普夫くんは一切出てこないでので、ご了承ください。
副部長が普夫くんを退部させた理由(ざっくり)
大多数の部員がありえん話を信じて、茂札敵視している。このままだと茂札+(相手の部員)が危ないので、すまないが退部してくれと副部長が頼み込む。普夫くんも闇のカードとかを現時点で知っているので、いいように部員が利用されないように、と考え了承。
そのため原作とは違い、副部長とは退部後も連絡を取ったりアルバイトの合間にファイトすること自体はある模様。ただ直接合う頻度は受験対策がいそがしくなって来たので大きく減った。
――茂札をLife部から退部させた日の放課後、オレは学校から少し離れた喫茶店でリナの奴と会っていた。
簡単なあらましは既にメールで伝えているが、向かいの席に座るリナの表情は険しい。
それも無理はない。大事な相手を助けられた恩がある相手であり、それなりに親しい友人でもある相手が、盗人だという汚名を着せられた上に部活から追い出されたのだ。
……だが、こうするしかなかった。
「茂札の奴には悪いと思っている。――だが退部の件は覆さない。部活中に茂札とも相談したが、これしかなった」
「……ホンマにか?」
リナが鋭い目つきで俺を睨む。その雰囲気は湊手嶋さんが入院していた時と同じか、それ以上の苛つきや怒りを感じる。
そんな羽島に対し、オレは注文したコーヒーを一口飲んでから話しだす。
「七対三……それが今の部活内の派閥差だ」
「あ゛ん?」
「……本気で茂札があのデッキを奪おうとしたと信じ、天儀にすり寄っている奴らが七割。そんな奴らの事を不気味に思い、今の部活の空気を嫌がっている奴らが三割」
「……そのアホどもに気を使うため、普夫はんを退部させたんかオドレは? あ゛ぁん?」
「んなわけ無いだろ。やれるならその馬鹿どもを退部させてるわ。……今あの馬鹿どもを退部させるのは不味い」
「…………」
オレが言った言葉に対し、リナも自分で頼んだ紅茶を飲みつつ思案する。
やがてどういう意味か気づいたのか、眉間にしわを寄せつつ口を開く。
「例の天儀って一年が封印を解いたデッキ、その存在が広まると不味い。そして馬鹿どもを放り出したら十中八九、アカンことになるって訳やな?」
「そうだ、あの馬鹿どもは目の前で人に傷をつける程の力を持ったデッキを見た。そして今あいつらを退部させてみろ、不満を発散すべくべらべらと周囲に話すだろうよ」
「そして闇のカードやファイターの耳に届いたら……っちゅう訳やな」
「それはまだマシな方だ。退部させた馬鹿どもが闇のカードを持たされて、送り込まれてくる可能性もあるぞ?」
「流石にそれは無い……。いや、ありえると考えて置いた方がええと言う訳か」
「ああ、……茂札を退部にさせたのもそれが理由だ。部員の大半はあいつが盗もうとしたと決めつけ、敵意をむけてくる。まともな部員も面倒ごとには巻き込まれたくないから近寄らない。そんな中、天儀は体験入部で色々教わったお礼の気持ちや、怪我をさせた負い目などから、孤立している茂札にも気にせず近づいていくだろう」
そこで一旦口を閉じ、言葉を区切る。少し間を空けて再び口を開く。
「だが近づけば取り巻きの馬鹿が騒ぎ不満を溜めるだろう。……最悪部活内でリンチ発生だ。あいつなら返り討ちにするだろうが、前まで一緒に楽しくファイトしていた相手を殴らせたくは無い」
「確かに、普夫はんにそんなことはさせたく無いなぁ」
「あとリンチが起きるレベルでなくても部活内で不和があった場合。闇のカードやファイターが嗅ぎつけた時に、部員たちに闇のカードをばらまく可能性が高くなってしまうかもしれない。だから、部を辞めてもらった方が茂札と天儀たちには良いと思ったんだが……」
「茂札はんはわかってくれはるやろ。せやけど彼女は、納得してくれはるやろか」
「わからん、そこばかりはあの二人の間での問題だ。……俺たちじゃ嘴を突っ込むのにはまだ二人との友好度が足りん」
そうリナと話しつつコーヒーを喉に流し込む。砂糖もミルクも入っていない、黒色の苦みが舌の上を通り過ぎる。
……オレが感じる苦みはコーヒーによるものだけではなく、これから話す内容によるのもあるだろう。
「……羽島。オレがなんで占光高校を選んで入学して、Life部に入ったか知ってるか?」
「? ……知らんけど」
「
オレがそう言うとリナはピクリと眉を動かした。
まぁろくでもない理由だからな……。
「
過去の自分の考えを吐き出し、コーヒーを飲む。まったく……苦いものだ。
「茂札の奴にも話したが、馬鹿にされたよ。『実在するのか分からない、怪しい伝説のデッキを理由に学校を決めたんですか?』ってな? それ以外にも家からも近いのも理由の一つだ! と言ったらあの野郎、笑いやがって!」
「それは笑うやろ……!」
オレの話した内容に毒気が抜けたのか、リナの雰囲気は少し和らいだ。
そのままオレに対し、冗談めいた形で問いかけてくる。
「……天儀に封印を解かせて、自分がそれを手に入れようとした……とかでは無さそうやな?」
「当たり前だ。天儀があの箱の封印を解けるって分かるわけないだろ?……実際に開けられる訳ないと考えて、いつもの恒例行事で箱を渡したらこの結果だ」
両腕を広げてやれやれと首を振る。まったく、オレの三年はなんだったんだろうか?
