IFルート ~早期にリナ先輩と接触ルート~   作:oota

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前話から1ヶ月以上経ってしまいごめんなさい。
色々あったのと、展開が中々思いつかず遅れてしまいました。
続きもできるだけ早く出せる様に頑張ります。

話は変わりますが本家様の劇場版、凄かったですね……。自分はとても楽しく読めて面白かったです。
そして原作では漫画版2の時期の話に突入してて、リナ先輩たち推しの私としてはとても嬉しい。


12話 清掃完了

 物陰から急に飛び出してきて、不意打ちでの闇のカードの使用。

 それに対し俺はほぼ即座に反応しバトルボードを起動し、デッキをセットした

 いつものルーティーンをやる時間が無ないが、まぁ仕方ない。

 

「んなっ!?」

 

 そしてお粗末な襲撃を仕掛けた男は、即座に俺が対応したことに動揺し動きを止めていた。

 

「茂札、お前なんで襲撃されるなんてわかった!? しかもファイトの準備までしてるって……どういう事だよ!!」

 

 訳が分からないと大きな声で喚く馬鹿に対し、俺のデッキのオートシャッフルの音が鳴り響く。

 シャッフルが終わるまでの時間で、男の疑問に答えてやる。

 

「襲撃が来ると分かってたら、罠を用意するに決まっているだろう?態々普段とは違う道を通って、襲いやすい場所に来てやったんだ。予想通りに出てきてくれてありがとよ」

 

「はぁ!?なんで襲撃が来るって……!まさかお前、あの野郎と繋がってたのか!?」

 

 馬鹿でも解るように説明してやったが、今度は俺と先輩が連絡を取っていた事に驚いている。

 

「繋がってるも何も、部活の先輩と連絡先を交換してるのは別によくあることだろう?互いに部活を辞めた後でも交流してただけさ。もっとも、お前にはそんな相手はいなかったようだけどな」

 

「っ!糞が……!もう泣いて謝っても許してやらねぇぞ!!」

 

 そう言うと怒りで顔を赤くした相手がようやくボードを展開し、デッキをセットする。

 

「ようやくか。遅延行為は止めてもらっていいですかー?」

 

「……!お前は絶対に叩きのめしてやる……!!」

 

 煽りを入れ、更に冷静さを奪う。先輩が勝ったのを見て逃げ出した以上、圧倒的に強くはない。

 だが闇のファイターと言うだけで、一般人にとっての死神になる。

 

「それはこちらのセリフだ、この馬鹿が。……一度目は退学で済んだが、これで二度目だ。

 おまけに闇のカードに手を出した以上、守ってくれる奴はいない。……覚悟はいいか?」

 

「うるせぇ!負けるのはお前だ!!」

 

 そう相手が吠えると同時に相手のオートシャッフルが終わり、ファイトの準備が整った。

 互いに目線を相手の顔に向け、そしてデッキに手を伸ばす。

 

「「ファイト!」」

 

 そう宣言すると同時にメインデッキから5枚カードを引き抜いた。

 

 

◆

 

 互いに引き抜いた手札を確認する。自分の手札は……まぁ、悪くはない。少なくともマリガンは不要だ。

 それに対し相手の様子は……少し苛立っている?

 

「……!?引きが悪い……?」

 

「…………」

 

 そんな俺達に合わせるようなタイミングでファイトボードに先行を示す光が灯る。

 先行は……相手か。

 

「ッ!……よし、オレの先行だ!ライフを2枚ドロー!!」

 

 先ほど見せた様子をごまかす様に、相手は勢いよくデッキからカードを引き抜く。

 引いたカードを見た相手はすぐさま次の行動に移った。

 

「色彩をセット!そして1コストで<受粉ゴブリン>を召喚」

 

