「わ〜た〜し〜が〜、普通にドアから来た〜〜!!」
教室の扉を開けて現れたのは、筋骨隆々のシルエットに満面の笑みを浮かべた男――オールマイトだった。その登場に、教室が一気に沸き立つ。
ところ変わってozasikiに行くと皆それぞれのヒーローコスチュームに着替えていた。
俺のコスチュームはライダースに仕上げてもらう事にした、そもそも変身していると服はどっかに行くからそこまで重要視してない、それ故に上下は革っぽい素材で伸縮性と頑丈さを兼ね備えたワインレッドのヒーロースーツになった。
あと余談にはなるが流石に原作のままの葉隠さんのコスチュームだと俺にとってあまりよろしくないので見えることを早々に告白している。お陰で一悶着はあったが、何がとは言わないけれど見えないようになった。
「さぁ、諸君! 待ちに待った実戦形式の授業だ!」
「本日の授業はヒーロー基礎学、実戦形式の訓練だ! 二人一組のチームに分かれ、一方がヒーロー役、もう一方がヴィラン役となる。ヴィラン役は施設内に設置された模擬核兵器を守り、ヒーロー役はそれを制限時間内に確保するんだ!」
説明を聞きながら、俺は隣に座る葉隠さんと顔を見合わせた。
「二人一組、って北風くんと組めたらいいなぁ」
「そうだな」
軽く言葉を交わしていると、オールマイトの手にした箱からくじが引かれ、チームが発表されていく。
「北風命、葉隠透――ヒーロー役!」
その発表に、葉隠さんが小さくガッツポーズをするのが視界の端に見えた。相手のヴィラン役は――爆豪と麗日という組み合わせだった。
「へっ、面白ぇ。派手にやってやるよ」
爆豪が不敵に笑いながらそう言うと、麗日は少し困った顔をしながらも頷いていた。
「対戦相手は北風・葉隠チーム対爆豪・麗日チームだ! 会場はビル形式のCだな」
模擬市街地の建物内、俺たちヒーロー役は外で待機し、5分後に突入する。作戦を練るため、少し離れた場所で葉隠さんと向き合った。
「爆豪くんの個性は爆発、麗日さんは重力操作だったはずだよね」
「ああ。厄介なのは麗日の方だ。何かに触れて無重力化できる。核を持ち出されたら追いにくくなる」
「じゃあ、どうするの?」
少し考えてから、俺は答えを出した。
「俺が先行して爆豪を引き付ける。時間を稼ぐから、葉隠さんはその隙に建物の奥へ回って核を確保してくれ」
「私が確保役?」
「隠密が出来るのは葉隠さんだけだ。麗日に見つからず動けるのは強みになる」
「……分かった。任せて」
葉隠さんの声には、いつもより真剣な響きがあった。
「開始!」
合図と共に、俺たちは同時に動き出した。窓を突き破って建物内に飛び込むと、案の定、爆豪がこちらに気づいて構えていた。
「待ってたぜ」
「悪いが、長居はできない」
そう言うと、俺は全身に力を込めてミラボレアス(人型)へと変身する。骨格が軋み、皮膚が黒い鱗に覆われ、腰あたりから尾が伸びる感覚――何度経験しても、この一瞬だけは息を止めてしまう。爆豪の目が一瞬見開かれるが、すぐに獰猛な笑みに変わった。
「変わったところで――当たらなきゃ意味ねぇんだよ!」
爆音と共に爆豪の右手から爆発が放たれる。軽く後ろへ回避すると、そのまま尻尾を振るい、爆豪の足元の床を軋ませた。だが爆豪はそれすら見越していたのか、爆発の反動を使って空中へと跳び上がる。
「甘いんだよ、テメェ!」
上空から降り注ぐように、両手から連続で炸裂音が響いた。狭い室内に反響する爆風が壁を焦がし、天井の一部が崩れ落ちる。俺は両腕で身を守りながら、1歩踏み出し距離を詰め、腕を開き右手を振りかぶった。
