今回、普夫くんと副部長が結構お互いに踏み込んで会話してますが。
これに関しては入部してから1カ月位経っており、その間に来る機会が減っているけど副部長は部活に結構顔を出していた。
また原作での描写も踏まえて、副部長との関係はそこまで悪くなく、ある程度仲の良い先輩後輩の関係性だと判断し書きました。
加えてリナ先輩とのファイトで普夫くんの気分が少し良くなっており、普夫君の口が軽くなっているのもあります。
独自の解釈になりますのでご了承ください。
連絡先を交換して羽島さんが部室から去った後、少しぎこちない感じがあるもの部室のにいつもの雰囲気が戻った。
普段と同じように他の部員と話しているやつ、他の部員とファイトをしているやつ、羽島さんの件でやる気がなくなったのか今日はもう帰ったやつ。
そして僕は副部長からの勢いに負けて、彼と【三系統の夜】を使ったファイトをして……。
「……おい、茂札。真面目にやってるんだよな」
「やってますね」
「じゃあなんであっさりオレは勝ててるんだよ!?」
はい、あっさり負けました、あっはっは。それに対し副部長はご立腹。
さっき羽島さんといい感じにファイトしてたのを見てる分、自分とのファイトではあっさり負けたことに副部長が怒るのもわかるのだが……。
「見てくださいよ、この手札。見事に事故ってるでしょ」
「……確かにこりゃひどいな。コストがあっても出せるクリーチャーはいないし、手札を交換できるカードも無い」
「最初の手札は良い感じだったんでマリガンしなかったんですけど、その後の引きが下振れしすぎましたね」
そう副部長に自身の手札を見せながら話す。初手は受粉ゴブリンや放火範ゴブリン、打ち消し魔法などいい感じの手札だった。
だがその後の引きが悪かった、引いても出てくるのは<濁る儀式>や<反応解呪>、良くて<胞子爆裂>といったもの。全然クリーチャーが来ねぇでやんの!!
<胞子爆裂>を使ってゴブリントークンを並べても、副部長のトロルたちに薙ぎ払われる。
そのままどんどんライフ差がついてゲームセットだ。
僕の言い分と手札の内容を見て副部長は怪訝な様子でこちらを見る。
「その下振れという言い方、まるで
「あれ?副部長って共鳴率の事信じてるんです?一般的には都市伝説ですけど」
「こちとら3年生だぞ?カードショップの大会に出たり、情報を調べたりで少しは知ってる。と言っても自分と相性が言いデッキならここぞの場面で欲しいカードが引きやすいとか、デッキを動かしやすい位しか知らんが。……お前の口ぶりだと色々知ってそうだな?」
「ええまあ……ただ自分は共鳴率は無いんですがね」
「は!? お前それはどういう……」
そう、副部長が僕から話を聞きだそうとしたところで校舎の鐘が鳴った。部活の終了時刻を告げるものだ。それを聞いて部員たちは動きだす。
さっさと部室を出て帰る者、ファイトを中断する者、片づけを始める者、様々だ。
「……ちっ!仕方ない。……おいお前たち、さっさと片付けをするぞ。部室の鍵を閉めて返すの、今日はオレなんだからな!」
「じゃあ掃除しますねー」
副部長の指示を聞き、部室を出るのが遅れた不真面目気味な部員が嫌な顔をする。あの人は……普段から掃除とかを面倒くさがってしない人だったかな?
