これにてとりあえず本作は一区切りつきました。ここからどうなるのかは脳内で大雑把な形としてあるのですが。まだ練り切れてなくて……。
ですがなんかいい感じに形が纏まったら続きを投稿することがあるかもしれません。
気長に待っていてもらえれば幸いです。
リナと茂札のファイトは、初っ端から茂札の奴が手札事故なんかを起こしやがった。部活でやる部員とのファイトでもたまに起こしていた、共鳴率があるなら起きるはずのないことが。
デッキを取っ替え引っ替えしてるからそんなことが起きるんだ。案の定、今回のアイツのデッキには
今回のファイトの相手は自分ごと敵を燃やし尽くす、狂犬の様な戦いをするリナだ。最初から手札が1枚少ない状況で戦うのは不利すぎる。
――そう思っていた。
リナの奴がぶつけた合計10点ダメージの大火力を受けても驚きもせず、続く<焼け石拾い>での6点ダメージを受けても平然としている。
運よく呪言を引いただけじゃ説明できない、そんな冷静さがあった。なにせ一気に残りライフが半分以下になっているのだ。
仮に他の部員だったら同じ様に焼かれ、呪言でダメージを抑えられたとしても取り乱すし。弱気な奴なら心が折れている。
オレだって平然としていられない。
だけどあいつは動じてなかった。そして自分のターンで一気に動き、クリーチャーを召喚し、出せる火力だけならリナの奴を上回りやがった。
……ファイトの流れは一気にリナから茂札の奴に移った。リナの奴も分かっているのだろう、とても楽しそうな表情をしてやがる。
茂札の奴も楽しそうな表情をしている。普段の部活の時の、ゆるーく楽しんでいる時とは違う。ギラギラとした、刃物のような雰囲気をした、そんな表情。
オレとのファイトでは一度もしたことのない、表情を。
――笑顔で楽しそうに戦う二人を、オレはジャッジとして見続けていた。
「俺のターン、レディ、アップキープ、ドロー。メインとライフから1枚ドロー」
デッキから引き抜いたカードを見て、手の中で順番を入れ替える。……デッキで待機していた王様が来たが、すいません今出番無いです。
「メインフェイズ、色彩はセットしない。8コスト生成、手札から2コストで呪言<焼畑>を使用!色彩を3枚デッキに戻してライフを3点回復する」
「ここで引きおったか……」
コストゾーンのステイしていた色彩3枚をライフデッキに戻し、マシンで自動シャッフル。これで俺の残りライフは8点。
<焼畑>を使い切ったのでもう回復はできないが、ここから即死する可能性は低くなった。
羽島さんもそれが分かってるのだろう、少し眉間にしわを寄せている。
シャッフルが終わったライフデッキをフィールドに再設置、行動を再開する。
「続いて3コストで<夜疾猟団・大鷹の弓手>をプレイ!通りますか?」
「見りゃ分かるやろ?通るでー」
「では<夜疾猟団・大鷹の弓手>を召喚。このクリーチャーはパワーが2、タフネスは3。そして場に出た時に【楔】カウンターを指定したクリーチャーに乗せます。今回指定するのはそちらの<火炎吐き大鰐>」
「ははーん、なんか悪いこと企んでるやろ?」
そう言いながら羽島さんは【楔】カウンターを示すチップを大鰐の上に乗せる。その表情は何をしてくるのか楽しみにしている、期待に満ちたものだ。
「こちらの場に【死霊】クリーチャーが増えたことで復讐姫のパワーが上昇し5/3に、【楔】カウンターが1増える。そして墓地から<燃え盛る突進>を3コストで使用、墓地からの使用の為、このカードは除外する。使用対象は<夜疾猟団・大鷹の弓手>!」
復讐姫の上のパワーのダイスを回し、5の面を上に。
「<燃え盛る突進>の効果で弓手はパワーが上昇し5となり、【速攻】を得る。そして弓手の効果を発動!楔カウンターの乗ったクリーチャーのタフネスをマイナスにする、これは弓手のパワー分だけ指定出来る」
そう説明しながら<夜疾猟団・大鷹の弓手>のカードを
「対象に指定するのは<火炎吐き大鰐>と<溶岩湖のウーパールーパー>!タフネスがマイナスになったことでこの2体は死亡する。破壊ではないので<焼け石拾い>の【砲弾】カウンターは増加しません」
「……やってくれるやんけ!」
そう言いながらも羽島さんの表情は笑顔のままだ。……獰猛な、と頭に着くが。
羽島さんがフィールドの大鰐とウーパールーパーのカードを墓地に、乗っていたダイスとチップをテーブルの隅に置き終えるのを待つ。
「よし、続きええで」