「くっ……!」
その瞬間、爆豪は右手を俺の顔面へと突き出した。
「食らいやがれェ!」
至近距離での爆発――躱しきれないと判断した俺は、腕を交差させて防御に回る。鱗越しとはいえ、その衝撃は骨まで響くほどだった。腕を伝って熱と痛みが走るが、構わず腕を振り抜き、爆豪の脇腹を狙って薙ぎ払う。
「がっ……!」
浅く掠った程度だったが、爆豪は舌打ちしながら距離を取った。額には汗が滲み、荒い息を吐きながらもその目にはまだ闘志の炎が消えていない。
「まだだ、まだ終わってねぇ……!」
両手を掲げ、爆豪は今まで以上に密度の濃い爆発を練り上げ始めた。手の平に集束していく光が、まるで熱線のような威圧感を放つ。
「――大技、か」
俺は尻尾を大きくしならせ、床を蹴って一気に間合いを詰めた。爆豪の爆発が放たれるのとほぼ同時、俺は脚を叩きつけて爆風の軌道を逸らしながら、その懐へと飛び込む。
「な……!?」
驚愕に見開かれた爆豪の目の前で、俺は尻尾を鞭のようにしならせ、足元を薙ぎ払った。
「くそがっ……!」
体勢を崩した爆豪はそれでも倒れる寸前で踏みとどまり、両手をこちらに突き出して至近距離での爆発を放とうとする。だが、その一瞬の硬直を俺は見逃さなかった。脚で軽く足を払うと同時に、肩で体当たりを叩き込む。
「ぐああっ!」
吹き飛ばされた爆豪は壁に叩きつけられ、地に沈んだ。それでも起き上がろうと腕に力を込めるが、その手はもう震えて上手く床を掴めていない。
――しぶとい。まだ立とうとしている。
俺は見逃さなかった。押さえ込むように爆豪の肩を掴む。
「クソ……ここまで、か……」
満身創痍となった爆豪は、悔しさを滲ませながらも地面に片膝をついた。ルール上、これで行動不能――ヴィラン役の敗北条件が一つ満たされたことになる。壁や天井のあちこちに残る焦げ跡と罅が、この短時間でどれほど激しい攻防が繰り広げられたかを物語っていた。
その頃、建物の奥では葉隠さんが静かに核へと近づいていた。
「――ここだ」
透明化した姿のまま、麗日の視線を避けて核が設置された部屋の扉をそっと開ける。核は台座の上に置かれていた。
「見つけた」
小さく呟くと、葉隠さんは慎重に核へと手を伸ばした。
「……! そこにいるの、分かってるよ」
背後から麗日の声がした。振り返ると、彼女は油断なくこちらの方向へ視線を向けている。
「透明でも、音までは消せないでしょ?」
「……バレてたか」
葉隠さんは苦笑しながらも、迷わずケースを掴んで核を確保した。麗日が慌てて距離を詰めようとするが、既に手遅れだった。
「――確保完了!」
その報告と同時に、館内放送が響いた。
「ヒーロー役の勝利! 制限時間5分12秒での確保となった!」
放送を聞いた葉隠さんは、思わず飛び跳ねて喜びを表した。
外で待っていた俺の元へ駆け寄ってくると、両手を大きく振りながら報告してくれる。
「北風くん! やったよ、確保できた!」
「よくやったな」
「北風くんこそ、爆豪くんを抑えてくれたんでしょ? ありがとう! 北風くんが作戦を信じてくれたから勝てたんだよ!」
その笑顔を見て、俺は小さく頷いた。母や黒美ちゃんを失ってから、こうして誰かと肩を並べて何かを成し遂げる感覚を、久しく忘れていた気がする。
――悪くない。
そう思う自分に、少しだけ驚きながらも、俺はその温かさを噛みしめていた。