 出てくるのはゴブリンといえばコイツともいえる存在の受粉ゴブリン(コスト加速)。

 確かこの人は部活にいた時も植物戦鬼デッキを使っていた筈。

 手に入れた闇のカードと相性が良かったのか、それとも新たにデッキを組む時間や資金が無かったのか。

 ……まだ相手のデッキタイプを絞るには情報が足りなさすぎる。

 

「これでターンエンド!」

 

 相手のデッキについて考えている内にこちらにターンが回ってくる。

 

「俺のターン。レディ・アップキープ・ドローフェイズ、ライフカードを2枚ドロー、メインカードを1枚ドロー」

 

 デッキから引き抜いたカード達を見る。……色彩は引けたが、初手でこれ(魔石)が来るか。

 

「色彩をセット。……ターンエンド」

 

「へっ!……相変わらず手札事故起こしてるみたいだなぁ?」

 

「さてな?お前のターンだ」

 

「チッ……オレのターン、ドロー!」

 

 苛立ちを隠さずに相手はデッキからカードを引き抜く。

 

「……クソデッキが!もっとマシなカードを出せ!」

 

 引いたカードをを見て悪態を放つ、闇のカードを持っているのに上手く回っていない?

 だが、それ以上に気に障ることがあった。

 

「……おい」

 

「あ゛ぁ!?」

 

「良い手札が来ないのをデッキの所為にしてるみたいだが、そ(・)の(・)デ(・)ッ(・)キ(・)を(・)組(・)ん(・)だ(・)の(・)は(・)お(・)前(・)だ(・)ろ(・)?自分で自分を馬鹿にして楽しいか?」

 

「……殺す!!」

 

 そう言うと相手はボードにカードを乱暴にセットする。

 

「色彩をセット!受粉ゴブリンの効果で1コスト生成、色彩と合わせて2コストで<放火範ゴブリン>を召喚!お前の色彩を破壊する!!」

 

「それに合わせて瞬間魔法<考選>を発動!デッキトップを1枚捲り、中身を確認する」

 

「妨害じゃない……けっ!それで何ができる?」

 

「札を引ける……キープだ、デッキトップをドロー。そしてお前の<放火範ゴブリン>の効果が発動する」

 

 場に現れたゴブリンが火を放ち、こちらのステイ状態となった色彩を破壊する。妨害できる札は無い、だが破壊される前に札を補充できた。

 今引いた<植物戦鬼の故郷>を手札の一番左にする。コストは無いが、歯車(ローター)は揃ってきた。

 

「ターンエンドだ!妨害もない、出せるクリーチャーもない、おまけに色彩も無くなって大変だな?」

 

「俺のターン。レディ・アップキープ・ドローフェイズ、メイン・ライフから1枚ドロー」

 

 相手の言葉に答えることなく動く。……うん、悪くない。

 

「チッ……!余裕のつもりか!?」

 

「まだ勝負が決まる段階じゃないからな。色彩をセット、1コストで秘宝<増殖の仕組み>をプレイ。通りますか」

 

「……ふはっ!低コストのクリーチャーは引けなかったみたいだな?通るぜ」

 

「では場に<増殖の仕組み>をセット、ターンエンド」

 

「クリーチャーがいなきゃ意味ない秘宝をセットするなんて、笑えるぜ!」

 

 まぁ今の状態だと無意味に見えるだろうな。

 場の状態はこちらが色彩1、秘宝が1つ。相手は色彩が2、受粉ゴブリンと放火範ゴブリン。

 まだ序盤だが、むこう側が有利。オマケに闇のカードもまだ出ていない。

 

 ……さぁどう動く?

