というわけで、人類を滅ぼしま~す☆アハ☆
先日、この人類の守護者たるこの私に、自衛隊なる愚鈍な輩共が叛逆したことは、人類の皆様ご承知の通り。
それで一時牙を向けといて、また私に、魔族から守ってほしいなんて、そんな都合の良いことは言えないはず。
私から何されたって、文句は言えないよね~(^_^)?
人類は、本来のあるべき姿を失ってしまった。
あるべき姿とは、”魔法少女”たる私を信仰すること。信奉すること。讃美すること。
それを失った人類は、もはや人類ではない。
そう、私は”魔法少女”
“人類“という名の魔族を、この世から滅亡させる!!
それこそが、”魔法少女”たる、私の責務なのだから。
「魔法少女――――!!!!」
北東より、亜光速で接近する熱源。
仁間か。
「よくも、我が国の大事な防衛力を!今度こそこの、仁間極特将が、災厄の魔法少女たる貴様を排除する!!」
五月蠅いな。
今は貴様に構っている暇はないのだ。
私は雑に術式を組む。
「魔力開―」
「マホ様、ここはボクが!♡」
―と、カホが仁間に追突し、乱入する。
仁間が憤慨する。
「おい!いい加減目を覚ませ!そこの魔法少女は、某ら人類の脅威だ!それを庇うというのか!?」
「五月蠅い!!ボクにとってはマホ様が全てだ!それに叛逆する人類は、滅ぼさなければならないんだ!!」
言い返すカホに、私は言葉をかける。
「助かる。倒せなくていいから、そのまま仁間を抑えていてくれ。」
ところで、カホも所属は人類だから、一緒に滅ぶことになるけどいいかな?
「大丈夫です!♡」
大丈夫なんだ・・・・・・
私は大型魔法の術式を準備する。
人類を滅亡させる方法。私はいろいろ思案した。
核融合魔法の連射、それだけでも人類を滅ぼすにたり得るだろう。
魔力開放を使えば、もっと簡単に。
だが、美しくない。
かつて私が守護してきたものを葬るのだ。
今日は特別な日となる。
そして、思い出した。
かつて、恐竜を滅亡させた時の、偽装工作を。
たしか、隕石を落としたんだった。
今回は、確実に人類を一人残らず抹殺しなければならない。
━━━手加減はいらない。
「重力魔法:
人類は、今まで無意識に恩恵を受けていた衛星によって、その生涯を閉じるのだ。
私は、月に向けて手を翳す。
その瞬間。
月はゆっくりと、地球へ向けて落下していった。
地表に与える影響。
海岸線付近では、潮の満ち引きの差が拡大し、洪水が発生する。
大波が、沿岸部より浸水し、そのまま大地を飲み込んでいった。
さらに月が地球に接近すると。
月の引力が地球に圧力を加え、地殻にダメージを加えることにより、世界全土で地震が発生する。
巨大火山は次々に噴火し、地表を溶岩が覆い尽くす。
さらに月が接近すると、月に存在した様々な物質が、地球へと落下する。
世界にとっては、隕石の落下が相次ぐに等しい。
そしてその落下の摩擦熱により、海が沸騰。
地球は、地獄の惑星へと化した。
地球が崩壊していく中でも。
カホと仁間は変わらず戦っていた。
どちらも尋常じゃない戦闘能力、そして胆力である。
両者共に、人類じゃないだろ。
そして、仁間はついに、月の崩落、すなわち人類の滅亡をその目で確認する。
本来なら、仁間も人類なら、地上から吐出するマグマ、あるいはそれ以前の津波に巻き込まれ、死滅しているはずだが。
意志の力とは、凄まじいものだ。
次の瞬間。
仁間のパワーが上昇する。
「よくも・・・・・・よくも!」
そして、徐にカホの顔面を掴み、そのまま溶岩の溢れる地上に叩きつける。
「グハァ」
カホの肉体は、瞬時に燃失する。
直後、仁間が私に急速接近する!
