セイギノ魔法少女   作:零月隼人

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第9章「鉄槌」

というわけで、人類を滅ぼしま~す☆アハ☆

 先日、この人類の守護者たるこの私に、自衛隊なる愚鈍な輩共が叛逆したことは、人類の皆様ご承知の通り。

 それで一時牙を向けといて、また私に、魔族から守ってほしいなんて、そんな都合の良いことは言えないはず。

 私から何されたって、文句は言えないよね~(^_^)?

 

 人類は、本来のあるべき姿を失ってしまった。

 あるべき姿とは、”魔法少女”たる私を信仰すること。信奉すること。讃美すること。

 それを失った人類は、もはや人類ではない。

 魔(・)族(・)と(・)い(・)っ(・)て(・)、(・)相(・)応(・)し(・)い(・)。

 そう、私は”魔法少女”

“人類“という名の魔族を、この世から滅亡させる!!

 それこそが、”魔法少女”たる、私の責務なのだから。

 

「魔法少女――――!!!!」

 北東より、亜光速で接近する熱源。

 仁間か。

「よくも、我が国の大事な防衛力を!今度こそこの、仁間極特将が、災厄の魔法少女たる貴様を排除する!!」

 五月蠅いな。

 今は貴様に構っている暇はないのだ。

 私は雑に術式を組む。

「魔力開―」

「マホ様、ここはボクが!♡」

 ―と、カホが仁間に追突し、乱入する。

 仁間が憤慨する。

「おい!いい加減目を覚ませ!そこの魔法少女は、某ら人類の脅威だ!それを庇うというのか!?」

「五月蠅い!!ボクにとってはマホ様が全てだ!それに叛逆する人類は、滅ぼさなければならないんだ!!」

 言い返すカホに、私は言葉をかける。

「助かる。倒せなくていいから、そのまま仁間を抑えていてくれ。」

 ところで、カホも所属は人類だから、一緒に滅ぶことになるけどいいかな?

「大丈夫です!♡」

 大丈夫なんだ・・・・・・

 

 私は大型魔法の術式を準備する。

 人類を滅亡させる方法。私はいろいろ思案した。

 核融合魔法の連射、それだけでも人類を滅ぼすにたり得るだろう。

 魔力開放を使えば、もっと簡単に。

 だが、美しくない。

 かつて私が守護してきたものを葬るのだ。

 今日は特別な日となる。

 そして、思い出した。

 かつて、恐竜を滅亡させた時の、偽装工作を。

 たしか、隕石を落としたんだった。

 今回は、確実に人類を一人残らず抹殺しなければならない。

 ━━━手加減はいらない。

 

「重力魔法:∞(インフィニット)」

 月(・)を(・)墜(・)と(・)す(・)。

 人類は、今まで無意識に恩恵を受けていた衛星によって、その生涯を閉じるのだ。

 私は、月に向けて手を翳す。

 その瞬間。

 月はゆっくりと、地球へ向けて落下していった。

 

 地表に与える影響。

 海岸線付近では、潮の満ち引きの差が拡大し、洪水が発生する。

 大波が、沿岸部より浸水し、そのまま大地を飲み込んでいった。

 さらに月が地球に接近すると。

 月の引力が地球に圧力を加え、地殻にダメージを加えることにより、世界全土で地震が発生する。

 巨大火山は次々に噴火し、地表を溶岩が覆い尽くす。

 さらに月が接近すると、月に存在した様々な物質が、地球へと落下する。

 世界にとっては、隕石の落下が相次ぐに等しい。

 そしてその落下の摩擦熱により、海が沸騰。

 地球は、地獄の惑星へと化した。

 

 

 地球が崩壊していく中でも。

 カホと仁間は変わらず戦っていた。

 どちらも尋常じゃない戦闘能力、そして胆力である。

 両者共に、人類じゃないだろ。

 そして、仁間はついに、月の崩落、すなわち人類の滅亡をその目で確認する。

 本来なら、仁間も人類なら、地上から吐出するマグマ、あるいはそれ以前の津波に巻き込まれ、死滅しているはずだが。

 意志の力とは、凄まじいものだ。

 次の瞬間。

 仁間のパワーが上昇する。

「よくも・・・・・・よくも!」

 そして、徐にカホの顔面を掴み、そのまま溶岩の溢れる地上に叩きつける。

「グハァ」

 カホの肉体は、瞬時に燃失する。

 直後、仁間が私に急速接近する!

