男の娘が美醜貞操逆転のあべこべファンタジー世界から脱却しようと足掻く話 ~それでもスカート履くのを止められない~ 作:シエスタさん
前々から気になっていた和モダンな意匠を凝らした店舗にて。
僕はナズナの和風な道士服に触発されて、和を求めた服の試着を行っている。
「ど、どうかな?似合う?」
「ひィじょうにマーベラスですぅ!お客様~!」
ナズナと同じ狐の獣人がハイテンションで褒めちぎる。
亜人が経営する店舗に人間男性が入店すること自体稀なのだろう。
店内は服を物色する手を止め、こちらに釘付けの客や、固唾を呑んで見守る店員達で溢れている。
「うわー、おにーさんすごーい!美人じゃーん!」
「うーむ。これは確かにマーベラス」
「うーん?でもちょっと短いかな?そうでもない?」
恐らくは同郷の亜人が主要な客層なのだろうが、幸いにして僕にも着れる服が何点もあった。
しかし、どれも和風……というか巫女服っぽいけれど袴ではないスカートばかりが男性向けに並んでいる。
この世界の男性の服のチョイスは幅広い。身長は女性より軒並み低いが、顔つき身体つきは千差万別。
それ故に、女性らしい服装を好む人もいれば、男性しか着ないような服装を好む人もいる。
「えー?そのスカート可愛いと思うけどなー。紅白で縁起良さそうだし。案外おにーさんの金髪と相性良いよねー」
「お兄さんの清楚なイメージ通り。ルル嘘つかない。買っちゃおう。足元が不安ならついでにこのニーソックスも……」
「それは買わな……。いや、それも可愛いなぁ……!」
ニーソックス……ではなくガーター付きニーハイを手に取り、履くわけにはいかないので足に当ててみる。
すると店内からおお、という歓声が小さく湧き立つ。
「決めました。これ一式ください」
「お買い上げありがとうございまぁーす!」
買っちゃった。買っちゃった!
いやあ、前々から欲しいと思ってたんだよね。和風な服。
何故か甚平や作務衣でもなく巫女服風スカートセットを買ったのかは自分でもわからない。
気分が高揚するからとしか……。
いい歳こいて何しているんだと自責する自分も何処かにいるが、今はオシャレを楽しみたい。
折角会計したのだし、このまま着て帰ろう。というかニーハイまでこの場で履いてしまおう。
「ちょ、ちょっとおにーさん……!」
「あーダメダメ。えっちすぎる」
店内では一際大きな歓声に包まれる。
「え?あっ駄目だった?ごめん……」
はしたない真似をしてしまった。
どうしても一部ではおっさんのノリが出てしまう、反省。
「と、ところでさ」
なんとか恥を掻き捨てるかのように話を無理矢理切り替える。
それにこっちだって本命だ。
「二人の服も見てみようよ。僕も見る側に回りたいからさ」
なーんだ。今度は亜人の方か。解散。
そんな声が聞こえ、周囲の人だかりは霧散する。
現金だし少し失礼だけど、これで落ち着いて買い物が出来る。
「えー、どうしよっかなぁ。気乗りしないけどおにーさんが言うなら……」
「同上。正直何を着ても似合う気がしない」
「そんな事ないって。ほらこっちの和服とかさ……」
自認不細工、世間の扱いも不細工の彼女たちだが、僕から見れば美少女そのものだ。
きっと似合う服が必ずあるはず。
そうして僕は自分の服を選ぶ時以上に気合を入れ直すのだった。
「うわっ、凄い。二人とも似合ってるよ」
二人に薦めたのはまるで明治時代を彷彿とさせるような女学生ファッション。
リリには薄紅色の矢絣柄。ルルには市松模様のえんじ色。
上にはお揃いのアイボリーの羽織を着て華やかさが一段ぐぐっと引き上がっている。
「え?ほ、本当?えへへ……」
「これは……照れる」
「本当だよ。リリちゃんは普段の活発な感じと違うギャップが良い。明るい色からリリちゃんらしさもしっかり残っている。凄く可愛らしく纏まっていると思うな」
「じゃ、じゃあ、買っちゃおっかな?」
「ルルちゃんもとてもいい。やっぱりルルちゃんのクールさに負けないテーマと色だから親和性が高い。でも羽織で一辺倒にさせない魅力が出ているし、素敵だよ」
「凄く……照れる。でもお兄さんがオススメしてくれるなら、買う」
最初は渋々と言った様子だったが、いざ試着まで行くと案外ノリノリで付き合ってくれる。
ああ、楽しい。友人と買い物なんて当然、前世でもあったが——。
「ではお会計しますね~。ついでに獣人用の尻尾穴の手直しにお時間頂きます~」
お願いします。と声を揃えて二人はカウンターへと消えていく。
服、オシャレの為の買い物がこれ程楽しいだなんて。
うーん。やはり今世にかなり引っ張られているのかな?