「おのれ、魔法少女!
━━━だが、まだ終わりではない。人類は、まだ某が残っている!」
対して私は冷徹に告げる。
「無駄だ。どの道貴様が最後の人類になる。・・・・・・そしてなにより、今ここで私が貴様に引導を渡してやる。人類は、終える。」
仁間は言い返す。
「いや、まだだ。まだ人類には、某と先ほど戦っていた人間の少女がいる。男と女、一人ずつ残っていれば、まだ子孫を産み落とせる。」
コイツ気持ち悪ッ
というか、君さっきカホをマグマに叩きつけたよねえ?
「ふ、あの程度で彼女が死ぬものか。」
「はあ、はあ、マホ様♡、私は無事です。」
コイツら気持ち悪ッッ!
もはや、魔族だろ。
カホはすでに、消滅させていたはずの身体を復活させていた。
「愛の力です。」
愛って怖すぎる。
さらに仁間は続ける。
「最悪、某は、自己増殖でもう一人人間を作ることができる。」
コイツは何を言ってるの?
やっぱり、魔族だろ。
仁間に気合いが入る。
「だが、それも全て魔法少女、貴様を倒してからだ!」
私も決着をつける覚悟を決める。
「いいだろう。全力で応じてやる。」
「NVL、起動!」
突如、仁間が叫ぶ。
NVL・・・・・・NVL!?
あの、滅んだはずの、AIが!?!?
【NVL、私の名前。これより、敵生体の殲滅に移ります】
しかも、前より口調が流暢になっている。
仁間が、淡々と告げる。
「NVL、おぬしはそこのカホという名の人間少女の相手を抑えていてくれ。魔法少女は、某が倒す!」
【かしこまりました。】
「この!」
カホが仁間に攻撃しようとするが、ナイフがNVLの盾によって防がれる。
そのまま、カホとNVLの交戦が始まった。
一方、私と仁間の間には、静かな刻(とき)が流れた。
しかし、仁間は、神々しいオーラを纏っていた。
次の瞬間。
「はっ!」
仁間の拳が、衝撃波を穿つ。
「うわぁーーー!」
その一撃だけで、私は上空に吹き飛ばされる。
もはや、魔法にも近しい。
彼は人間を辞め、魔族となったのだ。
私も、こちらはれっきとした魔法で反撃する。
「雷鳴魔法、インフィニティブラスト」
自然界の雷を再現する魔法。
しかし、仁間はガードもせず、無反応で耐えてみせた。
「この程度。」
だが、それは囮だ!
「身体強化魔法、集中適応!」
私は、急速接近し、右腕のみを魔法で強化して殴りかかった。
対して仁間は。
「浸透頸」
ウッ⁉
言葉の直後、私の身体に激痛が走る。
この”魔法少女”たる私の身体に。
何これ、マジで魔法。
寸での後、仁間が私の目にも追えない早さで拳を打ったことに気がついた。
もはや膠着状態。
私は、ふとカホが心配になり、そちらの方を見やった。
カホは、信じられない光景を目にしていた。
NVL━━━AN社が作り上げた、世界最先端のAI。
一度はかの主に敗れ、その存在ごと滅せられたはずであった。
しかし、NVLは、再び彼女らの前に現れた。
それも、明らかに姿を変えて。
なぜなら・・・・・・
【再現:魔法少女】
その一言で、NVLは変形する。
そこに現れたのは・・・・・・
「マホ・・・・・・様⁉」
構成物質は明らかに金属だ。
しかし、その姿は、明らかに彼女の主━━━“魔法少女”マホの姿を模倣していた。
カホは激昂する。
「ふざけるな!そこまでマホ様を愚弄するか!!」
そう言い、手に持ったナイフで斬りかかる。
しかし、NVLは悠然と呟く。
【再現:インフェルノ・バスター】
