男の娘が美醜貞操逆転のあべこべファンタジー世界から脱却しようと足掻く話 ~それでもスカート履くのを止められない~ 作:シエスタさん
炊き出しという事でパンと汁物を提供することに決めた。調味料に食器や調理器具の準備と確認を終えた頃。
空が白んで来たので近くの低危険度のダンジョンへリリ・ルル・ナズナの三人は食材を取りに出かけて行った。
ギガスイートコーンなるとうもろこしの怪物が美味しいスイートコーンを落とすのだとか。
「ギガって……なんか強そうだけど大丈夫?」
「全然問題無い。飛ばしてくる粒に当たるとめっちゃ甘ったるい匂いが付くくらい」
「ああ、そういう……」
スープの他の材料の準備は終わっている。後はパンを仕込んでいくだけだ。
コーンポタージュは魔法で楽にすり潰せるのでささっと出来る。やはり魔法は便利。
で、何故パンかというと——。
「お兄ちゃんのマナが一番の栄養だからね!そりゃその手でじっくりねっとり仕上げたパンなら一発よ!一発!」
とルリさんに力説されてしまった。
というかそのわっかに人差し指を突っ込む謎のハンドサインはなんなんだ。
「やるからには全力で作りますけどね。ルリさんの時のようにうまく行くかな?」
勿論里の皆の慢性的な疲労感を思わせる、気だるげでくたびれた様子は心配だ。
ただの朝食で終わっては元も子もない。
マナを料理に含ませる必要がある。が、マナの保有量だけは無駄に膨大な自分にはイマイチ放出?出来ているかわからない。
常人なら軽い眩暈とか頭痛に襲われる程には昨日の食事にも含まれていたらしいのだが……。
「そこは任せて~!ルリちゃんが傍でインプ族の聞くも涙、語るも涙な御伽噺……いや、昔話を聞かせてあ・げ・る!」
そう宣言するや、案外とまじめなトーンでメスガキ伝説についてルリさんは語って聞かせてくれた。
もう歴史書にすら記されていない程の大昔。今では誰もが一笑に付す、人間と亜人が仲良く共存していたとされるありえない時代。
パートナーの手助けをひたむきに行う似た生態を持つフェアリー族共の類亜人種として存在していたという。
インプ族はフェアリーほど従順ではない。決して宿主と決めたパートナーのイエスマンで終わらない。
時にはからかい、反論し、感情を揺さぶり、いつまでも共に若くあり続ける。
そうやって伴侶を見つけたインプ族を”メスガキ”と呼び、インプ族の羨望の的だったのだとか。
「大昔には早くメスガキになりたーい!って意気込むインプの子も結構いたらしいんだけどね。今では若いインプの子ですら最初っから信じてない子ばかり。そんな中、リリちゃんだけは周囲や親である私にさえ否定されても、この伝承を信じ続けていたの……」
「そんな事が……」
ならばこの炊き出しが成功すれば彼女の名誉回復になるのだろうか?
リリと里の人達との関係性は良好そうだった。
わだかまりがあるのかどうかはわからない。
それでも、過去の否定されていた頃のリリを救えるのなら。
そして、今のインプの里の人々を助ける事が出来るのなら。
「……よし!仲間の為、里の人達の為です。炊き出しくらい任せてください」
自然とパンを捏ねる手に力が入る。
「うんうん!とってもいい感じ!これなら炊き出し大丈夫そうだね!ルリちゃんはそろそろ里の皆に知らせて来るね~」
炊き出しまで時間はある。
全力で美味しい朝食を作ろう。そして皆に振舞おう。
流されるままだったが、自然と気分が高揚してきた。
そもそも料理は好きだし、やってやろうじゃないか。
「ふふ~ん、るるらーら~」
と、つい鼻歌を口ずさんでしまった。
いい歳こいて何をやっているんだか……。いや、今は若いのか?