その人も流石に副部長が居る時に後輩に掃除を押し付けて帰るわけにいかないのか、片づけを始める。
もっとも、自分は最初から片づけと掃除を始めているが。みんなで使う場所なんだ、綺麗に使い、帰る時は綺麗にしていくべきだろう。
――そんな感じで部室の片づけは終わり、最後に戸締りを確認。それも終わり、残っていた部員が部室を出て副部長がカギを閉める。
そして部員たちは各々好き勝手に帰りだす、当然自分も帰ろうとして。
「おい、茂札。この後ちょっと時間あるか?」
そう副部長に声をかけられた。今日は特に何も予定がないし、時間はあるが……。
「時間はありますけど、なんです?」
「さっきの話の続きがしたくてな、無論タダでとは言わん」
そう言い、副部長は少し顔を背け。
「近くに美味い定食屋がある。奢ってやるから、どうだ?」
そんなことを言い出した。
その姿に
「ぷっ!……
ほんの少し、笑ってしまい。返事をした。
「おい、奢ると言っても一人前だからな!……大盛りにするのは許す。その言葉は了解と受け取ったからな、部室の鍵返してくるから校門の前で待ってろ」
「わかりましたよ、俺は自転車なんで取ってきますね」
そう言って教員室へ向かう副部長の背を見送った後、自分は駐輪場へと向かった。
副部長が俺を連れて行った定食屋は学校から少し歩く距離の、大通りから一本横に入った道にあった。店の傍に自分の自転車を止め、しっかりとロックを掛ける。
店内は落ち着いた雰囲気で、そこそこ客が入っている。メニューに書かれている値段も高くなく、学生でも手軽に頼める範囲。
二人用のテーブルに案内されて、メニューを見て注文を言い、店員さんが立ち去って。
そこで副部長が水の入ったコップを片手に、口を開いた。
「……で、さっきの話の続きだが。共鳴率が無いってどういうことだ?」
「うーんなんていうか……」
副部長の問いに、思わず右手に目線を向ける。そこにはもう火傷の痕が無い手がある。
……少しだけ乱れた息を整え、コップの水を飲んでのどを潤す。
どこまで話すか考えて、大丈夫そうな範囲に辺りをつけて口を開く。
「副部長って気門道場って知ってます?」
「? 名前だけなら聞いたことはあるような……。確かこの街にあるカード道場だったか?」
「はい、そこに自分は昔から通っているんですけど。ある時、質の悪いカードの精霊に憑りつかれたことがあったんです」
「カードの精霊なんているのか?」
「伝説のデッキなんてものがあるんですし、カードの精霊だっていますよ。とりあえずこの話は、カードの精霊がいるのを前提として聞いてもらえます?」
「……まぁそうだな。伝説のデッキがあるなら精霊だっているか」
そう言う副部長の表情は複雑そうだった。まぁ部室にある
自分がそれなりに力を入れても開かなかったが、溶接してる訳でもないしどうなっているんだ?まぁそれは今は関係ない。
「それでその精霊に憑りつかれた結果、色々ありましてね。まぁ何とか
「呪い?」
「そうです、気門道場の師範に聞いた話なんですけど。その呪いの所為で、あらゆるカードと共鳴ができなくなってるらしいんです」
「……大丈夫か?その師範ってちゃんと信用できる人なんだよな?」
「元プロでランカーだったらしいですよ。道場の人たちもファイトの腕前が高い人が大勢いますし、皆さんに慕われています」
「ランカーってマジか……それならまぁ、本当なんだろうな」
少し疑いが混じっているが、それでもひとまず副部長は納得してくれた。
「それで話を戻しますが。その共鳴できなくなる呪いの所為で、俺がファイトする時に引くカードは完全に運次第になるみたいなんですよね」
俺の言葉を聞いた副部長は顎に手を付け考えだす。
「なるほど……。さっきのファイトや部活に行った時に見たお前のファイト、強さが安定してないのはそれが理由か。てっきりデッキをころころ変えているから引きが悪くなっているのかと……」
「あ、デッキで強さが変わるのは事実ですよ」
「はぁ!?っと……どういうことだ、茂札」
「それについてはまず“コストカーブ”や“カードパワー”について説明を……」
そう副部長に説明しようとしたところで。
「お待たせしましたー!生姜焼き定食と豚カツ定食大盛りでございます」
注文した料理が到着した。
「あっ自分が豚カツ定食の方です。すいません続きは後でいいですか?」
「こっちが生姜焼き定食です。まぁ、頼んだものが来たしな……」
「ではごゆっくりどうぞ―」
それぞれが頼んだ料理を受け取り、店員さんが伝票を置いて去る。
食べながら説明するのは行儀が悪いし、内容が頭に入りにくいので先に料理を食べることを提案する。
――何より健康な男子高校生としては、目の前の美味しそうな料理の方が優先度が高かった。
定食屋を後にし、近場の公園に場所を移して副部長への説明は続いた。まだ夕日は落ちていない、そんな時間帯だが流石にもう人はいない。
静かなので落ち着いて説明するのにいいと思ったのだ。
「……いまいちまだ理解できていないが、とりあえず理屈は分かった」
そう言いながら副部長は手に持った缶コーヒーを口に運ぶ、ちなみに自分が買ったもの。食事を奢ってもらった分、せめて飲み物くらいはという気づかいだ。
「お前が組むデッキに汎用
「まぁそういう理由もありますね」
「他に理由があるのか?」
「部室にあったカードって、古くて効果が弱かったり癖が強いのが多いじゃないですか。そういうカードでデッキ組むならサポートするために汎用的なカードを入れて補うのが自然じゃないです?」
「……普通は弱いカードをどうにか使えるようにせず、もっと強いカードをデッキに入れようとするもんだがな」
そう答えながらコーヒーを飲む副部長の表情はどこか苦い。コーヒー苦手だったのかな?
