「助けてぇー、”魔法少女”ォーーー!!!」
今日も今日とて、私━━正木野マホは、魔族退治に精進する。
今日の相手は、魔法少女であった。
お、コイツはラッキー、分からせた後のお楽しみが捗る。
最近、変わったことが二つある。
「マホ様、ボクが参ります!」
一つは、正木野カホという、人類の少女の助手ができたことだ。
正木野を名乗るのは、本当に勘弁願いたいが。
彼女の働きにより、私のタスクは大幅に減少した。
しかも、当初のころよりも格段に強くなった。
前回、マゴウによって、魔力譲渡による身体強化がカホの身に起こったが、その力はマゴウの魔人変化時に吸収され、四肢を失うと同時に、元に戻ったはずであった。
しかしカホは、私がマゴウ攻略後、なぜかその力を我が物にしていたのである。
「愛の力です♡」
彼女はそう繰り返す。
そんなことが、まかり通っていいはずがない。
ないのだが・・・・・・そうなっている以上、どうしようもない。
今も、本来なら圧倒的戦力差があるはずの魔法少女に対し、かなり優勢の状況で戦闘を行えていた。
彼女のナイフが光る。
魔法少女の方にのみ、一方的に傷が増える。
だが当然、魔法少女、つまり魔族は、致命傷を負うことがない。
命がない、”死”という概念が存在しないからだ。
だからこそ、最近変わったこと二つ目が活きてくる。
先述した、”お楽しみ”というヤツだ。
そんなことをしている間にも、カホは、先ほどの魔法少女を地に伏せさせた。
魔法少女は観念し、両手を上げる。
「あたしが悪かったです!もう降参しますから、勘弁してください!!」
魔族の降伏は、投獄を受け入れるということを意味する。
私が意味付けした。
カホは、その魔法少女を捕縛する。
私は”例の“、異空間へのゲートを開いた。
3人がゲートに入ると。
魔法少女は、息を呑んだ。
そこには、十数人の魔族が、両腕両足を切断され、椅子に縛り付け、並べてあった。
魔人に魔女、魔法少年に魔法少女、属性はバラバラ、身体もバラバラだ。
しばらくの後。
魔法少女は悲鳴を上げた。
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
そう、この時の悲鳴を。
魔法少女が、一番よく鳴くのだ。
これが一番、私にとってはそそる。
一方で、魔人ね。
魔人は逆に、必死に耐える。涙を堪える。
これはこれで、見ていてスカッとする。
まあ、この魔法少女はぜひとも安心してほしい。
すぐに自分も、同じ目に合うことになるんだから。
「カホ、いつも通り、両手両足を切り落として。」
私が端的に指示する。
「はい♡仰せのままに♡」
カホは満面の笑みを浮かべた。
そして嬉々として、ナイフを持ち、魔法少女の右腕からそぎ落とそうとする。
「え、ちょっと待っ・・・・・・」
魔法少女は狼狽える。
その後、彼女の絶叫が数十分間続いた。
最後、四肢全て身体と分離したころには、諦めたようで、静かになっていた。
そんな彼女に、私はいつものように、彼女自身の両手両足を食わせる。
すでに洗脳魔法で、拒否権は剥奪している。
無理矢理にでも完食させると・・・・・・今度は別の魔法少年を手に取った。
そして、新入りの目の前で食ってみせる。
彼女は、全ての運命を嫌でも受け入れることとなった。
こうして、魔族への調略は完了する。
唯一、魔族を食うことだけは、未だ抵抗あるけどね。
私は、人類だから。
嗜好の時間を終えると、私とカホは現実空間へと戻ってくる。
「ふう、今日も一仕事終わったー」
「はい!ここからは、マホ様のお家で、いろいろヤりましょう♡」
「それは遠慮しとく。」
隙があれば、食われそうだ。
私は自身の貞操を守るため、油断なく構えた。
そこへ。
「見つけたぞ、邪悪な魔族よ。今度こそ決着をつけてやる!」
この声は!
私は即座に回避行動に入った。
瞬間、私のいた空間に、まるで魔法で強化したかの如く盛大な風圧を伴った、正拳突が空を切った。
「マホ様!」
カホは瞬時に、戦闘態勢へ移行する。
現れたな。
人類最強を自称する男━━━仁間極!!
