IFルート ~早期にリナ先輩と接触ルート~   作:oota

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 今回は途中で時間が結構飛びます。その間に色々あったことをちょこちょこ説明する感じの話です。

 副部長の強さについてはジグ部長からも高めに評価されていたこと。
 リナ先輩もそれは否定していなかったことから、エレウシスの予選大会頃なら比較的近い腕前だったと判断しました。
 それに加え本作では普夫くんとリナ先輩のファイトを見て、やる気多少が出ており。普夫くんのデッキ構築論などを聞いたので、デッキに使い勝手のいいカードを足すなどの改造。
 また時間がある時に一人回しで練習していたりで、腕前がより上がっている感じです。


7話 それから

 湊手嶋さんが目覚めてから、担当の医者が来るまでそう時間はかからなかったが。

 その間に何も無かったと言われると、実は有った。

 

「ぁー、こんな所にぃ」

 

 そう言ったマリカは湊手嶋さんが居るベッドに近づくと、枕の下に手を入れた。

 

「見つけたよぉー」

 

 枕の下から引き出した手には弱々しいが黒いオーラを放つカードが握られていた。

 

「それは、確か僕が拾った……」

 

「力を使って姿を隠してぇ、ずっと近くで生気を吸っていたみたぃ」

 

「それが例の闇のカードっちゅう奴か。……持っても平気なん?」

 

 そう羽島さんが少し険しい表情をしてカードを見つめている。

 まぁ親友を意識不明にした元凶が、実はずっと近くに隠れていたのだ。そりゃいい気分じゃないだろう。

 

「うん、さっきディアホーンの力を受けて弱ってるから平気だよぉ。だからぁ……えいっ!」

 

 マリカはそう言うと両手で闇のカードを引き裂く、縦に一度、横に一度。

 頑丈なはずのカードがあっさり破られる。すると闇のカードはさらさらと、砂のようになり消えていった。

 

「これでもーまんたい!」

 

「……目の前で見せられた以上、納得するしかないが。闇のカードって本当にあるんだなぁ」

 

 どこか遠くを見るような感じで湊手嶋さんが呟く。一年間も眠っていた上、今までの常識を覆すものを見たのだ。

 当然精神的に疲れもするだろう、ずっと悪夢を見せられていたらしいし。

 そう考えていると部屋の扉が開き、看護師さんと恐らく担当の医師であろう女性が入ってきた。

 

 

 

「初めまして……になるのかな?あなたの担当をしている□□です。よろしくお願いします」

 

「えっと……こちらこそよろしくお願いします?」

 

「うん、意識はしっかりしているようね。お友達達が面会している時に目が覚めるとは……よかったねぇ」

 

 □□医師はうなずきながら嬉しそうにしている。一緒にいる看護師さんも同じように嬉しそうだ。

 

「さて、意識を取り戻したところで悪いのだけど、湊手嶋さんには幾つか検査を受けてもらいたいのよ。その為、悪いのだけど今日の面会はここまでになってしまうわ……」

 

 すまなそうな表情で□□医師が僕たちに告げる。

 

「わかりました。なに、目を覚ました以上は話す機会はこれからも一杯あるし、平気です!むしろ何か問題ないかしっかり検査をお願いしますわ」

 

 羽島さんが嬉しそうに答える。それを見て□□医師はまた嬉しそうにうんうんとうなずく。同じように僕とマリカもうなずいておく。

 

「ありがとうございます、しっかり検査するので任せてください!……それと、湊手嶋さんのご家族へのご連絡はこの後になります。

 まず、本当に意識が戻ったのか、先に確認をする必要があったので……。検査が先になってしまいますが、後で面会の時間はしっかりご用意します」

 

「いえ、大丈夫です。先生の方こそお気遣いありがとうございます」

 

 □□医師はすまなそうに頭を下げ謝罪をしながら言い。それを見た湊手嶋さんは慌てて礼を言う。

 もちろん先生の行動は至極まっとうなものだ。意識が戻ったのか、しっかり確認せずに家族の方に連絡をしてしまう方が問題である。

 

「良かったら検査の準備の間にご家族の方と電話しますか?ナースセンターにある固定電話からになってしまいますが……」

 

「あ、よろしくお願いします。……だけど何を話せばいいのかな?自分としては目が覚めたら一年も経っていたので、何を言うべきか……」

 

「なんでもええと思うで?面会する時、たまにジグの親と会う事あったんやけどな。

 とても心配しとったからなぁ……久しぶりに声が聞けるだけでも嬉しいやろ」

 