「あ、後サキュバス事変っていう物凄くインプ族のイメージをわる~くさせてる昔話もあるんだよね。滅茶苦茶血生臭いお話だから今は端折っちゃうけど、大昔の人間大量虐殺の犯人はインプ説って奴!後で話すから乞うご期待!」
居なくなったと思ったルリさんがひょっこりと顔を覗かせ、早口でそう捲し立てて行った。
……ご期待していい話なのかな、それ。
というか、あのニヤけ顔。確実に鼻歌を聞かれていたよね。
「…………」
顔から火が出そうになるのを堪えて僕は手から火を出し、調理を進める事にした。今度は粛々と。
「三人ともコーンの確保ありがとう。三人の分も用意してあるから食べてね」
「ありがとー、おにーさん!ま、楽勝だったけどねー」
「お兄さん、ありがとう。里を出る前はよくコーン塗れになっていたけど今は余裕。飛んでくる粒が止まって見える程だった」
「感謝ッス!はぁー、染みるッスねぇ……」
少し遅めの朝食と共に一息をつく三人は遠巻きに大いに湧き立つ広場を感慨深げに眺めている。
「芳醇な小麦の香りに優しい甘み。ふわふわもちもちの生地……これはぁ!」
「はぁ~。朝から頂くポタージュ……。白胡椒が効いていて絶品です」
「お兄さーん、これ美味しいよ!料理上手なんだね~」
「こ、この歳になって男の人の手料理が食べられるなんてねぇ。感無量じゃよ……。ああ、いかんね。つい涙が……」
結論から言うと炊き出しは大成功だった。
里の規模が小さかったこと。
ルリさんの身体が若返って?おり、里のインプたちの関心を惹いたこと。
男性の手料理が食べられる!と騒々しくも熱烈にルリさんが喧伝していたこと。
おかげで大行列……という程そもそも人口がいる訳ではないが、兎に角盛況だ。
「はあぁ……美味しかったよ。いい冥土の土産が……うっ、身体が——」
里一番の年長者には手ずから食べさせてあげていたのだが、途端に苦しみ始め——。
「大丈夫ですか?も、もしかして喉に詰まったり!?」
「なーんちゃって!うっそぴょーん!身体は絶好調~!お兄さん、ありがとっ!」
目の前でダーウィンの進化論の逆再生ばりに若さを取り戻していく老婆には思わず三度見をしたり。
僕程のマナを持つ男性が心を込めて直接食べさせてあげればこうもなろう。とは言われたが……。
最早変身レベルだ。生命の神秘を感じる。
最初は粛々と配給を受け取っていた里の人達も、個体差はあれど身体に影響が出始めている。
「わぁー!身体がかるーい!」
「頭にかかってたモヤが取れた気分!さいこー!」
「リリちゃんの信じていた御伽噺、あながち作り話じゃないかもー?」
あるインプは身体の調子を確かめるように飛び跳ね、あるインプたちは鬼ごっこで遊び始めている。
精神性にまで影響が出るのか、僕の料理は……。
それにしても——。
「アウリィさん!いや、お兄さん!ありがとう!」
「おにーさーん!ごちそうさまー!」
気が付けば辺り一面ちびっ子学校のような有様になってしまった。
服がぶかぶか過ぎて目のやり場に困りそうになったが、そこはルリさんが簡易更衣室と着替えを用意していたらしい。
性格が変わっても、決して内面が幼くなったわけではないというのがよく理解できる一幕だった。
炊き出しも終え、ルリさんと片づけを開始した頃。
ひなびた里がすっかり活気を取り戻したことに僕は充足感を覚えていた。
一方で里のインプ全員からお兄さんやらお兄ちゃんやらとからかうように、それと親愛を込めるように呼ばれもしたのだが。
今日だけで気が付けばあっと言う間に数十人のお兄ちゃんになってしまったよ。
「お疲れ様でした。ルリさん」
「お疲れ様!お兄ちゃん!急な頼み事、聞いてくれてありがとうね。じゃっ、片づけがんばろー!」
これで少しでもリリちゃんの罪滅ぼしになればいいのだけれど……。
そうポツリと小さく口にした横顔はまさしく母の顔だった。
「ええ、もう一息ですしパパッと片づけちゃいましょう」
僕はほんの少し、日本が恋しくなった。
ヒロインのゲロイン化についてどう思う?(ナズナ編)
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特に何も思わない(嫌悪感も無い)
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ギャグ(虹色の液体とかノリ全体)ならOK
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直接的な描写じゃなければまあ
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本当に無理なので止めて欲しい
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