なのでデッキは元から持っていたものに闇のカードをピン刺しで追加、色彩などを対応するものと入れ替えた程度の調整のみ。
そのため、当然ながら原作の元副部長よりもこの二人の強さは劣っています。
かわりに二人連続で襲わせる、それなら少しは勝ち目はあるだろうとディールくんちゃんは考えていました。
――夕日が落ち出した時間帯に、一人の男が裏路地を走っていた。
「クソが……ッ!あの馬鹿負けやがって!!」
そう吐き捨てながら走る男は、少し前に相方と話していた時の余裕はなく。
必死に足を動かして、逃げていた。
「なんでだ……!?そこら辺の奴を相手に試した時は勝てたんだぞ!?」
男が脳裏に浮かべるのは、闇のカードを貰ってすぐに試した時の光景。
裏路地に屯していた相手にファイトを仕掛け、闇のカードの力で共鳴を奪い、相手の引きを悪くさせ。
望んだようにカードを引き、強力なクリーチャーで蹂躙した、気持ちいい光景。
「あいつも共鳴は奪われてた筈……。なのにどうして!?」
男が思い出すのは先ほど見たファイトの光景。自分の相方が闇のカードを使い襲い掛かった様子。
突然襲い掛かった相方の行動に驚きこそしていたが、素早くファイトボードを展開し、デッキをセットした
男は気づかれないように、そして邪魔が入らないように物陰から見ていた為、二人の話す内容などは分からなかった。
しかし、裏切り者が最初にメインデッキから5枚のカードを引いた時の表情から、闇のカードはしっかりと共鳴を奪っているのは分かった。
けれどその目から光は失われず、共鳴が無いにも関わらずデッキは機能し、相方の闇のカードとも渡り合う。
闇のファイトのなかで精神と体にダメージを負うも、倒れることはなく。逆に相方が敗れた。
「冗談じゃねぇぞ……!」
曲がり角を何度も通り、目的地の近くにある廃屋に飛び込み、男はようやく足を止めた。
膝に手をつき、ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返す。
その体から流れる汗には、走ったせいで出た以外の物も混じっていた。
「不味い……、このままじゃ……」
必死に息を整えながら、この先どうするのか考える。
「俺の奴隷にした奴らに足止めさせたが、どれだけ持つ……?」
このままではより強いカードをもらうどころではない。
相手の命令に従うとアンティにした相方が敗れたのだ。裏切者に聞かれれば相方はぺらぺらと情報を話すだろう。
自分の事や、本来狙うように言われていた相手の事も。それを聞いたあの裏切者は警察に連絡する筈だ。
当然、自分に追手もかかるだろし、命令された目的を果たすのも難しくなる。
そう男は考えていた。
冷や汗を流す男が恐れているのは2つ。
1つは警察内にあるという、闇のファイターへの対処を行う特殊部隊。
機械の鎧に身を包み、闇ファイターと戦いを繰り広げる。まるでアニメに出てきそうな存在。
闇のカードの話よりはマイナーだが、それでも聞いたことがある噂話。
以前なら信じたりしない。だが男は噂の存在だった闇のカードを手に入れた。
なら、本当に警察の特殊部隊の方も存在するのでは……?
そして自分の事を捕えようと襲ってくるのではないか?
実際はこの程度の闇ファイターが起こした案件に、警察の特殊部隊は出てこない。
だが社会の裏で起きている戦いついて、無知な男は知らない。
2つ目に恐れているのは、自分たちに闇のカードを渡した
見た目に反して纏う雰囲気は暗く、恐ろしさを感じた。
あの少女が闇のカードをくれたのは善意ではないのは分かっている。
利用価値があるから渡した、強いカードをやるというのもやる気を引き出すためだ。
男は相方と違い、ちゃんと理解していた。
じゃあ、利用価値がなくなったら? 自分たちが邪魔になったら?
どんな目に合わされる?
言うことを全て聞く奴隷? その程度で済むはずがない……!!
