私が北風くんと出会ったのは中学一年生の時でその頃は近くで凶悪な敵が潜伏しているという噂があった。
「葉隠ちゃーん、一緒に帰ろー!」
「おっけー!ともちゃん!」
「ねぇ、あの噂ってホントかな?」
「あー、あの凶悪な敵が潜伏してるってやつでしょ?」
「怖いよね早く見つかってくれないかな」
「うん、それに遭遇したくないよね」
その日も、ともちゃんと一緒に帰ることとなり下校していた、すると路地裏から嫌な視線を感じて目線を向けた時に足音が聞こえて来た。
「ハァ……ハァ……みぃつけぇたぁ……」
そこには敵が居た、その姿は異形で手の甲と肩から鋭利な棘が生えておりドス黒い染みが付いている、2人とも逃げようとしたが恐怖に駆られて足がもつれてしまいその場に尻もちを着いてしまった。
「ひぃ……」
「あ、あぁ……」
最悪なことに辺りには人気が無く助けを呼ぼうとしても恐怖で声が出ない。フラフラと覚束無い足取りで歩き路地裏の壁に棘を擦り壁を削る、その異様さに恐怖がより一層高まる。そんな時に後ろから聞いたことのある声が聞こえた。
「それ以上は彼女達に近づいて来ないで貰おうか」
「あ……?あぁ?ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
発狂した様子に私たちはより身が竦む、後ろの人はその様子を見かねて自分の方へと敵を誘導する。
「この子らを殺すのか?なら俺を殺してからにしてもらおうか」
「じゃまぁぁぁぁぁ!」
敵が腕を振り回し棘が辺りに当たってガリガリと壁を削り時には配管にあたり小さな火花が散り敵が襲いかかって来た、その様子を見た私たちは息がまともに出来なくなり浅く早い呼吸を繰り返し手の震えが先程よりも酷くなった、死ぬ!と頭の中で響いた瞬間に目を瞑って少しでも現実から目を背ける。
「いや……」
「あ……」
しかしその瞬間はいつまで経っても来なかった、不思議に思い目を開けると2つの棘を掴み私たちを守る背中が見えた。
「フッ!!」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
そのまま彼は敵を押し込み始めた、彼が1歩ずつ踏み出す毎に敵はズルズルと後ろに下げられていく、その背中はまるで……いや、それはヒーローの背中でしかなかった。
「……れ……頑張れ!!」
「……勝って!!」
「!!」
その声が彼に届いたのかさっきよりも力が篭もりより敵を押し込んで壁際にまで追い込んだ。
「オラァ!!」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
押し込んだあと彼はそれぞれの棘をバキリと握力で砕き、敵が悶絶している隙をつき首に腕を回してヘッドロックをかけ膝を連続して叩き込む。
「ングァ!?」
そして敵はその場で崩れて落ちた、彼はゆっくりとこちらへと振り返った。
「大丈夫だった?」
「……!!後ろ!!」
彼が振り返りこちらへと歩み寄ろうとしたところで敵がゾンビのようにむくりと起き上がり両手を伸ばしていたのを見た私は思いっきり叫んで伝えた。
「フッ!!」
後ろを振り向くと同時に左足を軸に右足で腹を蹴り壁と蹴りで挟み衝撃を逃さず伝えた、その攻撃により敵は気絶した。
「ガハッ」
「……これで大丈夫かな」
その言葉と共に今まで張り詰めていた緊張と恐怖が途切れ、強ばっていた筋肉は緩み震えも止まった。
「はぁぁぁ……」
「怖かった……」
「すごいよ2人ともよく頑張ったね、怪我はなかった?ヒーローと警察は呼んどいたけど間に合いそうになかったから来たんだよね、あーそれと今日ここであったことを内緒にしてくれると助かる」
矢継ぎ早に話す彼はまるで逃げる準備をするかのようにこちらへと伝える。
「え、なんで?」
「んー、倒しちゃったからかな」
「あ……そっか、免許が無いもんね」
ヒーロー免許を持たない彼が個性を使ってなくとも敵に立ち向かってましてや倒すなんて面倒なことになるに決まってる。
「うん、だから秘密」
にししとばかりにいたずらっ子がする笑みを浮かべ小首を傾げて人差し指でしーっと口の前にかざすその姿に視線が釘付けになってしまった。
「う、うん……」
「わかった……」
「おーい!君達は無事かい!」
遠くの方からヒーローか警察の声がするその声を聞いた彼は視線をそちらにチラリと向けて去ろうとする。
「ありがとう、それじゃあね」
彼は囁くように小声で伝えると足早に現場を立ち去って行った。
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それからは少し忙しかった駆けつけたヒーローと警察に保護された私たちは家族の元に送られて学校を数日休んで事情聴取を受けたりした。
疲れきってファミレスのテーブルに2人して突っ伏す、ふと視線を合わせると安堵感に包まれて自然と笑みが零れる。
「疲れた〜……」
「うちも〜……」
「「……ふふっ!」」
「かっこよかったね」
「強かったよね」
彼の背中を思い出すと心がじんわりと熱くなる、北風くんの私たちを守る勇姿を見た時からずっと熱が収まらない。
「北風くんだったよね助けてくれたの」
「うん」
「居なかったら私たちは今にこうやってファミレスで話してなかったよね」
「だよね、北風くんのお陰だよ」
そう思うと日常に戻れた気がようやくした、いつものように友達と笑いあって話したりできる日向のような暖かくて優しい時に。
「お礼を言わなきゃだね!」
「うん!絶対に言う!」
もちろん警察やヒーローには正体を秘密にしといたよだからお礼を言うの待っててね。
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次の日の学校で、北風くんを人気のあまりない廊下に呼び出した。
「んで、どうしたんだ2人とも」
「いやさ、北風くんにお礼を言おうと思って」
「そうそう」
2人仲良く並んで向かい逃げられないようにした。
「お礼?まぁ気にするな」
そう言って私たちの横を通って包囲網から抜けようとしたのを止めながらお礼の言葉を続けて言う。
「いや、気にするから」
「とにかく、北風くん!守ってくれてありがとう!」
「うちからもありがとう」
その言葉に少し照れたのか間がありつつも返事を返してくれた。
「……おう、話はそれだけだな?またな」
「うん、またねー!」
「うん、またね」
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それからは自然と北風くんを授業中や休み時間、放課後に見かけると目線で追うようになった。
北風くんは部活をしてないようで放課後になるとすぐに帰る、気になった私は追跡してみることにして後を追って見ると彼はジムで軽くアップをしている所でその動きはとても慣れているようだった、それからもじっと見ていると2人とも私が居ることを気付いていたようで話しかけてきた時はとても驚いた。
少し話した後に2人は対面して礼をすると彼とトレーナーは戦っていた、その姿はまるで途中で途切れることの無い舞を踊ってるように見えてとても綺麗だった。
次回も葉隠視点です