「おのれ、魔法少女!

 ━━━だが、まだ終わりではない。人類は、まだ某が残っている!」

 対して私は冷徹に告げる。

「無駄だ。どの道貴様が最後の人類になる。・・・・・・そしてなにより、今ここで私が貴様に引導を渡してやる。人類は、終える。」

 仁間は言い返す。

「いや、まだだ。まだ人類には、某と先ほど戦っていた人間の少女がいる。男と女、一人ずつ残っていれば、まだ子孫を産み落とせる。」

 コイツ気持ち悪ッ

 というか、君さっきカホをマグマに叩きつけたよねえ?

「ふ、あの程度で彼女が死ぬものか。」

「はあ、はあ、マホ様♡、私は無事です。」

 コイツら気持ち悪ッッ!

 もはや、魔族だろ。

 カホはすでに、消滅させていたはずの身体を復活させていた。

「愛の力です。」

 愛って怖すぎる。

 さらに仁間は続ける。

「最悪、某は、自己増殖でもう一人人間を作ることができる。」

 コイツは何を言ってるの?

 やっぱり、魔族だろ。

 仁間に気合いが入る。

「だが、それも全て魔法少女、貴様を倒してからだ!」

 私も決着をつける覚悟を決める。

「いいだろう。全力で応じてやる。」

 

「NVL、起動!」

 突如、仁間が叫ぶ。

 NVL・・・・・・NVL!?

 あの、滅んだはずの、AIが!?!?

【NVL、私の名前。これより、敵生体の殲滅に移ります】

 しかも、前より口調が流暢になっている。

 仁間が、淡々と告げる。

「NVL、おぬしはそこのカホという名の人間少女の相手を抑えていてくれ。魔法少女は、某が倒す!」

【かしこまりました。】

「この!」

 カホが仁間に攻撃しようとするが、ナイフがNVLの盾によって防がれる。

 そのまま、カホとNVLの交戦が始まった。

 一方、私と仁間の間には、静かな刻(とき)が流れた。

 しかし、仁間は、神々しいオーラを纏っていた。

 次の瞬間。

「はっ!」

 仁間の拳が、衝撃波を穿つ。

「うわぁーーー!」

 その一撃だけで、私は上空に吹き飛ばされる。

 もはや、魔法にも近しい。

 彼は人間を辞め、魔族となったのだ。

 私も、こちらはれっきとした魔法で反撃する。

「雷鳴魔法、インフィニティブラスト」

 自然界の雷を再現する魔法。

 しかし、仁間はガードもせず、無反応で耐えてみせた。

「この程度。」

 だが、それは囮だ!

「身体強化魔法、集中適応!」

 私は、急速接近し、右腕のみを魔法で強化して殴りかかった。

 対して仁間は。

「浸透頸」

 ウッ⁉

 言葉の直後、私の身体に激痛が走る。

 この”魔法少女”たる私の身体に。

 何これ、マジで魔法。

 寸での後、仁間が私の目にも追えない早さで拳を打ったことに気がついた。

 もはや膠着状態。

 私は、ふとカホが心配になり、そちらの方を見やった。

 

 