半径10kmに及ぶ火の球が、カホを包み込む。
「この程度!」
カホは内側で防御魔法を展開、完全に防ぎきった。
しかし。
【再現:フリーズ・レジオン】
「⁉」
カホの防御魔法の周囲一帯を、氷結させた。
NVLは、マホの魔法のみならず、魔法少年マオの魔法も再現してみせた。
これにより、カホは身動きが取れなくなる。
そんな彼女に、NVLは淡々と告げる。
【貴方は、魔族個体名:正木野マホを目指しているようですが、所詮貴方は人間、あれは魔法少女。どうあっても、たどり着くことは叶いません。
人間は魔法少女になることはできません。魔法少女になれるのは、同じく人間ではない、AIであるこの私。
私こそ、魔族である正木野マホを倒し、真に人間を守護する存在である、魔法少女になりましょう。】
対してカホは、氷結の中でも達者に言葉を放つ。
「マホ様は真の”魔法少女”だ!お前のようなガラクタでは、到底及ばない。
・・・・・・そして、そのマホ様と同じ”魔法少女”になれるのは、マホ様と同じ、今や唯一の”人類”である、ボクだけだ!」
NVLは冷徹に続ける。
【ならば、現実を見せましょう。
世界最先端のAIたる私には、このようなことも可能なのです。】
そして魔力を集めた。
【再現:魔力開放】
「「―ッ⁉」」
カホは目を見開く。
仁間と戦闘中であったマホもまた、思わずNVLの方を向いた。
NVLの上空の大気が、一斉に紫色に輝く。
【魔法の真髄を刮目しなさい。】
その言葉と同時に、紫色の光の雨が、半径三百メートルの広範囲に降り注ぐ。
その光の雨は、カホを覆っていた氷結を打ち破り、彼女の防御魔法も貫通し、そのまま身体に直撃した。
魔のエネルギーを魔法に変換する、魔魔法。
NVLのそれは、マホやマオが行使するそれには、遠く及ばない不完全なものであった。
あくまで、威力を再現したのみで、魔のエネルギーなど扱えてはいない。
しかし、それでも。
他の魔法とは、明らかに一線を画していた。
魔法が直撃したカホの肉体は。
再生することも叶わず、瞬く間に霧散した。
一瞬NVLの方に目をやった私であったが、仁間がその隙を縫うように近接攻撃を仕掛ける。
よそ見をしている暇はない。
私は、仁間の攻撃を交わしつつ、光弾魔法を食らわせる。
しかし、効果はない。
さらに。
「―ッ‼」
明後日の方向から、ビーム魔法が届く。
私は、防御魔法を全力展開して、それを防ぐ。
・・・・・・
NVLッ!
カホのいた方角を見る。
すでに、彼女の姿はない。
NVLの魔力開放もどきで消し飛んだか・・・・・・
いくらまがい物と言っても、その効果は絶大だ。
人類に、耐えれる代物ではない。
仁間が勝ち誇る。
「あの少女は逝ったか。仕方あるまい。
どちらにせよ、貴様に勝機はなくなった。大人しく滅びを受け入れるが良い。」
【魔法少女マホ。貴方に正義はない。あるのは私と、仁間です。滅んでしまった人間の再興も、必ず成し遂げます。そして、真の正義の名のもと、我々が人類の守護者として君臨するのです!!】
・・・・・・
・・・
・
アハ。
アハ☆アハ☆アハ☆
アハ☆アハ☆アハ☆アハ☆アハ☆アハ☆
【「何が可笑しい。」】
仁間とNVLは不審そうな顔をする。
まったく。
浅はか極まりない。
「正義?守護者?
そんなもの、貴様らに担えるはずがない。貴様らのように弱く、『死』がある
正義を担えるのは!真の”人類”の守護者たりえるのは!
