男の娘が美醜貞操逆転のあべこべファンタジー世界から脱却しようと足掻く話 ~それでもスカート履くのを止められない~   作:シエスタさん

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19話 デートのお邪魔虫に対抗しよう

「へ?ランチは僕の奢り……?男性に奢られるなんて初めてッス!感激ッス!ゴチになるッス!」

「ナズナの結界、凄く便利で助かってるよ。ありがとう。さあ、今日は気にせず食べて」

「い、いやぁ……。照れるッス……」

 

 少し奮発したランチを摂り。

 

 

「これお兄さんに似合うと思う。是非試着して欲しい」

「これは……可愛いけど丈短くないかな?」

「だがそれがいい、是非」

 

 洋服店で冒険用ではない好みの私服を見て回り。

 

 

「おにーさん!こっちのケーキセットとそっち!半分こしない!?」

「勿論いいよ。こっちのタルト一切れあげるね」

「やったー!」

 

 都市をのんびり散策した後はまた喫茶店へ入り。

 

 デートと呼ぶには少し幼いかもしれないけれど。

 個人的にはとても充足した一日を過ごせたと思う。

 

 と、このままなら何事も無い平和なデートだったのだが……。

 

 

 

「おうおう、兄ちゃん。すっげぇマブいじゃねえの。どうよ、あたいらと熱いヒトトキって奴は?」

「ギャハハ!姉さん、肉食過ぎー!でも確かにチョー美人っすねぇ」

「ヒューゥ。なあ坊や。私らが大人にしてやろうかぁ?なんつってなー!」

 

「うわぁ……」

 

 突然、見るからにチンピラな人間の女性三人組が現れた。

 冒険者が頻繁に利用する通りでもあるので、特段彼女らがおかしいわけではないのだが……。

 ここだけ余りにも絵面が世紀末。その肩のスパイクって防具として意味あるんですか?

 そんな三人が僕にねっとりとした値踏みする視線を向けてくる。

 うーん。やっぱり僕、この世界無理かも。

 

 

「ちょ、ちょっとちょっと!何よあんた達!今、リリ達とおにーさんはデートしてるの!」

 

 四人で歩いているはずの僕に無遠慮にも下品過ぎるナンパをしてくる三人組に絶句してしまう。

 すると大柄な女性たちに怯む事なく、リリが間に割って入った。

 ルルとナズナも警戒するようにぴったりとこちらへ身を寄せてくれる。

 

 

「あーん?亜人?ハッ。小さくて見えなかったっつーの」

 

 興味なさげに小指で耳掃除をして見せる、無礼そのものな対応を取る巨体の女性。

 その肉体は連れの二人共々、かなり鍛え上げられているのが見て取れた。

 恐らく実力派の冒険者なのだろう。前世なら良いボディビルダーになれただろうに。

 

 とその時、リーダー格の女が驚いたように目を開いた。

 

「おいおいおいおい!誰かと思えばお前、リリじゃねーか。というかルルもいるじゃねーの。後なんだ?あの獣人、名前なんだっけ?なあ」

 

「さあ?なーんかそんなケモノ臭い奴と組んだ記憶があったような無いような?」「ああーなんか居たっすね。そんな雑魚」

 

 ケタケタと小馬鹿にしたように笑い声を上げる三人。

 そこに顔を赤らめ、いきり立ったナズナが一歩踏み出した。

 

 

「失敬な!ナズナッス!そういうお前はヒルデ!それにリカルダとマグナまで!あっしにやった仕打ち、忘れたとは言わせないッスよ!」

 

 リーダー格の女はヒルデ。

 取り巻きはリカルダにマグナと言うらしい。

 しかし三者揃ってナズナに怯む様子もない。

 ただ僕にねちっこい視線を向け続けるだけだ。

 

「おにーさん、コイツら……!」

「件のナンパの片棒担がせようとした悪徳冒険者グループ」

 

「あっしはコイツらに騙されて全部を失ったッス!謝罪と賠償を要求するッスよ!」

 

 ナズナが地団太を踏み、特に強火で捲し立てる。

 しかしお相手も一枚上手。どこ吹く風で全くの動揺を見せない。

 

「ハッ。なんのことだか。リリとルルは無断でパーティーから脱走するし、ナズナだってダンジョンで勝手に消えた。迷惑かけられたのはこっちだよ!」

 

 大仰に手を振ってしらばっくれてみせるヒルデ。

 取り巻きも同調し、そうだそうだと声を張り上げる。

 

 拙いな――。

 大通りを避けているとはいえ、ここも裏通りとは違い決して人通りが少ないわけではない。

 こんな所でトラブルは御免被る。

 

 

「わかりました。話は平行線ですし、僕たちはこの辺で。これ以上話し合っても無駄でしょうから」

 

 こういう時は早々立ち去るに限る。

 三人には悪いがあの嘘発見器でもない限り、そう簡単に彼女たちの罪を暴けはしないだろう。

 ここで暴力沙汰にでも発展すればそれはそれで厄介だ。

 そう考えての行動だったのだが、お相手はそう簡単に逃がしてはくれないらしい。

 