「そっか……そういうものか」

 

 羽島さんが言ったことを聞いて、湊手嶋さんはこくりと頷く。それを見て僕は丁度いい頃合いだと判断した。

 

「じゃあ僕たちはそろそろ行きますね」

 

「そうしよっかぁ」

 

「じゃ、今日はこれで帰るわ。……そや!良かったら後で家族と面会する時に携帯持ってきて貰うとええんちゃうか?そうすりゃ、うちで良ければ何時でも話聞いたるで?」

 

 羽島さんは良いことを思いついたとばかりに手を叩きながら言う。それに賛同するように□□医師もうなずきながら口を開く。

 

「そうね。それ以外にも本とか持ってきて欲しいものがあれば、電話で話すときに伝えて下さい。

 いま思いつかなくても、後で思いついたら看護師の人に言ってくださいね。こちらからご家族の方に伝えます」

 

「わかりました」

 

「それでは失礼します」

 

「ああ、えっと茂札くんとマリカちゃん……だったよね?……ありがとう」

 

 そう言うと湊手嶋さんは頭を下げて僕たちにお礼を言った。それに対し僕は軽く手を振り、気にしないでと伝える。マリカも似たような感じだ。

 

「いえ、お気になさらず。学校で会えるのを楽しみにしていますね」

 

「早く良くなるといいねぇー」

 

「ほんじゃなー」

 

 ――そうやって、僕たちは病室から出ていたった。その足取りは入った時とは真逆で、軽いものだった。

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 そんな感じで、何事もなく湊手嶋さんを助けることに成功してから数日が経った。

 あれから羽島先輩に教えてもらった情報では、湊手嶋部長の検査結果は体に異常なし。

 一年程の昏睡状態にあったにしては体重・筋肉の減少などは問題にならない範囲。これは入院中も確認していたことだが、不思議なことらしい。

 無論、多少のリハビリは必要だけども、それも一週間程度で済むという驚異の短さ。検査や経過観察を含め、長くても二週間程度で退院できるとのこと。

 また胃腸などが弱っている様子もなく、食事などはすでにおかゆと胃に優しいおかずの食事が始まっているらしい。

 早ければ後5日ほどで退院できるそうで、羽島さんは嬉しそうに話していた。

 

 このことについて、僕がマリカを経由したメールで師範に聞いてみたら。

 おそらく闇のカードが少しでも長い期間、生気をより多く吸い取る為に自身の力を使い、湊手嶋部長の肉体が弱らないようにしてたのだろうと返事が来た。

 師範曰く、

 

「人の意識を奪うようなカードなら、肉体がどうなろうと気にしないような奴が殆どだ。……本当にその嬢ちゃんは幸運だったな」

 

 とのこと。

 この話を聞いた時の羽島先輩は「おっかないわぁ……」と体を震わせていた、まぁ誰だってそう思う。

 拾ったカードに自分の生命力を吸い取られて命を落とすとか、冗談じゃない。

 

 ――そして湊手嶋さんを助けてから僕の周りに起きた変化。その一つが、羽島さんとの交友関係である。

 ……といっても浮ついたような関係ではなく、ごく普通の友人関係である。

 相変わらず羽島さんは今のLife部に顔を出すつもりはないようなのだが、強い相手とLifeでファイトはしたいらしい。

 かといって、まだ入院中の湊手嶋さんと面会中にファイトをする訳にもいかない。そこで相手として目を付けられたのが僕というわけだ。

 

 そういう訳で僕の日常に、放課後に部室へに行かず、近場のカードショップで彼女とのファイトをする日ができた……という訳である。

 部活に参加しない日が増えた理由を副部長に伝えた時、複雑そうな表情をしていたが何だったんだろうか?

 普通にカードショップに集まって一緒に遊ぶだけである。二人で買い物に行くわけでもないし、前世でも良くあったことだ。

 

 そういう意味では嬉しい気持ちが無いかと言われれば……()()()()

 

 部室で他の部員達とゆるーく遊ぶのは勿論楽しい。

 そしてカードショップで羽島さんとファイトするのも。デッキ構築や、新発売のカードパックについて話すのも楽しい。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 羽島さんと一緒に遊ぶようになってまだ数日だが、彼女と過ごす時間は悪くない。

 相変わらず革ジャンにガムを口に含んでいる不良スタイルだが、その雰囲気は最初にあった時よりも多少穏やかになっている。

 そして時折見せる荒々しい態度も、僕からすれば全然かわいいものだ。

 