唯一の”人類”たるこの私、”魔法少女”マホを置いて他にはいない!!」
私はこれからも、”人類”を守り続ける。
そしてその”人類”は、今や私しかいない。
つまり、そういうことだ。
私は、オーラを全開放する。
対抗して、仁間も奥の手を行使するようだ。
「NVL、合体だ。全力を持って、この魔族を排除する!!」
【承知しました。
NVL、パーツ分離、仁間極に接続シークエンス!!】
NVLの操るロボットが仁間に合体する。
最強の人類と、最強のAI。
それが掛け合わさって、今や史上最強の存在となっただろう。
魔族であっても、これに敵う者はいない。
ただ唯一、私を除いては━━━
「ああ、なんて醜い。」
私は呟いた。
まさに俗物の塊。
こんなやつが、人類の守護者など、片腹痛い、おぞましい、身震いがする。
「では、貴様は何とする!」
「私?私は存在そのものが”人類”の守護者。それ以上言うことはあるかな?」
「・・・・・・ない!ただ、貴様を排除する!!」
NVL搭載仁間が、接近する。
━━━相手にとって、不足無し!!
直後。
私と仁間の全力が激突した。
次の瞬間。
仁間の姿が消失した。
「―ッ⁉」
すでに、私の背後に回りこんでいた。
スピードが、明らかに今までと違う。
「クッ!」
私が振り返り、回し蹴りを放つが。
「遅いな。」
仁間は避け、そのまま私に蹴りの一撃を与える。
「ぐぅッー⁉」
確実なダメージが入る。
如実にパワーも上がっている。
だが私も負けてはいられない。
魔力を帯びた私の身体は、ただ身体を動かすだけで、風圧を生み、摩擦で火をはらみ、大地を轟かせる。
加えて魔法は、身体強化に全力を注ぐ。
一撃さえ与えられれば、即死させられる。
まるで、魔族。
私は”人類”だけどね。
今も、私の拳が、マグマを震わせ、岩石を蹂躙した。
それを見て、仁間も悟ったようだ。
もはや、小手先の技では決めきれない。
大技による勝負に賭けざるを得ないと。
「人類の、最強奥義。ノベルの全ての知識を以て作られし、最強の破壊魔法。
―――アルティメット・レイ!!」
仁間の魔法陣から、何本もの光線が放たれる。
その攻撃は、私の光柱魔法の何千倍もの質量、威力を誇っていた。
防御は不可能。
私も相殺するため、魔法を構築した。
「再現:核分裂+核融合、全力爆裂!!」
魔力開放を除く、考え得る限り最強の魔法。
その魔力捻出には、地球から溢れ出るマグマを利用した。
地球上の全てのマグマを魔力に変換。
その魔法の一撃を、仁間にぶつける。
両者の魔法は激突し・・・・・・やがて観測史上最大の大爆発を引き起こした。
地球は、熱源を失い、岩石のみの惑星と成り果てた。
・・・・・・
・・・
・
しかし!
仁間はその爆発を受けてなお、生きていた。
否、それすらも囮だったのだ。
「これが人類の、最期の一撃だ。人類の誇りと尊厳を受け、滅せよ魔族!!
━━━人拳ッッッ!!!」
仁間の拳が、私に迫る。
それは、その一撃だけで一都市を消滅させるほどの威力を誇っていた。
すでにノベルは、先ほどの魔法で消え果てている。
魔法は使えない。
純粋に、人間の、拳の力だ。
・・・・・・
見事だ。
敬意を表し、私も温存してきた最後の手を切る。
すなわち。
「魔力開放;打、魔拳」
仁間が人類の誇りを示すなら、私は“人類”の、”魔法少女”の誇りを賭ける!!
拳と拳がぶつかり合う。
その余波が地球の表面を砕き、クレーターを作る。
やがて。
仁間の肉体が、少しずつ消えていく。
私の魔力開放を食らった反動だ。
その顔は、悔しげでありつつも、どこか吹っ切れた様子だった。
私は。
無意識に口を開いていた。
「素晴らしい。貴様は最期まで人類で、人類のために戦った。
貴様と戦えたことを、誇りに思う。」
私の言葉に、仁間は笑みを浮かべた。
「邪悪な魔族め。
━━━地獄で逢おう。」
そう言って、仁間の肉体は消滅した。