元アストレアファミリアの拗らせ末っ子のクソデカ感情   作:なかりょた

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前回主人公覚醒しちゃったんですけど、あれは俺tueeeeの始まりとかではなくてですね・・・・スタートラインにやっと立ったてきな?まあ要するにあの軍人がざぁこ♡だっただけです。


蒼真と輝夜

ツクヨミ・晴明を斬ったあと、僕は屋敷へ戻った。脇腹の傷は浅くない。呼吸をするたびに痛みが走る。それでも足は止めなかった。

 

任務は終わった。

 

その事実だけを頼りに、身体を動かしていた。

 

月読祭前夜の貴族街はまだ騒がしい。灯籠の光が水路に揺れ、笑い声が遠くで混ざっている。その喧騒の中を抜けて本邸へ戻ると、空気が一変していた。

 

妙にざわついている。

 

廊下の奥に、実利派の人間たちが集まっていた。

 

「理想派がやったらしいぞ」

「正面突破でツクヨミ家別邸を制圧したそうだ」

「軍部の護衛もまとめて潰したって話だ」

 

思わず足が止まる。

 

柱の陰に身を隠して聞き取る。

 

「これで貴族派保守層は完全に理想派に傾いたな」

「あぁそれに、“理想派に逆らえば輝夜様が来る”って抑止力が完成した」

「しかも保守派にも恩を売った形だ。あれでしばらくは理想派が主導権を握る」

 

恩を売る。

 

その言葉が引っかかった。

 

「というか囮もいたんだろ?よく本命を見抜けたな」

「貴族派保守層から情報を手に入れたらしい。ツクヨミ・晴明は囮。陽動にすぎない」

「ツクヨミ・清明はただ理想を語ってるだけの馬鹿だ。本当の重要人物は別邸にいた補佐役だ」

 

……囮。

 

一瞬、理解が遅れた。

 

「じゃああの失敗作が斬ったのは……」

「偽物だよ。最初からそういう配置だ」

 

息が止まる。

 

僕が必死に追い詰めて、血を流して倒した相手は、本命ではなかった。

 

最初から意味が分かれていた。

 

姉さんが潰す“本物”と、僕が処理する“偽物”。

 

役割として切り分けられていた。

 

「理想派はうまいよな」

「輝夜様を表に出して抑止力にして、裏で政治を動かす」

「今回でさらに俺たちの動きが制限されるな」

 

その時、足元が少しだけ冷えた気がした。

 

全部、最初から政治だった。

 

僕の戦いも、姉さんの戦いも。

 

その中に“個人の意思”なんてほとんどなかった。

 

「それに当主様も輝夜様の性格をよく理解していらっしゃる」

「ああ、輝夜様がやらなきゃあの失敗作にやらせるって言ったんだろ?」

「あの失敗作はとうにこっちの世界にいるってのにな?あのゴジョウノ家の最高傑作の弱点が失敗作ってのも皮肉なもんだな」

 

 

「……蒼真」

 

声がした。

 

振り向く。

 

輝夜が立っていた。

 

輝夜は僕を見るなり眉を寄せる。

 

「その傷はどうした」

 

すぐに距離を詰めてくる。

 

「脇腹までやられている。医者を――」

 

「姉さん」

 

その一言で、輝夜の動きが止まる。

 

空気が沈む。

 

「理想派に言われたの?」

 

輝夜の目が揺れた。

 

「……何の話だ」

 

「“姉さんがやらないなら次は僕にやらせる”って」

 

静かに言う。

 

輝夜の沈黙が答えだった。

 

「……誰から聞いた」

 

「聞こえた」

 

それだけで十分だった。

 

姉さんは僕を戦場から遠ざけようとしていた。

 

でもその判断そのものが、理想派の手の中にあった。

 

輝夜の表情が少しずつ固まっていく。

 

怒りではない。

 

まだ、理解しきれていない顔だった。

 

「じゃあ僕は、姉さんの代わりに囮を斬らされてたんだな」

 

自分でも驚くほど乾いた声が出た。

 

輝夜の瞳が揺れる。

 

「違う」

 

即答だった。

 

「そんなことは・・・」

 

「でも結果はそうだろ」

 

声が少しずつ荒くなる。

 

「姉さんは正面から本命を潰した。僕は囮を追い回して死にかけた」

 

「それでも意味は――」

 

「意味なんてどうでもいい」

 

言葉を遮る。

 

その瞬間、輝夜が黙った。

 

僕は気づいてしまった。

 

姉さんは僕を守ろうとしていた。

 

でも守るための選択が、結果的に僕を最も危険な場所へ置いていた。

 

姉さんの優しさは、形を変えて僕を戦場へ押し出していた。

 

輝夜の拳が、わずかに震える。

 

「……私は」

 

声がかすれる。

 

「私は、お前を戦わせたくなかっただけだ」

 

「なんで?そんなに僕が頼りない?」

 

その一言で、輝夜の言葉が途切れた。

 

沈黙が落ちる。

 

その沈黙の中で、輝夜の中の“前提”が崩れていくのが分かった。

 

自分が正しいと思っていた選択。

 

弟を守るための選択。

 

それが全部、

 

“利用される構造の中で動かされていただけだった”と気づいてしまった。

 

輝夜の目から、わずかに力が抜ける。

 

「……私は」

 

もう一度言おうとして、止まる。

 

言葉が続かない。

 

強いはずの姉が、初めて迷っている。

 

剣士ではなく、人として。

 

その姿を見て、僕も理解してしまった。

 

僕は姉さんを守っていたわけじゃない。

 

姉さんの“重さ”として存在していた。

 

姉さんが輝くために必要な「守るべき弟」。

 

それだけの役割。

 

だから姉さんは戦場に立たされた。

 

だから僕はそこに送られた。

 

どちらも、自分の意思だと思っていたものは、

 

最初から誰かに設計されていた。

 

静かな廊下に、音が消える。

 

灯籠の光だけが、やけに綺麗に揺れていた。




めっちゃ短いです。なんか心情を書くと短くなっちゃうんですよね。
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