GOD SPEED LYCORIS   作:フォイオ

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FULL FORCE

 

「やはり、簡単には行かせてくれないか……」

 

「キシャアアア!!」

 

「「グルルルルルゥ!」」

 

「「「「「「「「「「「シャアアアア!!!」」」」」」」」」」」

 

 

延空木入り口前。バイクを止めた俺の前に大勢のワーム郡が立ちはだかる。よっぽどこの先には通したくないようだな。延空木の構造上ここから先は徒歩で行ったほうが早い。

 

 

「来い、相手をしてやる」

 

 

バイクを降り俺はカブトクナイガンを構え、ワームの大群の中心にジャンプで潜り込み、適当に正面にいたワームを切り裂く。

 

 

「キシャアアア?!!」

 

「シャアアアア!」

 

 

一体目を倒した後、すぐさま俺の背後から迫るワームを回し蹴りで吹き飛ばし、カブトクナイガンをアックスモードに切り替えて一撃必殺に特化した重い斬撃でワームを駆除していく。

 

 

「アバランチブレイク……ハァアア!!」

 

 

カブトクナイガン アックスモードの刃先にエネルギー電子を送り込み、超高温となったバヨネットアックスを横振りして、ワームを両断していく。しばらくは雑魚処理に集中し、物の数秒でワームの大群は今や片手で数えるほどしかいなくなった。

 

俺は残ったワームに向けてゼクトマイザー(ファンからの愛称はゼクトマイナー)からマイザーボマーを射出する。マイザーボマーが着弾し爆発していくワームたちを見届けて俺は延空木最上階を目指し全力疾走する。途中何度かワームの邪魔が入るがさらに走るスピードを上げて高速で拳や蹴りで爆殺していく。

 

そして遂に延空木最上階に辿り着き、俺は数多くのケーブルに繋がれた巨大な黒い装置を目の当たりにする。視界の端で縛られている千束、たきな、血だらけの楠を捉えつつ俺は巨大な装置に向けてカブトクナイガンを連射する。

 

彼女たちの救出より真っ先にあれを破壊しなければ不味いことになる。高速で放たれたイオンビームが装置を貫こうとした瞬間、光弾と装置の間にクロックアップしたワームが入ってくる。ワームは光弾を受け切ると俺に襲いかかってくる。

 

 

「チッ、厄介だな」

 

「「シャアアアア!!」」

 

 

俺はワームの大ぶりな一撃を裏拳で弾きカウンターのストレートをぶち込み腹部にクナイガンを突き立てる。そして、2匹目のワームをやや乱暴に頭を掴み壁に叩きつけ気絶させる。

 

今度こそ邪魔はなくなった。あの装置を破壊しなければ。そう思った瞬間、突如として巨大な装置が起動し広い範囲にわたってエネルギーが放出される。

 

 

「ぐぁああああ?!」

 

 

俺の体を通過したエネルギーは強制的にクロックアップを解除させる。それだけではなく、放出されたエネルギーは全身に纏わりつき体の自由を奪う。まるで鎖で雁字搦めにされたように身動きが取れない。

 

 

「やはり来ましたねぇ、カブトぉ。ほら、さっさと捕まえて立ち上がらせろ!」

 

「「「はい!」」」

 

「ぐっ?!」

 

 

俺を挟み込むように武装したDAのリコリスが俺の肩に腕を回し無理やり立ち上がらされる。そして、ニヤニヤと笑う根岸が俺の前でくるくると小型のスイッチを手の中で弄ぶ。

 

 

「DAのAIラジアータを使えばあなたの行動なんてお見通しなんですよぉ。つまり、最初からあなたがここに来るのは予測済みってことです」

 

「お兄ちゃん!」

 

「天道さん!」

 

「か、カブト……」

 

 

根岸のねっとりとした嫌味な声で千束たちが目を覚ます。その表情は驚愕に満ちていた。

 

 

「我々ネイティブが開発したクロックダウンシステムのお味はどうですかぁ?体の自由が効かないでしょぉ?おらっ!」

 

「ぐっ?!」

 

 

根岸が俺の胸を蹴り付ける。思わず俺は胸の衝撃で苦しむ。根岸は見た目こそ人間だが中身はネイティブ。一般人とは力が違いすぎる。

 

 

「やめて、お兄ちゃんに手を出さないで!」

 

「ほ〜う、千束さん。この男に同情なんていらないですよぉ。何故ならこいつは我々ネイティブを虐殺していた張本人なんですからねぇ」

 

「お兄ちゃんがネイティブを?!」

 

「天道さんがどうしてそんなことを?!」

 

 

根岸の発言に千束とたきなが俺をハっと見る。俺は彼女たちの目線から目を逸らさずに見つめ返す。

 

 

「こいつらネイティブは人類をネイティブにする計画を立てていた。全ては根岸の歪んだ支配欲のためにな」

 