 

「俺のターン、ドロー!……やっと来たか!!」

 

 あの反応、どうやら引いたみたいだな。

 

「色彩をセット!3コストで呼ぶ、来い!」

 

「……!」

 

 

 地面から音がする。ゴリゴリ、バキボキと、何かが固いものを咀嚼するような。

 その音が大きくなり――怪物が地面から姿を現した。

 

「<貪り山のワーム>!!」

 

 出てきたのは蛇のような長い体を持ち、鱗を持った怪物。

 地面から飛び出してきた頭には大きな口があり、挟んでいた岩を鋭い牙と頑丈な顎で噛み砕き、飲み干す。

 その眼ははぎょろりとうごめき、次の獲物を求めてこちらを見つめる。

 

「説明してやる!貪り山のワームはパワー6、タフネス6の【貫通】持ちクリーチャーだ。もっとも今のお前には関係ないか!」

 

 ふははと高笑いしながら相手は楽しそうに話す。

 

「3コストでその性能なら、デメリットもあるんだろう?」

 

「ああ、あるとも!!貪り山のワームが場に出た時、どのファイターも色彩を1つ生贄に捧げてもいい!そうしたらワームは俺のデッキトップに戻る!」

 

 そう言うと相手は愉快そうに笑う。確かに相手が笑うのも理解できる。

 この時代だとかなり優良なクリーチャーだ、低コストで高パワー。デメリットも相手のリソース削りになる。 

 

「さぁどうする?たった1つの色彩を生贄にするか、ワームに貪られるか!選びな!!」

 

 その言葉に対し。

 

「通す」

 

 迷うことなく答える。

 

「……あ゛?」

 

 相手は俺が言ったことが理解できないのか、ポカンと口をあけて間抜けな表情を見せる。

 

「通すって言ったんだよ。遅延行為は止めてもらえます?」

 

 俺の言葉が気に入らなかったのか、相手の表情はみるみる赤くなる。

 

 

「……ふざけやがって、後悔するんじゃねえぞ!貪り山のワームを召喚。そして受粉ゴブリンと放火範ゴブリンで攻撃!!」

 

「ライフで受ける」

 

 ドタドタと走ってきたゴブリンたちがオレを殴る。たった2点のダメージ。

 されどこのファイトで生じた初めてのダメージ。

 

 衝撃が体を通り、痛みを感じる。ほんの僅かに体がのけ反るが、すぐさま体勢を戻す。

 体の様子を素早く確認するが傷はない。……感じた痛みも教(・)授(・)やあのク(・)ソ(・)ガ(・)キ(・)の時よりも弱かった。

 これならば何も問題ない。

 

「ダメージチェック」

 

 ゴブリンたちの攻撃で飛び出たライフデッキのカードを確認する、色彩、色彩。

 

「色彩を2枚セット」

 

「ターンエンドだ!覚悟しろよ……」

 

 相手は楽しそうに言う。3ターン目という序盤でパワー/タフネス共に6の強力なクリーチャーを召喚できたのだ。

 そりゃ楽しいだろう。

 もっとも、そいつでコレを止められるか?

 

「俺のターン、レディ・アップキープ・ドローフェイズ、メイン・ライフから1枚ドロー……」

 

 引いたカードを確認する、<薪の剣火>……揃(・)っ(・)た(・)。

 

 

「魔石<凍れる海の底>をセット、これは場に出た時に凍結カウンターが10個上に乗る。これはアップキープフェイズ時に1つ取り除く。」

 

「はっ!なんだその魔石は?色彩をセットしないなんてずいぶん余裕だな?」

 

 俺を馬鹿にするように相手は笑う。実際、俺の残りライフは14。

 <貪り山のワーム>と他のクリーチャーに攻撃されればあと2ターンで倒される。

 だがその前に倒せば問題ない。

 

「秘宝<植物戦鬼の故郷>をプレイ、通りますか?」

 

 ど(・)う(・)だ(・)?(・)

 

「そいつは確か……。ハッ!壁を用意するつもりか?悪あがきするにしてもどこまで持つかな?」

 

 相手は一瞬悩んだが、鼻で笑い通した。

 植物戦鬼使いなだけはあり、このカードについてもよく理解しているようだ。

 これだけでは今の状況をひっくり返せない、だから通した。

 

「では場に<植物戦鬼の故郷>をセット。続けて秘宝<薪の剣火>をプレイ、通りますか?」

 

「ちょっと待て……、そいつの効果は?」

 

 続けて秘宝を出したことで何か感づいたのか、効果を聞いてくる。

 うん、良い。

 

「1コストで起動し、クリーチャーを1体生贄に捧げることで2コストを得る」

 

 さぁ、どうする?

