少し駆け足気味かも知れませんが、自分が思いつく内容を絞り出して書きました。
楽しんでいただけたら幸いです。
闇のカードを手に入れた元部員達による襲撃が発生してからはや数日。
あれからトラブルが続くことはなく僕は普通の日常に戻っていた。
高校で授業を受けて、放課後にはMeeKingでバイトして、休憩時間にユウキちゃんやサレンと息抜きにファイトをする。
そんな平和な日々に。
先輩の方も特に問題も起きず、受験勉強に励む生活に戻ったらしい。
ただ平和な日常に戻るまでに少しだけ面倒なことはあった。
というのも、以前に退部させた他の元部員達が、同じ様に闇のカードに手を出していないかの確認する作業。
そして、ジグさん達に今回の一件を伝えるかという問題。
幸いな事に、他の退部になった連中は現在も占光高校に通っているので確認作業は簡単だった。
授業の休み時間や放課後に僕や先輩がちょっと様子を見に行けばいい。それなりの人数がいたから手間だったが、襲撃事件の二日後には作業は終わった。
殆どの元部員は大人しく高校生活を送っており、真っ当な学生として過ごしていた。
極一部が不良になって煙草を吹かしてたりしたが、ちょっと
そうなると残るはジグさん達に今回の一件を伝えるかという話なわけだが。
僕や先輩、あとマリカや師範らと話し合った結果、伝えない事に決まった。
理由は彼らに闇のカードを渡した奴の目的は「俺」であった事。
……不快な話だが、天儀さんやジグさん達は例の元部員達にとっては目的達成後のボーナス目標。「俺」を倒した後、ついでに手に入れようとした豪華なオマケ。
あのガキンチョはLife部に興味は持っておらず、そして天儀さんが持っているレガシーを狙えなどという指示も無かった。
それらの事から今回の事件は伝えないことに決まった。
もっとも師範はレガシーを手にした以上、いずれ闇と対峙する日が来る可能性が高いと苦い顔をしていたが……。
しかし彼女達にはこのまま平和な学校生活を送って欲しいというのが僕と先輩の結論だった。
そんな訳でジグさん達は元部員による事件があったことを知らずに、エレウシスから帰還し。
学校総出と言ってもいいお祝いを受けた後、毎日部活動に励んでいる。
最近は部室が建物ごと新しくなった上、設備や備品が沢山増えたり。
エレウシスでの活躍の影響か、結構な数の新入部員も入ってきて大変だとリナさんやジグさんからのメールには書かれていた。
『なんかいい感じに部員の腕を磨く方法ない?』と相談を受けたが、一先ずはデッキ構築を考えて、ファイトの数をとにかく増やすしかないんじゃないかなぁ……。
まずは自分のデッキの活かし方と、やられたら困ることを洗い出す。
次は色んなデッキに触れてとにかくファイトする。用意した構築済みデッキを選んでファイトをして、ファイト毎にどのカードをどの順で出したかも記録し、感想戦もしっかりする。
後はデッキのカードを全部表にしてのファイトとか、大量のカードプールから自分で選んでデッキを組んで全員でやるトーナメント戦とか。
そういう感じの事を提案したら2人には若干引かれたが、『MeeKingや気門道場ではやっているよ?』と言ったら受け入れてくれた。
多分、ファイトが強い名門校の部活などではもっと凄いことやってるだろうしな。
そんな風に僕とLife部、それぞれの時間を過ごしていたら。
「……お久しぶりです」
「……久しぶり」
ある日、学校の廊下で天儀さんと再会した。
以前にエレウシス出場決定のお祝い会をした際、天儀さんはまだ僕に合う心の準備ができていないと言って断った。
それからエレウシスで数か月という時間が経っている。そして今目の前に彼女が居るということは、彼女は僕に合う心の準備がついにできたという事だろう。
……こっちはまだできていないんだけどなぁ。
そう思い少し憂鬱な気持ちになりながら天儀さんの顔を見る。
「あの……えっと……」
あれ?めっちゃ困ってる!どうしていいか分からない顔している!!