 ……うん、本当にかわいいものだ。隙あらばロマン砲ぶっぱしようとする奴や、少しミスると即座に複号してくるあの人。

 火力で燃やし尽くすあのオッサンや、迷宮で脳味噌を焦げつかせてくる陰険女狐。

 ……そういった濃い連中と比べれば。

 

 まぁ、そんな感じで羽島さん相手に余裕の態度で接していたら、気に障ったらしく腹パンされてしまったが。

 その時つい腹筋に力を込めて受けてしまったので、殴ってきた羽島さんの方が手首を痛めた。それ以来彼女は僕に対しムカついた時は肩や頭を叩くようになった。

 そして彼女が手首を痛めた話は()()にとっての笑い話となっていた。

 副部長なんかはその話を聞いた時は思いっきり爆笑してしまって、羽島さんに殴りかかられていたが。

 

 ……そう、湊手嶋さんを助けてからもう一つの変化があった。

 僕と副部長、そして羽島さん。加えて時々マリカも混じった、この四名での交流ができたことである。

 この関係性の始まりは副部長だった。現在のLife部と今後のことについて、湊手嶋さんに話したいとのことで。

 だから病院の場所を知っている僕が案内を頼まれて、一緒に面会しに行った時に。偶然、面会に来ていた羽島さんと僕たちが遭遇したのだ。

 

 そして湊手嶋さんとの面会が終わった後、近くのカードショップの休憩スペースを借りて三人で話していると。

 気にくわないことがあったのか羽島さんが副部長に喧嘩を売り、副部長も怒りながら喧嘩を買い、僕がジャッジをする形で二人がファイトをした。

 

 お店のバトルフィールドとそれぞれの手持ちのバトルボードを使ったスタンディングファイトの結果は……互いに激しく削りあった末、羽島さんの辛勝だった。

 この結果には羽島さん自身も驚いていたのが印象的だった、まるでもう少し楽に勝てると思っていたような……。

 それに対する副部長は歯を食いしばり、悔しそうな表情をしていた。

 

「……運が良かったな」

 

 と、定番の負け台詞を言う副部長。だけどその目にはファイトに負けた悔しさだけでなく。

 諦め・迷い・未練、などといった複雑なものが見えてしまって……。

 それを見た俺はつい、

 

「じゃあ感想戦しましょうか」

 

 と言いだしていた。それを聞いた二人はそろって

 

 ((コイツマジか……!?))

 

 と驚きの表情を向けてきたが。

 

「ここまでギリギリの接戦だったんですし、感想戦した方が二人にとっても良いと思いますよ?

 次に戦う時に活かせますし……話したいことがあるなら丁度良い機会です」

 

 そう言う俺の言葉に毒気が抜かれたのか、少し間を空けてから二人とも軽く笑いだした。その後休憩スペースへ戻り、飲み物を飲みながら三人で感想戦をしたのだった。

 

 ――それが僕と羽島さん、そして副部長といった交友関係ができた切っ掛けだった。

 

 余談だがこの最初の感想戦での飲み物は、負けた副部長が奢ることとなり。これ以降、このメンバーで集まる時はじゃんけんかファイトで負けた奴が奢るのが定番となった。

 

 

 そしてこの交友関係の中に時間が有る時のマリカもたまに混じる様にもなった。なんでも師範による指示らしい。

 その理由だが、湊手嶋さんは一年ほど闇のカードに憑りつかれていたが、そんな彼女の面会に羽島さんは何度も行っていた訳で。

 もし“秘虎”が始末した以外の闇のカードやファイターが関わっていた場合、既に目を付けられている可能性があるという。

 そして仮にそいつらが居た場合、湊手嶋さんに憑りついていたカードが消滅したことをきっかけに動き出すかもしれない。

 だから念のためにマリカと羽島さんの間で交友を深めておく……、ということらしい。

 ついでに年齢の近い友人がいた方が良いじゃろ、という打算もあるらしいが。

 

 そんな感じでこの四人による交流が行われるようになったのである。集まる場所は喫茶店だったり、カードショップの休憩スペースだったりなど、様々だ。

 僕や羽島さん、副部長との間での会話の話題は『もうすぐ退院できそうな湊手嶋さんについて』

『Life部は今年の夏のエレウシスを狙うのか』『受験勉強もあるから羽島、お前が副部長やってくれよ』『茂札はんでええんちゃう?』などといった学校の部活関係のもの。

 