 カホは、信じられない光景を目にしていた。

 NVL━━━AN社が作り上げた、世界最先端のAI。

 一度はかの主に敗れ、その存在ごと滅せられたはずであった。

 しかし、NVLは、再び彼女らの前に現れた。

 それも、明らかに姿を変えて。

 なぜなら・・・・・・

【再現:魔法少女】

 その一言で、NVLは変形する。

 そこに現れたのは・・・・・・

「マホ・・・・・・様⁉」

 構成物質は明らかに金属だ。

 しかし、その姿は、明らかに彼女の主━━━“魔法少女”マホの姿を模倣していた。

 カホは激昂する。

「ふざけるな!そこまでマホ様を愚弄するか!!」

 そう言い、手に持ったナイフで斬りかかる。

 しかし、NVLは悠然と呟く。

【再現:インフェルノ・バスター】

 半径10kmに及ぶ火の球が、カホを包み込む。

「この程度!」

 カホは内側で防御魔法を展開、完全に防ぎきった。

 しかし。

【再現:フリーズ・レジオン】

「⁉」

 カホの防御魔法の周囲一帯を、氷結させた。

 NVLは、マホの魔法のみならず、魔法少年マオの魔法も再現してみせた。

 これにより、カホは身動きが取れなくなる。

 そんな彼女に、NVLは淡々と告げる。

【貴方は、魔族個体名:正木野マホを目指しているようですが、所詮貴方は人間、あれは魔法少女。どうあっても、たどり着くことは叶いません。

 人間は魔法少女になることはできません。魔法少女になれるのは、同じく人間ではない、AIであるこの私。

 私こそ、魔族である正木野マホを倒し、真に人間を守護する存在である、魔法少女になりましょう。】

 対してカホは、氷結の中でも達者に言葉を放つ。

「マホ様は真の”魔法少女”だ!お前のようなガラクタでは、到底及ばない。

 ・・・・・・そして、そのマホ様と同じ”魔法少女”になれるのは、マホ様と同じ、今や唯一の”人類”である、ボクだけだ!」

 NVLは冷徹に続ける。

【ならば、現実を見せましょう。

 世界最先端のAIたる私には、このようなことも可能なのです。】

 そして魔力を集めた。

【再現:魔力開放】

「「―ッ⁉」」

 カホは目を見開く。

 仁間と戦闘中であったマホもまた、思わずNVLの方を向いた。

 NVLの上空の大気が、一斉に紫色に輝く。

【魔法の真髄を刮目しなさい。】

 その言葉と同時に、紫色の光の雨が、半径三百メートルの広範囲に降り注ぐ。

 その光の雨は、カホを覆っていた氷結を打ち破り、彼女の防御魔法も貫通し、そのまま身体に直撃した。

 魔のエネルギーを魔法に変換する、魔魔法。

 NVLのそれは、マホやマオが行使するそれには、遠く及ばない不完全なものであった。

 あくまで、威力を再現したのみで、魔のエネルギーなど扱えてはいない。

 しかし、それでも。

 他の魔法とは、明らかに一線を画していた。

 魔法が直撃したカホの肉体は。

 再生することも叶わず、瞬く間に霧散した。

 

 一瞬NVLの方に目をやった私であったが、仁間がその隙を縫うように近接攻撃を仕掛ける。

 よそ見をしている暇はない。

 私は、仁間の攻撃を交わしつつ、光弾魔法を食らわせる。

 しかし、効果はない。

 さらに。

「―ッ‼」

 明後日の方向から、ビーム魔法が届く。

 私は、防御魔法を全力展開して、それを防ぐ。

 ・・・・・・

 NVLッ!

 カホのいた方角を見る。

 すでに、彼女の姿はない。

 NVLの魔力開放もどきで消し飛んだか・・・・・・

 いくらまがい物と言っても、その効果は絶大だ。

 人類に、耐えれる代物ではない。

 仁間が勝ち誇る。

「あの少女は逝ったか。仕方あるまい。

 どちらにせよ、貴様に勝機はなくなった。大人しく滅びを受け入れるが良い。」

【魔法少女マホ。貴方に正義はない。あるのは私と、仁間です。滅んでしまった人間の再興も、必ず成し遂げます。そして、真の正義の名のもと、我々が人類の守護者として君臨するのです!!】

 ・・・・・・

 ・・・

 ・

 アハ。

 アハ☆アハ☆アハ☆

 アハ☆アハ☆アハ☆アハ☆アハ☆アハ☆

【「何が可笑しい。」】

 仁間とNVLは不審そうな顔をする。

 まったく。

 浅はか極まりない。

 私(・)は(・)教(・)え(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)。

「正義?守護者?

 そんなもの、貴様らに担えるはずがない。貴様らのように弱く、『死』がある魔(・)族(・)には。

 正義を担えるのは!真の”人類”の守護者たりえるのは!