「あの……」
会計するリリとルルを見送りながらそんな事をぼんやりと考えていると声を掛けられた。
振り向くとそこには全身が体毛に覆われた非常に小柄な猫の獣人が所在なさげに立っていた。
「どうかしましたか?」
背丈はかなり小さい。一般的に身長の低い男性、その平均的な僕の胸先程度しか無い。
そんな少女……女性?がおずおずと話しかけてきたのだ。
怖がらせないように出来る限り柔らかい対応を心掛ける。
それでも表情だけはどうしても無表情になってしまう。この能面っぷりに内心舌打ちしたい気持ちを抑えつつ、声色を作る。
「わ、私、この服買おうか悩んでいるんですけど……どう思いますか?」
どう思う?これはもしや御洒落談義、相談という奴だろうか。
そう解釈した途端、突然気分が高揚するのを自覚する。
えー。どうだろう。似合うとは思うけど、彼女の体毛は黒に近い。合わせるなら……。
「そうですね。それも素敵だと思います。けれど、もっと似合いそうなのが……えーっと、これとか。こっちの色合いの方がお嬢さんにきっと似合うと思いますよ」
そう言いながら、一着の服を手に取り、彼女に重ねて見る。
うん。こっちの方がいい。明るいリボンがアクセントになっていて素敵だ。
「ほら。リボン、良いアクセントでしょ?」
出来る限り最初の意見を否定しているニュアンスが強くならないように努めて声色を意識する。
すると服を受け取った猫獣人の女性は微かに涙ぐみ始めた。
ヤバ……。出しゃばり過ぎたかな?
「あ、ありがとうございます!私、これにします!」
涙に潤みながらも溌剌とした声で購入を宣言し、深々と一礼する彼女。
そのままカウンターへと消えていった。
……良かった。どうやら気分を害してしまった訳ではないようだ。
むしろ感謝されていた以上、間違いではないらしい。
「ちょっと焦ったけど……。他の人のコーディネート考えるの、楽しいな」
特にそれが採用されるのなら猶更だ。
通販かマネキン買いしかしなかった前世とは大違いだ。
「あのー……。お兄さん。私も上着こっちとそれをどっち買うか悩んでいて。良ければ助言くれませんか?」
「あ、私もっ!お願い、お兄さん!三択にまで絞れたけど決められないの!お願いっ!」
「ちょ、こっちも!こっちもお願いしまーす!助言を!どうかー!」
感慨にふけっていると今まで成り行きを見守っていたお客さん達から次々と声を掛けられた。
流石に断るのも気が引けるし、それほど数は多くない。
それよりもコーディネート出来る事の方が嬉しい。腕が鳴るというものだ。
ぽやっとした雰囲気の大柄で牛ような角と尻尾の生えた豊満な女性。
快活そうな腕から先が翼になっている所謂ハーピーの女の子。
騒がしそうだけど何処か愛嬌のある兎の獣人。
「ええ、僕で良ければ。順番に見ていくので少し待ってくださいね」
その後も何人かのファッション相談が続き、僕が薦めた商品を皆が一様にお買い上げする事態となった。
リリとルルが帰ってくる頃には店長から平伏する勢いで感謝され、次回の割引クーポンまで頂いてしまった。
それにしても……。店長印の入ったクーポンには80%OFFと走り書きされている。
これは凄い物だ。是非また来ることにしよう。僕は内心、固く誓った。
ヒロインのゲロイン化についてどう思う?(ナズナ編)
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特に何も思わない(嫌悪感も無い)
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ギャグ(虹色の液体とかノリ全体)ならOK
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直接的な描写じゃなければまあ
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本当に無理なので止めて欲しい
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