美醜も貞操もあべこべなファンタジー世界を脱却しようと足掻くメンタルおっさん男(の娘)の話   作:シエスタなう

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あわわ……。間違えて6話の内容を7話に掲載してしまいました。教えてくれた方ありがとうございます。


7話 冒険者ギルドへ行こう

「つ、疲れたね……」

「まさかあんな目に遭うとは……。ルルたちもまだまだ世間知らずだった……」

 

 雲一つない晴れ渡る空。昼時を目前に行きかう人々で賑わう雑踏。

 そんな開拓都市の片隅、少年とインプの少女二人という珍妙な組み合わせが項垂れている。

 厳密に言えば少し違う。

 

 「…………じゃないもん」

 

 リリは、一体何の感情を浮かべているのか。皆目見当のつかない能面のような表情でうずくまり、道行く蟻の隊列を虚ろな目で眺めている。

 普段の僕の無表情っぷりが伝染したかのような能面っぷりだ。

 

「リリ、スケベじゃないもん……」

 

 さてどうしたものかと思案している最中、真っ先に動いたのはルル。

 

「大丈夫、リリ。リリはスケベじゃない」

 

「ルル……」

 

 美しいかな、友愛。

 慰め、支え合う二人に自然と顔が綻……ぶこともなく、死んだ表情筋に内心悪態を付きつつ無表情に見守る。

 

「弩級のスケベ、ドスケベ。スケベ?のんのん。リリ is ドスケベ」

 

「むきゃー!だからリリはスケベでもドスケベでもなーい!」

 

 初めて足を踏み入れる大都市。

 その第一歩から飛び交うスケベというワードの応酬。

 僕は自然と空を仰ぎ見るのだった。

 嗚呼、雲一つない快晴だ。

 

 

 閑話休題。

 やっとこさ落ち着きを取り戻した二人に冒険者ギルドへの道を尋ねた所、どうやらこの開拓都市には二つの冒険者ギルドがあるらしい。

 一つは大通りにある人間御用達のギルド。

 建前上亜人の利用制限は無いらしいが、歓迎はされないというのを身をもって知ったそうだ。

 一部の男性冒険者も主にこちらを利用するらしいが……。

 二人にとっても近寄りたくない場所だろう。

 ナンパの詳細を後から詳しく聞いたが、パーティーの女リーダーに、私の色香を増幅させろ。とか無理難題を吹っ掛けられた挙句、近くで隠れていたリリを見つけた男性が錯乱し、大騒ぎしてしまったらしい。

 聞けば聞くほどこの件、二人は悪くないように思えるが無用なトラブルは避けたい。

 こちらはパス。

 

 

 もう一つが裏通りにある亜人御用達冒険者ギルド。

 御用達というか掃き溜めというか。

 兵隊たちが語るには、集落で貧困生活を送るよりはと出稼ぎに来た亜人達は自然と路地裏に追いやられるらしい。

 何せ顔を見るだけで世の男性たちは恐慌状態に陥り、冷や汗を垂れ流し、そこからマナがだだ漏れになり本当に体調を崩すのだそうだ。

 表通りを歩いたところでトラブルの温床にしかならない。

 ちなみに罰則なども亜人と人間で違うそうだ。

 人類という大きな括りの中に人間と亜人というカテゴリーがあるそうな。

 

「それなら行くとしたら裏通りのギルドかな」

 

「えーほんと!?うれしー!」

「それならバッチリ案内できる……任せて」

 

 すっかり元気を取り戻した二人の案内を受け、路地裏を進んでいく。

 やはり長い付き合いなのだろうか。ルルもあれはあれで素直に元気づけようとしていたのかもしれないな。

 それにしても話に聞いていた通り、進むほどに亜人を多く見かけるようになってきた。

 

「おにーさん、あまり離れないようにね」

「お兄さん、しっかりくっついていて」

 

「そんなにくっつかれたら離れようが無いよ……」

 

 珍しいものをみたとばかりに目を丸くする小柄な猫らしき獣人の少女。

 素知らぬ振りをしつつもしきりにこちらを窺う鱗の肌と尾を持つ鋭い雰囲気のリザード……ウーマン?

