セイギノ魔法少女   作:零月隼人

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第2章「兄妹」

 そういえば、私には恋人がいます。

 何を隠そう、前回登場したクラスメイト、宮頭ミヤミーです。

 まあそりゃ、ただのクラスメイトを朝起こしにはいかないよね。

 なお、本作において、ミヤミーについての記述はこれで最後です。

 

「”魔法少女”マホ、参上!!」

 私は、今日も今日とて、憧れの”魔法少女”のように、空を舞い、人類の助けに入る。

 今日の相手は、魔女であった。

 魔女といっても、その姿形は個々に異なる。人類が、男女だけでなく、個人個人で容姿が異なるように。

 今日の魔女は、風の魔法を得意としていた。

 突如として、この国では珍しい、竜巻が起こる。

 その効果は絶大で、車や建物が次々に風の渦へと飲み込まれていく。

 まさしく”災害《ディザスター》”。人類に対抗する術はない。

 さて。

 この魔女は、魔族の中でも強者なのだろうか。

 ・・・・・・

 ・・・

 ・

 断じて否!

 そもそも、魔族は生まれながらにして、固有の魔法を持っている。

 その効果は絶大で、人類文明など一瞬で粉微塵にしてしまうほどだ。

 では、なぜ人類は今も滅亡していないのか。

 簡単な話である。

 前提として人類は、魔族の目的は人類を侵攻し領土を拡大することだと考えている。

 そしていつか、人類を支配しようとしてる、とかかなあ?

 それらは、完全に間違った認識だ。

 まず、魔族は領土の拡大など望んでいない。というか、領土とは何ぞや?

 前述したように、魔族は住居を持たない。それは、もっと広い意味で言うと、そもそも縄張り意識がないのだ。

 つまり、魔族は例えば横に見知らぬ魔人が寝ていたとしても、全く気にしない。魔女だったとしても同じだ。そもそも生殖概念がないため、身の危険がないのだ。

 そして、魔族のみならず、それが隣に知らない人類のおっさんが寝ていても問題ない。

 魔族側はそもそも、基本的には人類に差別意識など持っておらず、人類を襲う気など一切ないのだ!

 ではなぜ、人類は魔族に蹂躙されるのか、皆声をあげて助けを求めるのか。

 それは単純に、魔族の力が強すぎるのである。

 地面を歩けば道路が砕ける、地震が起こる。手を動かせばその風圧で、人類が吹き飛ぶ。

 声を出せば、音圧で建物が崩落する。

 これぞ”災害《ディザスター》”。存在そのものが、危険物。

 まあ、ゴジラとかみたいな大怪獣と同じ扱いだね。

 そうそう、例えば前章の魔人とかね。あいつは普通に、日課の散歩していただけだったのだ。別に何か悪いことをしようとしたわけではない。

 しかし、彼の一歩は大地を揺らし、人類を巻き上げ、恐怖に陥れる。

 結果彼は、人類を脅かす存在となった。

 そんな存在を、”魔法少女”たる私が許しておけるはずがない。

 というよりそもそも━━以上の論理を私は、全(・)く(・)理(・)解(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)。

 魔族の目的は人類を侵攻し領土を拡大することだ!

 そしていつか、人類を支配しようとしてる!!

 

 ・・・・・・ちょっと文章が長くなったな。話を戻そう。

 そうそう目の前の魔女ね。

 彼女の使う魔法”風”。

 それは、魔族の4つの基礎魔法、「火・水・風・土」の一つ。そもそも魔族なら使えて当たり前の魔法であるのだ。

 にもかかわらず、この魔女は、風の魔法しか使えないようだ。

 つまり、人間で言うところの半人前ならぬ、1/4魔族前である。

 そんな魔族、”魔法少女”たる私の敵ではない。

 

 私はその、「風の魔女」(仮名)を視認すると、そのまま高速移動魔法+飛行魔法で急速接近した。

 私の接近を感知した魔女は、こちらを向いた。

「貴女は・・・・・・昨今評判の正義の味方気取りの魔法少女か⁉ いまいましい、ただちょっとくしゃみしただけなのに━━━」

「だ~か~ら~、私は”魔法少女”だって、言ってるだろ☆」

 私は、風の魔法に対し効果的な、火の魔法を行使した。

 魔女に向かい、火の球の連撃を食らわせる。

「小娘風情が生意気な。ウィンドバリア!」

 魔女は風の魔法を防御に回し、私の攻撃を受け流した。

「なるほど、モブにしてはやるね。なら・・・・・・」

 私は、火の魔法を応用し、爆発魔法を発動させた。

「ッ!うわァ」

 風に爆発が絡み、反動が魔女の身体に届く。

 その機に、私は急速接近した。

「やっぱりラストはゼロ距離がいいよね☆」

 私は防御できない距離まで接近し、そのまま光弾魔法を乱れ撃ちした。

「うわァァァァァァァァァーーーーーーー」

 魔女は地に伏せ、倒れた。

 当然、魔族だから死ぬことはないが。

 私はその身体に足を乗せ、完璧に力量の差をその身に理解させる。

 周りからは、歓声が広がった。

「“魔法少女”!“魔法少女”!“魔法少女”!“魔法少女”!“魔法少女”!“魔法少女”!」

 私はその声に、愉悦心を高めた━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「何やってんだ、おめぇ?」