「ではバトルフェイズ。俺は追撃者、復讐姫、魔女で攻撃する。まずは追撃者の攻撃で6点ダメージ!」
「チェックするで。……2枚目で呪言<間一髪>が出たのでダメージは1点や!場に出たカードはライフデッキに戻してシャッフルする!」
羽島さんが<間一髪>を墓地に置き、ライフデッキにカードを戻しマシンでシャッフルする。わずかな間機械が動作して、シャッフルが終わる。
ライフデッキを戻した羽島さんが無言でこちらを見て続きを促す。残りライフは9点。
「続いて復讐姫の攻撃、5点ダメージ!」
「チェック!……色彩が2枚。<焼け石拾い>が1枚、最後に<燻る大地>。<焼け石拾い>は秘宝やから墓地へ、<燻る大地>は色彩としても扱うからコストゾーンやね」
チェックを終えた羽島さんは各カードをコストゾーンと墓地に設置していく。これで残りライフは4点。
「最後に魔女の攻撃、1点ダメージ」
「チェック、呪言<焼畑>!通常色彩を3つデッキに戻してライフを3点回復するで」
最後に裏目ったか……。羽島さんがコストゾーンのカードをデッキに戻し、マシンでシャッフル。その間に<焼畑>を墓地に。
回復したことで相手の残りライフは6点、だが十分にリーサルライン。そして相手の出せるコストは先ほどのターンと変わらず5点。次のターンに色彩をセットしても6点。
「ではターンエンド」
「じゃあうちのターン、いやぁ楽しいなぁ!!レディ、アップキープ……」
羽島さんがデッキに手をかけて集中する。それもその筈、このターンのドローで勝敗が決まると言ってもいい。
相手が全体除去などのこちらのフィールドを一掃するカードを引いたなら、勝機が残る。
そうでなければ俺がこのまま押し切れる。
「……っ!メイン・ライフ、ドロー!!」
羽島さんが2枚カードを引く。手に持ったカードを見つめ、……悔しそうな、楽しそうな、複雑な表情を浮かべる。
「今回は負けやな……、けれど最後まで足掻かせてもらうで!魔色彩<燻る大地>をセットし6コスト生成!」
羽島さんが
「5コストで<焔吐き火山鰐>をプレイ!」
「通ります」
「ほな<焔吐き火山鰐>を召喚するで!こいつはパワーが3でタフネスは5のクリーチャー、【速攻】と【貫通】を持つ。場に出たことで【点火】カウンターが1つ乗るで」
「そして常在効果が発動する」
「その通り、よく知っとるな! こいつは自身に乗る【点火】カウンター分パワーが上昇する。そして効果を発動!1コスト支払い、火山鰐に【点火】カウンターを1つ乗せるで!これでこいつのパワーは5や!!」
岩山のように巨大な鰐が火炎放射を吐いているイラストのクリーチャーカードが場に出る。成長を続けた鰐は炎で敵を焼くだけでなく、自分の動く力にも活用するようになった。
自身が燃え尽きる瞬間までその焔は強くなり続ける、そんなクリーチャーだ。
場に出た火山鰐の上に羽島さんが【点火】カウンターとしてのダイスを置く。コストを支払って使用した効果の分も含めてダイスの面は2。
「バトルフェイズ、火山鰐でアタック!」
「その攻撃を放火範ゴブリンでブロック!放火範ゴブリンが破壊されて貫通ダメージ4点を受けます、チェック」
ライフデッキから4枚捲る、……全部色彩。
「全部色彩カードだったのでコストゾーンに設置します。そして魔女の効果が発動。1つ目の効果、魔女が存在している時、魔女を除くクリーチャーはダメージを与えられる度に、楔カウンターが1つ付与される。放火範ゴブリンとの戦闘の結果、火山鰐はダメージを負ったので【楔】カウンターが乗ります」
「わかったでー。……1つ目ってことは他にも効果あるんやろ?」
火山鰐に【楔】カウンターとしてのチップを乗せながら、羽島さんがこちらに問いかける。
「はい。2つ目の効果、魔女を除くいずれかのクリーチャーが破壊された時、重ねられていた楔カウンターは魔女へと移し替えられる。破壊された放火範ゴブリンの上に乗っていた【楔】カウンター1つが魔女の上に移ります。そして魔女のパワーが上昇して2に」
そう言いつつ、放火範ゴブリンの上に乗っていたチップを魔女の上に移し、カードは墓地に置く。パワーを示すダイスは1から2に。
「なるほどなー。さっき大鰐で攻撃せんかったのは、
「そうですね。あの時の場合も同じように放火範ゴブリンでブロックして、結果魔女にカウンターが移ってパワーが上昇しますから」
