男の娘が美醜貞操逆転のあべこべファンタジー世界から脱却しようと足掻く話 ~それでもスカート履くのを止められない~   作:シエスタさん

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22話 インプの里にお邪魔してみよう

「これは……なんとも侘しいね」

 

「インプ族は小柄で力も非力ッスからねぇ。どうしてもこういう辺鄙な場所に押し込められるッスよ」

 

 インプの集落、もとい里へ向かうための乗り合い馬車に揺られること数日。

 辿り着いた里は寒村と表現するしかない程寂しい場所だった。

 

 ちなみにだが、やはりというか、必然というか。

 乗合馬車はインプばかりが利用していたので非常に目立ってしまった。

 その時のインプの方々は妙に大人びた体型や喋り方をする人達ばかりだったが——。

 

「着いたー!久しぶりに戻ってきたけどやっぱり何も無ーい!」

 

「……ルルたちは一足先に実家に顔出す。リリ、覚悟の準備はいい?お兄さんとナズナはゆっくり里を見て回ってからリリの家に来て欲しい」

 

「うっ……。やっぱりママには怒られるよね、はぁ~、やだなぁ。……おにーさん、ゆっくりでいいからね!ゆっくりだよ!」

 

 事前に教えられた二人の実家の位置を再度確認し、二人は足早に駆けていく。

 とはいえ、この状態では観光する場所も何もないのだが。

 それにしても……。

 

「うーん、活気が無いね。大人?のインプの人たちがちらほら農作業しているくらい。それになんだがくたびれた人ばかりだけど……」

 

 活気が無さ過ぎる。覇気がないと言い換えてもいいだろう。

 疲れた様相で農作業する妙齢の女性たちは、角と尻尾の特徴を除けばなんだか妙な色香を感じてしまう程だ。

 

「あれ?アウリィさん知らないッスか?確かに箱入り息子っぽかったッスからねぇ」

 

「……?何が?」

 

 何を指しての話だろうか。

 疑問符を浮かべる僕に対し、意気揚々とナズナは語り始めた。

 結構ナズナって物知りなんだよね。

 

「うーん。平たく言えばあっしら亜人についてって事っす。人間と亜人の差、とも言いますかね?」

 

 ふむ。確かに全てを知っているか?と問われると答えは否だ。

 せいぜい亜人は一様に皆が女性である事や、人間とは明確に区別されるが法律や生物的には人類の仲間として扱われるくらいか。

 これも開拓都市での生活で身に着けた知識であり、確かに村で暮らしていた頃は亜人のあの字も知らなかったくらいだ。

 

「というわけで道すがらあっしが解説するッスよ!とは言っても今回はインプ族についてッス。インプ族は肉体を構成するのに必要なマナが人間やあっしら獣人よりも多いッス」

 

 マナと言えば、魔力として外に放出して事象を引き起こすエネルギーを指す。

 僕のマナは膨大だけど、出力が貧弱で放出し、出てくる魔力が弱いので攻撃に用いる事が出来ない。ここは受付のおじさんと履修済みだ。

 それでも身体を構成するのに必要というのは初耳だ。

 

「マナ……って身体を構成するのに必要なの?」

 

「あったり前ッスよ!……と言いたい所ッスがそうでもないッス。あっしら獣人や人間、ゴブリン族なんかは枯渇しても体調を崩す程度で済むッスね。問題はインプ族やスライム族ッス」

 

 ぼちぼちとリリの家が近づいてくる。

 道行く人々は時折奇異の視線を向けるも、それは農村や開拓都市程強い好奇を感じさせるものではない。

 正直自分の事で手一杯と言った様相ばかりだ。

 

「彼女らは身体を構成するマナの比重が多いッス。勿論食物にもマナはあるから摂取自体は出来るッスけど……。どうしても余ってる種族から分けてもらう機会なんて無いご時世。常に本調子じゃないって事が多々あるッスね」

 

 「大体理解出来たよ。だからかな?こんなインプ族だけ集まった集落を形成しても、マナの供給が滞ってるって事であってる?」

 

 「その通りッス!アウリィさんは物の理解が早くて助かるッス!ちなみに加齢速度も遅いので、ああ見えて二人とも成人してるッスよ?」

 

 あれ?そうなの?予想外の確度から未知の情報が出てきた事に驚く。

 それにしても、成る程。人間から亜人は醜く見える。また、亜人から見ても同族を含め、亜人は醜く見える。

 そうなれば同族で身を寄せ合い、暮らすしか選択肢は無かったのだろう。

 

 「ちなみに、足りないマナを補うため、必要以上に食べる必要があってムチムチバインな見苦しい身体になってしまう事も多いッス」

 

 …………成る程。なんとも痛ましい話だ。

 スライム族のリンちゃんも酒場で結構食べてるのを目にするのはそう言う事なのだろうか?