 目と目が合うや否や、とろけて原型が無くなりかけるスライムのお嬢さん。いや、待て。それは大丈夫なのか。

 進むにつれ、好奇の視線が集まるのを感じる。

 

 兎にも角にも、両脇をがっちり固められて無事に冒険者ギルドへ辿り着いたのだった。

 外観はまさにそれっぽいとしか形容出来ない。

 

「ここから始まるんだね」

 

 遠い昔に遊んだテレビゲームを思い出し、自然と気分が高揚するのを感じる。

 

「あ、おにーさん。堂々とし過ぎると絶対トラブルになると思うからすぐに新規の受付カウンターに行くからね!」

「迅速に。ササッと」

 

「あ、はい……」

 

 戸を開け、身を屈めつつ素早く移動する。

 なんでこんなコソ泥みたいな真似をとは思わなくもないが、道中の亜人の女性たちの反応を見るに自分の存在は刺激が強すぎるらしい。

 やむを得ない措置ということにしたい。

 

「らっしゃい。あーだりぃ……、ここは冒険者ギルドの新規受付窓口だ。……で、お前ら新入り希望か?」

 

 出迎えてくれたのは亜人でも、人間の女性でもない。

 脚を組み身体を椅子に投げ出した姿勢で応対してくる壮年の愛想の悪い男性だった。

 ちなみにリリとルルの登録も同時にする予定だ。

 表通りでの一件では集落から出たばかりでカモられてしまい、見習いだのなんだのと理屈を付け、まともに登録もさせてくれなかったそうだ。

 

「ってお前……!男じゃねーか!おいおいどうした……!?ここは男のしかもガキが来る所じゃねーぞ……!というかデケー声出すなよ……」

 

 撤回。物凄く親切そうな人だった。

 しかしこちらも引くわけにはいかない。

 何故この世界で生まれ変わったのか。

 今際の際に聞こえたあの声の主は?

 何故こんなにも自分は世界とのズレを感じているのだろうか?

 

 全てを知るには自由な身分で無ければいけないんだ。

 仮に結婚から逃げた先で普通に仕事を見つけたとしても、真実にたどり着く事はきっとできない。

 帰る場所なんて最初からないのだ。

 

 「事情があるのです。引くに引けない事情が。申し訳ありませんが新規登録の受付をお願いします」

 

 「チッ。わかったよ。登録、進めてやっから。そんなに睨むな。そこの柱の陰でやるぞ」

 

 暫しの逡巡の後折れてくれた受付職員の男性。

 そこからはとんとん拍子だった。

 名前の記入――村にいた頃に呼ばれていた名は思い出したくない。

 二人に名乗った名、アウリィ・クロムと書き込んでいく。

 そして責務と誓約を確認する。

 基本的には開拓都市という名の通り、北に広がるダンジョンを攻略し、未開の地を攻略すること。

 時折、お使いや害獣駆除などの依頼も張り出されること。

 そこに付随する様々な討伐や収集の依頼をこなすのが冒険者の責務であること。

 自身の出来る事をアピールし、パーティーを組んで冒険に臨むこと。

 登録の際には無料で魔力チェッカーとスキルの診断が受けられること。

 死んでも泣きごとを言わないこと。

 

 これらすべてに了承し、恙なく手続きは終了した。

 後は身の丈にあった装備などを整えて宿を押さえる。それで完璧のはずだ。

 

 「ところで魔力チェッカーとスキル診断って?」

 

 ふと疑問を口にする。

 

「魔力チェッカーはねー……!どれだけの魔力を保持しているかと、その出力を調べてくれるんだよ……!」

「スキル診断はその名の通り。例えばルルは魔闘技のスキル。あちょー。リリは精神魔法のスキル。だからその手の魔法が得意。……お兄さんには通用しなかったけど」

 

