歩みは遅いですが、書書きたいところまではがんばって書こうと思ているの、応援していただっると嬉しいです。
鍛錬が終わった後、家に帰った僕はさっそく羽島さんにメールを送った。内容はごく単純に、
『こんばんわ。突然の話になるのですが、副部長から
――といったもの。
正直胡散臭すぎる内容だが、こうとしか書けない。あとは数日前に一度ファイトした相手を、どれくらい羽島さんが信用してくれるかだ。
それから家事などを済ませ、夕飯を食べていると羽島さんから返信が来た。
『わかった。副部長の奴が何を話したのか含め、色々聞かせてもらうで。明日の11時に〇〇公園で待ち合わせしてくれはる?』
内容はこちらからの申し出を受け入れ話を聞く一方で、時間と待ち合わせ場所の指定は自分でするなど、警戒もしている……といったもの。
待ち合わせ場所は占光高校から少し距離はあるが常盤市内の公園。時刻も明日、僕がマリカと合流してから向かっても十分間に合う時間だった。
問題が無いので『それで大丈夫です』と返信を送り、夕飯の残りを手早く、それでいてしっかりと噛んで食べる。食べ終わったら器を洗い、洗い物かごに置いたらマリカにメールを送る。
内容は羽島さんと会う約束が決まったことについて、待ち合わせの場所と時刻。それに伴い明日のいつ頃合流すればいいか?といった質問。
こちらも少しすると返信が届き、マリカとの待ち合わせの場所と時刻が決まる。分かったと返事を送り、
残りの家事を片付け、シャワーを浴び、部屋の電気を消して目覚まし時計をセットすると布団に入る。
「……明日はどうなるかな」
ぼそりと口から不安の気持ちと言葉が零れる。
羽島さんからのメールの文面は落ちついた様子だったが、まず間違いなく冷静ではないはずだ。彼女にとってデリケートな部分にズケズケと踏み入ったのだから。
明日、待ち合わせ場所で会った瞬間に胸倉を掴まれてもおかしくはない。まぁ躱すけど。
……上手いこと彼女を説得できるのか?
自信はある。だが本当に上手くできるかは、実際に話さないとわからない。
「まぁ、やるだけやってみるだけか……」
そう呟きながら瞼を閉じる。
道場での鍛錬の疲労もあり、今日はすぐに眠りに落ちていった。
翌日、気門道場へマリカを迎えに行き。軽く会話をした後、現在は羽島さんとの待ち合わせ場所に向かっている。
――自分が漕ぐ自転車の後ろにマリカを乗せた状態で。
「フツ兄ぃー、もっとスピードでなぃ?」
そんなことを後ろの荷台に座ったマリカが言う。無論、彼女は脚を揃えて横向きに座っており、僕に腰に腕を回したりなどしていない。
僕の自転車には立ち乗り用のパーツを着けたりはしていないので当然だ。
不安定な姿勢だが、荷台を両手でしっかり握っている彼女の体幹に揺らぎはない。
「バカ言え、二人乗り自体が結構グレーなんだから。スピードはあまり出さずに安全運転でいくよ」
「ぶぅーー」
僕の返事にマリカは息を吹く。今、絶対頬を膨らませてるな。
それなりに長い付き合いだ、後ろを見なくても分かる。
「まぁ折角の二人乗りだしぃー?のんびり行くのも悪くないかもぉ」
「あんまりこういうのはしたくないんだけどな」
「
「はいはい」
そんな会話をしながら自転車は進んでいく。二人分の体重が乗ったペダルはそれなりに重いが、道場でやる鍛錬に比べれば全然余裕だ。
だがしかし、脚から感じるこの感触は……。
「お前また成長したか?前に乗せた時よりペダルが重いんだが……」
「ぁー、女の子に『重くなった?』って言うなんて、フツ兄ひどーい」
「待て!そういうつもりじゃなかったんだ。ヘルメットを用意するなら、どれくらいのサイズが良いか確認したくてだな?」
慌ててマリカに弁明をする。マジで体重が増えたとかそういう意味で聞いたんじゃないんだ。
マリカがまた成長してたなら。買おうと思った自転車用ヘルメットのサイズを、高校生用のものから大人用のサイズに変える必要があったのだ。
そういう自分の意図を説明するとぶーぶー言ってたマリカが静かになった。
少し間を空けて、マリカが口を開いた。