「おっと待ちな。こっちは坊ちゃんの連れの三人に迷惑掛けられたんだ」

「へへっ。そう言う事。迷惑料を頂く必要があるってワケ」

「というわけで一晩、な?面貸しな。なんで亜人なんかと男がつるんでるのかはわかんねーけど良くしてやんよ」

 

 舌をチロつかせながら僕を差し出すように要求してくる。

 三人なんて眼中にない、色欲に狂った目付きで僕を品定めをし続けてくる。

 重ねて「どうせ金か何かなんだろ?」とまで囃し立てられた。

 流石の僕もカチンと来た。

 なんかとはなんだ。

 

「いいえ、お断りします。僕は好きで彼女らと一緒にいるのです。あなた達なんてお断りです」

 

「あぁん?」

 

 ヒルデが不愉快そうに眉を顰める。

 後ろでは好きっ!?と小さな悲鳴が三つ上がるがここは一旦スルー。

 一言バシッと言ってやらねば気が済まない。

 

「あなた達に払う迷惑料なんてありませんし、それに何よりも――」

 

 自分の中の素直な本心を探る。

 幼い頃から抱えていた歪な価値観。それを真正面から吐き出す。

 それは思ったよりもするりと、自然に出てきた。

 

「彼女たちの方があなた達よりよっぽど素敵ですよ」

 

 

「てめぇ!男だからって舐めやがって!」

 

 途端に頬を紅潮させ激高させるヒルデ達。

 あわや組み付かれそうになるが、すんでの所で三人にカバーされる。

 や、やっぱり怖いものは怖い。

 

 

「ちぃ、おい。リカルダ、マグナ。憲兵呼んでこい、憲兵」

「あ?お?憲兵?」

「そうだよ!見りゃわかんだろ?この四人組、どう考えたっておかしいよなぁ?」

 

 

 そう言いながら不敵に笑って見せるヒルデ。

 少し考え込んだ後、リカルダとマグナも合点がいったらしくニタニタと笑い始めた。

 

 

「あ~。なるほど、こりゃ売春っすねぇ」

「そうだよ。男が亜人と好き好んでつるんでるわけがねえ。どうせちょーっと我慢強い男が亜人相手に小遣い稼ぎしようとしてんだよ」

「そりゃあ善良な一冒険者として見過ごせんなあ!」

 

 

 辺り一帯に聞こえるように声を張り上げる三人組。

 売春だって?冗談じゃない。

 こちとら前世も今世も身体は綺麗なままだぞ。

 

 「売春ですって?冗談じゃない。濡れ衣です!」

 

 そうこうしている内に野次馬が集まり、周辺がざわつき始めてしまった。

 憲兵詰め所でも、冒険者ギルドでも口を酸っぱくして言われた売春の禁止。

 売春とは即ち体液の密売である。

 一般的に亜人相手には不快感情が色濃く残る。

 それ故マナが多く溶け出す為に生殖には使えないが……。

 ご禁制品としてマナを多量に含んだその汁には嗜好品としての需要が確かに存在するらしい。

 

 

「一体いくらで売るつもりだったんだぁ?あんたの体液!へへっ!」

「まあ亜人相手に出したもんじゃあ、マナが多すぎて使えたもんじゃないだろうがよ!」

 

 粗野で、あまりにも下卑た言葉を投げかけてくるヒルデ達。

 それに呼応するように人だかりの向こうからも、売春は重罪だぞ!その淫売を精子バンクセンターへ送れ!といった心無いヤジが飛んでくる。

 ここぞとばかりに亜人と、亜人と親しくしている人間に対して敵意を向ける存在は一定数存在するようだ。

 

 そんな亜人達共にやるくらいなら私らにくれ!という野太いが、確かに女性のヤジも聞こえる。

 ここぞとばかりにセクハラをかましてくる存在も一定数存在するようだ。

 勿論、ノーサンキュー。

 

「あーあ。こりゃあ私らが呼ばなくてもその内誰かが憲兵を呼びそうだな。なぁ?」

「今ならその兄ちゃん一人で勘弁してやるよ」

「ほらほら、時間ねーぞ!さっさと決めなぁ!」

 

 

 正直に言えば、憲兵が来た所でじっくりと無実を訴え続ければ嫌疑は晴れると思う。

 それが取り調べの長いものだったとしても。

 売春が禁止されているのは、精子バンクセンターが国営かつ、重要な国益の為の資金源だと言う事に起因する。

 国のシノギの領域を犯すのだから、取り締まりも厳重だ。一方でその分、冤罪にも慎重でもある。

 逆説的に言えば、重大犯罪をこんな言いがかりで断定されるわけはないんだ。

 それでも、三人が受ける心の傷を考えると怒りを覚えずにはいられない。

 

 

 かといって、このまま舌戦を繰り広げるだけでいいのだろうか。

 明確な打開策が思い浮かばないまま、焦りだけが募る。

 

「リリ、ルル。アウリィさんを連れて逃げてくださいッス」

 

 そんな中、口火を切ったのはナズナだった。

 

「わざわざこんな奴らに付き合う必要無いッス。あっしなら幻術で何とかなるはずッス。ですのでアウリィさんを連れて……!」

 

 そう啖呵を切るナズナの表情は真剣そのもの。

 僕はそのナズナの様子を見て一つ、腹を括る事に決めた。

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