男は自分の死を想像し、怯えた。
もっとも、
必死に男はどうすれば生き残れるのか考える。
「茂札だ……!あいつの言うとおりに茂札を倒すしかない……!!」
男は少女に命じられたことを思い出す。なぜ茂札の奴を狙うのかは聞かされていない。
だがそんなことは関係ない。茂札を倒し、自分の利用価値を認めてもらう。
それ以外に自分が生き残る道は無いと考えた。
「最初からあいつを襲っておけばよかった……!」
今となっては遅いが、相方の誘いに乗ったことに後悔する。
茂札の奴相手なら何度も部活で戦っていて、
ころころデッキを変える所が厄介だが、それでも
そして今ならより強力な闇のカードがあるのだ、負けるはずがない。
「茂札を倒して、あいつに助けてもらう……!それしかねぇ!!」
自分たち二人に闇のカードを気軽に渡したのだ。それなり以上に裏社会に生きる人間の筈。
それなら警察の目を潜り抜ける方法も知っているだろう。
男はそんな自分に都合がいいことを考え、それに縋りつく。
息を潜めながら、目的の相手が出てくる時間まで必死に廃屋に隠れるのだった。
(――これはもう駄目だな)
闇のカード越しに見ていた相手が、既に見切りを付けているとは思わずに。
元副部長からのメールを見た自分は、焦りながら即座に先輩に電話をかける。
呼び出し音が2回鳴った辺りで相手が出た。
「もしもし? 先輩無事ですか!?」
従業員スペースの外に話し声が漏れないよう抑えつつも、どうしても出てしった少しだけ大きな声で問いかける。
『おう、茂札か。 無事……って言えば無事ではあるんだが』
携帯越しに聞こえる先輩の声は、疲れているのがはっきりわかる声音なものの、発音などに異常は無かった。
……ひとまず闇のファイターから逃げている最中とかではないようだ。
「その言い方だと別になにか問題があるんですね?」
『おう、なんというか……うつろな表情のチンピラたちに囲まれてな?腕や脚に抱き着かれて動けないんだ』
……なんて?
闇のファイターは?というかなんでそんなことに?
「えー……、一旦チンピラの事は置いておきますね。襲ってきた元部員という闇ファイターは?」
『ああ、そいつならオレから少し離れたところにいる。ファイトで勝った後に俺が動くな!と言ったら動かなくなった』
……闇のファイトで勝った先輩の命令を聞いた。ということはアンティは相手の命令を聞くとかか?
「先輩、ファイトの前に相手はアンティとか言ってきましたか?」
『ああ、それっぽいことを言ってたな。……確か俺の命令を聞け、とかだった気がする』
「……当たりか。多分、襲ってきたやつは先輩が命じれば何でもすると思いますよ」
『なるほど……。負けたらアンティが自分に跳ね返ってくる訳か』
そう言うと先輩はため息を吐く。……元部員だと言っていた以上、先輩がしっかり覚えている相手に悪意を持って襲われたんだ。
闇のファイトでの精神的ダメージもあるけど、それ以外にも負担は溜まっているだろう。
そして先輩と無事を確認したことで、僕も落ち着きを取り戻し、やるべきことを考えていく。
「ところで先輩、警察とかに連絡はしましたか?」
『……警察にはしていない。マリカちゃんの方にはファイトが終わったあとにメールを送った』
「どんな内容を?」
『闇のファイターを撃退したのと、相手の手下に組み付かれて身動きできないから救助して欲しいって、現在地の情報を」
「それならもうマリカ達は動いてるはずです。……チンピラ達は組み付くだけで殴ってきたり、首を絞めたりして来ていないんですね?」
『ああ、あくまでオレをここから動かさないようにしている。命令されたとおりに』
……命令されたとおりに?
『それでだが茂札、悪いニュースがある。
は?