「それじゃあーまた後ろにぃ、乗せてくれるってこと?」
「まぁ……そうだな。こうして二人で移動する機会が、これからもあるかもしれないからな。だったら安全のためにもヘルメットがあった方がいいだろうと思ってな」
「ふぅん、そっかぁ。そういう事なら許したげるー」
そう伝えると、マリカは機嫌を直したようで、上機嫌に口笛を吹いている。
それに合わせて自転車を漕ぐ音を鳴らしながら、羽島さんとの待ち合わせ場所を目指して進んでいった。
「美人な彼女さん連れてやって来るとはいい身分やなぁ?」
待ち合わせ場所の公園に着いたとたん、時間よりも早く来ていた羽島さんが不機嫌そうに口を開いた。
無論、こちらは時間に遅れてなどいない。それどころか待ち合わせ予定の11時よりも早く来ている。
それ以上に彼女が早く来ていただけだ。
不機嫌な理由もなんとなく想像がつく。自分にとって大事な問題に関する話の待ち合わせ場所に、その相手が女を連れてやって来たように見えるのだ。
僕はこの程度では怒らないが、人によっては当然苛立つだろう。だが羽島さんがマリカに悪感情を持ったままなのは後の事を考えるとまずい。
そう考え羽島さんに説明する。
「すいません、羽島さん。彼女は人刹マリカ。僕が言っていた部長さんを助けることができるかもしれない、その手段を持っている人です」
「そうだよぉ、よろしくー」
「さよけ、このデカ女がなぁ……羽島や」
そう言いながら羽島さんはマリカの事を見上げながらにらみける。不機嫌なのも相まってピリピリとした雰囲気を感じる。
一方でマリカはどこ吹く風といったように気にしていない。まぁたまーに師範が見せる雰囲気の方がもっと怖いからなぁ。
だが羽島さんには先に伝えておかねばならない、とても大事なことがある。
「……あの、羽島さん。マリカは年下なんで、もうちょっと敵意を抑えてもらっても良いですか?」
「は?年下?……高一とかかコイツ?」
「今年で中三だよぉー」
「はぁ!?」
マリカが自分の年齢を伝えると、羽島さんはギョッとした表情になり驚きの声を上げる。
「え、マジなん?この体で中三!?なにしたらこうなるんや!?」
「よく食べて、よく運動したらかなぁ」
「それでデカくなれたら世の女子達は苦労せぇへんで!? まぁウチは気にしとらんけど!」
思わずといった様子でマリカにツッコミを入れる羽島さん。そこには先ほどまであったマリカへの敵意や機嫌の悪さはなく。純粋な驚きだけがあった。
「とりあえず空気も和んだことですし、詳しい話をするためにも移動しませんか?」
「まぁ……ええで」
「いいよぉ」
そうして僕が自転車を押しながら先導し、その後ろとテクテクとマリカと羽島さんがついてくる。
まだ昼前の時間帯だが、すでに開店しているだろう適当な喫茶店を探して進んでいくのだった。
「なるほど、大体の事は聞いたっちゅうことか。しかし闇のカードなんて都市伝説みたいなもんが、まさか実在するとはなぁ……」
そう言いながら羽島さんはストローでクリームソーダ(メロン味)を飲む。
喫茶店に入った僕たちは飲み物を注文した後、互いに持っていた情報を交換していた。
僕からは副部長から聞いた話と、師範が教えてくれた事。羽島さんからは湊手嶋部長が倒れたと聞いた後の行動の事、それと湊手嶋さんの状態について。
師範が言っていた通り、湊手嶋さんは意識こそないものの、命に係わるような症状はない。だが時折、悲鳴のような呻き声を漏らすことがあるそうだ。
「噂を頼りにカードを探した時はもう藁にもすがる思いでなぁ。胡散臭くても良いから、何か手がかりが欲しかってんけど……」
「ぁー、逆に良かったかもねぇ。部長さんがあなたと同じくらい強い気配を出してたんならぁ、
プリンを食べながらマリカが言う。師範が話したことだが、原因だと思われるカードの目的が力を集めることだった場合。当然ながら羽島さんも狙われていた可能性がある。
その点で言えば1年後れで学校にやって来た羽島さんは、運が良かったのだろう。
