元アストレアファミリアの拗らせ末っ子のクソデカ感情   作:なかりょた

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wikiを読んでたらまぁまぁでかい矛盾を見つけたんでごり押しました。


ステータスの更新

僕のいる国は、すべての民がアマテラス様の恩恵を受けている。

つまりこの国そのものが、一つの巨大なファミリアだ。

 

そして現在の天皇は、現アマテラスファミリアの団長でもある。

この構造は初代から続いている。

 

初代天皇――すなわちアマテラスファミリア初代団長は、九人の子を残した。

その九人をそれぞれ始祖とするのが「九王家」だ。

 

長男から順に一条家、二条家……そして九条家へと続く。

 

今では呼び名や立場は変質しているが、五条家――ゴジョウノ家はその五番目の血筋にあたり、形式上は王家の一つに数えられる。

 

ただし、王家であることと権力の強さは一致しない。

 

例えば二条家は王家でありながら貴族派に属し、さらにその下にツクヨミ家のような貴族派筆頭すら存在する。

また六条家は王家の血を持ちながらも、特定の陣営に属さず、政治力そのものを武器とする独立勢力として振る舞っている。

 

つまりこの国では、「王家=支配者」という単純な構図は成立していない。

 

むしろ重要なのは、どの勢力に属しているかだ。

 

主な勢力は三つ。

軍部、貴族派、そして五条家を含む王家勢力の混合構造で、それぞれが互いに牽制し合いながら均衡を保っている。

 

さらにこの国では、戦闘に関わる者すべてに共通の制度がある。

五歳と十歳の時、神の加護による「ステイタス更新」を受ける権利だ。

 

それは個人の才能や適性を可視化する儀式であり、実質的に人生の方向を決定づける。

 

そして僕は、今日そのステイタス更新を受ける。

 

姉さんは、十歳の更新時にレベル2へと昇格した。

それは極東でも異例の速度での成長だった。

 

姉さんは特別だった。

 

それは、誰もが知っている事実だった。

 

同じ家に生まれたはずなのに、同じ血を引いているはずなのに、どうしてこうも違うのかと思うほどに。

 

十歳のステイタス更新で、姉さんはすでに“レベル2”へと到達した。

 

その事実は、家の中の空気を変えた。

期待は確信に変わり、視線は賞賛に変わった。

 

そしてその中心に、姉さんは当然のように立っていた。

 

僕はそれを、遠くから見ていた。

 

嫉妬なのか、憧れなのか、自分でもよく分からない感情だった。

 

ただ一つだけ分かるのは――追いつけないという確信だけだ。

 

ステイタス更新の日。

 

僕は白い布で目を覆われ、神殿へと連れて行かれた。

 

「ここから先は、視てはならない」

 

そう告げられる声は淡々としていて、拒否を許さないものだった。

 

足音が石床に響くたびに、空間が少しずつ冷たくなっていく。

 

やがて誰かが扉を開けた気配がした。

 

その瞬間、空気が変わる。

 

重いというより、“見られている”という感覚。

 

肌の奥にまで視線が刺さるような、異質な圧。

 

――アマテラス様。

 

その存在が、そこにいる。

 

しばらくして、

 

「終了だ」

 

布が外される。

 

眩しさに目を細めながら、立ち上がる。

 

結果を告げられるまでの間は、妙に静かだった。

 

期待があったわけじゃない。

 

でも、完全にないとも言い切れなかった。

 

姉さんと同じ場所に立てる可能性を、ほんの少しだけ――

 

「結果を告げる」

 

声が落ちる。

 

短い沈黙。

 

そして。

 

「ランクアップはなし」

 

その一言で終わった。

 

ああ、そうか。

 

やっぱり、そういうことなんだ。

 

姉さんとは違う。

 

比べることすら、間違っているのかもしれない。

 

僕は姉さんのなんだ?