 体積?は普通の少女だけれども。

 

 

 

「うちの不肖の娘がすいません!アウリィさんでしたか。あなた様に大層ご迷惑をお掛けしたと……!」

 

 リリの家に着くや否や、お母様から綺麗な土下座を振舞われてしまった。

 部屋の隅では頭にたんこぶをいくつも拵えたリリとルルが転がっている。

 

「ああ、いや。僕は全然気にしていないので大丈夫ですよ」

 

「そうッスよ。アウリィさんの懐は広いッス、お母様も気にする必要無いッス。あ、あっしはお仲間のナズナって言うッスよ」

 

 出された茶を啜りながらいけしゃあしゃあと言ってのけるナズナ。

 いや、ナズナの件も許したし、今では信頼しているけれど胆力が凄いな……。

 

「そうですか、寛大な御心感謝致します。私はそこのリリの母のリルラリルルリと申します……。アウリィさん、ナズナさん、よろしくお願いします」

 

 リルラリルルリと名乗ったリリのお母様……長いのでルリさんと呼ばせて貰おう。

 ちなみにルルの母親は全力で二人に折檻した後、リリの家に放り込んで帰っていったらしい。武闘派過ぎる。

 

「いえ、正直リリちゃんとルルちゃんの二人がいなければ今の僕はいなかった、そう思うくらいには助けられています」

 

 というか早くその土下座は止めて欲しい。居た堪れないし、何よりも……。

 ムチムチバイン。確かにナズナの言う通り——これである。

 

 里のインプの方々と同じく、発育が非常によろしい。

 そして見た目が非常に若い。

 正直リリのお姉さんと言った方が自然な程だ。

 そんな女性にひたすら平伏されるのは困る。

 

「痛つつ……。ま、ママってば。だから平気って言ったじゃん……!」

「この折檻は不当、不本意。異議申し立てを行う……!」

 

 のそのそとリリとルルの二人も復帰してきた。

 折角なのでここからは真面目に二人の命を預かる身としてお話させて頂こう。

 

「本当にごめんなさいね。こんな村だから大したおもてなしも出来なくて……」

 

「いえいえ、お構いなく。むしろキッチンをお借りしても?」

 

 と、その前に料理。料理だ。

 馬車に揺られていて暫く出来ていなかったからか、料理がしたくてたまらない。

 長旅故に大した食材は持って来られなかったが、香辛料やコンソメのストックはバッチリだ。

 

 まさか男の人の手料理を頂ける日が来るなんて……!と感涙と共にキッチンの使用許可を得た。

 

「簡単な物しか作れないけど……、元気になってくれるといいな」

 

 そう願をかけ、料理を拵える。

 リリとルルの二人はそれほど沢山食べる印象は無かったが、話を聞くにそれなりの量が必要だろう。

 所詮はいつも通り、お手製のスパイスを調合したスープだが、一応これだけでも自信作だ。

 お湯に溶かして飲むだけでも十分美味しい。それに保存食の乾燥肉や野菜の旨味を抽出するように煮込んでいく。

 

「こんなもんかな。手の込んだものは作れなかったけど量はバッチリだし、いい気分転換になったな」

 

 

 

「我らを見守る星とその星の子らに感謝を……、頂きます」

 

 手早く食事の準備を済ませる。

 ルリさんの食事の前の挨拶を聴き、食卓を囲みつつ雑談に興じる。

 そんな挨拶があるとは知らなかったが、田舎の古い慣習だそうだ。

 そして今日はリリ宅へパーティーメンバー全員でお世話になる事となった。

 

「——そこでおにーさんとの絆の力に目覚めたってワケ!で、そこからは獅子奮迅の大活躍よ!」

「もうリリもルルも中級冒険者。お母さんたち心配しすぎ」

 

「そうは言うけど、リリとルルちゃんが里を飛び出してから、私達とっても心配したのよ?」

 

 自慢げに武勇伝を語る二人に少しばかり頬を膨らませたルリさんが抗議する。

 その様子はやはり、少しばかり気怠げな雰囲気を纏っているが、姉にしか見えない。

 

「そうですね。二人とも。やっぱり親ってのは心配なものなんだよ」

 

「でも二人ともかなりやるッス。実力派なのは間違いないからご安心をッス……むぐむぐ。アウリィさんおかわりッス!」

 

「わ、私もいいかしら?アウリィさんの作ったお食事、とても美味しくて……」

 

 

 結局近況報告が中心となる食事会は円満に終わった。

 料理のほとんどとナズナとルリさんの二人で食べてしまったのは想定外だったが……。

 残さず食べてくれたのは、作り手冥利に尽きるというものだ。

 

 しかし往々にして事件は突然やってくる。

 夕餉も終え、寝る準備を終え、床に就いた頃。

 

「おにーさん!大変!ママが!」

 

 やがてゆっくりと微睡み始めたその時、借りていた寝室をリリの声が突然引き裂いた。

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