錬鉄と鍛造の贋作者 作:英雄に憧れた一般魔導師
皆さんありがとうございます!
『総合実習』は教員十一名の死者を出し、生徒の被害は無く幕を閉じていた。事件の首謀者は目撃情報を元に指名手配されるも手掛かりは無く、後味の悪さは拭えぬまま生き残った者達は一時の休息を得ていた。
十一層まで進んでいた七名は保健室に居た。厳密に言えばベッドの上で大人しくしているのは五名である。コレットはリンゴを剥き、ラグナはテーブルに投影して小さな刃物を並べて鍛錬をしていた。
「結局何だったんだ?あの不気味な連中は……」
シオンがベッドに座りながらに話し始める。
「分からない。学院の教師を殺害できる『異常者』ということ以外は何も」
その言葉にイグノールが答える。皆の中にあるのは大公と戦う前に対峙した二人の魔導士の事である。首が無い者とフードの人物。コレットはリンゴの皮を剥きながら
「ブルーノ先生達……本当に死んじゃっただなんて……」
「コレット……」
やるせない思いを吐露するコレットを見ながら心配そうに声を漏らすウィル。
「偉大なる光皇の杖が居なかったら私達もどうなっていたか」
思い出す。
「だが、生きている。あの恐ろしい過酷を前に、誰一人として死なず、私も騎士の使命に殉ずることは無かった。『塔』に認めてもらう為に作った部隊だったが、私には存外見る目があったらしい。良いパーティーだった。騎士の末席に名を列ねる者として貴方たちに感謝を」
リアーナは座りながらもパーティーメンバー全員に敬意を払った。皆それぞれの反応を示した後、リアーナはラグナの方を向き言う。
「君がいなかったら光皇の杖来て下さる前に全滅していた。ありがとう。そして教えて欲しい……。あの魔法はどのような魔法何だろうか?」
リアーナの言葉に皆の視線がラグナに集まる。注目が集まったタイミングでラグナはちょうど手を止め、皆の方をむく
「これのことか?」
ラグナは手のひらに魔力を集め、大公と戦った際の双剣の片割れ白い剣を出す。
「どうやって出したの?さっきまで何も無かったのに!?」
「急に手元に剣……どの系統の魔法だ?しかも杖も詠唱も無しに」
コレットの驚愕とシオンの分析。ラグナは直ぐに剣を消しながら話す。
「魔法と言えば魔法みたいなものだとは思う」
「『思う』ってどうしてそんなに自信なさげなの?」
ウィルがラグナに尋ねる。ラグナは天井を見ながらに話す。
「そこは曖昧なんだ。魔法の法則に従えば魔力を使って発動できるけど、これを魔法と言っていいのか定義つけるのが難しいんだ。それでも一応『投影』と言う仮名は付けているけど」
ラグナはそう話す。話を聞いてリアーナは尋ねる。
「その魔法はいつ会得したんだ?センチネルを一掃した時もそうだが、会得して直ぐにあそこまで使いこなせるモノじゃないと感じるんだ」
「僕もリアーナの意見に同意だ。君はあの時それが最適だと言わんばかりに前に出てその魔法を行使した。それを出来るほどの経験と練度が無ければ不可能だ。聞かせて欲しい」
リアーナとイグノールに言われてラグナは少し迷う。
「僕も聞きたい」
「私も!」
ウィルとコレットも言い出した。シオンとユリウスは何も言わないが、早く言えとオーラを出していた。ラグナは小さく息を吸い話し始める。
「使い方は、使えると認識した時から分かっていた。もしかしたら、赤ん坊の時からそういう感覚があったのかもしれない。魔法はそういうモノなんだけど、コレは何か違ったんだ」
「違った?」
ウィルの問いかけにラグナは頷きながらに言う。
「ああ、信じられるか分からないけど。物心ついた時からその力の原点になったであろう人物たちの記憶を見ることが多かったんだ」
「どういう事だ?まさか夢で見てその剣を作る魔法擬きを使えるようになったとか言うんじゃないだろうな?」
ユリウスがラグナに言う。ラグナは
「夢で見たのはそれを使うその人と鍛造している光景。使い方は使えると認識した時から使えていた。戦い方はそれを見てイメージするしかなかった。学院に来るようになってからも、迷宮で試したり、親父さ……ドナンに工房を借りて鍛造技術を磨いて、またドワーフの鍛造技術も学んで鍛えてきたんだ」