オレの話を聞いたリナは思うところがあったのか、少し怒りを収めたようで雰囲気がわずかに柔らかくなった。
そんなリナの様子を見ながら話し続ける。
「最も、肝心の中身はオレには扱いきれなさそうだが。恐らくレガシーらしきカードも能力は強いが、無敵って訳じゃない。あのデッキでエレウシス三連覇を成し遂げたのは、デッキの持ち主だった先輩の腕もあったんだろうな」
「ほーん、どんなデッキとカードだったん?」
「教えん」
「は?」
オレの言葉に再び雰囲気を剣呑なものに変えるリナ。まぁこう言われればそうなるよな。
だがいま教えるのはかえって良くない。
「羽島、ぶっちゃけるとな。お前には天儀への鉄砲玉としてぶつかって欲しい」
「はぁ!? なんでそんなことする必要があるん!?」
「まぁ落ち着け……!」
思わずといった様子で声を荒げるリナに手をむ向けなだめる。
そうすると、リナの奴は苛立ちながらも言葉を紅茶と共に飲み込んだ。
「……理由は」
「その1、一般人のオレでも知ることができた伝説のデッキという話。一般人じゃない奴らならもっと知ってる奴らも多いかもしれないだろ?そいつらからすれば、素人同然の天儀がデッキを持っている今の状況は……」
「鴨がネギしょって鍋を抱えて歩いとるもんやな。……つまりうちに天儀って娘を育てろと?」
「まぁそんな感じだ。……だがファイトする時は全力でやってくれ。何ならアンティで例のレガシーを賭けさせて、奪うつもりで頼む」
「ええんか?」
「問題ないだろ? 例のカードを手に入れれば、マリカの道場の人たちに預けることもできる。そして本気のお前に勝てるなら……ある程度、あのカードを十分に使える腕があるってことだ。茂札とのファイトである程度動かし方は掴んでるようだからな」
「それでデッキとカードについてうちに教えへんのは?」
「初めて戦う相手だし。お前の場合は先入観を持たないように、情報はいらないと思ってな」
「……お気遣いどうも」
そう言うとリナは横を向いて頬杖を突く。基本的に対戦相手の情報は普通は有る方が有利だ。
だがファイトを楽しむのであるならば知らない方が楽しい場合もある。
もっとも今回の場合は
「まぁ、とりあえずお前に関しては。不良の先輩が同じ高校のLife部一年生にとても強い奴が居ると聞いて、部室へカチコミかけてきた!……というかんじで頼む」
「わかったでー」
羽島が手をひらひらと振って了承の意を伝えてくる。
「そして理由その2、お前には部活において天儀の側につき、反主流派になってもらいたい。主流派になった馬鹿どもの頭にはオレがなる。上手い具合に湊手嶋部長と協力して、どうしようもない奴らだけは追い出してくれ」
「それがジグの奴には知らせるなって言うたわけかいな。……お前さん、自分ごと退部させるつもりか?」
「まぁ……オレの行動の所為でこの騒動が起きたというのもある。が、それ以上にな……さっき言った7割の馬鹿どもの中にどうしようもなく欲に溺れた連中が居る」
そう言って視線を下げる。目に入るのはカップに残っている黒い色のコーヒー。
「あれは腹の内でどうにかしてカードを手に入れようと考えている馬鹿だ。オレもかつてはそうだったから分かる、目の前で力を見て欲に負けちまった。オレが……
コーヒーに付いてきたミルクを入れる。色が黒と白、そして混ざった茶色のまだら模様に代わる。
「おまけに中にはカードだけじゃなく、天儀自身も狙ってる大馬鹿もいる。……そんな事を考える奴らとは思っていなかったんだがな、一度抑えが無くなると変わるもんだな」
まだら模様のコーヒーをスプーンでかき混ぜる。くるくる動くスプーンによって色が変わり、全て茶色のコーヒーとなる。
「あの様子じゃ、悪どい奴らに唆されたら簡単に動いちまう。マリカちゃんの話だと、闇のカードはそこら辺のタガもぶっ壊すんだろ?鉄砲玉には丁度いい……」
そう言うとコーヒーを飲み干す。先ほどよりも苦くは無いが、オレの表情はより苦みを増したものになっているだろう。
「今年は部員達も熱心にエレウシスを目指すだろうからな、地方予選へ出場するメンバーに名乗りを上げる奴らも多いだろう。当然、天儀も周囲に押されて参加する。となればあのカードの事も自然と広まる」
「部の中の不穏分子を、大会までに退部処分にするって腹かいな」