 唯一の”人類”たるこの私、”魔法少女”マホを置いて他にはいない!!」

 私はこれからも、”人類”を守り続ける。

 そしてその”人類”は、今や私しかいない。

 つまり、そういうことだ。

 私は、オーラを全開放する。

 対抗して、仁間も奥の手を行使するようだ。

「NVL、合体だ。全力を持って、この魔族を排除する!!」

【承知しました。

 NVL、パーツ分離、仁間極に接続シークエンス!!】

 NVLの操るロボットが仁間に合体する。

 最強の人類と、最強のAI。

 それが掛け合わさって、今や史上最強の存在となっただろう。

 魔族であっても、これに敵う者はいない。

 ただ唯一、私を除いては━━━

「ああ、なんて醜い。」

 私は呟いた。

 まさに俗物の塊。

 こんなやつが、人類の守護者など、片腹痛い、おぞましい、身震いがする。

「では、貴様は何とする!」

「私?私は存在そのものが”人類”の守護者。それ以上言うことはあるかな?」

「・・・・・・ない!ただ、貴様を排除する!!」

 NVL搭載仁間が、接近する。

 ━━━相手にとって、不足無し!!

 直後。

 私と仁間の全力が激突した。

 

 次の瞬間。

 仁間の姿が消失した。

「―ッ⁉」

 すでに、私の背後に回りこんでいた。

 スピードが、明らかに今までと違う。

「クッ!」

 私が振り返り、回し蹴りを放つが。

「遅いな。」

 仁間は避け、そのまま私に蹴りの一撃を与える。

「ぐぅッー⁉」

 確実なダメージが入る。

 如実にパワーも上がっている。

 だが私も負けてはいられない。

 魔力を帯びた私の身体は、ただ身体を動かすだけで、風圧を生み、摩擦で火をはらみ、大地を轟かせる。

 加えて魔法は、身体強化に全力を注ぐ。

 一撃さえ与えられれば、即死させられる。

 まるで、魔族。

 私は”人類”だけどね。

 今も、私の拳が、マグマを震わせ、岩石を蹂躙した。

 それを見て、仁間も悟ったようだ。

 もはや、小手先の技では決めきれない。

 大技による勝負に賭けざるを得ないと。

「人類の、最強奥義。ノベルの全ての知識を以て作られし、最強の破壊魔法。

 ―――アルティメット・レイ!!」

 仁間の魔法陣から、何本もの光線が放たれる。

 その攻撃は、私の光柱魔法の何千倍もの質量、威力を誇っていた。

 防御は不可能。

 私も相殺するため、魔法を構築した。

「再現:核分裂+核融合、全力爆裂!!」

 魔力開放を除く、考え得る限り最強の魔法。

 その魔力捻出には、地球から溢れ出るマグマを利用した。

 地球上の全てのマグマを魔力に変換。

 その魔法の一撃を、仁間にぶつける。

 両者の魔法は激突し・・・・・・やがて観測史上最大の大爆発を引き起こした。

 地球は、熱源を失い、岩石のみの惑星と成り果てた。

 ・・・・・・

 ・・・

 ・

 しかし!

 仁間はその爆発を受けてなお、生きていた。

 否、それすらも囮だったのだ。

「これが人類の、最期の一撃だ。人類の誇りと尊厳を受け、滅せよ魔族!!

 ━━━人拳ッッッ!!!」

 仁間の拳が、私に迫る。

 それは、その一撃だけで一都市を消滅させるほどの威力を誇っていた。

 すでにノベルは、先ほどの魔法で消え果てている。

 魔法は使えない。

 純粋に、人間の、拳の力だ。

 ・・・・・・

 見事だ。

 敬意を表し、私も温存してきた最後の手を切る。

 すなわち。

「魔力開放;打、魔拳」

 仁間が人類の誇りを示すなら、私は“人類”の、”魔法少女”の誇りを賭ける!!

 拳と拳がぶつかり合う。

 その余波が地球の表面を砕き、クレーターを作る。

 やがて。

 仁間の肉体が、少しずつ消えていく。

 私の魔力開放を食らった反動だ。

 その顔は、悔しげでありつつも、どこか吹っ切れた様子だった。

 私は。

 無意識に口を開いていた。

「素晴らしい。貴様は最期まで人類で、人類のために戦った。

 貴様と戦えたことを、誇りに思う。」

 私の言葉に、仁間は笑みを浮かべた。

「邪悪な魔族め。

 ━━━地獄で逢おう。」

 そう言って、仁間の肉体は消滅した。

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