……よく考えたら色々と有った人と会うのに廊下を選ぶのは変だし、コレ本当に偶然会っちゃった奴だ!
え、どうすればいいの?ここから??
……よし。仕方ない。
深めの呼吸を一回、それから動揺を出さないようにしながら口を開く
「……優勝おめでとう、天儀さん」
まずは社交辞令で様子を見る。
「!……あ、ありがとう」
僕の言葉に天儀さんの表情が一気に明るいものに変わる。
……良し。これで誰かが通りがかっても、天儀さんを困らせていた風には見えない筈。
次はどうするか……。
退部してから今日までの天儀さんやLife部に関わることで、今ここで話しても問題ない話題をリストアップ。
そこから無難なものを選ぶ。
「リナさんから聞いたけど、色々大変だったみたいだね。変な奴らに絡まれたり……」
「はい!ほんともう大変でした……聞いてくださいよ!」
当時の事を思い出したらしく、天儀さんは眉を八の字にして嫌そうな表情をする。
そんな顔も絵になるから本当に美少女だなぁ。
そう考えながら、天儀さんの口から勢いよく出てくる愚痴に相槌を打ち続ける。
やがて天儀さんの口から出る愚痴が途切れたタイミングで。
「元気そうでよかった、それじゃ」
そう言って歩き出す。
華麗に去るぜ!
「待って!」
通らなかった。
ため息を吐かないようにしつつ、振り返る。
「……何か?」
「その……お礼を言いたくて」
そう言う天儀さんの表情からは先ほどまでのおどおどした様子は消えて、しっかりとした決意が見えた。
……こっちはまだ用意できていないんだけどなぁ。
「お礼って?」
下に向きそうになる目線を天井に向けながら、とりあえずそう返した。
……思い当たるのは先輩たちと協力して、馬鹿共を退部させた件。
「エレウシスで勝てた、……お礼です」
だから、天儀さんのその言葉に困惑し目線を戻す。
そこには真剣な表情をした、僕が今まで見たことのない天儀さんが立っていた。
けれど、彼女の言葉に僕は心当たりがない。
「僕はなにもしていないよ」
「そんなことはないです。……Life、色々教えてくれたから」
そう言われて記憶を探るが、思い当たるものはない。
僕は天儀さんにLifeの基本を教えただけで、それも途中で退部になった所為で中途半端なものだ。
……見捨てるような形になったのをフォローしてもらったから。
だからこそ僕は彼女にエレウシス……全国大会で勝つのに役立つようなテクニックなどは教えていない。
「……僕が教えたのは基本的な事だけだよ。それも最初の数日だけで……優勝できたのは君とリナさんたちの力だよ」
「確かに優勝できたのはリナやジグの御蔭です。……でも、あなたが教えてくれたことがあったからドアは強くなれました。だから……」
そう言って天儀さんの目線が動いて、その先は……ああ。
「御礼と謝罪をしたくて」
彼女の目はしっかりと僕の手袋をはめた右手に向いていた。
「ああ……もうなんともないから。謝る必要はないよ」
そう言って右手をポケットに入れなおす。
「あの……本当にごめんなさい。ドアのデッキで」
「大丈夫。別に怪我してるわけじゃないから。これ、ちょっと見苦しいから嵌めてるだけだし」
学校だと色々面倒だから嵌めている。
カードとの共鳴がどうとかで凝った服装をしている人が多いので、手袋程度では気にする人が少ないのはありがたかった。
「でも……」
「なんともないから大丈夫。もう君のデッキに触ることもないし」
目線を天儀さんから外しながら、誤解されないようにはっきり言う。
関わるつもりはないし、巻き込むつもりもない。
下手に仲を深めるとこの間みたいな事件が起きた時に狙われるかもしれないのだ。
それにめんどうくせえそのカードに関わりたくもない。
「あ、カードは躾けたんでもう大丈夫です」
「えっ」
天儀さんの口から出た言葉に思わず目線が戻る。
「躾けられるもんなの?」
「はい!ちょっと、こう……立場を分からせたんで」
そう話す天儀さんの表情は笑顔だったが、ちょっと怖い雰囲気があった。
というかカードって躾けられるんだ……。