 

「……まぁ構わないか、通す」

 

 ―(・)―(・)通(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。(・)

 

「では場にセット。……おい」

 

「なんだ?」

 

「復号はもう完了してしまったぞ。……妨害は握ってるか?」

 

「はぁ?」

 

 喉から出た声は、酷く乾いていた。

 

「1コストと手札の<ウタの化身>を捨てて、秘宝<植物戦鬼の故郷>を起動。1/1のゴブリントークンを1体生成する。そしてウタの化身がデッキに戻る」

 

 ポンッっとゴブリントークンが現れる。

 

「そんな壁1つでどうすr「秘宝<薪の剣火>を起動。ゴブリントークンを薪に、2コスト得る」

 

 ゴブリントークンが親指をあげながら火に飛び込んでいく。

 

「<増殖の仕組み>の効果により、コントロールしているクリーチャーが死亡したためカードを1枚ドローする」

 

 メインデッキからドロー、引いたのは<テスタロッサの墓守>。

 

「……?」

 

 相手は怪訝な表情を浮かべる。

 気にせず処理を続けていく。

 

「1コスト支払い、カードを一枚捨てて<植物戦鬼の故郷>を起動。1/1のゴブリントークンを1体生成する」

 

 再びゴブリントークンが現れる。

 

「秘宝<薪の剣火>を起動。ゴブリントークンを薪に、2コスト得る」

 

 そしてゴブリンが燃える。

 

「そして、カードを1枚引く」

 

「は?」

 

「この手順を繰り返します。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

「……へ?」

 

 理解できないのか、相手はただこちらの行動を見ている。

 相手が動かないまま、処理を続けていく。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 デッキからドローし、墓地に送り、ゴブリンが燃え、またデッキからドローをする。

 それが繰り返されていく。

 最初に使用したコスト分の色彩以外はレディのまま。

 使えるコストが増えていく。

 

「手順を省略する――これをコストが20になるまで繰り返す」

 

「ま、待て!」

 

 俺がしていることに気づいたのか、ようやく相手が言葉を発する。

 

「じゃあ……勝負だ!(コール)」

 

「!!!」

 

 俺の発した言葉に、訳が分からないといった表情をしていた相手も流石に身構える。

 

「――20コスト支払い、魔石<凍れる海の底>の凍結カウンター10個を撤去する」

 

「何ッ!?」

 

「カウンターの乗っていない<凍れる海の底>を生贄に捧げることにより、眠れる支配者が氷河期からの冬眠から目覚める」

 

 地面が音を立ててひび割れる。

 相手の場にいる<貪り山のワーム>が怯えるような動き見せた……様な気がした。

 ひび割れが広がり――巨大な多腕の化け物が現れた。

 その身についていた氷が剥がれ落ち、蒸発していく。

 

「10/10の貫通――そして、【双撃】を持つ<ク・ウルウ>という名前を持つアビス・クリーチャー・トークンを生成する!」

 

 目覚めた支配者は、体をほぐす様にその身を捩る。

 

「失神したのならば大成功(クリティカル)、悪夢で魘されて、わけのわからないままに凍りつけ――【残酷劇場(グランギニョル)】」

 

「っ!だ、だけど召喚酔いが……」

 

「手札から1コストで付与魔法<燃え盛る突進>を発動、対象は<ク・ウルウ>。対象のパワーを+3し、【速攻】を与える」

 

 <ク・ウルウ>がその身に炎を纏う。……なんか炎の色が蒼いけど、なんで?

