IFルート ~早期にリナ先輩と接触ルート~   作:oota

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今回は原作のメガバベル編と、同時期に進んでいたエレウシス本選の話を、本作の普夫くん視点で振り返ったような話です。

メガバベル編の1ヶ月の話を思いつくことができなかったので、多少の変化点は有れど、ほぼ原作様と同じ内容になりました。

なので今回は早く書けました。大きな変化を期待していた人には申し訳ありません。

そして改めて偉大な原作様に感謝を。


10話 塔が折れた後

 ――リナさん達とエレウシス地方予選大会の突破を祝う会を行ってから、早くも1ヶ月近くが過ぎた。

 

 エレウシス本選に進んだリナさん達とは携帯のメール等でちょくちょくやり取りをしていたが、むこうも色々なことがあったらしい。

 

 チンピラみたいな奴らに絡まれたり、天儀さんに「妾になれ!」とか言い出した馬鹿がいてファイトでボコしたり。

 試合で戦う筈だった相手がなぜか不参加になった為、不戦勝になったり……。

 とにかく色々あって大変だったようだが、それでも彼女たちはエレウシス本選を勝ち進んで行き、なんと決勝戦まで進んだ。

 

 世間ではまさかのダークホース出現か!?と話題になっているらしい。

 

 うちの高校でも一部では勝ち進んでいるLife部を熱狂的に応援している。

 それこそ応援の垂れ幕を作って掲げるくらいだ。

 地方予選大会の前は廃部にするつもりだったのに、凄い手のひら返しである。

 

 そこら辺の事を伝えたら、ジグさんからは苦笑するようなメールが届き。

 リナさんからは電話で愚痴を聞かされた。

 

 やっぱり思うところは有るよなぁ……。

 

 

 そしてもちろん悪いことだけではなく、いいこともあったらしく。

 

 エレウシスでは一般に流通しているカードテーマより、幾つか進んだテーマのカードパックが販売されているらしい。

 それで少し値段は張るものの、エレウシスで買ったパックから出たカードでリナさん達はデッキを強化できたとのこと。

 リナさんなんか、自分の灼熱龍士(サラマンドレイク)に相性がいいグロウアップドラゴンを引き当てたらしく。

 喜びのあまり、嬉しそうに笑顔の自分と<始まりの竜 レイド>のカードの自撮り写真をメールで送ってきた。

 

 自慢かよ。自慢だったわ。

 

 まぁ、彼女たちが予選大会を突破した努力の成果みたいなものだし、素直に祝福のメールを送っておいた。

 

 

 だけどやっぱ羨ましいなぁ。今からでもエレウシスに行ってカード買いに行けないかなぁ。

 そんなことをセト店長に聞いてみたが。

 

 「エレウシスカレッジは大会の時しか外部の人は入れないし、大会参加者以外は事前に入都市申請して抽選に受からないと入れないよ?」

 

 

 と、答えが返ってきた。悲しい。

 

 リナさん達が地方予選で戦っている時は、MeeKingでのあれこれが忙しく。

 エレウシスに行くつもりなんかなかったから、そこらへんは調べてなかったなぁ……。

 

 そういう訳でリナさんとジグさんには後でお金は払うので、カードのパックを幾つか買ってもらうように頼んだ。

 

 帰ってきた時、パックを開封するのが楽しみである。

 

 折角なら優勝のお祝いもしたいものだ。

 

 

  

 

 

 ――そして彼女達Life部がエレウシスで頑張っている間に、こちらでも色々な事があった。

 

 まず一番にあげるなら、恐らくこの世界がアニメとかなら主人公であろう少女。

 ユウキちゃんとの出会いだ。

 

 閉店時間近くに店にやって来てカードをくださいと言い、ストレージを漁り。

 なんとかデッキを作れる数のカードを購入した後、慌てて飛び出していった。

 

 そんな彼女を遅い時間帯だし危ないからと追いかけると、いかにも悪人でございといった風貌の怪しい奴とファイトをしていた時は驚いた。

 

 どう見ても『第1話!』……って感じだったなぁ。

 

 そんな彼女も今ではすっかりMeeKingの常連だ。

 ほぼ毎日やって来ては同じく常連の小学勢ズとファイトしたりしている。

 

 あと、狂戦士の謝肉祭(バーサーカーニバル)を使う傭兵を自分がファイトでぶちのめしてから、たまにファイトを挑まれたり、自分がファイトについて教える様になった。

 

 色んなデッキで相手をするのだが、新たな手口で翻弄するたびに素敵なリアクションをしてくれるので楽しい。 

 今の所は僕が勝ち越しているが、それでもミラーデッキだと四割近い勝率をキープをしているから、将来が楽しみな子である。

 

 だけどこの焼刃はまだ渡さん、渡さんぞ……!