「未来から来た我々ネイティブにとってあなたたちはただの旧人類。何をしようが我々の勝手ではないですか?」

 

「やはり、お前は腐っている。口では人類のためと嘯きながら本音は自身の欲望のために邪魔な人間を排除する。俺たちの家族を殺しておいて身勝手なことを言うな!」

 

「ネイティブが私たちの家族を殺したってどういうことなの?!」

 

「あらー、聞かれちゃったならしょうがないですねぇ。話してあげましょう」

 

 

根岸はくるりと踵を返し千束の前に行くと立ち膝になり語り出す。

 

 

「我々ネイティブが未来でワームの脅威にさらされていた時、偶然開発に成功したハイパーゼクターの力で過去の地球にタイムスリップしました。それは我々にとって僥倖でした。しかし、タイムスリップ時にワームの隕石も巻き込んでしまいましてね。過去の地球人類にネイティブが保有する技術を提供する代わりに共通の敵であるワームを結託して倒すことにしたんです」

 

「それが50年前の真実……そして、27年前に親父はネイティブの真の狙い……地球人類をネイティブにする計画に気付き奴等に対抗するためのマスクドライダーシステムを開発した。一部のマスクドライダーシステムにはワームやネイティブを殲滅するためのシステムが組み込まれ、それを恐れたお前たちは秘密裏に事故として錦木総一一家を殺害する計画を企てた」

 

「ですが、ライダーベルトとゼクター一式を組織から持ち出していた錦木総一は運良く生きていた自身の息子に全てを託しこの世を去った。全く厄介なものを残したものです……本当に忌々しいな、あの男はぁ!」

 

「ひっ!」

 

「ち、千束!」

 

 

根岸は立ち上がり地団駄を踏む。その異様さに恐怖した千束が悲鳴をあげ、隣にいたたきなが千束を守るように前に這い出る。仇敵を前にして俺はいまだに体の自由が効かなかった。歯痒さに拳からぎりぎりと音が鳴る。

 

 

「旧電波塔事件もただのテロリストの占拠じゃなかった!ハイパーゼクターを利用して人類をネイティブ化する計画のカモフラージュにすぎなかった!俺はそれを止めるために旧電波塔でハイパーゼクターを奪った!」

 

「しかし、そこで想定外のことが起こった。なんだと思います、千束さぁん?」

 

「な、なんのこと?」

 

 

根岸が再びニヤニヤと嗤いながら千束を見下ろす。

 

 

「やめろ!言うな!」

 

「あなたが撃った弾丸が当時旧電波塔で戦っていたカブトのクロックアップスイッチに当たって故障しちゃったんですよ。それ以来、カブトはクロックアップの世界で孤独に苛まれながら独りで我々と戦っていたんです」

 

「そ、そんなわけ……」

 

「あるんですよぉ!覚えはないですか?!あなたの卓越した洞察力と常人離れした視覚はクロックアップしたカブトを捕らえていたんです!あなたは未知の脅威を排除すべく本能的に引き金を引いた!カブトがクロックアップの世界から戻って来れなくなったのは全部あなたのせいなんですよ、千束さん!」

 

「まさかあの時?!うそ、うそうそうそ……うそだ!」

 

 

千束は取り乱し根岸を睨みつける。しかし、根岸は千束の鋭い眼差しを見ても余裕綽々といった表情で受け流す。

 

 

「クロックアップした世界で常人の何千倍の時間を過ごさなければいけなかった彼の苦悩は計り知れなかったでしょうねぇ?でも、それも今日で終わりです!クロックダウンシステムで遂にカブトをクロックアップの世界から引きずり出した!まずは私の手でカブトをこの世から葬り去ってあげましょう!はぁああああ!」

 

 

根岸がネイティブへと変貌する。黒い甲殻に頭から生えた触覚、その姿はゴキブリというべき悍ましいものだった。

 

 

「ふん!はぁ!」

 

「ぐはっ!」

 

 

根岸いやゴキブリワームが両腕を乱暴に振り回し俺を殴りつける。拘束され動きに制限がかかり、クロックアップも封じられた状態では手も足も出ない。

 

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

 

「天道さん!」

 

 

俺は激しい痛みの中で千束とたきなの声を聞く。千束は涙を流し、たきなは歯を食いしばって身じろぎし自分を縛っているロープなんとか解こうとしていた。

 

 

「さぁ、トドメです!あの世で錦木総一に会って来るといい!すぐに妹さんも会わせてあげますよ!」

 

「くっ!根岸!」

 

「死ね、カブトぉおおおおおお!!!ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

「やめてぇええええええ!!!」

 

 

ゴキブリワームの両腕から黒い光が迸り触手が伸びてくる。その触手は俺の胸を貫こうと迫る。その時だった。

 

 

「おい、今誰か私を笑ったか?」

 

「ぐぁっ?!だ、誰だ!?」

 