「しかし共鳴率を奪う呪いか。……じゃあ部長のあの噂も本当だったりするのかもな」
「噂? 確かうちの部長って病気で入院しているんですよね?」
副部長の口から言葉が気になって、つい質問した。病気で入院しているとは聞いたが、噂とかのことは聞いたことが無かった。
「ああ、新入生だから知らないよな。うちの部長、湊手嶋(すてじま)さんなんだがな。入院しているけど、なんの病気かは聞いたことないだろ?」
「そういえば聞いたことないですね。先輩たちも話題に出しませんし」
「それには理由があってだな、皆怖がっているんだよ。……湊手嶋さんが入院したばかりの頃に、『
その言葉に、ピクリと眉が動き、思わず缶コーヒーを持つ手に力が入る。
だが何も言わずにコーヒーを飲む。俺の無言が続きを促していると理解した副部長が続けて口を開く。
「当時の部員の中にな、『湊手嶋さんが入院する前に
「……その部員と、黒いカードってのは?」
「部員の方は去年に部活を辞めた、理由は学業に専念するため。今も元気に占光高校に通っているよ。そして黒いカードの方は……行方不明だ」
「行方不明?」
「ああ、噂の出元の奴が言うには……。湊手嶋さんがその黒いカードを部室のストレージに入れるのを見たらしい。だが、他の奴が確認した時には影も形もなく消えちまった。去年に噂を聞いた羽島の奴がストレージを文字通りにひっくり返して探したんだが、それらしきモノはなし」
「羽島さんが?……どうして?」
「羽島と湊手嶋さんは中学生の頃、大会で戦ってライバルになった関係だったらしい。うちの高校に羽島が来たのも、湊手嶋さんと一緒に腕を競い合いたかったのが理由らしい。……が、好敵手に会いに来てみれば原因不明の病気による意識不明で入院、その原因らしきカードも行方不明って訳だ」
そう言い終えると副部長はコーヒーを飲み切り、缶を近くのごみ箱に捨てに行く。自分も話を聞いているうちに飲み終えた缶を捨てに行く。
夕日も落ちて少し暗くなってきていた。暗い時間帯はまだ寒い時期なのもあって、吹く風は少し冷たい。
ゴミ箱の前、二人して無言で立っていると副部長が口を開いた。
「……実際に呪われた奴に聞くのもあれなんだが、カードの精霊ってのは人を意識不明にできたりするもんなのか?」
副部長からの問いに過去の出来事を思い出し、つい苦い表情を作りつつ答える。
「俺の場合ですが、昔から道場に通っているって話しましたよね?……精霊に憑りつかれている間、道場の事は忘れていました。
「マジかよ……」
「なのでまぁ、人の記憶を封じ込めたりできるなら、意識を奪ったりはできてもおかしくはないかと。原因のカードの目的次第ですけど……」
俺の言葉を聞いた副部長は体を少し震わせた。それは今も吹いてる少し冷たい風が理由ではないだろう。
「……多分、いま部室のストレージにあるカードは大丈夫です。俺を呪った奴の様な、嫌な感じがするカードは無かったので」
「それを聞けて少し安心した……で、終わる話じゃないよな」
副部長と顔を合わせる。街灯の光が眼鏡に反射してその表情は分からないが、その口元は忌々しげに歪んでいる。
「……お前なら、そういう『呪われている』って感じは判るのか?」
「今までの経験から、カードから『何かあるな』って感じることはあります。だけど、カードからの干渉を受けている人は見たことが無いので断言はできないです。ですが……」
そう言って一度口を閉じる。頭に思い浮かべるのは楽しそうに笑う爺さんと、いつの間にかすっかり大きくなった中学生の妹?姉?弟子の姿。
「道場だとそういう良くないカードの被害を相談にやって来る人もいて、実際に対処もしていました。そういうのを解決する手段を師範と道場の人は持っているんで。……噂通りにカードが原因なら何とかできるかもしれません」