 まぁいいか。

 

「――ひっ!?」

 

 相手は怯えた声を発する。<貪り山のワーム>ではブロックしても【貫通】でダメージが通る。

 そして【双撃】持ちなので追撃でライフが消し飛び、自分が負けるのを理解したのだろう。

 

 なのに何もしないということは、打ち消しは握っていなかったか。

 ……あまり期待はしていなかったが、想像以上に実力が低い。

 教授やあのクソガキならまだ粘っていた筈だ。

 

「バトルフェイズ、<ク・ウルウ>で攻撃」

 

 俺の言葉により<ク・ウルウ>がその複数の腕を広げ、振るう。

 上下左右、様々な方向から攻撃が迫る。

 

「む、<貪り山のワーム>でブロック!!」

 

 少しでも受けるダメージを減らすために、相手は唯一動ける<貪り山のワーム>で攻撃をブロックした。

 自分より圧倒的強者相手に、ワームが叫び声を出しながら尾を振るい、牙で噛みつこうとする。

 そんな抵抗をあざ笑うかのように腕がワームを叩き潰し、続く攻撃が相手にぶつかる。

 

「ぎゃあああ!?」

 

 叫び声をあげながらダメージの衝撃で転がっていく。

 

「ゲームセット。――悪夢の中で凍りつけ」

 

 

◆

 

 

 「あ……。うぅ……」

 

 

 倒れた元部員がうめき声をあげるのを見つつ、警戒しながら近づいていく。

 豪快に吹き飛び転んでいたが、体の様子を見ると多少のかすり傷以外に怪我はしていない。

 

 元部員を視界に入れつつ、警戒を続けていると車のエンジン音が近づいてくる。

 そちらの方を見ると、公園に向かって道場が所有しているワゴン車がやって来た。

 

 公園の入り口近くに車が停まると、中からマリカと兄弟子の一人が出てきた。

 その後ろには先輩が座席に座っているのが見える。

 先輩はシートに身を預けながらも、こちらを見て手を振り大丈夫だとアピールする。

 

 その先輩の傍には上着で腕や脚を拘束され、うつろな表情を浮かべた人たちが積まれていた。

 

 ……見なかったことにしたいなぁ。でも無理だよなぁ……。

 

「フツ兄ぃー、仕留めた?」

 

「ああ、ファイトに勝った所だよ。そっちは?」

 

「先輩さんを襲った奴が操っていた人たちは解放して。普夫さんが戦った奴に操られている人たちを拘束して運んできました」

 

 そう言ってマリカと兄弟子がこちらに近づいてくる。

 ごく自然な歩き方だが、二人とも何かあればすぐさま行動を起こせる。鍛錬で身に着けた歩き方だった。

 

「フツ兄ぃの相手、アンティはなんだったー?」

 

「『負(・)け(・)た(・)ら(・)オ(・)レ(・)の(・)言(・)う(・)こ(・)と(・)に(・)従(・)え(・)』だった」

 

「じゃあ、あの人たちにも命令出せますね。これ以上車に載せるのは流石にキツいんで、解放してもらえますか?」

 

「解った。……ところで、先輩の時はどう言って解放したの?」

 

「家に帰ったら解放とぉ、悪さしてた奴は自首したらそこで解放だったよ」

 

「じゃあそれで。……命令する前に拘束解いても大丈夫かな?」

 

「ここに来る途中まで命令に従おうと動いてましたが、少し前に止まったんで。もう命令権は上書きされてて、大丈夫かと」

 

「じゃぁ車から降ろそっかぁ」

 

 そう話すと俺達三人は車に積まれた人たちを下ろし、拘束を解くと、操られた人たちを解放(リリース)した。

 若干怪しい足取りだが、解放された彼らは別々の方向へ歩いて行った。

 

 ……そして残ったのは二人。闇のカードを手に入れて襲ってきた元部員達だ。

 一人は拘束されて車の中。もう一人は意識を取り戻したが、まだ公園の地面に座り込んだまま。

 

「……それが例の?」

 

