スタンド使いのヒーローアカデミア   作:まだら模様

2 / 4
第2話:励ましの声

 

幼児期の終わり(4歳〜5歳頃)を舞台に、運任せの個性に対する葛藤や、にわか知識ながらも前向きに訓練に励む幽の姿を描いています。

### 第2話:検証と、小さな相棒

 

「ヘイ・ヤー!」が消えるまでの5分間は、驚くほどあっという間だった。

 

背中に張り付いていた奇妙なスタンドが、緑色の光の粒子となって空気中に溶けていく。それと同時に、俺の体を包んでいた謎のオーラも霧散し、全身から一気に力が抜けていくのを感じた。

 

「……消えた」

 

自室のベッドに倒れ込み、天井を見上げる。

 

頭の中には、確かに『ヘイ・ヤー!』という名前が刻まれていた。

 

ジョジョの奇妙な冒険に登場するスタンドだ。にわか知識の俺でも、それが「ただ励ましてくれるだけで、戦闘力はほぼ皆無」の能力だということくらいは今の時点でもなんとなく察しはつく。   

 

だが、不思議と絶望はなかった。

 

あいつが最後に残した「ソノ運ヲシンジロ!」という言葉が、妙に胸にストンと落ちていたからだ。

 

「よし……まずは検証だ」

 

翌日から、俺の「個性」に関する秘密の特訓が始まった。

 

幸い、まだ4歳児の日常だ。幼稚園に通う以外の時間は比較的自由になる。両親に怪しまれないよう、庭の隅や自分の部屋で、俺は何度も自らの内に眠る「スイッチ」を押し続けた。

 

数週間の試行錯誤を経て、俺の個性――のちに役所に登録することになる『幽波紋(スタンド)』のルールが、少しずつ明確になっていった。

 

判明した仕様は以下の通り。

 

1. 発動時間はきっかり5分。

 

2. 5分が経過するか、任意で解除すると、その時出ていたスタンドは消滅する。

 

3. *次に発動した時、顕現するスタンドは「完全にランダム」で入れ替わる。

 

4. *スタンドが顕現した瞬間、そのスタンドの名前だけが自動的に俺の脳内にインプットされる。

 

「……やっぱり、完全に運任せか」

 

ある時は、全身が白い糸で編まれたような人型(ストーン・フリー)が現れ、俺の指を糸に変えることができた。これにはテンションが上がった。

しかし、またある時は、ただのラジコン飛行機(エアロスミス)が部屋を飛び回り、機銃掃射の真似事をして焦った(弾丸は出さずに済んだが、制御が効かずに壁に激突した)。

 

さらに酷い時は、ただのコンセント(バステト女神)が床にぽつんと出現し、5分間何も起きずに終わったこともある。

 

「これ、戦闘中にコンセントとかヘイ・ヤーが出たら一発でアウトじゃねーか……?」

 

この世界はヒーロー飽社会などと言われているが、テレビをつければ毎日のようにヴィランによる凶悪犯罪がニュースで流れている。自衛のためにも、戦える力は必須だ。

 

それなのに、戦えるかどうかが「5分ごとのガチャ」にかかっている。スタープラチナを引き当てればオールマイト級の力を発揮できるかもしれないが、その確率は一体何分の一だ?

 

頭を抱え、小さな溜め息を吐いたその時だった。

 

「何暗い顔シテンダヨ、幽!」

 

不意に、背後から小気味いい声が響いた。

 

ハッとして振り返る。そこにいたのは、あの特徴的なひび割れた顔と、陽気な笑みを浮かべた緑色の相棒。

 

「ヘイ・ヤー!」

 

「オウヨ! また会えたな! 相変わらずお前は、この短い期間に何度も個性の訓練をして偉いじゃあないか。凡人ならとっくに投げ出してるぜ!」

「……お前、俺がにわか知識だからって、励ますためだけに都合よく出てきてくれたのか?」

 

「ハハッ! 運が良いんだよ、お前は! 5分間のガチャだって? 逆に考えろよ。どんなにピンチだって、5分耐えれば『次のチャンス』が巡ってくるってことだろ?」

 

ヘイ・ヤーは俺の肩をポンポンと叩きながら、親指を立てた。

 

「いいか、幽。お前は『全部のスタンドの使い方』を知る必要はねえんだ。にわか知識? 上等じゃあねえか。その場で名前を聞いて、直感で動かす。そのスリルを楽しめる奴が、最後に最高の運を掴むんだよ! お前なら絶対にやれる!」

 

「……っ」

 

その言葉は、じわりと俺の焦燥感を溶かしていくようだった。

 

そうだ。もしも固定された一つの個性だったら、それが「弱い個性」だった時点で詰んでいた。だが、俺の個性には無限の可能性(選択肢)がある。

5分ごとに状況が変わるなら、その5分をどう生き延びるか、どう工夫するかを考えればいい。

 

「……そうだな。悪くない」

 

俺は小さく笑い、拳を握りしめた。

 

幼児の体と同化しているせいか、ヘイ・ヤーの単純な励ましが、驚くほど素直に心に染み渡っていく。

 

「ありがとな、ヘイ・ヤー。お前が一番の当たり枠かもしれないな」

 

「へへっ、お目が高いぜ! じゃあ残り3分、とりあえず筋トレでもしとくか?」

 

「4歳児に筋トレは早いだろ」とツッコミを入れながらも、俺の心は完全に前を向いていた。

 

運任せの個性。上等だ。

 

どんなスタンドが飛び出そうと、それを使いこなして生き抜いてみせる。

 

俺と、まだ見ぬ無数の「背後の相棒たち」との奇妙な日々は、ここから本格的に動き出すのだった。

 




評価や感想、お気に入り登録などいただけるとうれしいです。
また出して欲しいスタンドを募集します!
どしどし書いていってください!
分からないスタンドも多いので、これを機に新しくスタンドを知りたいと思っています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。