最も、彼女にとってそれが嬉しいかは別だが。実際、不満をぶつけるように羽島さんはストローをガジガジと噛んでいる。
「……で、ジグの奴を助けられるっちゅうカードは持ってきてるんやな?」
「……うん、この子だよぉ」
少し声を潜めながら羽島さんが言い、それに応じてマリカがデッキケースから1枚のカードを取り出す。その直前に一瞬、周囲に視線を向けて店内の他の客がこちらを見ていないか確認してから。
「っ! ……なるほどなぁ。この感じ、これがレガシーっちゅうもんの力か」
「……感じとれるのぉ?」
「なんとなくな?ファイトしてる時もやけど、たまーに相手とそのデッキからなんか……風みたいなもんを感じることがあるんや。もっとも……」
そう言うと羽島さんはこちらを見る。
「そこの兄弟子さんからは一切、そんな気配を感じ取れんかったけどな」
「フツ兄はぁー、そういう体質だから」
「いまいち信じられんけど、本当なら難儀やなぁ」
「そうですか?むしろ便利だと思うんだけどなぁ」
「それは変やで」
「変だよー。でもそれで本当に強いのがフツ兄だからぁ」
僕が言ったことに対し、二人はそろって変だと言う。引きが偏らないから良いと思うんだけどなぁ。コーヒーを飲みながら首をかしげる。
その間にマリカは
「……で、羽島さん。部長の所には案内してくれますか?」
そう問いかける。結局の所、彼女がこちらの説明に納得し、案内してくれないと自分達は湊手嶋部長に対し何もできないのだ。
こちらが持っている情報は渡した、あとは
クリームソーダのアイスを食べ切った羽島さんは、グラスの中のさくらんぼを口に運び。食べながら目を閉じる。
そしてプっ!っとグラスに種を吐き出すと目を吊り上げる。
「ええで、今のままだと何も変わらん。それならあんさんらに賭けてみるのもアリや、それでジグが治ったんなら万々歳」
そうにやりと笑いながら言った。
「それはそうと、種を吐き出すのは行儀悪いですよ」
「せやかて、残った種をどうにかするにはこれくらいしかあらへん?」
「スプーンでグラスに移せばいいと思うよぉ?」
そんな感じで喫茶店での会話は終わった。ちなみ会計は個別である。
「着いた。ここがジグが入院している病院やでー」
羽島さんの案内の元、僕たちは常盤市内にある病院の1つにやって来た。
「日曜でも面会は受け付けてたはずさかい、ちゃちゃっと行こかー」
「わかりました」
「ぉー」
そう言って病院の中へ進む。自転車は病院に来る途中で、家に置いてきてある。
入り口から入って受付まで行き、面会希望であること告げる。そこらへんは慣れた様子で羽島さんがやってくれた。
人数分の入館証を受け取り、院内のエレベーターへ。湊手嶋部長が居る病室のあるフロアを選び、上へ昇っていく。
ドアが開くと先導する羽島さんの後に続いて進んでいく。少しばかり歩いたところで、羽島さんがとある個人病室の扉の前で止まり、僕たちに振り向き言った。
「ここがジグの病室やで。……どうしたん?」
そして僕たちの様子を見て怪訝な表情を浮かべた。
なぜなら、僕とマリカは部屋の中から感じる、どろりとした気配に対し警戒感を見せていたからである。
「……この感じ、これが闇のカードの気配ってやつか?」
「そうだよー、前に潰した奴と似た感じがするしぃ。そいつはへなちょこのなり立てだったけど、それよりはちょっと強いかなぁ?」
「……そんなにはっきりわかるもんなんか。じゃあ、開けるで?」
そう言うと羽島さんは扉をノックし、少し待つ。中からいつも通りに返事が無いのを確認してから、扉を開く。
そうして開いた扉をくぐり、病室へ入ると1つのベッドが目に入った。
ベッドには金髪で整った顔立ちの人が横たわっていた。その目は閉じられており、腕には点滴の管が繋がっている。
そして呼吸と共に上下する胸は――結構豊満だった。
「湊手嶋部長って女性だったんですか!?」
驚いて思わず声を上げてしまう。あまり大きい声を出さなかった自分を褒めたい。
だけどそれ以上に驚きが勝る。えっ、女性なの?副部長や先輩部員達はそんな事言ってなかったけど!?