 

 

 次に起きた大きな事を挙げるなら、【教授】と名乗る闇のファイターにセト店長が攫われたのを助け出して。

 その黒幕を追ったらなんとあの冥牙(メガ)バベル社にたどり着き、そこであの悪霊を連れた闇のファイターと出会って戦い、倒した。

 そしたら直後になんかビルが崩壊しだした事件。

 

 ……一日に起きたことだけど、改めて思い出すと密度高いな!?

 

 ビルが崩れ落ちたのは、多分あの時先に行かせたユウキちゃん達が事件の黒幕と戦い、その余波で崩壊したとかなんだろうな。

 アニメじゃ演出として結構あることだし。

 

 ……地下にいた人たちを助け出すのが間に合ってよかった。

 

 【教授】のことに関してはリナさん達に伝えていないが、メガバベル社の建物が崩壊したのは伝えたら、非常に驚いていたなぁ。

 

 エレウシスでもニュースになっていたようで、事件について多少は知っていたらしいが、実際に折れた摩天楼の写真を送ったら呆然とした反応が返ってきた。

 

 そりゃ、この街で暮らしていたら毎日どこかで視界に入るビルがぽっきり折れていたのだ。

 誰だって驚くよな。

 

 

 そして【教授】に関してだが……どうやら自分が思っていた以上にヤバい相手だったらしい。

 

 なんか凄まじい額の賞金がかかっていたし、生死問わずで一億円とか。

 こんなもん貰っても学生の自分じゃどうしようもないのでセト店長に受け取ってもらったが。

 

 それで、この間の道場での鍛錬の時間に「こんな奴と戦って倒したんですよ~」と師範に伝えたら、片足立ちしていたあの人がバランスを崩して倒れかけた。

 その後真顔で確認されたので、相手の風貌と使っていたカードを話したら心当たりがあったらしく、頭を押さえて呻き声を出すし。

 師範のそんな姿を見るのは初めてで、つい近くにいたマリカの方を見たら、なんかマリカも「あいやー……」と道場の天井を眺めていた。

 

 なんでさ。

 

 どうして奴と戦うことになったのか、真剣な表情になった師範に尋ねられたので誤魔化さず、セト店長が攫われたことも含めて全部正直に話した。

 

 そうしたら師範は複雑な表情を、苦虫を噛み潰したような、そして悔しさを飲み干すような……なんとも言えない顔を見せて。

 

 「そいつと戦ったことは誰にも話すな。おまえが考えたように、表向きにはセトの奴が倒した話で通せ……いいな?」

 

 と言われたので、大人しく従うことにした。

 というか師範、セト店長と知り合いだったんですね。

 

 ……多分、自分が倒したことが広まると色々面倒な事が起きるんだろうな。

 

 ついでに同じ日にあの悪霊を連れた奴を闇ファイトで倒した話もしたら、タフすぎんか?と今度は呆れられてしまった。

 

 解せぬ。

 

 しかし自分に呪いをかけた相手を倒したが、自分の呪いが解けた様子は今の所ない。 

 自分は共鳴率が無い方が都合が良いので問題はないのだが、一応気にはなるので師範に聞いた。

 

 恐らく、相手が別のカードの振りをしてたのと、アンティで呪いについて賭けていなかった……のが原因かもしれないとのこと。

 もし呪いを解くなら、相手の本体のカードとアンティを結んだ上で、本気の勝負で勝利し屈服させる必要があるらしい。

 

 ……自分は別に呪いがかかったままでもいいのだが、あの悪霊が他の誰かに迷惑をかけるのは気分が悪いので、機会があればしっかり始末したいものだ。

 

 

 

 

 

 最後に起きた出来事をあげるなら、それはやっぱりMeeKingの変化だろう。

 

 というのもセト店長が近所の所有者がいない土地を購入し、新しいガレージを立てることで、店のスペースの大部分を取っていたカードの在庫をそちらに移すことになったのだ。

 そうして空いたスペースでお店を広くするらしい。

 

 これまで店として使っていたスペースは最新レギュレーションの在庫販売と展示、そしてバトルスペースなどの交流場所に。

 

 大量の在庫を置いていたスペースを活用して、店部分を更に広くする。

 

 こんな風に色々変わることになったのは店長がセレブお嬢様(断定)なのもあるが、【教授】の賞金という臨時収入が入ったからだ。

 あれだけの大金があれば、お店の拡大資金には十分すぎる。

 

 けれど、臨時収入があったとはいえ店を広げる判断をしたのはセト店長だ。

 これまでよりもセト店長のやる気がでて嬉しい限りである。

 

 あと店を拡張しようと決めた理由の一つは、在庫のリストもかなり見当がつくようになったから……らしい。

 ちまちまデータ入力をしていた僕のこれまでの犠牲が報われるというものだ。残りのストレージの整理も三人がかりなら一年以内に終わるだろう、多分。

 

 ……そう、三人である。

 

 メガバベル日本支部本社ビルが崩れた翌日、バイトに応募してきた美少女のサレン=アンダーちゃんがMeeKingの店員に加わったのだ。

 女の子かぁ……、カードショップは力仕事の方がメインだから男手が増えて欲しかったんだけどなぁ!!

