朝、葉隠さんと合流して雄英高校の門をくぐると改めて校舎の大きさと広さに驚愕した。
「はぇー、迷っちゃうな」
「だな、迷わないといいけど」
案内の紙を見ながら目的地のA組に向かう、するとまだ早かったか教室にはちらほらとしか人がいなかった。
「早かったね」
「あぁ、まだそんなに人が居ないな」
すると下の方から羨ましい妬ましげな声がかかる。
「彼女持ちとか羨ましいぜ」
目線を送るとぶどう頭の彼が居た、こちらを一瞥するとケッと捻くれた様子をする。
「違うぞ、友達だ、可愛い子だけどな」
そう言いつつ少し微笑みながら葉隠に目線を送ると顔を手で覆っていた。
「……うひゃぁ……」
「イチャイチャしやがって爆発しやがれ」
「イチャイチャだなんて、仲が良いだけだよ」
そう言いながら笑みを浮かべる俺の様子にムッとした声をあげるのにワザと気付かないフリをする。
「むぅ」
彼女の気持ちや感情に気付かない鈍感なやつの振りをしつつ彼に目線を合わせる。
「それで?きみの名前は?」
「オイラの名前は峰田実、リア充やろーの名前は?」
「クフ、俺の名前は北風命、北風とか命って好きに呼んでくれ」
握手を交わそうとしてスっと手を差し伸べると素直に応じる峰田、少しばかり力を込められるがビクともしない様子に悔しそうな顔をする。
しばらくすると、担任らしき男が教壇の前に立った。目の下の隈が濃く、いかにも寝不足といった様子だが、その目つきだけは鋭い。その出で立ちに周りのクラスメイト達は最初ざわつき静かになるまで数秒を要した。
「お友達ごっこしたいなら余所へ行け。ここは……ヒーロー科だぞ、時間は有限。君達は合理性に欠くね……担任の相澤 消太だ。よろしくね、無駄な時間を割くつもりはない。合理的に判断してもらう。直ぐに体操着に着替えてグラウンドに来い」
そう告げると、あっという間に教室を後にする担任――相澤先生の背中を、生徒たちは呆然と見送った。
「……速すぎん?」
誰かがそう呟いた声が、教室の空気を代弁していた。
グラウンドに集まった生徒たちを前に、相澤先生は淡々と告げる。
「個性測定テストをする。今までの学校生活では、個性を全力で使うことを禁止されてきたはずだ。だがここは違う。全力を出せ」
そう言うと、まず一人ボール投げのデモンストレーションが始まった。爆豪が豪快に記録を叩き出す。その様子に浮き足立って騒がしくなる。
その様子を見かねた相澤先生は総合記録最下位を除籍にすると言い、クラスメイト達の眼は真剣なものになった。
50m走
他の生徒達は皆それぞれ個性を活かした走法をしたり爆豪は空を飛んだりしていたので、それにならい翼を生やして全速力でかっ飛ばしたら後ろが砂嵐のようになった。
握力
腕を龍化させ思いっきり握り締めると限界まで握り締められた握力計はミシミシと機械の悲鳴を上げて最終的にはバキンッとネジやら何やらを吐き出してぶっ壊れた。
立ち幅跳び
翼を生やして飛んだ、以上
反復横跳び
足を龍化させておいたが爪のせいで地面が削れていってしまった。記録は上位ではあった。
腹筋
普通に変身とかせずにそのままでしたら上位にくい込んだ。
長座体前屈
思ったより身体が固くてこれからは柔軟もしっかりしようと思ったマル
持久走
翼を生やしてひたすら飛び続けた、ズルいかなと思ったが原チャリの女子も居たしそれと比べるとズルさ的にはそこまでかなと思った。自分で言ってて謎基準ではあるが。
ボール投げ
「次、北風」
名前を呼ばれ、俺は前に出た。手にしたボールを一度握り直す。
――ここでさっきまでのように真の姿を隠す意味はない。
そう判断した俺は、全身に力を込めた。
「うおっ……!?」
周囲から驚きの声が上がる。皮膚が黒い鱗に覆われ、背から翼が生え、頭には王冠のような角が伸びる。腰には尻尾が垂れ、瞳には宝石のような輝きが宿る――古龍・ミラボレアスの姿へと変貌した俺を見て、グラウンドは一瞬にして静まり返った。
「な、なんだそれ……!」
「竜みたいな個性……?」
「か、かっこいい……!」
口々に声が上がる中、俺はボールを軽く放り投げると、翼で一度大きく羽ばたき、そのまま尻尾を鞭のようにしならせてボールを弾いた。ボールは空高く、視界から消えるほどの勢いで飛んでいった。
「……無限大、ってやつだな」
アイザワ先生が手元のスマホを見ながら呟いた声が、静寂の中でやけにはっきりと聞こえた。
変身を解くと、周囲の視線が一斉にこちらに集まっているのが分かる。中には興味津々といった顔で近づいてくる生徒もいた。
「おい、お前、その個性なんだよ!」
刺々しい髪の少年――爆豪が、噛みつくような口調で詰め寄ってくる。だがその目には、明らかな闘志の色が宿っていた。
「モンスターの個性、みたいなものだ」
短くそう答えると、爆豪は「ハッ」と鼻を鳴らして離れていった。だがその視線は、まだこちらを捉えたままだった。
葉隠さんはといえば、少し離れた場所で満足げに頷いている。
「やっぱり北風くん、すごいなぁ」
その呟きが、なぜか一番胸に残った。
その後は結果発表をされ、それぞれが安堵の表情を浮かべ最下位の緑谷も土壇場で可能性を示し何とか除籍を免れた、戻るとそれぞれの机に教科書や書類が用意されており、各々それらを押し込んで、雄英高校生活の初日は終わった。
帰り道、葉隠さんと一緒に帰っていると彼女は少しだけ言いにくそうに目線を逸らして告げる。
「……帰り道一緒なの初めてかもね」
「そうだね、今までは反対方向だったからね」
彼女の両親とうちの父が仲良くなり家族ぐるみでの交流も増えたからか、一緒のアパートに住まわせようとなり、今では学生向けアパートの隣人になったのだ。
すると、少しだけ早く歩いた彼女は身体ごとこちらに振り向くと目を細め大きく笑って頬を赤く染めて言った。
「なんか変な感じ」
俺はその姿になのか、それとも彼女と居るからなのか分からず胸の鼓動が速くなるのを感じつつも、少し口角を緩めて小さく頷く。
「それはそう、慣れないや」