 マリカも居る時は『気雲流ってどんな武術?』『やっぱりワックスかけて、ワックス落とす、みたいな鍛錬するのか?』『茂札はんに最近やっている運動の事聞いたけど、本当なん?』

『うちの部室の金庫の封印、道場の人なら解けないか?』など、道場関係の話。

 

 その他にたわいもない日常の雑談をしたり、テーブルやボードでファイトしたり……。

 部活に行っていない時に集まる程度のゆるい関係だが、知人・友人とも言えなくもない関係を僕たちは作っていた。

 その中でもマリカは羽島さんと仲が良くなったようで、最近は相手を殴る時のコツなどを羽島さんに教えていた。

 その練習台はなぜか僕と副部長で、副部長は相手の攻撃の躱し方や受け流し方を覚える羽目になった。

 そんなかわいそうな目にあった副部長の心の底からの発せられた、

 

「メガネは止めろ!分類的には医療機器なんだからな!?」

 

 という必死の叫びにより顔を狙った攻撃は無かったが。代わりに胴や腕狙いの攻撃になった。

 流石にこれはどうかと思い、マリカになぜこんな修行めいたことをする理由を聞いたのだが。

 

「ぅーんとねぇ。闇のファイターが出てきても、カードの力を使う前に殴り倒せばいいんだよ?

 あと闇のファイトだとー、ファイトボードを壊されたらその時点で負けになっちゃう。だから少しでも庇い方を覚えといたほうが安心!」

 

 という説明を聞いた羽島さんと副部長は、その内容に少し引きつつも修行を受け入れ、互いに怪我しない程度にボカスカ殴りあうようになった。

 

 

 ――そうして、僕たちの警戒に対し穏やかに時間が過ぎて行き。

 

 喜ばしいことに湊手嶋さんの退院日が無事に決定したことで、僕たち四人は喫茶店に集まり簡素ながらもお祝い会を開いていた。

 

「いやぁー!これでもうすぐ部活で暴れられるな!あの軟弱者ども、うちとジグで叩き直してやるわ」

 

 と、羽島さんはライバルが帰ってくることを喜びつつ。思いっきり部活で暴れる宣言をして。

 

「馬鹿か、その前に勉強の遅れやファイトの腕前を取り戻す方が先だろうが。……まぁ部長が戻って来てくれるのは嬉しいがな。オレの仕事が減るし……」

 

 副部長は真面目なことを言ったあと、喜びを隠すように捻くれたことを言う。

 

「んー、まだ周りに気を付ける必要はあるかもしれないけどぉ。多分ここまで待って動きが無いなら、闇のファイターとかは関わっていないと思うよぉ」

 

 マリカも湊手嶋さんと羽島さんの周囲には、もう彼女達を狙う存在はいないと判断して嬉しそうに言う。

 無論、何か起きた時にはすぐに動けるように備えてはいるらしい。

 

「僕は腕前を取り戻した湊手嶋さんとファイトするのが楽しみだなぁ」

 

 そう僕の本心からの言葉を出す。すると周りのみんなが少し笑いつつ反応する。

 

「本当にファイト馬鹿やなぁ……ジグも楽しみにしとるで」

 

「フツ兄のファイト馬鹿は昔っからだからー」

 

「相手は病み上がりなんだから、そこらへんの配慮しろよな馬鹿」

 

「うるせー!流石にわかっていますよ。まずは部室にあるサンプルデッキでリハビリをですね……」

 

 そんな感じで湊手嶋さんの退院お祝い会(本人不参加)をした翌日。

 

 

 

 ――ある少女が部活にやって来た。

 

「君、中に誰か知り合いが居るか?」

 

「えっ!?違います!えっとドアは……ですね……」

 

「大丈夫。ゆっくりでいいから落ち着いて。……なるほど、副部長ちょっといいですか?」

 

「なんだ?」

 

 

 ――そんな感じで少女の幸せな体験入部の時間が始まり。

 

 

 

 ……それは三日目に起きた出来事で終わった。

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

「も、茂札さん!?大丈夫ですか?だ、誰か救急車を……」

 

「盗もうとしたんだ! じゃなきゃこんな事起きるはずがn」

 

「やかましい!!」

 

 困惑しながらも助けを求める天儀さんを遮るように、デカい声で妙なことを言い出した部員を怒鳴りつけ。

 オレは右手から血を流しぐったりとしている茂札へ近づいた。

 

「副部長さん……?」

 

 茂札の傍で顔を真っ青にしている天儀さんが、オレに助けを求める目で見つめてくる。

 

