男の娘が美醜貞操逆転のあべこべファンタジー世界から脱却しようと足掻く話 ~それでもスカート履くのを止められない~ 作:シエスタさん
炊き出しの片付けを終え、一同はルリさん宅にて一息付く。
あっという間に昼時になってしまったので、見越して多めに作っておいたパンと簡単なおかずを用意し各々のペースでつついてる。
「皆お疲れ様!リリちゃんもルルちゃんもナズナちゃんも助かったわー。勿論お兄ちゃんも!」
主催であるルリさんはまだ興奮冷めやらぬと言った雰囲気だ。
よく食べはしたが、楚々としていた前日の様子と今の姿と態度は対称的である。
「どういたしまして、ママ。おにーさんの事をお兄ちゃん呼びするのはやっぱりやめない?」
「同感。私達三人をちゃん付けしているルリさんがそれはちょっとキツ……。いや、なんでもない」
「賢いナあっしは一旦静観の構えッス」
外野のナズナはともかく、二人はまだ受け入れがたい姿なのかもしれない。
それどころか、メスガキ伝説らしいと言われれば二人よりルリさんの方が一枚上手にすら見える。
これが僕の料理とマナがもたらした結果なのだろうか、それとも彼女本来の資質なのか。それはわからない。
「僕はまあいいけどね。それで元気になってくれたわけだし……。今更やっぱり駄目っていうのもね」
ただ、今の方がよっぽど魅力的だ。
身体が小さくなったからだとか、伝承のメスガキ?っぽくなったからだという話ではなく。
「いえーい、やっぱりお兄ちゃん優しー!」
心の底から炊き出しというイベントを楽しみ、成功を僕達と全力で喜んでくれる姿勢。
やはりそれは尊いし、好ましいと思う。
「あ、そういえば約束していたあの話。行っちゃう?」
「あの話?えーっと、サキュバス事変とかいう奴でしたっけ?そうですね……是非お願いします」
正直箱入り息子過ぎてこの世界の一般常識すら疎い節がある自覚はある。
こうやって昔話を聞いてみるのも一興だろう。あまり血生臭い話は得意ではないが……。
「うげー。あの話するのママ?」
「都市に行って思い知った。書店の名作コーナーに並んでるし、結構真面目に信じてる人間多くて辟易……」
「あーサキュバス事変ッスか。アウリィさん、知らないなんて珍しい男性ッスね。だから亜人の嫌悪感が薄いのかも?」
三者の反応は非常に鈍い。というか書店の名作コーナーに並んでいるのか。
もしかして桃太郎や浦島太郎のような扱いを受けているようなお話なのだろうか。
「まあ人間は好んで寝物語に子供に聞かせたりするっぽいからねー。絵本ならだいぶマイルドな表現にはなっているけど……。あっ、うち含めてインプの里では気分のいい話ではないから本なんて無いと思うから探すなら開拓都市で探しなさいねー」
そう前置きしたルリさんはサキュバス事変について語り始める。
サキュバス事変。どれほど昔かも想像が付かない程、遥か昔々のお話。
サキュバスと呼ばれる、矮躯以外の尻尾や角などの特徴がインプと酷似した架空とされる亜人。
そのサキュバス達は過去、どこかにあったとされる大国にどこからともなく現れた。
それは魔王の使いとも、破滅の使者とも、悍ましい自然現象ともまことしやかに囁かれています。
サキュバスはとーっても凶暴で危険。そしてひたすらに強い。
人間と亜人が暮らす大きく、立派に栄えた国とそれらを支える町や村の”人間”を次々と襲っていったのです。
しかも、恐ろしい事に彼女たちは人間以外の人類。即ちありとあらゆる亜人に化ける事が出来たと言い伝えられています。
そして亜人としてあり得ない事に、非常に美しい外見をしていたとも。
絵本ではマイルドな表現ですが、その実、彼女らの唯一の目的は人間の殺害。動機は一切不明。
多種多様な亜人に化け、それでいて容姿は美しい。本性を現すまでは温厚で知的な振る舞いすら演じて見せる。
彼女らの色香に惑わされた人間は男女問わず次々と命を落とし、人間の亜人に対する不信感は募り、溝は深まる一方でした。
現代でも、亜人が人間の男の人に対して起こす事件は決して無くなったわけではありません。
もしかしたら、あなたの傍に、まだサキュバスは潜んでいるのかも……。
「……はい!おーしまい!」
パン!と一拍手を打ち鳴らし、終わりを宣言するルリさん。
三人の反応も、聞きなれた話だといった具合だ。
「え!?これで終わりですか?つ、続きは?」
あまりにも消化不良過ぎる。
これでインプ族が特に差別されています。って言われてはい、そうですか。と納得できるわけがない。
「色々あるじゃないですか、こう……。サキュバスはどこに行ったのかとか、じゃあなんで今の人間は元気にやっているのかとか!」
「まあ終わりっていうのは嘘なんだけどねー。絵本や小説や歴史学者の分析で色々展開が変わるのよ。人間の勇者が表れてサキュバス達をやっつけました。悲しくも悪趣味なスプラッターホラーの舞台装置としてサキュバスは自然消滅した。亜人と人間の血で血を洗う闘争の末の生き残りが我々だ。だなんて兎に角色々とね」
これ以上語る事はない。出し尽くしたと言わんばかりにルリさんが両手をぷらぷらと振って見せる。
