GOD SPEED LYCORIS   作:フォイオ

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「春川 フキ。お前を正式にマスクドライダーシステム 第三号 仮面ライダーザビーに命じる」

 

「はい!」

 

「乙女 サクラはそのパートナーとしてカブト捕獲計画の副隊長に任命する」

 

「はいっス!」

 

 

春川 フキはアタッシュケースに入っていたザビーゼクターとライダーブレスを手に取る。その隣で乙女 サクラは羨ましそうにゼクター一式を見ていた。

 

 

「しかし、司令。カブトは本当に我々の敵なんですか?」

 

「私もそれ気になってたっス」

 

 

春川 フキが楠司令に問いかける。隣の乙女 サクラもそれに同調した。質問を受けて楠は神妙な顔で腕を組み鋭く言い放つ。

 

 

「奴は個人でマスクドライダーシステムを私的に利用し、我々の協力者であるネイティブを殺害した。奴は間違いなく敵だ。故に捕獲して奴の保有するライダーシステムを奪還しなければならない」

 

「……わかりました。作戦の決行日はいつですか?」

 

「作戦は明日の明朝だ。場所はワームの出現予測地点に絞り込む。フキ、お前は作戦が開始次第クロックアップに入り奴を仕留めろ」

 

「楽しみっスねぇ〜、どんな奴がカブトなんでしょうね!」

 

「おい、サクラ。遊びじゃねぇんだぞ?」

 

 

春川 フキが呆れた様子で乙女 サクラを嗜める。これはカブトも知らない極秘の作戦。既にカブトはネイティブの罠に嵌っている。

 

 

「部隊の指揮は任せたぞ、サクラ」

 

「了解っス。この作戦を成功させて必ずファーストリコリスになるっス!」

 

「この作戦、失敗は許されない。もし、失敗したら……わかるな?」

 

「「はい!」」

 

 

陰謀が渦巻く中、カブトはクロックアップの世界で司令室を盗み見ていた。厄介なことになったなと一言呟くと彼はそっと司令室のドアを閉めて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「今日はいつにも増してワームが多いな、フン!」

 

「キシャアアア?!」

 

「きゃあああ!化け物よ!誰か助けて?!」

 

 

俺はとある場所の商店街に出現したワームから人々を守りながら1匹ずつ敵を確実に倒していく。同時刻に3箇所のポイントで偶然現れた奴らは人々を襲い始めた。

 

これもネイティブの采配だろう。奴らは既にマスクドライダーシステムを開発しワームを支配している。それに先日のDAの話によればもうそろそろ奴が来てもおかしくないはず。

 

 

「見つけたぞ、カブト!」

 

「遅かったな、ワームなら全て倒したぞ」

 

「ふん、そのマスクの下拝ませてもらうぞ!」

 

 

仮面ライダーザビーが高速のジャブをジャンプで一気に距離を詰めて打ち込んでくる。俺はその拳を捌きつつ、カウンターで顔面を殴り飛ばす。

 

さらに追い討ちでカブトクナイガンを掃射。ザビーの装甲から火花が大量に舞い、奴は後方に転がっていく。

 

 

 『『CLOCK OVER!』』

 

 

「ぐはっ?!くそっ、これがカブトか。データ以上の強さだ」

 

「その程度か、ライダーに選ばれし者の強さは?」

 

「蜂は群をなし敵を葬る。つまり、私だけではないということだ!サクラ!」

 

「はいっス!全隊一斉攻撃!」

 

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

 

「くっ!」

 

 

いつの間にか俺の背後で構えていたDAの少女たちが俺目掛けて一斉に銃撃を始める。マスクドフォームより防御力が落ちたライダーフォーム状態では衝撃を抑えることが難しい。

 

ヒヒイロノカネ制の装甲から火花が散る。どうやら、あの銃弾は対ライダー用のようだ。一発一発の反動が凄まじく、こちらに向かってくる銃弾は明後日の方向に飛んでゆくものも多い。つまり、それだけ強力ということだ。

 

 

「トドメだ、カブト!ライダースティング!」

 

 『RIDER STING!』

 

 

俺がDAの銃撃から逃れるために踵を返した瞬間、目の前にザビーゼクターの針先からタキオン粒子を流し込んだ必殺技が迫る。まさに前門の虎後門の狼だな。

 

 

「プットオン」

 

 

俺はゼクターホーンを戻しマスクドフォームになる。分厚い装甲を身に纏い両腕を前にガードの体制を取る……フリをする。

 

 

「今更防御か?!そんなものでは防げないぞ!」

 

「だから、こうするんだ。キャストオフ」

 

 『CAST OFF』

 

「なっ?!馬鹿なぁあああ?!」

 

 

キャストオフの音声と共にマスクドフォームで元に戻った装甲が再びパージされ凄まじい勢いと共にマスクドアーマーがザビーにぶつかり、DAの部隊を巻き込みながら吹っ飛んでゆく。