僕の所に来るのって大体タチが悪い奴だからなぁ……。悪さしないよう警告を繰り返しても無視する奴を処断して、それを見てようやく大人しくしてくれる。
そんなことをしなくてもカードを大人しくさせられる方法には興味が……と、いかん。思考がそれてる。
「ごほん……以上。終わりでいい?」
「え?その」
「終わったことだから。そんじゃ」
軽く頭を下げて、早足で逃げる。
後ろから『諦めませんからねー!!』とか聞こえた気がするが、そんなもの聞こえない。
廊下を曲がり、目的地の購買で昼飯のパンを買う。
そしたらまた早足で先ほどとは違う道を通り、自分の教室へ戻る。
『打倒生徒会!』と気合の声をあげている吉岡君を含めたクラスメイト達を眺めながら、パンをもっしゃもっしゃと食べて、その日の学校は終わり。
放課後は少し離れた所にあるカードショップの平日大会に出場し、優勝して小遣いを稼いだ。
そうして、ある一日は終わった。
学校で天儀さんと出会って数日後の放課後。
MeeKingでのバイト中、休憩時間にユウキちゃんとしていたファイトの決着がつき、ユウキちゃんがムキャーと叫んでいるのを眺めながら考える。
少し前にリナさんたちから送られてきたメール、その内容。
『君には色々迷惑をかけていて本当にすまないと思ってはいるんだが……。だが彼女の思いも汲んでくれないか?』
『ドロシーと会ったんやろ?部活の時もその話ばっかでなぁ……。もう一度きりでいいからファイトでもしてくれへん?』
どちらも天儀さんに関する事。あの後、部活でさっそく二人に相談したらしい。
関わるつもりはないとはっきり告げたのだが、それでも彼女は諦めるつもりは無いようだった。
……まぁ元副部長派閥の排除にこっそり協力してた話は既に天儀さんは知っているしな。
僕が彼女の事を恨んでいないことは既に伝わっている。
その上で学校では、偶然出会うまで天儀さんは接触してこなかった。部長達が僕と連絡を取れるのを知っていながら。
だけど僕と会話してからは積極的になっている、なぜだろう?
……やっぱり、人間関係の事はよくわからないな。カードの事なら積んできた経験でよく分かるのに。
こちらの表情などから手札を容易く読み解く日進さんや今野さんなら、きっと分かるのだろうな。
答えは決まっているのに、選ぶのを迷っている。
ダーツが上手かったあの人に見られたら、きっと呆れられてしまう。
そんな風に考えていると、ふとテーブルの上のカードを眺めながらグギギと唸っているユウキちゃんの姿が目に入って。
……そうだ。
「大した話じゃないんだけど、ユウキちゃん」
「うん」
「後悔しない選択ってどうすれば出来るかな」
そう問いかけて。
口に出したことで、中学生の子になに聞いてるんだと後悔した。
だけど。
「簡単だよ」
ユウキちゃんが僕に答える。こちらに真っ直ぐな目を向けながら口を開いて。
そして続けて彼女が言った事を聞いて。
「……そっか」
自分の心は決まった。
その後も彼女とわちゃわちゃとしたやり取りをしながら、ファイトをして。
サレンと交代して、仕事に戻り。
やがてMeekingでの仕事が終わり、自宅に戻ったところで。
携帯を開いてリナさんに送るメールを打ち始めた。
天儀さんと廊下で出会っでから数日後。
平和な日曜日の午後である。
「はぁ」
覚悟は決めたとはいえ、若干憂鬱だ。
「モブさんがため息ついてる」
「減給された?」
「そんな事しないよ?」
なんて言う入り浸り少女ユウキちゃん、新人バイトサレンに、お給料くれるセト店長の三人。
「大丈夫です、給料には今の所満足していますから」
ちょっと前に時給あげてもらったしな。無駄遣いしなければそこら辺の高校生よりリッチである。
……そういえば同じクラスの吉岡君もバイトの時給上がったとか言ってたな。
まぁなんか目的の為に結構な金額が必要なので貯金・節約しているらしい。
教室で服の生地のカタログとか、衣装のオーダーメイドに関する資料を眺めていたが……自分用の衣装でも作るのかな?