後は何を語るわけでもなく、楚々とした所作でお茶を啜っている。
「ね。楽しい話じゃないでしょ?オチは皆どーでもいいの。結局言いたい事は存在もしないサキュバス。ひいては亜人が悪い、怖いよってだけ」
「悪趣味。サキュバスは強靭な肉体も兼ね備えていたって所端折ってインプ族に出来る限り寄せてる本もある程。ほんと嫌い」
「インプ族だけじゃないッスけどねー。いい子にしないとサキュバスが化けた亜人が来るぞなんて子供を怖がらせる作り話として常套句になってるッス」
開拓都市の北には未開拓の地が広がっているが、廃墟も多い。
だからこそ開拓都市が開拓都市と呼ばれる所以なのだ。
受付のおじさんの受け売りだけど。
「成る程ね、聞いていて楽しいお話ではないけれど……とても興味深い話ではあったよ」
もしかしたら……と今では自然と想像を膨らませてしまう。
これがサキュバス事変の持つ不思議な魔力なのかもしれない。
インプの里で過ごす事数日。
二人のインプの少女が声をかけてくる。
「アウリィお兄ちゃーん!」
「良い物あーげるっ!」
最早妙齢の女性などどこにも見当たらない里ではそこかしこで高い声色が響いている。
そんな中、僕は推定年齢不明のインプの少女たちに代わる代わる話しかけられる日々が続いていた。
「これは……コースター?ありがとう、大切に使わせてもらうね」
「にへへっ!私の手作りだよ!じゃあ後これも!はい、手ー出してー!」
「何だろう?はい」
ジジジジジ!という甲高い鳴き声と共に、僕の掌に仰向けの状態でしゃかりきに手足を動かす虫がそっと乗せられる。
「ひっ……、きゃあぁっ!」
手を刺激する虫の羽ばたきに全身が粟立つ。
見慣れない鮮やかな虫に思考を巡らす間もなく慌てて放り投げる。
「きゃあぁっ!だってーきゃはは!」
「お兄さんかわいー!」
「ちょっと!もう……!」
毎度こんな有様だ。
この二人だけでは留まらず、里のインプの人々から感謝の言葉や品を贈られる日々が続いていた。
とはいえ、そこはインプ族。
素直にお礼を言うだけには留まらずありとあらゆる手段を用いて悪戯も同時に仕掛けてくる子の多い事多い事。
ちなみにルリさんはボディータッチでからかってくる事が多い。
そのたびにリリとルルがぷんすこ怒っているが——。というかリリに至っては憤慨している時もあるが……。
「えー?いいじゃない、ママだって悪戯したって。だってお兄ちゃんになってくれたワケだしー。それにリリちゃんとルルちゃんもうかうかしていられないわよー」
どこ吹く風と言った具合だ。
メスガキ伝説には、元来インプ族は他者の感情の機微を察知するのに優れた種族であるとの記述もあるらしい。
とてもではないが、年下……のように見える女の子相手に本気で怒る気にはなれない。
そういう部分を見透かされているせいか、ちょっかいを掛けられる頻度が非常に多いのだ。
そんなインプの里も今日で一先ずはお別れ。休暇も終わりだ。
「うわーん!アウリィお兄さん行かないでー!」
「このまま里に残ってー!」
「あわよくば結婚してー!」
「リリ!あの時はごめんねー!そしてアウリィさんを連れてきてくれてありがとう!」
「ナズナさん、魔法のご指導ありがとうございました……!また立ち寄ってください!」
開拓都市に戻ればまた冒険者稼業の日々だ。
実力も付いてきたが、まだまだ油断は出来ない。……後方で食事と万が一の怪我の治療の準備しかした事はないんだけど。
別れを惜しむ声に一礼を返し、背を向け歩き出す。
「ルルちゃーん!今度里に帰ってきたら、お兄さんのムフフ……話、また聞かせてねー!」
首を右90度横に向け、ルルを見やる。
シンクロしたかのようにルルの首も90度真横に曲がる。
リリとナズナも僕に追従して胡乱げな眼差しをルルに送る。
「ルルちゃん?」
少しばかりご自慢のポーカーフェイスで圧を出してみるが、かすかに冷や汗をかくのが見受けられる程度でルルは微動だにしない。
結局開拓都市に付くまで、彼女が口を割る事は無かった。
ついでに僕達パーティーメンバーは揃って寝違えたかのように首を痛めた。
ヒロインのゲロイン化についてどう思う?(ナズナ編)
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特に何も思わない(嫌悪感も無い)
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ギャグ(虹色の液体とかノリ全体)ならOK
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直接的な描写じゃなければまあ
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本当に無理なので止めて欲しい
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どれにも該当しないが全面支持(肯定)
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どれにも該当しないが嫌(否定)