櫛田の中学に転校した   作:スクラップドラゴン

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孤独少女との接触

 

 

3年生の2学期期末試験が目前に迫る冬、俺の部屋にはストーブの暖かい熱気と、シャープペンシルが紙を滑る規則的な音が満ちていた。

 

 

「陽斗、ここの二次関数の最大値・最小値の求め方、これで合ってる……?」

 

 

机に向かった櫛田が、少し不安そうにノートをこちらに向けてくる。

俺は手元で読んでいた専門書から目を離し、彼女のノートに視線を落とした。

 

 

「うん、記述のプロセスも含めて完璧だ。yの変域の端の値を代入するところまで、落とさずに書けてるな」

 

「本当……? よかったあ。陽斗の教え方って、学校の先生の100倍分かりやすいんだもん」

 

 

そう言って胸をなでおろす櫛田の表情には、かつてクラスメイトからのいじめに怯えていた面影は微塵もない。今の彼女の成績は、学年でも上位に食い込むほどに跳ね上がっていた。

 

俺は転生者であり、チートな知能を持っている。そのため、中学レベルの勉強を教えることなど造作もないことだった。だが、この「3年生の2学期期末試験」という時期は、俺自身にとっても少し身の振り方を迷う時期でもあった。

 

高校受験の内申点に直接響く最後の定期試験。ここでいつも通り全力を注いで『満点』を取りに行くべきか、あるいは少し手を抜くべきか。原作知識を持つ俺としては、あまりに目立ちすぎると物語の歪みが大きくなるリスクも分かっている。

 

だが、それ以上にこの時期は、高校の推薦枠や一般入試に向けた「全国模試」と「定期試験」の対策を並行して行わなければならないため、点数の調整や櫛田のサポートも含めて、スケジュールの舵取りが物理的に難しい時期でもあった。

 

 

「陽斗のおかげで、模試の判定もAクラスまであとちょっとのところまで来たよ。私、絶対に陽斗と同じ学校に行きたいから……頑張るね」

 

 

櫛田は強いモチベーションを瞳に宿して、再び問題集に視線を落とした。

 

あの公園の事件以来、彼女の中で何かが完全に吹っ切れたのだろう。他人の顔色を窺うための「偽りの優等生」ではなく、俺の隣に並び立つための「本物の秀才」になろうと、彼女は必死に努力を重ねていた。

 

そんな櫛田は、最近では殆ど毎日、放課後になると当たり前のように俺の家に来るようになっていた。

 

もちろん、四六時中ガリ勉をさせていては彼女の精神が持たない。裏ブログの件やいじめのトラウマを完全に克服したわけではない櫛田にとって、適度なストレス発散――ガス抜きは必須だった。

 

 

「はい、これ。今日の休憩用」

 

 

俺が冷蔵庫から取り出したのは、学校帰りに内緒で買っておいた地元の有名店のイチゴタルトと、生クリームが乗ったミニパフェだった。

 

 

「わあ……! 陽斗、これ、あそこの限定のやつだよね!? 嬉しい!」

 

 

櫛田の顔が一気に華やぐ。彼女はフォークを手に取ると、嬉しそうにパフェを口に運んだ。

 

美味しいものを食べている時の彼女は、本当に年相応に可愛い。こうして、俺の家という完全な安全地帯で、スイーツを奢って彼女の精神的なガス抜きをしながら、二人三脚で勉強を進める時間が、俺たちにとっての日常であり、絶対的な聖域になっていた。

 

 

 

 

――そして、2学期期末試験の当日。迷った末に、俺はやはり全力を尽くすことにした。結果は、いつも通り学年1位。それも、すべての教科で完全な『満点』での突破だった。

 

 

 

 

 

 

試験が終わり、結果の張り出しを見た帰り道。校門へと続く渡り廊下で、俺と櫛田の前に、一人の女子生徒が立ちふさがった。

 

長く美しい黒髪。ブレザーの制服を乱れなく着こなし、その切れ長の瞳に氷のような冷徹さを宿した少女――他クラスの、堀北鈴音だった。

 

彼女はいつも通り、周囲を見下すような、冷たい視線を俺に向けて口を開いた。

 

 

「水野陽斗君ね。……今回の期末試験も、全ての教科で満点だったようだけれど」

 

 

堀北は腕を組み、探るような目で俺を真っ直ぐに見据える。

 

 

「……ズルしてないわよね?」

 

 

あまりにも不躾で、傲慢な物言いだった。

 

その瞬間、俺の隣にいた櫛田の身体がピクリと強張る。彼女の瞳に、激しい怒りと、かつて自分を攻撃してきた者たちへ向けていたような、凄まじい「敵意」が宿るのを俺は肌で感じた。

