俺はDA本部に潜入し、カブト捕獲計画の資料を眺めていた。資料をパラパラとめくりながら概要を把握する。どうやら、この世界の一部の人間は既にネイティブと手を組みマスクドライダーシステムを開発しているようだ。
開発場所は黒字で塗りつぶされているため判別できない。俺は資料をあるべき所にそっと戻し、司令室を後にする。
どうもこの案件は慎重に探る必要があるな。マスクドライダーシステムを開発しているのはカブト原作のZECTではなく、DAが主体となっているし、これは楠司令以外には知らされてない機密事項だ。つまり、マスクドライダーシステムの候補者はリコリスから選定するつもりであろう。
カブトを俺を敵対視しているネイティブやワームの連中からすればDAは都合のいい駒だ。奴らがマスクドライダーシステムを開発する前に計画を叩き潰す。ライダーは俺独りでいい。
あぁ、そういえば今日はDAで健康診断と体力測定があるんだったな。原作でいう3話目だ。そろそろ主人公勢が来てもおかしくない時間だ。原作を見るのはクロックアップの世界に取り込まれた俺の唯一の楽しみでもある。早速、観賞しに行こう。
俺は今か今かと待ち構えてようやくトレーニングルームに来た千束とたきなを見る。しかし、このトレーニングウェアぴちぴちすぎないか?少し心配になるな。
やがて、時が流れ千束andたきなVSフキandサクラの試合が始まった。原作通りの流れでサクラが先に仕留められ、フキがたきなによってぶん殴られ滅多撃ちにされる。
「はぁはぁ、やりましたよ千束!」
「あれ?また誰かに見られてるような?」
「千束?」
「くっそ!」
「やられたっす!」
まただ。クロックアップの世界を感知しているとでもいうのか、錦木 千束は。タキオン粒子を纏った視界でなれば認識することすら不可能なはず。俺は背筋が寒くなりその場から急いで離れる。
しばらくは原作主人公から離れることにしよう。ワームやネイティブの動向も気になるしな。
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「おばあちゃんが言っていた。群れるやつほど弱いってな」
「キシャアアア!!」
「シャアアアア!!」
「「「「グルルルルルル!!」」」」
「フンッ!」
俺はDAにあった資料からマスクドライダーシステムを開発しているエリアXに辿り着いた。ここまで来るのに軽く体感で3年はかかった。エリアXでは手厚いお出迎えがあり、俺を退屈させてくれない。
俺は無防備に飛び込んできたスパイダーワームの爪を上半身をずらすことによってかわし胴体にカウンターのワンツーを決める。
「キシャアアア?!!」
「アバランチスラッシュ」
俺はカブトクナイガン クナイモードの刃先からイオンビームを放射して、スパイダーワームを切り裂く。そして、後方にいるワームサナギ体に向かって疾苦し次々と葬る。
「キ、キシャアアア?!!」
『1.2.3.』
「ライダー……キック」
『RIDER KICK!』
「グルァアアアア?!!」
最後のワームは仲間がやられた怒りで突っ込んで来たところをライダーキックで爆殺する。これでパーティーは終わりか?もっと楽しませてほしかったんだが。
だが、これでエリアXの奥に入れる。さぁ、暴かせてもらうぞ。ネイティブが開発しているマスクドライダーシステムとやらを。
俺は廃墟となった研究施設の最新部に入る。そこには未完成のゼクターが多数あり、カブト原作では見たことがないようなゼクターもあった。俺はそれを一つずつカブトクナイガンで真っ二つにする。
そして、さらに歩みを進めると研究室のデスクに極秘と書かれた資料があった。俺はそれを読む。
「マスクドライダーシステム第二号 適合者 錦木 千束だと?」
馬鹿な。一体何がどうなっている?何故、錦木 千束がマスクドライダーシステムの適合者に?ここに来るまで全てのゼクターは破壊したはず。
俺は急いでゼクター保管室に向かい確かめることにした。しかし、その瞬間建物を爆発が襲った。
「くっ、罠だったか?!」
爆発の魔の手はすぐそばまで迫っている。この大量の爆発の中を突っ切るのは容易ではないだろう。いくら、クロックアップ中で何千倍ものスピードで移動しているからといっても爆発のスピードも途轍もなく速い。ヒヒイロノカネ製の装甲でも一時的に俺にダメージがあるだろう。
使うしかないか、あれを。
俺は虚空に何かを掴むように手をかざすとそこにハイパーゼクターが現れ、それを腰のベルトに装着してハイパーゼクターホーンをたおす。
「ハイパーキャストオフ」
『HYPER CAST OFF!CHANGE HYPER BEETLE!』
カブトの装甲の上にさらに重厚な装甲が重ねられる。カブトの強化形態 ハイパーカブトだ。
「ハイパークロックアップ!」
『HYPER CLOCK UP!』
時間が巻き戻る。全ては爆発が起きる前まで。俺は過去に時間移動し研究施設を脱出した。程なくして時間が進み脱出した研究施設が爆破されたのを遠くで見る。
今度の敵はそう甘いやつじゃないらしい。俺が来ることを予見して研究施設を爆破したんだ。恐らくクロックアップシステムに反応して起動する仕組みだっんだろう。
それにワームの配備も事前にされていたのも気になる。奴らはどこまで知っていた?
俺はカブトエクステンダーに乗り込み、エリアXから離脱する。資料に書かれていたマスクドライダーシステムの適合者 錦木 千束。アイツには指一本触れさせない。アイツは俺の……だからな。
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「へー、千束にはお兄さんがいたんですね」
「うん、お兄ちゃんは事故で亡くなっちゃったけど私の自慢のお兄ちゃんだったんだ。勉強も運動も完璧で……料理もすごく美味しかったなぁ」
「その事故でご両親も他界されて千束はリコリスになったんですね」
「ははは、まぁ、そんなところかな。でもね、私お兄ちゃんはきっとそばにいてくれてると思うんだ」
「それは何故ですか?お兄さんは亡くなられているのに……」
「ううん、あのお兄ちゃんが死ぬはずないって思ってるんだ。だってあの時見つかったのはお母さんとお父さんだけでお兄ちゃんはいなかったんだもん。きっとどこかで私を見守ってくれてるんだ」
「千束……」
俺は彼女たちを陰ながら見守っていた。千束の声はいつになく真剣で想いが込められていた。俺はそれに胸が少し苦しくなりながらも背後に迫るワームにカブトクナイガンを突き立て排除する。
「俺がそばにいる、俺がそばに」
その声は誰に聞こえる事もなく虚空に溶けていった。誰にも気づかれぬまま。そっと。