「先輩!?そういう大事なことは先に言ってくださいよ!」
『まぁ待てよ、すぐに言わなかったのは訳が会ってな。……闇のファイターの片割れなんだが、俺がファイトで勝ったのを見て逃げ出した』
「はい?」
『おまけにだ、近くに控えさせていた奴ら。……多分アンティで命令を聞くようにしたた奴にオレの足止めを命じてまでだ」
「…………あー」
『つまり、闇のファイターだけどクソ雑魚だった。……まぁ、デッキの構築調整したり、お前とのファイトで腕を磨いてなきゃ負けてただろうな』
「なるほど、分かりました。でも逃げ出したのは厄介ですね……」
相方が先輩に負けたのをみて逃げ出すあたり、酷くレベルの低い奴なのだろうが、闇のファイターである。
どこかで被害を出す前にさっさととっつ構えてしまいたい。
そう考えていると携帯から先輩の声がまた聞こえてくる。
『実は良いニュースもあってな? 今回の二人組の目的なんだが……茂札、どうやらお前らしい』
「それは……確かに、良いニュースですね」
その後、先輩と幾つか情報交換をして、スタッフ用スペースから出る。
レジにいたセト店長には、連絡していた時間が少々長くなってしまったことを謝罪をする。
セト店長は特に気にせず許してくれたが、何かあったの?と聞かれてしまい。
うまい言い訳を考えるのに苦労した。
そしてそのままMeeKingでの仕事を続け。
閉店作業も終わり、タイムカードを切る。
「それじゃあ、店長お疲れ様でしたー!」
「うん、お疲れ様!」
「おつかれ」
セト店長とサレンちゃんに挨拶をし、店を出る。
そして普段とは違い、人通りが少ない方へ進んで行く。
やがて近所の公園にたどり着く。この時間帯だと人気は無く、やって来るもの滅多にいない。
だからこそ。
「アンティ! 負けたらオレの言うことに従え!!」
物陰から誰かが叫びながら、飛び出してくる。
だけど、その行動は予想通りで。
「……分かりやすすぎるんだよッ!!」
そう言いながらファイトボードを展開し、金属製のデッキケースから取りだしたデッキをセットした。
――普夫と闇のファイターの戦いが始まる少し前あたり。
「ぐぎぎぎぎぃ……!!」
必死に力を入れて四肢に組み付いている、オレをここから動かさないようにするチンピラ達を引きはがそうとする。
それには先ほどオレが倒した
アンティでオレの言うことを聞くのなら、引きはがすのに協力させられるのではないか?
その考えは当たった。
だがオレたちの努力は身を結ばず、オレの体にはチンピラが組み付いたままだった。
「駄目かぁ……」
オレの足止めを命じられたチンピラ達の方が体格が良く、力も強かったようで、複数人で引きはがそうとしても力負けしてしまう。
その結果、オレの体に組み付くチンピラ、そのチンピラを引きはがそうとするチンピラ……と、非常に密集して暑苦しい状態となっていた。
もう引き剥がさせるのは諦めて、なんかジュースでも買ってこさせようかな……。
そう考えていると、遠くから何かの音が近づくいてくる。
段々と俺たちがいる裏路地に近づいてくるにつれ、音の正体に気づく。車のエンジン音だ。
やがてエンジン音を響かせながら近づいてきた車が、俺たちのいる裏路地の入口辺りで止まる。
その車は過去に何度か目にしたことのある、気雲流道場が所有しているワゴン車だった。
停車するとほぼ同時に車のドアが開き、中からマリカちゃんと数回お世話になった覚えのある道場の弟子の人が飛び出してきた。
運転席の人だけは車内で待機して、いつでも車を出せるように備えている。
いつ襲われてもいいように臨戦態勢を取っていた二人だが、オレの様子を目にすると動きが固まった。
といってもその隙はほんの一瞬で、二人は警戒は維持したままオレの方に近づいてくる。
「先輩さん、それどういう状況~?」
「闇ファイターに足止めを命じられた奴らに組み付かれたから、アンティで命令権を分捕れた奴らで引きはがそうとしたらこうなった」
「えっと……ぶん殴っていいのはどいつだい?」
マリカちゃんからの質問に答えると、弟子の人がどいつを殴ればいいのか尋ねてくる。
確かに彼ら視点だとどれが敵の配下なのか分からないな……。
あっ、こうすればいいか。
「お前ら、もういい。手を放して壁際に立ってろ……よし、オレの命令に従った奴以外はまだ敵に操られてる人です」
「わかった、それじゃあ……!」
「ぇーい!!」
素早く踏み込んできた二人の打撃により、オレに組み付いてたチンピラ達は一瞬で気絶し崩れ落ちる。
そのまま手慣れた様子で倒れた奴らの上着を脱がし、手足を縛りあげていく。
「ありがとうございました。……ところで、なんで縛り上げているんですか?」
助けてもらった事にお礼を言いつつも、気になったことを尋ねる。
「ああ、こっちの奴らを支配しているカスはまだ負けていないんだろう?その間は命令を実行しようとするから、動けないように……ね?」
「な、なるほど……」
流れる様に返事が返ってきた。妙に手慣れているあたり、思ってた以上に闇ファイター関連の事件って起きているんじゃ……。
よし!考えるのは一旦やめとこう。
「それじゃぁ……先輩さんを襲った闇ファイターって、どいつ?」
「……そこのそいつだ。闇のカードは左手に持ってるデッキに入ったままだ。触るのが怖かったからデッキをボードに近づけるなって命令した」
マリカ達に壁際に立たせた連中の一人に、指を向けることで伝える。
「良い判断だったと思うよぉ……あれぇ?
