでリラックス出来るのはラグナのお陰だから!ありがとうラグナ」

 

「ありがとう……」

 

二人はお礼を言いながら一息付き、レーションを食べ休憩を挟む。

 

「この結界の強度はどの程度のものなんだ?」

 

リアーナが結界について尋ねる。ラグナはココアを飲みながらリラックスしながら

 

「並の強敵区分程度じゃヒビも入らないな。まぁ、直接短剣を抜かれたら結界は消えるけど」

 

それを聞きコレットは安心する。ちょっとやそっとでは壊れないということを意味しているのだ。リアーナも落ち着いて休息を取り始める。ラグナは警戒を緩めずに襲撃に備えていた。

 

(まだ、剣を抜く程の相手は来ていないが、いつでも抜けるように頭に入れて置かないと。問題は崩落を起こしたアイツだ。アイツは従来通りの魔法じゃオレはダメージを通せない。遅かれ早かれ……見せる時が来るかもしれない)

 

右腕の布を見ながらラグナは目を瞑る。浮かぶ光景は二つ。無限の剣の荒野に立つ英雄と、ひたすら鍛え続ける鍛冶師。自分が何のために鍛え続けてきたのか、自分が従来の魔導士としての道を外れたのかを認識する。

 

事前に持ってきたグローブを手に嵌め、感覚を確かめる。頷き立ち上がり二人に声をかける。

 

「休憩は大丈夫か?」

 

「ああ、私は大丈夫だ。コレットはどうだ?」

 

「私も大丈夫!ラグナのおかげでゆっくり休めたし落ち着くことも出来たから大丈夫だよ!」

 

二人が万全になったのを確認し、ラグナは短剣を地面から回収する。全ての短剣を回収した後、再び合流を目指して進む。休息を取れたということもあり、モンスターの襲撃が来ても落ち着いて対応が出来ていた。だが、それでも状況が好転したわけでは無い。

 

「数が多いな」

 

ラグナがそう言葉を漏らす。遭遇するのは強敵区分のモンスターばかりである。ナイトメア・アイ単位数7、ゲルゲザ単位数8、デフォルミス・サーペント単位数9、イヴィル・センチネル単位数10のモンスター達に襲撃を受けていた。

 

数自体は減ってきているが、まだ数的不利は継続中であり、一瞬の油断が出来ない状況は緊張感を高め思考を狭め、疲労を加速させる。その時

 

「きゃああああ!」

 

コレットがナイトメア・アイに体勢を崩された瞬間デフォルミス・サーペントが拘束し締め上げる。

 

「「コレット!」」

 

助けようとすると魔法で巻き込みかねない。それはリアーナもラグナも分かっている。しかし一瞬の逡巡が隙を生む。イヴィル・センチネルの拳がラグナを捉えて壁に激突させる。ラグナの手から杖がこぼれ落ちる。

 

「ぐっ!」

 

「ラグナ!」

 

リアーナも他のモンスターに削られ始める。ラグナは

 

(このままじゃ……二人が死ぬ……そんな事……させるか……!)

 

腰の双剣を手に取り、踏み込み、コレットを締め上げているデフォルミス・サーペントを一瞬で切り刻む。

 

落下するコレットを抱き留める。

 

「大丈夫か!?コレット!」

 

「ゴホッゴホッ!ら、ラグナ?」

 

「待っててくれコレット、リアーナも助けてくる」

 

そう言い再び駆ける。その姿がウィルと重なる。剣を持ちモンスターと対峙する姿が。

 

制空権を取るナイトメア・アイを切り伏せる。臭いにつられてゲルゲザが二体同時に襲ってくるが、一体目の頭に一本突き刺し、それを足場として上に飛び、上から二体目を突き刺し地面に叩き伏せる。最後に襲いかかってくるイヴィル・センチネルすらも、抜き取った二振りの剣にて切り伏せる。

 

一瞬にして窮地を脱する事となる。ラグナは血を払い飛ばして納刀する。

 

その姿に二人は何も言えずに見ていた。ラグナは二人に駆け寄り

 

「二人とも動ける?大丈夫?」

 

心配そうに言う。二人は頷くしか無かった。ラグナは良かったと言い、杖を拾う。二人はラグナの剣技を見て分かったことは付け焼き刃の剣技では無いこと。

 

「ラグナ……君は剣を使えるのか?」

 

リアーナが尋ねる。ラグナは目を泳がせながらも少し観念したように言う。

 

「魔法よりは得意。ドワーフに育てられてきたから、自ずと接近戦の技術や鍛造技術が得られる。オレ自身もそっちの方が性に合っているから。早く使っていたらコレットやリアーナが窮地に陥ることは無かった」

 

「いいよ!私はこの通り助けて貰ったし!寧ろ御礼を言わないと!」

 

「私も同感だ。助けて貰ったのは私たちのほうだありがとうラグナ」

 

二人から言われてラグナはほっとする。そしてそれからも進み続けると正面から誰かの足音が聞こえる。コレットが遭難した仲間だと思って前に出ようとするが、リアーナとラグナが止める。

 

「様子が……」

 

「おかしい……」

 

その人物は目が虚ろでこちらを見ていた。

 

「ブルーノ先生?」

 

コレットが言葉を漏らすとその首がゴロンと地面に落ちる。

 

「ひっっ!?」

 

コレットが思わず悲鳴をあげるが、首から下の人物は紳士のように一礼をして空中に文字を出す。

 

『ごきげんよう、勇ましい少年と麗しいお嬢さん達』

 

その隣から

 

「ごきげんよう。じゃあねーだろ、間抜け。上はてめーに任せた筈だぞ首無し。どうして11層にガキが迷い込んでやがる?」

 

フードの男が首無しに言う。首無しは手に持つ他の教師の首を首があるところに置くとその教師の声で話し始める。

 

「どゥやら大公ガ仕留メ損なッタみたぃ。床デもブチ抜ぃて落っこちテきタンじャなぃかナ?」

 

「他人事みてえに言ってな。てめーの『遊び』のせいで秘密裏のヒも守れてねーじゃんか」

 

フードの男は苛立ち混じりに首無しに言う。首無しはとぼけたように

 

「怒ラなぃデよマルゼ」

 

と言う。コレットは、目の前で教師が殺されたという事実を受け入れられず、問い詰めるように叫ぶ。

 

「なんなの……?その首……先生達の……殺したの?貴方達一体なんなの!?」

 

首無しは目の前で付けた首を握りつぶし再び空中に文字を出す。

 

『ただの悪者だよ。"偽りの空"をブチ壊したいんだ』

 

そういう。二人が思考している間に首無しは杖を出し

 

『それじゃあ せっかくだし。君達の首ちょうだい?バイバイ』

 

黒い斬撃の様な魔法を放つ。リアーナとコレットは反応が遅れたが、もう一人が反応する。二振りの剣にて魔法を正面から叩き切る。魔法は左右に分かれて壁に激突する。

 

「悪いけど、アンタらの目的は知らないし興味もない。でも、仲間を殺すと言うなら死ぬ気で抵抗するぞ」

 

二人の前に立ち双剣を構える。それと同時に

 

「遅れてごめん!三人とも!」

 

ウィルの声と共に残りの四人が集結する。ここにパーティーメンバーが全員集合を果たした。

 




雷轟の檻撃は今作のオリジナルの魔法です。許してください。

あと偽りの空ぶち壊したいと聞くと、とあるアニメのopが頭に流れるのは私だけでしょうか?
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