「できればな。……部活内に不和の種が広まっている状況で、天儀のレガシーの話が広がると。絶対に不和の種を芽吹かせて利用しようと企む奴が出る。」
「それを防ぐために責任を取って、副部長が一部の部員と共に退部すると?」
「副部長が、部員達が一部員に嫌がらせをするのを黙認したんだ。お前みたいにただ勝負を挑んだ奴と違って、明確に下心を持ってやった奴は退部処分にするのも納得がいく理由になるだろ?」
そう言って視線を上げてリナの顔を見ると、その表情は先ほどまでと違う理由の怒りに染まっていた。
そんな表情をされるとは思っていなかったんだがな……。
「うちにお前を斬り捨てろって?……うちはお前さんの事を多少は見直したんやけどなぁ……?」
そう不満を隠さずリナは言う。……やっぱり前は嫌われていたか。
まぁこちらも同じようなもんだったから文句は言えんが。
……だけどなぁ。
「……正直に言うが、少し前までのオレだったらあの馬鹿どもと同じ考えだったろうな。それこそ本気であのカードを狙って動いていただろうよ」
「今はちゃうん?」
「いやだって……レガシーとかいっても、マリカちゃんが茂札の奴に対処されてるのを何度も見てるからなぁ……」
「ああ……」
そこで二人そろって天井を見上げる。
頭に浮かぶのは自分たちでは中々勝てないマリカとそのレガシーであるディアホーン。
それを相手に互角どころか、むしろ優勢に戦う茂札の姿。色んなデッキを握ってそれをやるのだから頭が痛い。
オレはカードの精霊は見えないが、茂札に対処されるときのディアホーンは心なしか悲しい目で観戦者を見つめてくる。
「部室にあったデッキとカード。……そういやレガシーの名前は教えておく必要があるか。<律たるもの
そこで言葉を切り。眼鏡を指でクイッ!と、押し上げて次の言葉を言う。
「今の天儀を相手ならオレのデッキでも勝ち目はある!もちろん羽島、お前でもな」
「ドヤるなや!あほう!!」
そう言うとリナの奴は怒りを収め、ようやく笑った。
しかもただの眼鏡を押し上げる動きではなく、天井の照明に向けて角度をうまく合わせることで、眼鏡のレンズが光を反射してキラリと光る。
ふふふ……、これには茂札の奴も思わず吹きだすからな!
……だから。
「オレはもうレガシーを欲しいとは思わない。……持っていたら闇のファイターとか物騒な奴らに狙われそうだしな?オレに合わないレガシーカードでは、持っていても負けそうだ。そしてオレは部長よりも運がいい自信はない」
「……さよけ」
「欲に溺れた馬鹿どもは責任もって部から引っ張り出す。できれば湊手嶋さんが復帰する前に終えたいが、間に合わんだろうな……。だが入院していた部長の仕事として、荒れた部活の再建は丁度良いだろ?」
「まぁ、ジグは張り切るやろなぁ」
「天儀については……そこら辺は正直どうしようもない。茂札の奴と天儀さんの間での問題であるし。ただどっちかから仲介を頼まれたなら、やれるだけやる感じかね」
そう今後の事について話していると、真剣な表情になったリナがこちら見ながら口を開いた。
「……エレウシスはいいんか?」
その言葉にオレは少し動揺しながらも、答える。
「いいんだ、エレウシスを目指すと言ってたのも。伝説のデッキが手に入らないことから目を背けるものだった……もしくは、エレウシスまで勝ち進めば封印が解けるんじゃないか?って気持ちもあったのかもな」
「それは本当に、心から思っとるんか?」
そうリナはこちらの目をしっかりと見て問いかける。鋭い視線がオレを貫く。
だけどこれはオレの本心だ、そう……。
「本心さ、昔のオレにとっては。今は……どうだろうな」
空になったコーヒーカップを見ながら考える。
自分の腕前、持っているカード、使い慣れたデッキ、他の部員にリナや湊手嶋さんの腕前。
そして過去の映像で見た、予選大会やエレウシス本選に出ていた生徒達の実力……。
色々なことを考え、言葉にしようとして、ようやく纏まった。
「……オレじゃ
顔を上げ、リナの目をしっかり見ながら言う。
「
「……そうか」
オレの言葉を聞いたリナは、悲しそうに、だけど納得したような表情を見せた。
なんでだ?…………そういえばこいつ、前に相手の感情が分かるとか言ってような?
