時系列としてはアビドス編終了後のお話です
並行世界というのは、非常に便利な設定である
「これがあれば」
「こうしていれば」
「もし◯◯がいれば」
そんな都合のいい妄想を、最大限に引き立ててくれるものだ
本来あり得ない筈のことも、全てifとして昇華することができる
例えば、特命戦隊ゴーバスターズ×ブルーアーカイブのような異色のクロスオーバーでさえも、例外ではない
エンター
特命戦隊ゴーバスターズの幹部的ポジションであり、精神的にも肉体的にも、最も戦隊を追い詰めたとも言われているヴィランである*1
なんの因果か、この世界ではそのエンターが生み落とされた
中身が成り代わり転生者なのが不幸中の幸いだろう、世界支配RTAは回避できそうである
しかしこの転生者、あろうことかエンターのロールプレイを現在進行形で実行している。原作通りに進めるなんて思考は一切ない
そして当然のことながら、キヴォトス各所では彼の余波が広がっている
その一つがメタロイドだ
メタロイド
それは『特命戦隊ゴーバスターズ』にて登場する怪人の総称である
無機物に特殊なプログラム『メタウイルス』をインストールすることで誕生し、主にエンター(もしくはエスケイプ)によって作り出される
アビドスに、ゲヘナに、ミレニアムに、トリニティに、メタロイドは存在している
ブルアカ世界には登場するはずもなかった彼らは、一体どんな物語を見せてくれるのだろうか
これは、そんなエンターの残した爪痕を、追っていく物語である
(色々言ったけど、つまるところ作者の妄想です)
ゲヘナ某所
便利屋68の事務所にて
「うぅぅぅぅぅ〜〜〜……」
声の主は『陸八魔アル』キヴォトス一のアウトローを目指すポンコツかわいい女子生徒だ。
そんな彼女が机に突っ伏して頭を抱えている。なぜかと言うと──
「なんで依頼が来ないのよ!!」
そう、仕事が全く来ないのである。
と言うのも、彼女達がこの事務所を購入したのは、ちょうど一週間前の話である。
便利屋はカイザーPMCという大口の企業と雇用関係を結んでいた。「アビドス高校を制圧する」という任務自体は失敗していたのだが、代理人であるエンターの温情によってなんとか契約は維持できていた。
しかし、カイザーに卑劣な行いを目撃したアルが、自ら契約を破棄。
結果、収入源が断たれ元いた事務所を手放すことになったのだ。
それにより数週間ほど公園で野宿をする羽目になった彼女達だったが、地道に依頼をこなしていき、先日やっとの思いで新しい事務所を手に入れたのだ。
しかし今度は仕事0。踏んだり蹴ったりである。
「ま〜ま〜アルちゃん、元気だしなって〜!」
アルの幼馴染であり一番の理解者である『浅黄ムツキ』が声をかける。白い髪をポニーテールでまとめており、小悪魔のような表情を浮かべている。
「まぁ、ここには来たばっかりだしね。にしても一週間も依頼が来ないのは珍しいけど」
「わっ私はアル様とならどんな場所でもついていきます……!」
『鬼方カヨコ』と『伊草ハルカ』がそれぞれ口を開く。このような事態にも慣れているので、アルほど取り乱している様子ではなかった。
「そんなに依頼が欲しいなら、宣伝でもしてくればいいのに」
「ダメよ! アウトローは自分の会社の宣伝なんかしないわ! 本物には依頼は自然と舞い込んでくるものなのよ!!」
「じゃあ依頼が来ない私達は偽物ってことー?」
「それはそれよ! ここに本物に見合うだけの依頼がないだけよ!?」
「すごい都合のいい解釈してる……」
依頼が来なさすぎて、アルが意味不明な理論を叫んでいる。重症だ。それを見てムツキは爆笑している。
さすがにこれはまずいと思ったカヨコが、話題を変えようと口を開く。
「にしても本当にどうするの? この調子だと、今月の家賃も払えないよ」
「私達は待つだけよ。そうすれば直に依頼が……」
「説得力なーし!」
「わっ、分からないでしょ! もしかしたら今この瞬間に──」
こんこん
「ほら来た!!」
アルが目をキラキラさせながら扉の方へふりかえる。その一方で、ムツキとカヨコは警戒の色を強くしていた。
「タイミングが良すぎる。風紀委員会にはバレてない筈だし、カイザー関連……?」
「その可能性はあるかもね〜。まっ、今のカイザーにそんな余裕があるかは分からないけど」
「て、敵ですか!? 殺しますか!?」
「止めないでいいの?」
「いいんじゃない? そっちの方が面白そうだし♪」
ムツキは嬉々とした表情を浮かべ、カヨコは手を顔にあてて溜息を吐き。ハルカはオロオロしている。
いつもの便利屋である。
アルがそんな彼女たちの様子に気づくことはなく、意気込んでドアを開ける。
そこには見知った顔がいた。
「ようこそ、便利屋68へ──ってあれ?」
「こんにちは〜アルさん。ご無沙汰です〜」
そこにいたのは、かつてアビドス戦で共闘した扇風機のメタロイドファンロイドだった。
白いボディに水色の羽根を思わせるパーツ、そして名前通り体の真ん中には扇風機のファンがついた姿をしており、頭に伸びた一本角がある。
「あ〜! ファンちゃんじゃん! どうしたの?」
「お久しぶりです、ムツキさん! 今回はこちらを持ってきまして〜」
そう言ってファンロイドは地面にドスン! と、持っていた扇風機を置いた。ミレニアム製の最新式の物である。*2
「少し、こちらの扇風機を拝借させていただきます。merci。後で補填を出しますので」
「あぁ……確かにそんなこと言ってたね、エンターさん」
エンターはファンロイドを製作する際、便利屋の扇風機を用いていた。
ファンロイドはその代替を運んできたわけだ。
「そりゃお疲れ様だね〜。事務所変わっちゃったから見つけるの大変だったでしょ?」
「……そうだね、どっかの社長が契約破棄しちゃったからね」
視線がアルに集まる。本人は気まずそうに目を逸らす。
「あっそうだ! この扇風機売っちゃえば多少の足しにはなるんじゃない? なんか高そうだし」*3
実際、エンターの用意した扇風機は便利屋で使ったものよりも、はるかに高性能だ。
「うーん……」
しかし、アルはそれに対して渋い表情をする。
「人から貰ったものを、そんなにすぐ売るなんて……すごい失礼じゃない……?」
いい子すぎる……いい子すぎるぞ陸八幡アル……
アウトローを目指しているとは到底思えない!