この世界だと本当に色んなファッションの人達が居るからなぁ。
賞金やパックが賞品になっているカードショップの大会だと、参加する人も気合が入ってる人が多いから衣装を凝っている人も多い。
でも吉岡君が見ていたオーダーメイドの資料、女性向けだったんだよな……。
この前、文化祭で他のクラスと合同でメイド喫茶をやることを生徒会に認めさせると、他のクラスの生徒も含めたそれなりの人数で決起集会をしていたが。
……まさか文化祭で女子に着てもらうメイド服をオーダーメイドする気か?
いや、それは無いな。普通は衣装はレンタルとかで済ますだろう。たった一回の文化祭の為に、衣装をオーダーメイドするなんて。
そんな結構なお金がかかる様な事をする訳ないし。
……うし、現実逃避おわり。
壁の時計を見る、……そろそろか。
「店長、時間なのでタイムカード切りますね」
「いいよ~」
許可をもらったのでエプロンを脱ぎ、タイムレコーダーを押しに行く。
「? モブさん今日はもう上がりですか?」
「そう。今日は午後から用事があるんだって」
「だから今日は早めに出勤している。私はえらい」
学校鞄から使うデッキケースを取り出しながらそんな三人の会話が聞こえた。
「戻りました」
「? モブさん戻ってきたよ」
「おかえりー」
「そろそろ時間だけど、もう電源いれて準備しとく?」
「いや、来てからでいいと思います」
「??? 来てから?」
そう店長が言ったすぐに後に、タイミングよく彼女達が店にやって来る。
「すみませーん、予約したもんですけどー」
カランカランと鳴る入室ベルと同時に聞き馴染みのある声が響いた。
入ってきたのは三人の少女。
リナさん。
ジグさん。
……そして天儀さん。
事前にメールでどんな段取りか、どのようなアンティなのかは決めてある。
なので彼女達とは簡単な会話をし、準備を整え……。
ついに僕は天儀さんと同じバトルフィールドに立ち、向かい合った。
後はファイトの結果次第。
ちょっとした手ほどきをした少女が、エレウシスという高校生の全国大会の優勝チームの大将となった。
どれくらい強くなった?どんなファイトをする?
……さぁ、僕にその実力を見せてくれ。
ちなみにこの後の勝負は、
何故かリナさんに殴られた。
げせぬ。
ドロシーちゃんとの戦いは、原作以上の物を自分では思いつけないので省略。
期待していた方は申し訳ありません。
そして書けずに止まっていた間に原作の漫画版2編で明かされた様々な真実。前回の更新で補足できていなかった部分。
ドロシーちゃんって初期の頃から迷宮を参考にしたデッキ使ってたの!?漫画版作者殿ちょっと思いっきり良すぎんか!!?
あとジグ部長は闇のカードに操られてドロシーちゃんと戦ってたのね……。
そんな訳で本作でのリナ先輩が元副部長の策に乗ってドロシーと戦った時の話ですが。
ドロシーのデッキについて何も聞かされていなかったリナ先輩は普通に戦ってましたが、横で見ていた副部長(当時)は何そのデッキ……、と宇宙猫状態になりました。
ドロシーちゃんとの戦いの後、ファミレスで会議して副部長からデッキについて聞かされて二人して『デッキ魔改造して、それを実戦で回してる初心者……?』と戦慄していました。
原作に比べるとドロシー側のイベントが減っていますが、その分ジグ部長の早期復帰による練習量増加&副部長がドロシーを(嫌がらせという体で)鍛えていた事で補われたということで……。
そして本作では普夫君はドロシー達に闇のファイターとかに関わらず、平穏に学生生活を楽しんでほしいと思っていますが、原作の流れ的にそれは叶わない模様。
本作の師範が言うとおり、レガシーを手にしている以上は闇の方からやって来るんですね……。