「自分もありますね……」
「多分知ってる顔ですよ。……ジグ部長を人質に取られた時、道場の人たちに殴り倒された部員の一人です」
「……ああ、あの時の」
「ふぅーん……」
思い出したのだろう、マリカちゃんと弟子さんが纏う雰囲気がさらに鋭くなった。
二人の視線にされされた闇ファイターは冷や汗をだらだらと流している。
「それじゃあ……」
「あっ……!?」
素早く闇ファイターに近づいたマリカちゃんが、左手に持っていたデッキを奪い取り、その中にあった闇のカードを抜き取る。
「これだねぇ。えい!」
「あああっ!?」
闇のカードをビリビリとマリカちゃんが破り捨てると、闇のファイターは情けのない悲鳴を上げた。
カードだったものは砂のようになると、風に吹かれて消えていった。
……あんな風に崩れるなんて、本当に普通のカードじゃないんだな。
「じゃ、あとは自分がこいつを見張っておきますね」
「お願ぃー」
そう言い、弟子さんは拳をぽきぽき鳴らしながら闇ファイターの前に出て見張りだす。
その姿を横眼にマリカちゃんがこちらに向かってくる。
「無事でよかったぁ。だけど先輩さん、良く勝てたねぇ?」
「ああ……、どうやらあいつはオレのデッキが昔のままだと思ってたようでな」
そう答えながら思い出すのは茂札が退部する前、放課後に集まってファイトしていた時期の事。
ファイトをしては感想戦をし、こういうカードがオススメだとか、相手の行動への対処法の知識を増やしていた、楽しい時間。
「マリカちゃん達とファイトする中で、デッキのカードを色々交換してたろ?植物戦鬼のクリーチャーや、汎用ルーターを足したりとか」
「そういえばしてたねぇ。……じゃあこいつはぁ、前の妖鬼管弦楽団デッキだと思ってたんだぁ」
「ああ、それでこいつが持ってた闇のカード……フランシス?だったかな。こっちの場に設置したカードか、手札を捨てないとどんどんライフロスさせてくる効果を持ってたんだが……」
思い出すのは先ほどの闇のファイト。一見普通のデッキに一枚だけ、黒い絵の具が混じったかのように入っていた闇のカード。
その効果で自分のアドを捨てなければどんどんライフが失われていく。しかも攻撃するたびに効果の発動回数が増加していく。
何回か発動したその効果で発生した、ライフロスした時の痛みは今も残っている気がする。
ただ、幸運なことに……。
「シー・アーの効果で墓地からクリーチャーを蘇生できるのが活きた、追加してたルーターで運よく手札に来てくれてな……。前のターンで捨てたキーラQを蘇生して、持ってた魔法で速攻付けて殴り倒した」
「……幸運だったねぇ」
「ああ……。蘇生効果があるカードを持ってなくて助かった。それでも何度かライフロスを食らう羽目になったが……痛くて泣きそうになったよ」
幸いな事に、痛みは感じたものの実際に傷はできていなくてよかった。
「それで……これからどうすれば良いかな?この操られてた人達なんだけど……」
「うーん……先輩さんが解放するって言えば、自由になると思うよ?」
「……じゃあ、悪いことしてた人は自首すれば解放。そうじゃない人は家に帰ったら解放する」
オレがそう言うと、うつろな表情で立っていた人たちがぞろぞろと動き出す。
彼らが裏路地から出ていくと、残ったのは縛られた状態の人と闇のファイターだけになる。
「残ったこいつらは?」
「車に乗っけてー、フツ兄の所まで連れて行こっか」
「……縛った状態で?」
「こればっかりはねぇ」
「あ、自分も運びますね」
そうして俺たちは、縛られた人達と闇ファイターを車に乗せて、茂札が事前に伝えてきた相手の襲撃予想地点へ向かう。
誰も茂札が負けることは考えていなかった。
原作での悪落ち前の元副部長の妖鬼管弦楽団はアグロ使用でしたが。
本作では普夫君たちとファイトする中で幾つかカードを交換。ゴブリンたちも加え、汎用ルーターや全体除去、付与魔法など色々追加。
オマケに普夫君と色んなデッキで遊んだので経験値が増えてます。
闇のファイトでは、相手が一般的なモブ部員のデッキにフランシスをピン差ししただけなのもあり。
ライフロスを数回受けてしまうものの、フランシスを撃破。蘇生カードもなく、そのまま殴り勝って勝利となりました。
普夫君は元副部長改め先輩から闇のファイターの目的と実力を聞き、退勤時間まで近いのもあって、闇のファイター釣り出すことを決意しました。