「茂札はオレが保健室へ連れていく、救急車も呼ぶから。病院、いや道場の方か?……とりあえず落ち着け」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「……多分大丈夫だから、安心しろ。ゆっくり深呼吸しな。……そして天儀さん、()()()()()()()は絶対に常に身に着けて、いつでも取り出せるようにしておくんだ」

 

 目の前で急に人が傷ついてパニックを起こしているのだろう。そんな彼女に落ち着くように言葉を掛け、同時にこの厄介事を起こしたデッキ。

 ……この部に残されていた()()()()()()()()に目を向け、それを手放さないように伝える。

 

「え?」

 

 天儀さんが少し困惑した表情を浮かべるが、無理もないだろう。彼女にとって、このデッキは箱に入っていた曰く付きのデッキでしかない。

 だが、少し前のオレと同じ考えの奴がもしも居るなら。素人同然の彼女が持ち主だと気付けばすぐに襲われるだろう。

 ……悔しいが、このデッキに宿っているカードの力が守ってくれることを期待するしかない。

 

「ほらお前たち!今日の部活はもう終わりにするぞ。部室の片づけをしたら、三年生の誰かが鍵を職員室に返しておいてくれ」

 

「……わ、わかりました!」

 

 オレが指示を出したところでようやく部員たちが動き出した。それでも『例のデッキ』を見つけてからの、妙な空気に包まれたままだが……。

 

「それじゃ俺は茂札を運ぶから、天儀さんも部室の片づけやったら帰っていい。ただし『そのデッキ』は必ず持ち帰って、誰にも渡さないように。良いね?」

 

「えっと……、はい」

 

 そうオレが天儀さんにも指示を出し、更にデッキについて念を押しておく。

 それから一人で茂札に肩を貸す形で部室の外へ運びだす。

 

 保健室を目指しながらも、茂札のポケットから携帯を拝借しメールを書く。あて先は最近知り合ったカンフー娘(マリカ)

 内容は『茂札が恐らくカードの精霊に傷をつけられて意識を失っている、病院とそちらの道場のどちらに連れて行った方がいいか。』

 起きた問題を伝えるメールをなるべく早く書き終えて送信し、茂札を保健室へ運んでいく。

 傷ついた右手に天儀さんが巻いたハンカチが、既に赤く染まってきている。

 

「――クソが」

 

 そう呟きつつも、体に力を入れ運んでいく。途中で出会った男子生徒が、協力してくれたので保健室へは早く辿り着けた。

 校医の先生が驚きつつも怪我の処置をしていると、茂札の携帯にメールが届いた。

 送り主は先ほどメールを送った相手、内容は迎えにこちらの学校まで来るというもの。高弟?という人が車を出してくれるのですぐ着くらしい。

 

 素早い対応に驚きつつもオレは校医の先生に保護者が迎えに来るので、そのまま病院に連れていきますと伝える。

 校医の先生も展開の早さに驚いていたが受け入れてくれたので。自分が保護者の人を保健室まで案内しますと伝え、校門へ向かった。

 

 それから少ししたら校門の近くに車が止まり、中からマリカと修行着?を着た高弟だという男の人が出てきた。

 流石にマリカが校内に入ってくると面倒なことになるので車の近くで待っててもらい、高弟の人を連れて保健室へ向かう。

 保健室で校医の先生に簡単に挨拶、茂札の奴を車に連れていく。高弟さんが軽い荷物のように茂札を持ち上げたのを見てオレを含め保健室にいた人はびっくりしていたが。

 

 校医の先生と茂札を運ぶのを手伝ってくれた生徒にお礼を言って、保健室を出た。そのまま校門前の車に戻り、道場へ向けて移動を始める。

 

 道を進む車内の中、心配そうに茂札の手を診るマリカに説明を頼まれ、オレは起きた出来事を話し出した……。

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 ……そんなことがあったと、道場で意識がはっきりした後に副部長から聞いた。

 

 

 ――そして数日後、僕はLife部を退部することになった。

 




 本作の副部長は事前にマリカちゃんと交流があったので、レガシーの持つ力を直接目にする機会がありました。同時にレガシーが普夫くんにあっさり敗れているのも見ています。

 そのため天界龍とそのデッキを見た時の感想が、『伝説の三連覇はこのカードの力もあるけど、それと同じくらいにこのデッキを使いこなした先輩の腕前が凄いな』となりました。
 故に三年という時間をかけて欲したカードの魅力に負けなかった感じです。
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