 

 ◆

 

 まぁ、この1ヶ月で起きた変化といえばこんなものだろう。

 

 こうしてみると色々あったなぁ……。

 そんなことを思いつつ、僕はMeeKingのレジに立っていた。

 

 視界の中ではユウキちゃんがいつもの小学生たちの一人とファイトをしている。

 表情を見るに、どうやらユウキちゃんが優勢のようだ。

 

 自分の後ろではセト店長がレアカードをスリーブに入れる作業をしている。

 先ほど見たチラ見したが、その手つきは優しくて、カードを大切に扱っているのが良くわかる。

 

 サレンちゃんは最新レギュレーションのカードパックを補充している。

 先ほど小学生たちが買って行った分なので、大した量じゃないからすぐ終わるだろう。

 

 店内には今バトルスペースを使用している常連たち以外には客もいない為、暇なので少しぼんやりしていると、懐から振動が。

 ……どうやら携帯にメールが来たようだ。

 

 「すいません店長、連絡が来たのでちょっと確認してきます。少しだけレジお願いしても良いですか?」

 

 「え? 分かった、代わるね」

 

 そうして店長がレジに来るのを待ってから、裏にある店員用スペースに移動して携帯を開き、受信したメールを確認する。

 

 送り主は、元副部長。

 件名はなし。……真面目な副部長らしくない。

 

 少し不審に思いつつメールを開く。

 

 そうして表示された本文を見て、僕の表情は驚きに染まった。

 

 

 『元部員が闇のカードを持って襲ってきた』

 

 

 

 ――少し前。

 

「へへっ……このカードがあれば、あいつらなんか余裕だぜ」

 

「あの茂札と戦うだけでこんな強いカードくれるなんて太っ腹だよなぁ!」

 

 

 どこかの裏路地で二人の男が話していた。その顔はどこか陰を持っており、表情からは歪んだ欲望が滲み出ている。

 

 

「……しかしお前も面倒なことを考えるよなぁ。さっさと茂札の奴をやっちまえばいいじゃねぇか」

 

 

 二人の内、片方の男がそう言う。

 

 

「簡単に終わらせたらつまらないだろ?折角の復讐なんだ、楽しくやった方が得だろ」

 

 もう片方の男はニヤニヤと笑いながら言葉を発する。

 

「だけどよう……裏切者の副部長を奴隷にして、茂札にぶつけるって少し遠回り過ぎないか?」

 

「いいや?俺たちを裏切った奴を奴隷にして、茂札にぶつければ一石二鳥だぜ!副部長の奴が負けても、続けて俺がファイトを仕掛ければ問題ないし」

 

 そう言う男は自分の作戦が成功すると信じ切っていた。

 

「まぁ良いけど……。お前の作戦の為に待ってやってるんだ、分かってるよな?」

 

「わかってるって。エレウシスから戻ってきたあのアマ達を奴隷にしたら、最初はお前に譲る。それでいいんだろ?」

 

「そこを守るなら問題ねぇよ!」

 

 男たちは下卑た笑みを隠そうともせず話している。

 

「……それじゃ行こうぜ?もうすぐあの堅物が予備校から出てくる時間だ」

 

「おう、お前がアイツとファイト。俺が周囲を警戒、見た奴は奴隷にする……そういう段取りだったよな?」

 

「そうだ、しっかり見張ってろよ?」

 

「任せとけって!」

 

 そう言うと男たちは歩き出し、裏路地を後にする。

 

 

 

 ――そして、そんな二人の会話を唯一、自分が渡した闇のカード越しに聞いていた人物は。

 

 

 (なんか遠回りな事考えてやがる……。人選ミスったか?)

 

 

 自分が選んだ手駒に、不安を抱いていた。




次回「元部員死す!」(生きてる)
そんな訳で登場した元部員二人組、原作での元副部長の役割となります。
元副部長から普夫君へメールが届いていますが、彼がどういう状況なのかは次回で。
時期としてはエレウシス決勝戦の少し前あたりになります。
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