 二人が同じくヒソヒソ声でどういったものかを教えてくれる。

 そうこうしている間に職員が取調室で見たオーブとは違う色のオーブを持ってきた。

 

「これに暫く手を乗せな。そうしたら持ってる魔力とその出力、ついでにスキルがわかる」

 

 言われるがままにオーブに手を乗せる。ひんやりとした感触が段々と自分の体温で中和されてゆく。

 

「スキルには習熟や取り扱いに補正をかける剣術や属性魔法、そもそもスキル持ちじゃないと使えない魔眼なんかの権能なんかがあるぞ……っと。結果が出たな」

 

 まだオーブの冷たさの余韻の残るうちに、台座から一枚の紙が排出された。

 ああ、そういう仕組み……。

 

 紙を無造作に千切り取った職員は何度か目を近づけては離し、近づけては離し、しまいには老眼鏡を取り出してまじまじと眺めはじめた。

 そんなに見つめても紙に書かれた内容は変わらないと思うのだが……。

 

「坊主。お前魔法で何かを攻撃しようとしたことは?」

 

「いえ、ないですけど……」

 

 嘆息交じりに職員が告げる。

「だろうな。魔力チェッカーの結果、魔力は膨大。だが出力がカスだ。日常的な生活魔法なら問題無く使えるが、これじゃ小型の魔物すら傷を負わせられん。男だから腕っぷしも期待できんしな」

 

「俺はな。昔は冒険者だったんだ。フィジカルは男らしく、てんで駄目だが実戦に耐えうる魔力とそれに見合った出力があった。だから引退後もこうやって高給取りに釣られてこんな場所の受付坊なんてやってるんだけどな……」

 

 その点坊主はダメだ。と憐憫交じりに告げられる。

 

「そんな……」

 

 そんな、まさか。

 記憶を取り戻す以前から生活の至る所で魔法を使っていたので自覚した事が無かった。

 料理の際の火種や、水拭き掃除の水源に魔法を使った事はある。

 でも確かに何かを焼き尽くす熱線や、敵を押し流す激流なんて使おうとしたこともなかった。

 

 おまけに自分のこの体格だ。

 これでは振れても果物ナイフ程度だろう。

 諦めるしかないのか……。

 

「あー、それとだ。スキルについてなんだが……。お前、家族や恋人……いや、友人でもいい。誰かそういう人は……」

 

 そうか。スキル。スキルがあった。一抹の望みがまだある。

 あるが……。家族?

 父の顔はわからず、僕を出汁に稼いだ金で飲んだくれていた農村にしては肥え太った母。

 男性陣からは目の敵にされていたし、恋人なんてもってのほかだ。

 

「ああ、いやすまん。そんな怖い顔せんといてくれ」

 

 あんた無表情だけどな、気配だよ。と薄く笑った職員はすぐさま真面目な顔付きになる。

 

「今まで気づいてなかっただけでも人生が辛い道程だったことはわかる。お前さんのスキルはリンゲージっつう少しだけ珍しいスキルだ」

 

 名前からも推察が出来ないし、確かに今までそれらしいものを発現させた記憶もない。

 

 「リンゲージ……」

 

 自分のスキル名を噛み締めるように呟いた。

 

「これは厄介だぞ。なんたって絆を結んだ相手の能力を格段に引き上げるだなんてピーキーな性能したバッファー向けのスキルなんだからな」

 

 そう説明する職員の眼差しは先ほどよりも深い憐憫に満ちたものだった。




6話で本来は書き溜めが尽きたのですが、ご拝読・お気に入り・投票に励まされ、7話を書くことが出来ました。
今後も続けられるか不安ではありますが、頑張りたい所存です。
一先ずは空っぽの8話を前に頭をひねってみようと思います。
応援ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします。
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