 

 

 ・突如として現れた、謎の魔族

 一対の羽に神々しいやや小柄な身体、整った美青年顔、そして右手には魔法の効果を向上させる”天空槍《マジックランス》”、濃密な気配《オーラ》

「新たな魔族が現れたぞぉぉぉーーーー!!!!」

 周囲から、再び悲鳴が上がる。

 

 ・私の呟き

「兄貴ィ・・・・・・」

 

 ・私の兄、正木野マオ。

 一応魔族の年齢では子供に当たるため、魔法少年と呼ばれる。

 そもそも魔族は年を取らない。常に、永劫に、その姿。

 

 ・兄貴はため息をつく。

「・・・・・・ったく、魔法少女のおめぇが、なぜか人類に味方し、魔族に茶々入れてるって、噂になってんぞ。オレっんとこにも、苦情が入ってきた。」

 ↕

 私は鬱陶しそうに返す。

「何しに来たんだよ、兄貴ィ。ここらは私の領分だ。私が好きにしてたって勝手だろ。」

「領分って・・・・・・すっかり人間に染まっちまったようだなあおめぇ。ただ、仲間になんとかしろって言われて、オレぇも何もせずには帰れねぇ。手合わせ願おうか。」

 

 ・私は覚悟を決める

 ・・・・・・戦うのか・・・・・・あの魔族の神童と。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〝〝〝もはや、箇条書きをしている場合ではない!!!〟〟〟

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 私は、本気の気配《オーラ》を開放する。

 そして、文章書きに戻す。

「兄貴ィ、悪いけど、兄貴ィ相手に手加減はできない。”本気《マジ》”でやらせてもらうよ。」

 周囲の人類は、私の気配を直に受け、次々に吹き飛ばされる。

 それを見て、兄貴ィはな(・)ぜ(・)か(・)慌てた。

「おい!ここでやったら人類に被害が出るっじゃあねーか!!場所ォ移すぞ!」

 え?なんで?

 ここで戦わないと、人類の皆に私の勇姿を見て貰えないじゃん。

「いや、そもそもおめぇとオレぇとの戦いになれば、そもそも近くの人類など、死滅するだろ!おめぇが守るべき人類(?)にも危害っがでちゃあ、本末転倒っじゃねーか。」

 は?マジで何言ってるんだろう。

 さすがは魔族、言葉が通じない。

 私は、人類の守護者だよ?そして、今人類の脅威として目の前にいる魔族っていうのが、兄貴ィなんだ。

 じゃあ、それと戦うのが、今の私の役目。

 周(・)り(・)の(・)人(・)類(・)の(・)生(・)死(・)と(・)か(・)、(・)ど(・)う(・)で(・)も(・)い(・)い(・)じ(・)ゃ(・)ん(・)。

「おいおいマジかっよぉ・・・・・・これでオレぇら魔族が邪悪なる存在って言われてんの、本当に納得っいかねぇんだけど。」

 私は悪辣なる魔族の言葉に耳は傾けない。

 相手が圧倒的実力者である以上先制攻撃は必至だ。

 わずかの会話で、その準備は整った。

 兄貴ィも、私の攻撃の気配に気づく。

「━━━おい、ちょ、待て!分かった、今日はもう止めに・・・・・・」

「インフェルノ・バスター!!」

 私の魔法が、兄貴ィを襲う。

 それは、火の魔法の最極意。半径10kmに及ぶ火の球が、都市一つを焼却し、灰燼に帰させた。

 たとえ火の魔法といえど、その効果は図り知れない。

 範囲内の人類の壊滅は必至だ。

 だが当然、それで兄貴ィを倒せるはずもない。

「フリーズ・レジオン」

 水魔法の応用、氷魔法の最極意により、周囲に広がっていた灼熱の炎は相殺された。

「ったく、やりたい放題しあがって。」

 さすがは兄貴ィ、往年の腕、全く衰えていない。

 人類から見れば、世紀末の戦いだ。

 だが私と兄貴ィでは、これはまだ挨拶変わりに過ぎない。

 私は次なる魔法を準備する。

 炎そのものは消されたが、周囲はまだ超高温・超高圧環境にある!

「人類の技術の結集を見せてやろう。

 再現:核融合、全方位爆裂!!」

 これぞまさに、人類の最高火力!