 

 

「おばあちゃんが言っていた。ピンチは最大のチャンスだってな」

 

 『1.2.3』

 

「このまま終わってたまるかぁ!」

 

 

ザビーが咆哮し走り出す。俺はそれを振り返らずにゆっくりと奴が俺のテリトリーに入ってくるのを見計らいカブトゼクターのフルスロットルを順番に押していく。そして、ゼクターホーンをマスクドフォーム時の位置まで戻し、一気に倒す。

 

 

「ライダー……キック」

 

 『RIDER KICK!』

 

「ハァア!」

 

「うわぁああああ!!」

 

 

油断した相手が近寄ってきたところにハイキック気味の後ろ回し蹴りを繰り出す。キックは見事に奴の左肩を抉り商店街の外まで吹き飛ばした。

 

 

「俺が正義だ」

 

「フキ先輩!?」

 

 

副隊長のサクラが変身が解除され気を失ったフキの元に駆け寄る。そしてDAの部隊に動揺が広がりパニックが起きる。俺はその混乱に乗じてカブトエクステンダーに乗り込み離脱する。

 

 

 『CLOCK UP!』

 

 

やっとクロックアップの世界に戻って来れた。最近、高頻度でベルトがバグりクロックアップの世界と通常の時間の流れを行ったり来たりしている。そのせいでDAにも簡単に侵入できなくなっていた。

 

あれだけ疎んでいたクロックアップシステムだが、いざ機能しなくなると不安になる。俺はすっかりクロックアップの世界に浸っていたらしい。このままだとクロックアップシステムが直っても元の生活に戻れなくなるな。

 

しかし、俺以外にもライダーが現れるとは。よりにもよって初戦がザビー相手。苦戦はしたが今回は俺の勝利だ。だが、油断はできない。次の刺客はすぐに送られてくるだろう。何度でも迎え撃ってやるさ。この世界は俺が守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「春川 フキ。乙女 サクラ。今回の任務失敗により上はお怒りだ。処分としてフキはセカンドに降格。サクラはサードからやり直せ。以上だ」

 

 

司令室に呼ばれた春川 フキと乙女 サクラに降格処分が下った。ネイティブは此度の作戦失敗を大変遺憾に思っており、ことの重大さから2人に重い罰を与えることしたのだ。

 

 

「ま、待ってください!私はまだやれます!」

 

 

しかし、そんなことは認められないとばかりに春川 フキと乙女 サクラは反論する。

 

 

「そ、そうっス!今回は失敗したかもしれないけど次こそはカブトを捕まえてみせるっス!」

 

「言いたいことはそれだけか?早くザビーゼクターを返還しろ」

 

 

しかし、司令の楠の冷徹な声は鋭く彼女たちの心を突き刺し黙らせた。

 

 

「くっ……わかりました」

 

「フキ先輩?!」

 

 

大人しくザビーゼクターを返還するフキの顔は屈辱にまみれていた。そんなフキを見てサクラは悔しそうに涙を流していた。

 

フキとサクラは肩を落とし司令室を出る。その背中には哀愁が漂っていた。

 

 

「はぁ……もしもし私だ。次のカブト捕獲計画だが……」

 

 

楠司令は電話機を取り、次なる作戦の内容をネイティブと話す。次の刺客は近いうちにやってくるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「聞いたよ、フキぃ。セカンドに降格したんだって?」

 

「うっせぇよ、千束!カブトが向こうのほうが一枚上手だっただけだ!次は絶対に捕まえてやる!」

 

「まぁ、アンタが元気そうでよかったわ。落ち込んでないか千束さんは心配だったんだぞー?」

 

「お前に心配される筋合いはねえ!もう切るぞ!」

 

「その前にカブトは何か言ってなかった?」

 

「あん?カブトは特に何も言ってなかったぞ?」

 

「……そっか。じゃあ、ばいばーい」

 

「おい、勝手にきる……」ツーツー

 

 

錦木 千束は自室で携帯の通話を切った。今回のカブト捕獲計画の失敗及びフキのセカンド降格は悪い意味で噂になっていたので本人が病んでないか連絡していたのだった。

 

 

「カブトのあの声、仕草、おばあちゃんの言葉……間違いない、きっとあの人は……」

 

 

錦木 千束は携帯を置き、とある一枚の写真を手に取る。それは幼き日の千束とその両親とお婆ちゃんが写っていた。そして、千束を肩車している高校生くらいの青年が笑っていた。

 

 

「千束はここだよ、お兄ちゃん……」

 

 

錦木 千束は写真をポケットにしまい俯く。あの日、事故で失った両親と兄とお婆ちゃん。だが、遺体には兄はいなかった。

 

もしかしたら、カブトの正体は……そう考えてもカブトは正体を現してくれない。

 

千束はベランダに出て星を見上げる。きっとあの人も同じ夜空を見上げていることを信じて。

 

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