ラグナはその力に驕る事なく鍛錬を続けてきた。それは誰の目から見ても当然わかることである。力をひけらかす事もしなかった。寧ろこの日まで違和感はあれどことの詳細まで隠し通して来たのだ。
「ラグナ、その記憶の人物はどのような人物だったのだ?」
リアーナは尋ねるラグナは少し気まずそうな表情を浮かべながらも話す。
「……『理想を信じて、その理想にすら最後には裏切られた守護者』と『剣を作ることを存在意義として求めた一振の為に鍛造を続けた鍛冶師』オレの中にある力、経験、記憶。生まれた時から、二人分の人生がずっと存在している」
リアーナは『守護者』という言葉に反応する。しかし、理想を信じた末に理想に裏切られたと言う言葉に苦しそうな表情を浮かべる。そんな他人の悲劇まで抱えているのかとそれがあの武器を出す魔法なのかと。
「つまり……ラグナは産まれてからずっと……その……二人の記憶を持ったまま、ラグナとして育ったの?」
コレットの言葉にその場の空気が重くなる。それは、産まれて個人としてありながら、それと同時に見ず知らずの人物達の記憶を持ちそれに苛まれることを意味する。世界の相違、価値観の侵食。更にはその人物達が辿った結末までも見ることになる。二人分の人生を見てきたことと同義なのだ。
「そうだな。時より自主鍛錬の時や鍛造の時に引っ張られる事は何度もあった。でも、その力を使う以上、ソレは当たり前の事だ。オレはソレを分かってて鍛えてきた。それで魔法の鍛錬が少し遅れているとは思うけど」
ラグナは肯定する。しかし、それは仕方ない事であると言い切る。鍛える度に見せられても、より上手く使うための必要な事として受け入れているのだ。
「それで、その大層に剣を出す魔法だが、どのくらい消費するんだ?維持をするのにも消費するのだろう?」
「アレほどの威力を出すものだ。消費も激しいじゃないのか?」
ユリウスとシオンが言う。重苦しい空気は一先ずは紛れる。ラグナは
「投影のが『剣』だったら他の物を投影するより魔力の消費が1/3になる。一度投影したらオレが消そうとして意識するか折られでもしない限り半永久的に残り続ける。維持には魔力は使わない」
「アレほどの物が維持に魔力を使わないの!?」
ウィルは驚いたように声を出す。皆それぞれに反応を示していた。対抗心のある目を向ける者、尊敬するような目を向ける者、それでも心配する者。
「こんな所かな。あとは詠唱という程じゃないけど一応ある。
そういうと青緑の光が手に集まり、ウィルのモリアの銀剣を投影する。
「こんな感じにな」
「あの時の僕の剣もこういう風に出したんだ!」
ウィルが楽しそうに見ている時にリアーナは言う。
「新たな魔法の創出として『塔』に早々に上がれたかもしれないのにどうして言わなかったんだ?」
ウィルもそれには同意見だった。小さい時から使えていたと言うことは入学当初から使えていたことであり、どんな経緯があっても『塔』に行くには十分な資格はあった。しかしそれをしなかったのは。
「学びたかったから。魔法をこの『投影』を鍛え上げたかった。基礎をしっかりと固めて、土台を作ってから進みたかったから学院を出る時に『塔』に行けるようにしたかった。だから、オレは六学年が『劣る者』『売れ残り』とは思わない。皆が基礎を学んで来たから、大公にだって勝って生き残ったんだから。ウィルだって、
ラグナはウィルの方を見ながらに言う。
「でも、アレが『剣』としてのウィルの魔法なのかもしれない。確信なんて無いけど付与魔法出ないならそれはウィルの力なんだから」
「ありがとう、ラグナ」
「じゃあ、オレの話しは終わりだな。互いに休もう今は」
ラグナはそう締めくくり、投影した剣を全て消す。総合実習は終わりを告げたが、まだ戦いは終わらない。最後の試験が間近に迫っているのだから。
そろそろヒロインを決めたいなぁと思っているんですが優柔不断なので……迷う!
なんでグリモアクタ最寄りの書店に無いんだよ……。