「まあ、それもそうだね。とは言っても、何か他の対策があるわけじゃないけど」
「いや! いい方法がありますよ!」
カヨコの言葉に続くようにファンロイドが声を上げる。その口から発せられたのは、彼女たちの想像の範疇を超えているものだった。
「私が便利屋68に入ればいいんですよ〜!」
「「「「え」」」」
声が綺麗にそろう。
「なっ、ななな……」
「何ですって──ー!?!?」
アル社長が白目をむき出しにしながら叫ぶ。
例のBGMがありありと聞こえてくるのは、さすがのアルクオリティーであると言えるだろう。
「いやいや! ダメじゃないの?! そのことはちゃんとエンターさんには言ったの?!!」
「そーだよー、それにファンちゃん強いんだから、便利屋に入ります〜なんて言ったら、カイザーが黙っちゃいないよ」
ファンロイドの発言に対してアルとムツキがそれぞれの心情を口にした。便利屋に入るのは、現実的ではないと。
「Monsieurエンターには許可を取っていますから心配いりません。まぁ、Munsieurから命令が来れば、そちらを優先しないといけませんけどね〜」
「いやっでもカイザーは……」
カヨコが困惑した声をあげる。どうやら便利屋とファンロイドで、認識の齟齬があったらしい。
ファンロイドは「あ〜、なるほど〜」と言って手をポンと叩く。
「Monsieurエンターはカイザーの所属ではないんですよ〜。あくまでMonsiurは、カイザー理事の
「じゃあエンターさんがここに来たのも……」
「はい、ただのお手伝いだったんですよ〜」
実際は便利屋の神秘を回収したかっただけなのだが、それをここで言う必要はない。
「そ、そうだったんですね……私てっきりカイザーの人かと……すっすみません!!」
「だよねだよねー。まさか、あのカイザーの理事と友達なんて分かるわけないよー」
「なるほど。じゃあ、エンターさんが私たちの失敗を見逃すことができたのも頷けるかも」
そんな中、アルはというと──
(キヴォトス随一の大企業と関係を持ちながら、謎の力を持っているエンターさん……かっこいい……!!)
少年のように目をキラキラさせていた。
キヴォトス一のアウトローを目指すアルにとって、エンターというキャラは劇薬らしい。
「で、話を戻すけどファンロイドはいいの? 正直、うちは給料とかはほとんど出ないけど」
「私、動力源必要ないので問題無しですよ〜」
「会社としては問題有りですけどね〜」と、ファンロイドは付け加える。
アルは「ゔっ」と唸って胸を抑える。
「ちなみに、便利屋に入ったら私の役職ってどうなるんでしょう?」
「じゃあ『アルバイト』として入る? ファンちゃんってエンターさんの命令には絶対! なんでしょ?」
正直、便利屋の人数で役職なんて割り振っても大した意味は持たないのだが、まあそこを言うのは野暮ってやつだ。
アルも納得したように頷く。
「……ムツキ、いいの?」
カヨコが気づかれないようにこっそりと耳打ちする。なにせあのアルだ。騙される可能性も全然ある。
「別にいいんじゃなーい? もしファンちゃんがカイザーの刺客だとしても、手の内は分かってるわけだし、どうとでもなるでしょ♪」
「いや、それはあっちも──」
「それにー」
ムツキは付け加える。
「アルちゃんすっごく楽しそう!」
カヨコは再びアルの方を見た。
アルは必死にハルカを宥めていた。ハルカは未だ警戒心を解かず、ファンロイドに銃を突きつけている。
ファンロイドの真意はどうであれ、また一段と賑やかになったのは明白だった。
「……ずるいな。そんなこと言われたら、何も言えないじゃん」
「まーまー、なんとかなるって!」
カヨコはため息を漏らす。その顔には、笑みが見えていた。
「よし! じゃあ改めて!」
ハルカをなんとか宥め切ったアルが、パンと手を叩く。
「便利屋68へようこそ、ファンロイド」
これが、ファンロイドが便利屋へと加入した経緯である。
「ちなみにいい方法って? ファンロイドがうちに入るのと何か関係あるの?」
「あぁ〜!私が空を飛んで皆さんのことを叫べばいいんですよ〜」
「結局宣伝じゃないっ!!!」
本来ならこの話を第1話に持ってくるつもりだったんですが、作者がちんたらしてる間に本編が進み、デカグラマトン編に入ると知り
「あっこれレイチ登場するかもな」
と思い既に完成していた前作を急遽投稿することになりました。
グダグダですみません。