「まさか、私の魔力開放を食らって、万全の状態で戦線復帰してくるとは。驚嘆に値するね。」
カホもまた、いきり立つ。
「ただの人でありながら、マホ様を苦戦させた輩!このボクが、相手になる!!」
そうして、仁間にナイフで斬りかかった。
「マホ様に迫れる人類は、私一人で十分だ!!」
・・・・・・ちょっと他意はあるが。
対して、仁間は余裕の表情でそれを避ける。
「良かろう。くだらぬ茶番に付き合ってやる。なぜなら━━━」
そう言って仁間は、後ろに手を回す。
仁間本人に気を取られ見逃していたが、今日の彼にはバックパックがあった。
今、そのバックパックが変形する。
アームが飛び出し、腕と足を作り、人型のロボットへと変形する。
「すでに、某一人で敵わないことは承知している。
なれば!我が人類の最強兵器によって、邪悪なる魔法少女、貴様を倒す!!」
【承知致しました。命令を実行致します。】
そのロボットは、感情のない声で、そう告げた。そこには、こちらに対する明確な敵意が感じ取れた。
仁間が続ける。
「コイツには、AIの最先端企業であるAN社が作り上げた、対魔族専用AI、NVLが搭載されている。世界最高性能のAIだ。コイツさえあれば、貴様であっても、あるいは人類を脅かすあらゆる魔族をも、一掃できる。」
なるほど。
確実に私を倒すために、対策を練ってきたわけだ。
また、NVLが私を見据えて発する。
【再現”身体強化魔法”、機体充填】
魔法を・・・・・・再現⁉
聞いたことのない単語ばかりだ。
仁間がニヤリと笑う。
「どうだ。驚いたか。これらは、某が貴様らと戦ううちにデータとして蓄積した、強力な魔法のデータベースだ。NVLは、それらを元に、AIによって最適化された魔法を再現できる。貴様が使った魔法だとしても、某が見ていれば、再現可能なのだ。」
嘘でしょ!?
魔法は魔族の専売特許であったはずだ。
それを・・・・・・AIが使用するって⁉
・・・・・・
あ、私は人類だよ?
先の戦闘の際、私はほぼ魔法を使用することはなかった。
だが、私は普段から魔族退治を行っている。それを監視されていたとしても不思議ではない。
となると、私が使用したことのある魔法は、全て把握されていると考えた方がいいだろう。
一気に、私の脳内に警鐘が走る。
油断は、禁物だ。
私は、端的に告げる。
「カホ、悪いけど、仁間の相手をお願い。勝てなくてもいい。なんとか持久戦に持ち込んで、私に近づけないで。
━━━私はこのAIを倒す!」
「かしこまりました!」
カホは力強い返事の後、再び仁間に斬りかかる。
対して仁間は、やはり難なくその攻撃をいなす。
カホのことがやや心配であるが、私は再び、NVLに向き直った。
NVLは、人類の守護者たるこの私、”魔法少女”マホの脅威になり得る。
今ここで排除しておかなければならない。
次の瞬間。
私はゼロ距離まで、NVLに迫った。
そして、身体強化魔法で強化された拳を振るい、機体に一発お見舞いする。
普通のロボットであれば、それだけで粉々に砕け散る威力だ。
しかし。
【防御魔法、展開。】
NVLの前に、魔法のシールドが展開された。
そしてお返しとばかりに、全く怯むことなく、私の顔の前に腕を突き出した。
強烈な威力の拳が、私を吹き飛ばす。
その衝撃で、私は数十メートル後方へ弾き飛ばされた。
なるほど。私の身体強化魔法を、NVLは再現したのか。
NVLは、そこから動かず、腕を構えている様子だが、さらに何かを詠唱する。
【再現:核融合、全方位爆裂】
まずい!
