男の娘が美醜貞操逆転のあべこべファンタジー世界から脱却しようと足掻く話 ~それでもスカート履くのを止められない~ 作:シエスタさん
通りの片隅に移動し、酔っ払いの授業を受ける事にした僕達三人。
「ウェヘヘ。じゃあ説明するッスよぉ」
何が楽しいのか、怪しげな笑みを浮かべ、そうナズナが宣言する。
何となく不審に思われないか不安になり、手元に地図を広げながら話を聞く小賢しいスタイルでカモフラージュを試みる。
「精子バンクセンターってのは文字通り、精子を集めてため込む場所の事!……ッス。国の事業でッスねぇ。集めた精子は当然、亜人の繁殖に使われるッス」
成る程。国営だったのか。
ならば兵士が警備についているのにも納得がいく。
「えーっと、繁殖?わざわざ精子バンクセンターを使って?」
確かに男性の、というか人間の亜人嫌悪は凄まじい。
とはいえ、こんな機関が必要になるほどのものなのだろうか?
その疑問は一笑に付される形となった。
「あっはっは!アウリィさん面白いジョークッス!……うぷ。亜人と男性が男女の営みなんて出来るワケないッス!勃つ勃たない以前の問題ッスよ!」
大笑いして見せるナズナ。明らかに素面のソレではない。
明け透けな言葉選びに突っ込む間も与えてくれそうにない。
「ヤバいわよ。ナズナフルスロットルだわ……」
「これは止められない。が事実でもある」
途端、スンとナズナの顔が真顔になる。
一瞬、空気が張り詰めるのを感じる。
「男性が亜人と触れ合おうなんて嫌悪感ヤバイッス。マシマシッス。間違いなくマナの流れが乱れるッス。そんな精液、精子が死んじゃって生殖になんて使えないッス。だから亜人が自然交配で子を産み育てるなんて出来ないッスよ。絶対に」
一瞬、リリとルルは悲壮な表情を浮かべる。
成る程。マナの乱れにより体調を崩すだけではなく、無理に男性が射精したとしてもそれは生殖に使えるものではないと。
となれば、亜人の人口を維持するために必要な機関であることは明白だろう。
となれば、嫌悪感の無い状態で精子を納める必要が出てくるわけだけど……ん?
「ねえ、ナズナ。もしかしてなんだけど、精子バンクってさ……」
こちらの意図を汲んでか知らずか。
ニヤりと笑みを浮かべたナズナは再度おちゃらけた様子を見せ、語り始める。
「そう、その為の精子バンクっすよ~。精子バンクにはあっしら亜人とは違って美人の人間のおねーさんがズラり!優しく”お手伝い”してくれるッス!」
「補足しておくと、美人局や売春なんかの犯罪に関わった男性にはペナルティとして納精が課せられる、らしい」
「普通の男性には謝礼金が貰えるんだってねー。最近ギルドで聞いたわ」
「な、成る程。よくわかったよ」
この世界の男性は貞操観念こそ奥ゆかしいものではあるが、決して性欲が過剰に薄かったりするわけではない。
人並みにあるのは村に居た頃から自然と学んだ数少ない常識だ。
そして、自らの性を武器に犯罪行為に身をやつしたものにはペナルティも課せられるらしい。
「ってあれ?そういえば」
そういえば。
初めて開拓都市に来た日の事を思い出す。
リリとルル相手にあろうことかそういう事をしていないか?とあらぬ嫌疑をかけられ、拘束されたような。
「ねえ、リリちゃんルルちゃん。もしかして初めて僕が都市に来た時ってさ」
ぞわり、と背筋が粟立つ。
頼む。嘘であって欲しい。
「あ、あー。あれね、多分おにーさんも……」
「うん。精子バンクセンター送りになっていたかもしれない」
もしかしたらこの世界には存在するのかもしれない。
そんな見えない神に向かって祈る。
「それってつまり……あそこの”人間の”お姉さんたちのお世話になっていたかもってこと?」
「「……うん」」
ぞわりっ。
全身の毛が逆立つとはこのことを言うのか。
全身から脂汗が流れるのを感じる。
想像するだけでも恐ろしい。
「ちなみに男性から亜人への売春持ちかけだけでも犯罪ッスけど体液の売買はもっと重罪ッス。マナ混じりの体液はそれはそれで嗜好品のご禁制の品に指定されているッスからね」
ま、アウリィさんには関係無い話ッスけど!と最後に話を締めたナズナは何が楽しいのか、今度はケタケタと笑い飛ばしてしまった。
その軽薄さが今では救いになったのだろうか。僅かに胸が軽くなる。
流れた冷や汗が身体の熱を奪い、幾分か頭が冷静さを取り戻していくのを感じる。
「な、何はともあれ聞けて良かった話だったよ。勿論破る気はないけど、知っていて損はない話だからね」
努めて冷静に言ってみせる。
そうだ。ルールを守ってさえいればお世話になる事もないだろう。