櫛田は堀北を射殺さんばかりの鋭い視線で睨みつけたが、堀北はそんな櫛田の視線など、最初から存在しないかのように知らん顔を通した。

 

俺は櫛田を落ち着かせるように一歩前に出て、淡々と答える。

 

 

「当然だ。不正などしていない。ただ普通に解いただけだ」

 

「そう。ならいいのだけれど。……単刀直入に聞くわ、貴方、卒業後は何処の学校に行くのかしら」

 

 

堀北は眉一つ動かさずに、本題を切り出してきた。

 

 

「さあな……? まだ受かるか分からないからな。県立の何処かにしようと思っているが」

 

 

俺があえて曖昧に濁すと、堀北は鼻で笑うような態度を見せた。

 

 

「そう。貴方のその成績なら、何処の高校でも選び放題でしょうに。……なら、命令するわ。高度育成高等学校に来なさい」

 

 

予想通りのセリフだった。原作の堀北学を追いかける彼女が、なぜ俺を誘うのか。おそらく、学年トップの俺を近くに置いて、自分の競い合うライバル、あるいは利用価値のある存在としてロックオンしたのだろう。

 

 

「何故だ……? 唐突に言われても困るな」

 

「学費、寮費を含めた全ての費用が0円の高校よ。就職率、進学率も100%を誇る国営の学校。将来を現実的に考えるなら、行かない手は無いと思うのだけれど?」

 

 

堀北は自信満々に、まるで自分が絶対的に正しいと言わんばかりの口調でメリットを並べ立てる。

 

 

「……それ、本当に信用するのか?」

 

 

俺が冷めた声で問い返すと、堀北は不快そうに目を細めた。

 

 

「そう。どうやら貴方は、自分の実力に自信がないようね。その満点という成績すら、やはり疑わしいわ。実力がないから、国が保証する最高峰の学校に怯えているのじゃないかしら」

 

 

堀北は勝ち誇ったようにそう言い捨てると、それ以上の会話は無駄だと判断したのか、俺たちに背を向け、歩き出そうとした。

 

その瞬間、俺の後ろの櫛田から、ドス黒い、そして限界を超えた怒りのオーラが噴き出すのが分かった。ここで堀北を怒鳴り散らせば、彼女がこれまで築いてきた学校での平穏や、俺との生活にヒビが入るかもしれない。何より、櫛田の顔が今にも凄まじい「裏の顔」に歪みそうだった。

 

俺は瞬時に判断し、櫛田の小さな手を、ぎゅっと力強く握りしめた。

 

 

「っ……陽斗……」

 

 

櫛田が驚いたように息を呑み、俺の顔を見上げる。手の温もりから俺の意図を察したのか、彼女は辛うじて理性を保ち、凄まじい顔になるのを踏みとどまった。

 

俺は歩き出そうとする堀北の背中に向けて、静かに、だが明確な圧力を伴った声を掛けた。

 

 

「――待て、堀北」

 

 

廊下に、俺の声が低く響く。

その声に込められた異質な気配に本能的な何かを感じたのか、堀北の足がピタリと止まった。彼女は怪訝そうな顔で、ゆっくりと振り返る。

 

俺は手を握ったまま、櫛田を守るようにして、堀北鈴音を冷徹に見据えた。

 

 

「そこまで言うなら、俺の実力を見せてやるよ。――今から、俺の家に来い」

 

 

俺のチートな知能が、そして裏で操るドローンやハッキングの技術が、中学生の生温いプライドをどれだけ一瞬で粉砕できるか。

挑発してきた彼女に、本物の『格の違い』を教えてやるための招待状だった。

 

 

 

 






アンケート結果見ました、
Dクラスルートが多いですね…


ふむ…成る程…皆高育が信用できない模様ですか…

Dクラスルートに入った場合堀北のコントロールが重要になってきますね…

堀北は本来の動きと違う動きに持って行こうと思います。茶柱先生については特にアンチっぽくする気は薄いです(性格の悪さはそのままだけど)

話が変わるのですが個人的には夏ってよう実の2次創作を書きたくなるんですよね。去年も9月くらいに投稿したのですがリアルが忙しくなって中断しました、設定を思い出し次第、そちらも書いて行こうと思います。

因みに、そっちの作品とこの作品の主人公の能力の型式が似ています、ヒロインは違うけど…そしてスタートはヒロインに合わせてDクラスルート(主人公の能力考えるとあまり気にならないけど…)諸事情あってそっちの作品では綾小路がいません…

確か無人島試験開始した所で止まってたので設定を思い出し次第書いて行こうと思います。人気はまあイマイチだけど気にしません。

では…

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