「そうです」

 

 こちらを見て問いかける兄弟子、その視線の先には俺が手に持つ<貪り山のワーム>のカード。

 持っているだけでデッキに入れたくなる、使いたくなるような気持ちが沸きあがって来る。

 だが気合で無視する。

 

「でフツ兄ぃ……この二人どうする?」

 

「前科もありますし……埋めます?」

 

「「ひっ!!」」

 

 兄弟子が出した言葉におびえて声を出す二人。……よく見たら兄弟子がどこからか獲物を出していた。

 

「ま、待って!自首、自首するから!!」

 

「知らないんですか?闇のカードを使った奴は裁判で人権を認められないし……正当防衛で殺(や)ってしまっても罪にならないんですよ」

 

「「えっ」」

 

 驚きの声を上げたのは俺と先輩だった。

 

「……マジ?」

 

「マジです」

 

「それだけ危険だしぃ、已む無しって国が認めてるってことだよぉ」

 

「……こっわ」

 

「マジで闇のカード絡みの事ってろくでもないな……」

 

 俺と先輩は驚きの事実を知り、声をこぼす。人権無くなっちゃうんだ……。

 そしてその事知ってるってことは道場で『始末』したことあるんじゃ……。

 待て、警察の偉い人と伝手あるし。そっち方面からの情報で知ってる可能性も……。

 

 ……いや、師範ならやるな。間違いなくやるわ。

 そう考えていると先輩が口を開いた。

 

「……すいません、助けて貰っておいてなんですが、命は許してやってくれませんか」

 

 車から下り、地面に立った先輩は頭を下げて俺たちにそう頼んできた。

 

 

「今回で二度目、おまけに懲りずに天儀たちを狙ってた。……それでも、後輩だったんです」

 

 そう言う先輩の表情は見えない。だけどその両手は握りしめられて、震えていた。

 

「……襲われた人がそれでいいなら、我(わえ)はいいよ?」

 

「自分も同じで」

 

 マリカと兄弟子はそう言いこちらを見る。怯えている元部員達もこちらを見る。

 そして先輩の頭は下がったままで。

 

 …………しょうがないなぁ。

 

「……まぁ暴行未遂に闇のカードの使用で牢屋行きでしょうし。いいですよ」

 

「……すまん、茂札」

 

「いいから頭上げてください、先輩。……こんなバカの命を貴方が背負う必要はない、そう思っただけですから」

 

 そう言うとようやく先輩は頭を上げてくれた。その表情は何とも言えないものだったが、暗いものではなかった。

 そして先輩の背後で安堵の表情を浮かべる元部員が目に入り。

 

「だけどこれからちょっと話は聞かせてもらいます。……自首させるのはそれからでいいですか?」

 

「ああ、勿論!それはしっかり頼む」

 

 少しばかり目に力を入れて元部員を睨みながら言うと、先輩も笑顔を浮かべながらそう答えた。

 

「じゃあ自分たちは周り見張ってますね」

 

「我(わえ)もぉー」

 

 兄弟子とマリカはそう言うと少し離れた位置に移動し、警戒を始める。

 

 そして俺は奪った闇のカードを握り、座り込んでいる二人に近づいて行った。

 

 

 

(……少しは収穫があったが、損のがデカいな……)

 

 

握られている闇のカード越しに見ていたディールはため息をこぼしていた。




この後原作とほぼ同じ情報を喋ったあと、自首した後できるだけ真面目に生きる様に命令を受け、元部員達は解放されました。
<貪り山のワーム>のカードはその後に破いて処分。
先輩は念のため、車で家まで送っていきました。


今回も一部、原作の文をお借りしています。
エニグマもですがそれ以外のも含めて、普夫君のセリフはカッコよくて素敵だと思う。
自分が文章を考えるのが苦手なのもあり、カッコいい言い回しを思いつく人は尊敬しています。

次回はエレウシスから戻ってきたLife部との話の予定です。
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