いつかのヤジにも精子バンクセンターに送れ!など心無い言葉があったが、自分には縁のない場所だ。
「そうね、リリたちも全部知っていたわけじゃないから勉強になったし。聞けて良かったわよ。うん」
「そういえば、里の人口割合で精子バンクの利用金額が変わるって聞いた事もある」
「あ~。そうッスね。それで今の人間主体の国家が亜人のコントロールをしているってのは公然の秘密ッス。まあ、生殖と繁栄の権限握られてたらさもありなんッスよね」
最後の最後に結構暗い国家の話が出てきたな。
これ以上の深掘りは……うん。やめておこう。僕個人がどうこう出来る問題ではないよ。きっと。
「……うっぷ。喋り過ぎてまた気持ち悪くなってきたッス……アウリィさん、さっさとどこでもいいんで行きましょ……」
ああ、そうだった。今日は楽しいお出かけの日だったんだ。
切り替えていかないと。
勉強になったが、別に悪い事をしているわけではない。
過度に恐れる必要もないのだ。
ためになったね。で終わらせて良い話。それ以上でもそれ以下でも無いのだから。
「わかったよ。ちょっと待ってね。地図を確認するから。えーっと、もう少しだね。次暫く直進して角を曲がれば着くよ!」
今日のお楽しみはこれから。
地図の通りに角を曲がればそこは立派なアーケード街だった。
特に服飾店が立ち並ぶオシャレの聖地……という程ではないが、開拓都市随一のファッションモールと言える。
人間、亜人ともに人通りは多く、数々の店が立ち並んでおり、活気に溢れている。
その活気に負けない程の熱気もあるが、魔法か何かだろうか。通りには涼しく心地の良い風が流れている。
小奇麗に整備されており、非常に心躍る光景が広がっている。
「ありがとう、ナズナ。とりあえずここのベンチに座ってて……」
そっとナズナを設置されていたベンチへ誘導する。
安堵のため息をナズナが零し、顔色が少しばかり良くなった。ちょっと酒臭い。
「さあ、到着。服飾店が充実してるって聞いてどうしても来たかったんだよね」
「うっ、洋服かぁ……。普段着のままでいいっていうか……」
「うーむ。ルルたちが見ても……不細工は何着ても不細工」
渋い反応を示す二人。
ちなみにナズナはベンチに座ったきり深い呼吸を繰り返しているだけだ。もしかして寝ている?
そりゃあ醜いと嘲られて来た人がオシャレに手を出そうとしても尻込みする気持ちはわかる。
不細工の気持ちは痛い程わかる。でも、オシャレに目覚めてしまった今の僕もどうしても否定する事は出来ないんだ。
ここは少しばかり卑怯な手を使わせてもらうよ。
「僕が自分の服を見たいってのが一番の理由だけどね。三人の服も新しいものを見て見たいんだよ。だって、皆か、かわ……可愛い、から……」
あ、どもった。どもってしまった。
恥ずかしい。というか最後の方は声がかすれてまともに言えてない気がする。
「兎に角!僕の服選びに付き合ってくれるだけでいいからさ!第三者のアドバイスってやっぱり欲しいものでしょ?こういうのって」
ここは押し切る。
嫌とは言わないだろうが、折角なら一緒に買い物を楽しみたいじゃないか。
「こ、これはおにーさんのファッションショー……?ま、まぁおにーさんがそういうなら?付き合ってあげてもいいよ!?」
「これは……頼めば試着もしてくれるってことでよろし?」
「物による」
「了承」
決まった。
今ここに四人でのファッションショー兼お買い物が幕を開けたのだった。
……ナズナは脱落かも。
ヒロインのゲロイン化についてどう思う?(ナズナ編)
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特に何も思わない(嫌悪感も無い)
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ギャグ(虹色の液体とかノリ全体)ならOK
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直接的な描写じゃなければまあ
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本当に無理なので止めて欲しい
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どれにも該当しないが全面支持(肯定)
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どれにも該当しないが嫌(否定)