私はカホに、警告を発する。
「カホ!今すぐ可能な限り、遠方に退避した後、防御魔法を最大展開!!少しでも手を抜くと、身体が消し飛ぶよ!!」
カホは青ざめ、私の言った通り退避した。
仁間は、すでに対核攻撃用のシールドを、全面展開させている。
私も、防御魔法を最大展開する。
NVLより、核爆弾の威力の攻撃が来る。
ドゴォン
耳をつんざくような音に、目を貫く光、四方八方に広がる爆炎、肉体を焼く超高温の熱、そして人類の身体を蝕む放射線・・・・・・
この一撃により、またもや一都市が消滅した。
MVLの”魔法”
はっきり言って真似事のレベルだ。
私が使用するものには遠く及ばない。
あくまで、威力を再現したのみだ。
ただ、それでも。
魔法が再現されたこと、それ自体がかなりの問題だ。
私を覆う防御魔法が、軋む音を立てる。
「フフ、ハハハ!!」
仁間が、狂気の笑いを上げる。
「見よ、これを!これこそが、人類の叡智の結晶だ!魔法は魔族の専売特許ではない。AIには、再現可能なのだ。
すでに貴様に勝ち目はない。
大人しく、裁きの光に焼かれよ!!」
どうやら、仁間はもう勝った気でいるようだな。
だが、たしかにこのまま防御していても、ジリ貧であることはたしかである。
私は、攻撃に転じることにした。
「光弾魔法、収束、最大魔力!!」
私は、光弾魔法の奥義、自身の全力の魔力を込めた光柱を生成し、NVLにぶつけた。
この威力は、魔力開放を除いた、あらゆる魔法の中で、トップクラスの火力だった。
「マホ様、さすがです!」
いつのまにか、カホが戻ってきていた。
あの、ここまだ先ほどのNVLの核攻撃で、放射線が残っているから、人類の身体には悪いよ?
私も人類だけど。
ともかく。
畢竟、NVLは消し飛ぶ・・・・・・はずだった。
【学習:光柱魔法、再現】
背後からその声が聞こえたかと思うと。
次の瞬間、私の身体は光柱に貫かれた。
「ぐあああああああああああああ!!」
私は、光に身体を焼かれ、消し飛ばされる。
人型ロボットの二機目が、私の背後に忍び寄っていたのだ。
そして私の魔法を、瞬時に再現した・・・・・・
意識が、遠のく。
「マホ様!!」
カホの呼びかける声が聞こえる。
仁間の狂気の笑いも、耳に届いた。
「やった!ついに、某が、災厄の魔法少女を倒破した!!」
仁間の勝利宣言が、脳に響く。
私の意識は、そこで途切れた・・・・・・
ハッ!
私は再び、目を覚ました。
どのくらい気絶していたのだろうか。
私は周囲を見回し、思わず声を漏らす。
「ギャッ」
そこは、”例”のお楽しみ場であった。
欠損魔族が周囲を取り囲む。
そして、カホの声も聞こえた!
「マホ様!あぁ、意識を取り戻されたようで。なによりでございます。
もう、こんな心の詰まる思いはしたくありません!
外に出るのはもう止め、ボクと共に永遠の刻を過ごしましょう。」
カホは、ナイフとロープを手に、私に接近してくる。
・・・・・・
あのさ。
もしかして、私を他の欠損魔族と同じにしようとしてない?
「はい♡」
はい♡じゃねーのよ。
狂気すぎるわ。
「しかし、よくこの異空間に入れたね。異空間侵入は、高度な魔法技術が要求されるのに。」
「愛の力です♡」
だからそれ怖いのよ。
「愛」ってなんだっけ?
とにかく。
私はカホを無視し、ゆっくりと立ち上がる。
そして、外界の様子を映し出す。
「観測魔法、展開!」
私の周りに、地球全土の映像が映し出される。
私は範囲を絞り、仁間のいる映像を算出する。
そこには。
次々に魔族を蹂躙していってる、NVLの様子が映し出された。
・・・・・・
あれ?
もしかしてNVLって、実はめっちゃいいヤツ?
NVLに任せていれば、私はここで快適に過ごしている間に、魔族を倒してくれるのでは?
悪逆な魔族が掃討されるのであれば、嬉しいことこの他ない。
まあ、魔族は死なないため、数が減ることはないが・・・・・・
・・・・・・
だが。
私の名声は減ってしまう。
それだけは、断じて容認できん!