 各国が備える核兵器と同等の威力を魔法で再現し、兄貴ィにぶつける。

 対して兄貴ィは、動じず淡々と応じる。

「・・・・・・ならばこちらは、魔族の威厳を示そう。

 魔力開放:序、魔砲!」

 兄貴ィの魔法は、魔族オリジナルのエネルギー、魔魔法だ。

 魔力を自然現象や物理現象に変換せず、そのままの形で放つ。

 人類には扱えない、理解しえない概念。

 その威力は、たとえ序であっても、人類の核兵器に匹敵する!!

 ━━━結果、またもや相殺された。

「ったく、どっちが正義の味方か分かんねーぞ。その力は、人類の最高傑作であると同時に、忌避の象徴じゃねーっのかよ?

 オレぇは別に人類に対して何の感情も抱いてねーっがよ。生きようが、死のうがどうでもいい。

 だが、おめぇにとっては、守るべき存在っじゃあねえのかよ?今の二撃で、人類に生存は不可能だぞ。魔族だって、死にはしないが、熱みや痛みや苦しみでしばらく動けねーだろ。」

 何度も言わせないでよ、私にとって人(・)類(・)の(・)生(・)死(・)は(・)ど(・)う(・)で(・)も(・)い(・)い(・)。

 人類とは、私を鼓舞し、賛美し、崇拝する存在でしかない。

 その対価として、私は人類を守ってあげるのだ。

 できる限り、ね。

 できることはする。

 でも、できないことはできない。

 兄貴ィはため息を吐いた。

 

「ったく、これで満足か? これ以上は国家の存亡に関わるぞ。」

 そうだ。

 さっきの私の攻撃で、人類の代表としての力は見せつけられた。

 だから・・・・・・

「ここからは、”魔法少女”としての力を見せてやる。」

「・・・・・・はあ。」

 兄貴ィは、ヤレヤレと首を横に振る。

 もう、兄貴ィだけ、”魔”の力を使ってズルいよ。

 だから私も、迷いなく実行する。

「魔力開放:破、魔壊‼」

 私の魔魔法は、先ほどの兄貴ィの魔法よりもさらに凌駕した、魔に指向性を持たせて、攻撃化させたものを放った。

 兄貴ィも、天空槍を振る。

「魔力開放:破、魔壊。」

 同じ魔法だ。

 であれば、互いの技術の差が勝敗を分ける‼

 互いの魔法が衝突する。

 ・・・・・・

 当然、魔法勝負で兄貴ィに敵うはずがない。

 私の魔は、兄貴ィの魔によって跳ね返された。

 だが、私はもちろんそれを予想していた。

 魔法発動後、私は兄貴ィの背後に回りこんでいた。

「━ッ⁉」

 兄貴ィが気づく。

 だが、もう遅い!

「魔力開放:打、魔拳」

 私の魔を纏わせた拳が、そのまま兄貴ィの胴体に直撃した。

 兄貴ィは、痛みで顔を歪ませる。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 私と兄貴ィとの戦闘は史上三度ある。

 一度目は忘れてしまったが、二度目は、戦いの巻き添えを食らい、恐竜が滅亡してしまった。

 後で引力魔法で地球に隕石を落としたり、気候魔法で地球を寒冷化させたりと、証拠隠滅が大変だったものだ。

 三度目は私も学んだ。

 よって、日本に侵攻しようとしていた「元」という国家の船を沈没させるだけの被害で済ませることができた。

 

 そして今回は。

「「はあはあはあ・・・・・・」」

 お互い息も絶え絶えだ。

 エリート同士の戦いである、当然だ。

 だがついに、兄貴ィは決断したようだ。

「わーった、わーった、今日のところはここで引いてっやる。

 だが覚えとけよ?おめぇが魔族に迷惑をかけ続けるっ限り、オレェは何度でもおめぇにお仕置きしに行くっぞ。

 覚えときな。」

 そう一方的に言い残し、兄貴ィはこの場から姿を消した。

 私はその場に、へなへなと座り込む。

 良かった・・・・・・なんとか追い返せた・・・・・・

 先ほどの魔法は、私の全力だ。

 あのまま戦闘を続けていれば、負けていたのは私だったかもしれない。

 そして私が倒れれば、兄貴ィ━━正木野マオを止めれる人類は存在しない。

 ただ、為す術もなく死滅させられるだけだ。

 ・・・・・・

 せっかく私が頑張ってあげたというのに、鼓舞してくれる人類は周りに一人もいない。

 先ほどの戦闘で消し飛んだのだ。

 それは別にいいんだけども。

 頑張ったリターンが無いことだけが残念だ。

 私はしばらくその場から動けずにいたものの、やがて立ち上がり、次こそ兄貴ィを倒せるように、決意を新たにするのであった。

 それが、人類の望む、”魔法少女”なのだから。

 

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