「聞いてへんかったん?まぁ副部長の奴は聞かれない限り言わなそうやしなぁ……」
羽島さんはどこか呆れたように言う。だって副部長は部長としか言わないから、てっきり男性かと。
「それよりフツ兄、"アレ"見えるぅ?」
「……ああ、うっすらだけどな」
特に驚いた様子のないマリカからの問いに対し、息を整えてから答える。
ベッドで寝ている湊手嶋部長、それを覆うかのように。
――うっすらと黒い影が纏わりついていた。
「羽島さん、扉を」
「あいよ」
声をかけると羽島さんは素早く動き、扉の外に誰かいないか確認してから閉じる。
続いて僕は窓際へ進み、カーテンを閉じる。病室に患者の様子を見るためのカメラが無いのは確認済み。
これで外からはこの病室内の様子を確認することはできなくなった。
「じゃあいくよー」
準備が整ったのを見てマリカがデッキケースからカードを取り出す。
「お願いねぇ、ディアホーン」
そう言うとマリカは息を吸い、ゆっくりと吐きだす。手にしたカードを手に息を整えて集中する。
僅かな時間で、呼吸を整えたマリカが口を開く。
「これは
何処からかともなく、病室内に風が吹き出した。
「いと高き角よ、その偉大なる姿に我らは敬意を示す。天よあれ、地よあれ、人はここに」
言葉を紡ぐマリカに答えるように、マリカの周囲から緑色の風が流れし、優しく部屋の中に満ちていく。
「全ての災いを祓わん」
そう言いきりカードを、展開したファイトボードに置く。するとカードから光が溢れ――。
ファイトフィールドも無いのに、病室に
青ざめたような色会いの毛並みをした巨体に、牡鹿を思わせる立派な角。そしてその立派な虎の顔で輝く琥珀色の両目は僕たちの事を優しく見つめている。
その姿はファイトの時とは違い半透明だったが。かのクリーチャーから感じるもの凄い存在感、そして優しさは変わらない。
……ただ一方で普段のファイトで出てくる時と大きく違う点もあった。具体的に言うと、まず僕たちの目線の辺りの高さまで浮かび上がっており、そして前後両方の足を畳んで座っていて、更に身体をひねって曲げている。
そんな恰好をディアホーンがしているおかげで、僕たちは湊手嶋さんの様子をその巨体で遮られずに見ることができるわけだが。
もしかしなくても湊手嶋さんの様子を見れるように配慮してくれているんだろうか?
そんなことを考えているとディアホーンは何度か瞬きした後、湊手嶋さんの方を向く。息を吸うよな動作をした後、その大きな口を開き――。
“グオォォォォン!!”
そんな感じの、
――パァァンッ!!
と、湊手嶋さんを覆っていた黒い影がたやすく吹き飛んだ。
それを見届けたディアホーンはこちらを振り返り、僕たちを見つめるとにこりと微笑んで?空気に融けて消えていった。
「――今のがレガシー……なんか?」
「ぅん、これで部長さんは大丈夫だよぉ」
「! そや、ジグ!!」
はっ、として羽島さんが湊手嶋さんの元へ近づき、ベッドの中を覗き込む。
僕たちも湊手嶋さんの様子が見えるように、羽島さんの後ろ斜めの辺りまでベッドに近づく。すると……。
「……ぅぅん」
閉じられていた口から小さく声が出て、瞼が震える。やがてゆっくりとその瞼が開いていき。
「――ここは……あれ、……リナ?」
はっきりと開かれた瞳が動き、羽島さんを捉える。それを見た羽島さんは湊手嶋さんの手をギュッ!と握り。
「……おはようさん。ようやく起きたな、この寝坊助め」
そう言いながら、静かに、ほんの少しだが涙を流していた。
「待って、ここは何処……?なんで僕に点滴が!?リナなぜ、不良みたいな恰好をしてるんだい?あと後ろの人たちは?」
「ちょっと待ってぇな……、少し感情の整理がつかへん」
「……感動の場面中悪いけど、看護師さん呼んだ方が良いよな?」
「ぁー、部長さんの意識もしっかりしてきたし。良いんじゃないかなぁ」
そんな感じのやり取りの後、入院中一度も使われることのなかったナースコールを押し。
やってきた看護師さんが目覚めている湊手嶋さんに驚き、慌てて担当の医師を呼びに行き。
その間、今までの事を羽島さんから少しずつ聞いていた湊手嶋さんなのだが。
「一年も経ってるのかい!?」
と、驚愕の声を上げ。大きな声を久しぶりに出したことで咳き込み。
その背中を羽島さんが優しくさすっていた。
――これで占光高校Life部部長の原因不明の入院事件は解決されたのであった。
ディアホーンさんは喫茶店での会話を聞いているので、今回とても協力してくれてます。
あまり積極的にやりたい事を見せない普夫君が、珍しくやる気を出しているので、師範と一緒に成長を見てきた立場として手助けしてあげたい気持ちが強いです。
また、リナパイセンとジグ部長の関係性も聞き、こんな磨けば光る原石の邪魔するとか許せん!とおこモードでもあります。
原作の掲示板回でも紳士的な精霊に名前があげられる人()だし、優しくて善い精霊なんだと解釈しました。