 

ゴジョウノ家の離れに戻って、もらったステイタス用紙を羽釜に放り投げ、燃やす。気分転換に庭で素振りでもしようかと思い庭に出ると、塀の上で姉さんが退屈そうに待っていた。

 

「あら、ようやっと帰ってきたな。ステイタス更新の結果はどうだった?」

 

姉さんは興奮を抑えきれない様子で僕に聞いてきた。本人に悪気はなかったのだろうけど、僕の中で何かが切れた。

 

「いや、輝夜様には敵いませんよ。レベルは1のままでした。」

 

「・・・・?」

 

「・・・今、なんて?」

 

声が出るまでに間があった。いつもの軽さはもうどこにもない。

 

僕は視線を逸らしたまま続ける。

 

「姉さんじゃなくて、その方がいいと思ったので」

 

沈黙。

 

庭の音だけがやけに大きい。

 

風の音。葉の擦れる音。全部が耳に刺さる。

 

姉さんは一歩も動かないまま、僕を見ていた。

 

その目が、少しずつ形を失っていく。

 

「……どうして」

 

掠れた声だった。

 

怒りじゃない。問いでもない。

 

ただ、理解できないものを見た時の声。

 

「どうして、そんなこと言うの」

 

僕は答えない。

 

答えたら戻ってしまう気がしたからだ。

 

姉さんはゆっくりと息を吸って、それから一歩だけ近づく。

 

でも途中で止まる。

 

踏み込めないまま、そこで立ち尽くす。

 

「……私、何かした?」

 

その言葉に、胸の奥が少しだけ軋む。

 

違う。そうじゃない。

 

でも、それを言葉にしたらもっと崩れる気がした。

 

「してないです」

 

短く返す。

 

姉さんの指が、ほんの少しだけ動く。

 

握りかけて、やめる。

 

「じゃあ……なんで」

 

声が、少しずつ壊れていく。

 

「なんでそんな呼び方するの」

 

その瞬間、姉さんの顔が初めて崩れた。

 

いつもの強さが抜ける。

 

戦場で一度も見せない種類の顔。

 

――勝てない相手を前にした顔じゃない。

 

もう取り戻せないものを見てしまった顔だった。

 

「……やだ」

 

小さく漏れる。

 

ほとんど息みたいな声。

 

「いやだ」

 

姉さんはそこで初めて、ほんの少しだけ声を荒げかけて――それを飲み込む。

 

喉の奥で止めている。

 

感情が外に出るのを、必死に押さ!えている。

 

それでも目だけは隠せていない。

 

焦りでも怒りでもなく、もっと奥のもの。

 

――置いていかれる恐怖。

 

「輝夜様って……」

 

姉さんが言葉を探す。

 

でも見つからない。

 

見つけたら終わると分かっているみたいに、途中で止まる。

 

僕はもう一度だけ言う。

 

「その方がいいです」

 

その一言で、姉さんの表情が完全に止まった。

 

理解した顔だった。

 

でも、理解したくなかった顔でもある。

 

「……あ」

 

小さく声が漏れる。

 

その瞬間、姉さんの中で何かが崩れたのが分かった。

 

怒りじゃない。悲しみでも足りない。

 

もっと深い、どうしようもないもの。

 

姉さんは一度だけ目を伏せて、それからゆっくり息を吐く。

 

「・・・そう」

 

声が震えている。

 

それを隠そうとして、余計に不自然になる。

 

姉さんは笑おうとして――できなかった。

 

口元がわずかに動くだけで、形にならない。

 

塀に飛び乗る動作も、いつものように軽くない。

 

少しだけ遅い。

 

ほんの少しだけ、重い。

 

上に立ってから、姉さんはもう一度だけこちらを見る。

 

その目は戦う目じゃない。

 

勝つ目でもない。

 

ただ、壊れそうなまま立っている人の目だった。

 

「……ねえ」

 

声が出る。

 

でも続かない。

 

何か言おうとして、全部飲み込む。

 

そして最後に、絞り出すように。

 

「それでも私は、お前の姉だから」

 

あぁ、やっぱり僕のこころは矛盾だらけだ。

 

「・・・その、それでレベルは1のままだったのか?」

 

僕は視線を逸らす。

 

庭の木の枝が、風に揺れていた。どうでもいい景色だ。今はそれしか見ていられない。

 

「そうですよ。期待外れで申し訳ないですね」

 