「そうか……?だけどお前は呪われたままなんだろ?」
「……俺の場合は呪いをかけたのが精霊で、なお且つ目的が嫌がらせなのもあって強力で無理みたいです。ですがその部長さんは意識不明なだけなら、多分大丈夫です」
俺の言葉を聞いた副部長は気まずげに顔を逸らした。まぁ俺は気にしないけど、この世界だとみんな共鳴率を大事にしているからなぁ。
「まぁとりあえず道場で師範に相談してみますよ、丁度明日が道場で護身術を習う日なんで」
「あー……そりゃそうか。先に道場の人に話を聞くのが先だよな。ちょっと先走りすぎたか」
そう言うと副部長は少し黙り込み、悩み。そして横を向き、片手で頭を掻きながら再び口を開いた。
「オレは湊手嶋さんが現在、どこに入院しているかは知らない。だが羽島の奴は知っている筈だ、今も度々見舞いに行ってるらしいからな。だが羽島の奴がお前の話を信じるかは分からない。そして湊手嶋さんの見舞いに道場の人を連れて行って、『呪いじゃなかったです』となったら羽島の奴がお前に何をするのかは分からん」
「まぁ、ボコボコにされそうですよねぇ。鉄パイプとかで」
「いや想定が物騒だな!?」
副部長が思わずといった感じでこちらを向きツッコミを入れる。でも鉄パイプで殴られる位なら、多少痛いだろうが問題ないんだよなぁ。
「ところで副部長、なんで部長さんの事を俺に話したんですか?受験勉強で忙しいから部長に復帰してもらいたいとか?」
ふと疑問に思っていたことを訪ねる。今日の副部長の様子はおかしかった。普段部室でファイトはすることはあるけれど、後輩を食事に誘うなんてことはなかったし。
入院している部長の事についても話題に出すことは今までは滅多になかった。
俺の質問に対し副部長は額に手を当て目を閉じ、考える様子を見せる。十数秒くらいたった所で、副部長は手を下ろし話し出した。
「それも無くは無いが、まぁ……カードの精霊とか、呪いとかの話を聞いて色々思うところがあってな。……湊手嶋さんは入院する前でも俺より強かった」
そこで副部長は一度口を閉じ、少し間を空けて再び話しだした。
「仮に意識が目覚めたとして、眠っていた期間という大きな差があっても勝てるかわからない。例えば
そう話す副部長の顔は、何とも言えない複雑な表情をしている。
「だけど……だ、実際に戦ってみないとわからないだろ? 案外今から猛特訓すればオレが勝てるかもしれないし。……湊手嶋さんが復帰すれば、羽島の奴も部活に顔を出すようになるだろうし。そうすりゃ自然と部活内のトップ3を決める流れになる」
そう言うと副部長は後ろを向いた、背中越しでその表情はもう見えない。
「エレウシス予選トーナメントに出場するメンバー決めには絶好の機会だろうさ、オレにしても丁度いい。……夢を追うか、受験に専念するか……。部長の件についてどうするかはお前の好きにしろよ。……じゃあな」
副部長はそういうと歩き出し、帰り道へと進んでいく。
「……それじゃあ、また今度。部室で」
俺がそういうと、副部長は片手を挙げた。
――それ以上、言えることは何もなかった。
この時期だと闇のカードについて普夫くんは情報を持っていないため。
ジグ部長の状態に気づくにはリナ先輩と一緒に見舞いに行って、悪質なカードの精霊の気配に気づくか。
副部長から噂話などを聞くなどでそれっぽい情報を手に入れて、知識がある人(例:師範)に聞きに行かないと解決フェイズへ移れないんですよね。
今回はリナ先輩でもすぐにジグ部長の所に連れていくとは思えないので、闇のカード?の情報入手からの師範に相談ルートとなりました。