 

ゴキブリワームが背中からハイキックを受けて吹き飛びクロックダウンシステム装置に衝突し火花をあげる。装置が故障したことによって体の自由が戻り、俺を拘束していたDAのリコリスたちを振り払って鳩尾に拳を入れて気絶させる。

 

 

「あ、あなたたちは!?」

 

 

たきながあまりの驚きに叫ぶ。俺たちの前に現れた人物は思いがけもしない奴らだった。

 

 

「はぁ、どうせ私なんて……」

 

「なぁ、姉貴。こいつらまだ光を求めてるよ。いいよなぁ。むかつくなぁ。ねぇ、やっちゃおうよ姉貴?」

 

「仕方ねぇな」

 

 

DAから追放された春川フキと乙女サクラが立っていた。2人とも何故かDAの制服を肩口から破り捨て妙にやさぐれていた。

 

 

「はぁ、変身……」

 

「変身……はぁ」

 

『HENSIN!』『チェンジキックホッパー』

『HENSIN!』『チェンジパンチホッパー』

 

 

2人が仮面ライダーキックホッパーとパンチホッパーに変身する。そして、かったるそうに歩き出すとゴキブリワームの触覚を掴みあげ連続で脇腹にキックを繰り出し、パンチホッパーが追撃で神速のストレートパンチを浴びせ始める。

 

 

「グハァアアアア!な、なぜ春川フキと乙女サクラがここに?!まさか!」

 

「ようやく気づいたか根岸。アイツらを呼んだのは私だ」

 

 

血だらけで倒れていた楠がニヤリと笑う。そして、自信を拘束していたロープを後ろポケットに入っていたナイフで切ると千束、たきなの順番で拘束を外していく。

 

 

「フキ?どういうこと?!」

 

「どうして彼女たちがここに?!」

 

「ネイティブを不審に思った私が秘密裏に作らせていたホッパータイプ。アイツらに渡して正解だったな」

 

「ぐおっ?!ま、まさか貴様最初から我々ネイティブを裏切るつもりで?!」

 

 

根岸が2人のホッパーに叩きのめされる。キック主体のキックホッパーとパンチ主体のパンチホッパー。ゴキブリワームは2人のコンビネーション攻撃になす術がなかった。

 

 

「私はもうDAだとかファーストだとかどうでもいい。ただ、私たちを笑ったやつは地獄に落ちてもらうぜ」

 

「ハハハ!姉貴、さっさと潰しちゃおうよこんなやつ!」

 

「そうだな、ライダージャンプ……」

 

「ライダージャンプ!」

 

『『ライダージャンプ!』』

 

「よ、よせ!来るなぁ!?」

 

 

ゴキブリワームが背中を無防備に晒し逃げていくも、2人の地獄姉妹からは逃げられなかった。

 

 

「ライダーキック!」「ライダーパンチ!」

 

『ライダーキック!』『ライダーパンチ!』

 

「うわぁああああああ!!」

 

 

ゴキブリワームの背中に2人の必殺技が命中し爆発を起こした。これが根岸の最後だった。

 

 

「帰るぞ、サクラ」

 

「待ってよ姉貴!」

 

 

春川フキと乙女サクラは一度もこちらを見ることなく去っていった。もはやアイツらは闇に堕ちた地獄の姉妹。俺に興味はないらしい。

 

 

「お兄ちゃん!」

 

「千束!」

 

 

俺は自分の意思で変身を解除して抱きついてきた千束を受け止める。

 

 

「お兄ちゃんごめんなさい!私のせいで独りにさせて!」

 

「いいんだ、千束。俺は後悔なんてしていない。兄にとって妹はかけがえのない宝だからな」

 

「千束……天道さん……ぐす」

 

「んん!感動の再会もいいがまずは事情を説明してもらおうか」

 

 

俺たち兄妹がひとしきり抱き合っていると、水を差す奴がいた。DAの司令楠だった。

 

 

「あぁ、それは俺が話そう」

 

「あれ?お兄ちゃん、クロックアップが故障してるから時間がないんじゃ?」

 

 

千束が涙目になって俺を見てくる。俺は安心させるように千束の方に手を置き彼女の瞳を見つめて話す。

 

 

「クロックダウンシステムの影響でようやくベルトのクロックアップシステムが正常に機能したんだ。もう俺はクロックアップの世界に囚われることはない」

 

「じゃあ、これからはお兄ちゃんとずっと一緒ってこと?」

 

「あぁ、これからは俺がずっとそばにいる。ずっとそばに」

 

「や、やったぁああああ!」

 

 

喜びを爆発させ万歳をする千束。それにつられて笑うたきな。ようやく何十年とかけたネイティブとの争いが終わった。

 

しかし、ワームの脅威は依然として残っている。俺たちはこれからも戦い続ける。

 

ついて来れるか?俺たちのスピードに。

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