自分でも驚くほど、冷たい声が出た。

 

沈黙。

 

塀の上の姉さんは、しばらく動かなかった。

 

やがて、ゆっくりと降りてくる。音も立てずに地面へ着地するその動きだけが、やけに鮮明だった。

 

「……誰に、そう言われたの」

 

「別に。事実です」

 

「事実じゃない。私はそういう意味で聞いてない」

 

姉さんの声が少しだけ硬くなる。

 

でも、それが逆に腹立たしかった。

 

まるでまだ僕に期待しているみたいで。

 

まるでまだ、同じ場所にいるみたいで。

 

「姉さんはいいですよね」

 

気づいたら口が動いていた。

 

「全部持ってるから」

 

姉さんの目が揺れる。

 

「……蒼真」

 

「剣も、才能も、評価も。全部最初からあった。僕は最初からなかった。」

 

言ってはいけないことだと分かっていた。

 

でも止まらなかった。

 

胸の奥に溜まっていたものが、形を持って溢れていく。

 

「努力すれば追いつける? 冗談じゃない。姉さんと同じ場所に立てるなら、とっくに立ってる」

 

姉さんは一歩近づこうとして――止まった。

 

その動きが、妙に怖かった。

 

「……誰が、そんなことを言ったの」

 

「みんなですよ」

 

僕は笑った。

 

笑えているかどうかも分からないまま。

 

「家の人間も、他の奴らも、結果さえも。全部。僕はそういう存在だって」

 

姉さんの呼吸が、わずかに乱れる。

 

「私は……」

 

何かを言いかけて、やめる。

 

その沈黙が、余計に痛かった。

 

僕は続ける。

 

「姉さんは違う。姉さんは“剣士”だ。でも僕は違う」

 

「違わない」

 

即答だった。

 

あまりにも早くて、逆に嘘みたいだった。

 

姉さんの声が、少しだけ震えている。

 

「そんなの、勝手に決めるな」

 

その言葉に、胸の奥がきしんだ。

 

でももう遅い。

 

一度出たものは戻らない。

 

「じゃあ、どうすればいいんですか」

 

僕は姉さんを見る。

 

初めて、真正面から。

 

「姉さんみたいになれない僕は、何になればいいんですか」

 

沈黙。

 

庭の音だけがやけに大きい。

 

そして姉さんは、ゆっくりと息を吐いた。

 

「……蒼真」

 

「私は、お前をそういうふうに見たことは一度もない」

 

その言葉が、優しすぎて。

 

だからこそ、一番残酷だった。

 

僕は一歩下がる。

 

「……嘘だ」

 

「嘘じゃない」

 

「なら、どうして僕はこうなんですか」

 

声が少しずつ崩れていく。

 

それでも姉さんは目を逸らさなかった。

 

「それは……」

 

言葉が続かない。

 

そしてその沈黙の中で、僕は理解してしまう。

 

姉さんですら、答えを持っていない。

 

僕はただ、

最初から、ここにいなかったみたいな存在なんだ。

 

「……もういいです」

 

その言葉は、投げ捨てるような強さじゃなかった。

 

むしろ、力を抜いた声だった。

 

諦めが終わったあとの静けさみたいな声。

 

姉さんの喉が、小さく動く。

 

「……何が」

 

「全部です」

 

僕は視線を庭に落とす。

 

もう、姉さんを見る必要がない気がした。

 

見るほど、戻れなくなる。

 

「嫉妬も、期待も、全部」

 

姉さんの指が、ほんの少しだけ震える。

 

「……全部って」

 

声が少し掠れる。

 

初めて、戦場じゃないところで声が崩れていた。

 

僕は静かに続ける。

 

「姉さんは姉さんのままでいいです」

 

「……」

 

「僕も、僕のまま、“輝夜様”を支えます」

 

その瞬間、姉さんの表情が止まる。

 

怒りじゃない。悲しみでもない。

 

もっと静かで、重いもの。

 

――切り離されたことを理解した顔だった。

 

「……そう」




面白かったら、感想じゃんじゃんください!話に関係あるものならなんでもいいです!!
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