「おまけにダメージを受けた大鰐に【楔】カウンターも乗ってたわけやな。勉強になるわぁ……これでターンエンドや」
「では俺のターン。レディ、アップキープ、ドロー、メイン・ライフから1枚ドロー」
引いたカードを見る。……どちらも今来ても意味がないカードだ。
「メイン1をスキップ。バトルフェイズへ、まず追撃者で攻撃」
「6点ダメージやな。チェック……呪言<間一髪>が出たからダメージは1点や」
そう言い羽島さんは3枚目の<間一髪>を墓地に置き、ライフデッキをマシンでシャッフル。先ほどよりも更に短い時間で終わり元の位置にセット。
「続いて復讐姫で攻撃、5点」
「チェックするで……全部色彩やな。これでライフゼロで決着か」
「そうですね、俺の勝利です」
「……そうだな、勝者は茂札だ」
副部長がジャッジとして僕の勝利を宣言する。それが切っ掛けになったように、ファイト中に満ちていた張りつめていた空気が霧散した。
「楽しい対戦ありがとうございました」
「うちの方こそおおきにな。久々に楽しめるファイトができたわ」
対戦も終わったことだし羽島さんにプレイ終了後の挨拶を、マナーは大事だ。羽島さんもこちらに挨拶を返す。
「お前は喧嘩売っといてその態度か……まぁいつもよりはましだが」
「あまり気にしないでください副部長。僕も楽しかったんで」
「まったく。……茂札、さっきのデッキを部活で使っているのをオレは見たことはないが。何故だ?」
副部長が少しだけ、固い声で問いかけてくる。
この
「これ大会とかで使う用のデッキなんですよ。部活だとカジュアルに楽しみたくて……」
「本気でファイトするには、今の部員どもじゃ力不足っちゅうことやろ?」
「いえ別に、そういう訳では。部活で使うデッキでのファイトの時も真面目にやってますよ?」
「……そうか。茂札、今度時間ある時にオレとそのデッキとファイトしろ」
「えっ?なんでですか?」
「……エレウシス優勝を目指すなら!そのデッキと戦った方が腕を磨けるだろうが!! 言っておくが羽島は入院している部長の次くらいには強いんだからな!」
副部長がたまに部室に来た時にいつもの様に口に出す、全国優勝を目指すという志が高いことを言う。
……だけどいつもと違ってその言葉には、どこか熱が籠っている。
「……自分、部活では気軽に遊びたいんですけど」
「別に部活中は常にそのデッキで戦えと言ってるわけじゃない。……オレがそのデッキを持ったお前とファイトしてみたいってだけだ。一度だけでもいい」
…………そう言われちゃったらなぁ。
「それだったらいいですよ」
「おー、なんかきばってはりまんなぁ。諦めてたのに、火ぃついたんか?」
「うっさい。お前こそ楽しんだならもう少し部活に顔出せ」
「せやけどなぁ……」
副部長の言葉に羽島さんは周囲を見渡す。目線の先には僕と彼女のファイトを見ていた部員達。
羽島さんの目線が自分に向くとみな少し怖がった様子を見せる。……ファイトが終わってからは機嫌が良いみたいで威圧感は減っているけど、見た目は不良っぽい格好のままだからなぁ。
最初に部室に入ってきた印象が残っているとやっぱり怖いんだろう。
「他の奴らはおじけづいてるまんまやん。えーと、茂札はんやったっけ?あんさんと戦うのは楽しそうやけど、その為だけにここに来んのもなぁ……せや!」
そういうと羽島さんは
「連絡先、交換しぃへん?時間ある時ファイト付き合うて?」
「いいですよ、ただちょっと。毎週ある日は用事があるんで、その日以外でよければ」
「なんかバイトでもしとるん?」
「いえちょっと、護身術習ってて……」
――そんな感じで、ファイトの前とは違う。少し穏やかな空気の中で会話をしながら、その日の部活は終わったのだった。
今回登場したオリジナルカード
<焔吐き火山鰐>コスト5 3/5 【速攻】【貫通】 2枚
召喚時に点火カウンターが1つ乗る。
常在効果:自身に乗っている点火カウンターに1つにつき、パワーを1上昇する。
効果:コスト1支払う。自身に点火カウンターを1つ乗せる。
高コストアタッカークリーチャー、多分レア位なんじゃないかと。毎ターン確実にパワーが上昇していき、コストを支払うとそれが加速する。
しかも【速攻】があるから出してすぐに動かせる。そこに蝦蟇蛙とかで【点火】カウンターを乗せたら一気に高火力を打ち込めるのが強み。
その代わり破壊や除去耐性が無いので妨害札でのサポートが無いと、あっさり排除される悲しみも背負っている。