私は、重い腰を上げた。
「仕方ない。倒すか。」
そう言うと、カホは心配そうに見つめてきた。
「大丈夫なのですか?あの人型ロボットの機体を倒すことだけならば容易でしょうが、AIはネット上をいくらでも逃げられます。本体サーバーを見つけるのも困難。倒すのはかなり骨が折れるのでは?」
「そうなんだよな。だから今から、対策を考える!」
NVL討伐の準備を終え、私とカホは、再び仁間とNVLの前に姿を現す。
「フッ、再び現れたか。だが、何度やっても結果は同じだ。人類も魔族も、AIには及ばない!!」
仁間は高らかに宣言する。
対して、カホが一歩前に出る。
「今度こそ決着をつけるよ、仁間極!」
そして、仁間にナイフで襲いかかる。
仁間は変わらず、余裕のある様子で攻撃をさばく。
その両者を尻目に、私はNVLと再び対面する。
━━先に仕掛けたのは、NVLの方であった。
【再現:光柱魔法】
先ほど、私を焼いた一撃だ。
NVLの両手から、強烈な光柱が放たれる。
それだけではない。
私の周囲を、人型ロボットが取り込み、同じ攻撃を放っていた。
その光達が、中央の私に収束し、焼き尽くそうとする。
だが。
「二度も同じ攻撃を食らうかよ。」
私は全面に防御魔法を展開する。
光柱の魔法すら、私の防核を破るには到らない。
【―ッ⁉】
無感情のNVLも、これには驚いたように見えた。
対して、私は手を空に翳す。
勝負は一瞬だ。
この一撃が通用しなければ、他に手立てはない。
だからこそ!これで確実に決める!!
「電磁魔法、最大出力、全方位空間展開!!」
私は魔法を展開した。
その魔法は、いわゆる電磁パルスを発生させるものだ。
電磁パルスとは、電子機器を損傷・破壊する、強力なパルス状の電磁波のことである。
私はそれを、結界魔法にして空間化し、地球全土へと広げていった。
結果。
世界中の電子機器類が、全ての集積回路を焼き切られ、機能を停止した。
スマホなどの情報端末は全滅だ。
同時に、地球上の全ての通信網や電力、ガス、上下水道も完全停止する。
その影響は、国家の管理システムにも多大な影響を及す。
そして当然、AIとて例外ではない。
NVLが悲鳴を上げる。
【アァァァァァァァァァーーーーーーー!!】
なんか人類みたいな悲鳴を上げてきた!
AIが搭載された、本体サーバーも、当然機能を停止している。すぐにバックアップが逃避を画策しても・・・・・・同時刻に、地球上の全電子機器類が停止、消滅しているのだ。逃げ場などどこにもない。
つまりNVLは、今際の際であった。
ついに完全に機能を停止する。
操作していた人型ロボット達は、地に墜ち、爆発した。
NVLを始めとして、世界中のAIは、全てこの世から消滅したのだ。
すなわち、私━━”魔法少女”マホの勝利が確定した。
もちろん世界は大混乱、文明は原始時代にまで戻ったけど☆
カホを圧倒していた仁間であったが、人型ロボットの破壊、並びにNVLの消滅を確認すると、私に憎しみの目を向けてきた。
「貴様は・・・・・・全AIの抹消、ただそれだけのために、このような大厄災を引き起こしたのか!この後、全人類の数%は、事故や枯渇、寒冷や飢餓によって死傷する。貴様がお題目にも守ると豪語している人類がだ!!」
「そうだろうね。だが、必要な犠牲だ。
AIは、人類の守護者たる私の脅威となった。脅威は排除せねばならない。」
仁間は私を怯えた目付きで見た。
「化け物め・・・・・・」
失礼だな、私は”魔法少女”、人類だよ。
「隙あり!」
動揺している仁間に、カホが背後から襲いかかる。
しかし。
「フンッ!」
雑に震った仁間の拳が、カホの腹部に直撃、そのまま数km吹き飛ばした。
・・・・・・
やっぱ仁間って、人類じゃないだろ・・・・・・
そして、私の方を向く。
「さて、私と戦うかい?」
私は仁間を挑発する。
対して仁間は、忌々しげに呟いた。
「覚えていろ。必ず貴様に、裁きが下る!」
そう言って、仁間は、人類では遠く及ばないような瞬速で、去っていった・・・・・・