それが本当なら……恥っず!オレの葛藤も分かってるってことじゃないか!
どこか誤魔化す様に、けれど嘘は混ぜずに口を開く。
「別に、Lifeを止めるわけじゃない。部活を辞めてもカードショップでの大会とか、楽しめる場所はあるし。……もう顔を合わせない訳でもないし、学校の外でならお前らとファイトする機会もあるだろ?」
「まぁ……せやな!それならお前が言うとおりにエレウシス優勝まで進んだるわ!そうしたらエレウシス優勝チームの一人と戦う権利をやるで?」
「そいつぁ良い!大学で他の学生との自慢話に使えるぜ?」
そうオレは明るく振る舞う。それに合わせるようにリナの奴も明るく話す。
「だからさ……副部長として最後の仕事は任せろ。次の副部長は実力的にお前になるだろうしな。
そろそろ受験の準備で忙しくなるし、いい機会さ」
「……分かった、任せとき!」
そう言ってリナは紅茶を飲み干した。
ちなみに会計はオレの奢りとなった、前にファイトで負けた分とか言いだしやがって……!
文句があるんだったら次は勝ってみろだと?やってやろうじゃないか!
――そういう風に、わちゃわちゃと
普夫くん退部後のLife部。
ドロシーちゃんを盲信し、すり寄る集団のトップにこっそり副部長が就任。弱めの部員からドロシーのデッキを動かす練習相手としてぶつけていく。
同時に『本当にどうしようもない奴』のリストを作成開始。部活の再建の仕込みを進める。
また、今の部活の空気がいやな生徒に声を掛け、どうしても無理な人には退部を勧めて。まだ迷っている人には部長が戻ってくるまで待ってみてくれないか?と説得。
少しして副部長の陰謀()でリナ先輩がドロシーちゃんに喧嘩を売りに来る。カードを賭けたアンティでの勝負を激戦の末にドロシーちゃんが勝利。
なぜ襲ってきたか、そして部活内の変な様子について尋ねると副部長の事が出てきて……?
リナ先輩が復帰後、部活内では腕を磨こうとするドロシーとその相手をするリナ先輩の姿が見える様に。主流派は相変わらずドロシーにすり寄ろうとするが、リナ先輩に邪魔されるようになり、不満を溜め込む。そこへ長期入院していた湊手嶋部長が帰還!
湊手嶋部長の復帰に沸く非主流派と、それを心良く思わない主流派。その中でも質が悪い者達は『”伝説“に選ばれた、特別なドロシー』自身が部長の復帰を喜んでいるのが気に入らなかった。
そんな彼らはなんと『Life部の部長を”伝説“に選ばれたドロシー』にさせろという。
そう言いファイトで勝負を仕掛けて来たが、あっさり倒された彼らは退部処分を言い渡される。
そして彼らのリーダーが誰なのか聞き出すと、なんと副部長だった!
リナ先輩、ジグ部長の両者を連れたドロシーは副部長の元を訪れ詰問する。
それに対して副部長は「『何代も前の先輩が使った伝説のデッキ』に選ばれたドロシーを特別視するグループが誕生してしまった上、部員の大多数がそちらの所属になったので。副部長として監視の為にトップになった」と説明。
その上で受験勉強などと重なった結果とはいえ、部員たちの暴走を止めることができなかった責任は自分にある。そのため、特に素行が悪い部員のリストを作っていたので、彼らとともに退部することで副部長として責任を果たすと宣言。
そして占光高校Life部副部長最後のファイトとして、ドロシーと試合をしたいと申し出る。
その誘いを受けドロシーはファイトを行い、副部長に追い詰められるもギリギリで勝利。
副部長は自分よりも強い後輩の登場を喜び、ドロシーに賛辞を送りつつ。Life部を去っていったのだった。
そしてこの後、リナからこっそりネタばらしを受けたジグはお腹が痛くなったのだった。