勇者の隣は、茨道。〜能力無しから、自分の力で望んだ未来を切り拓く〜   作:といα

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第26話 事件の行末

 ノールたちは、先を歩く黒髪少女についていく。

 

「ベールバーナにある、王国軍の詰所です。あ、騎士団の人は殆どいません。私も近くにいたから招集されただけなんで」

 

 そして、王国軍の詰所へと辿り着く。

 

 道中で繰り広げられたシレーナの話は、その大半が話す必要がない事だった。ノールたちが適当に相槌を打ち、彼女が話す。その繰り返しだった。

 

「ここに、事件の被害者とその家族を保護しています。あ、貴族の屋敷みたいに意味のない茶菓子とかは出ないので、どうかあしからず」

 

 そしてシレーナは淡々と呟くと、玄関の扉を開けて先導していく。

 

「こっちに来てくださーい」

 

 その後ノールたちは、シレーナの案内で王国軍の詰所に到着する。それほど大きくない建物の中に入り、廊下を歩く。

 

「ここです。被害者の少女と、その母親がいます」

 

 やがて、先導していたシレーナの足は小さな部屋の前で止まった。

 

「コンコン。さあ面会のお時間ですよー」

 

 実際にそう言ったシレーナは、扉を数回ノックした。そして、素早く扉を開ける。

 

「ーーーアベルくんっ!?」

 

 扉を開けた先には、勢いよく顔を上げて勘違いしたエルフの少女がいた。その隣には、彼女の母親が座っている。

 

「残念ですが、ご所望のアベルくんではありません。ですが、金髪少年と面識がある方たちをお連れしました」

 

 シレーナは淡々と話すと、扉の横に立つ。

 

「‥‥‥どうぞ?」

 

 中へ入れと、彼女の横目が促している。いや、実際に口に出している。

 ノールたちは何も言わず、中へと足を踏み入れた。

 

「それでは、ごゆっくり。何も出ませんが」

 

 やがてシレーナは素早く扉を閉めて、早々に立ち去っていった。室内に、微妙な空気が流れ出す。

 

「あ、あのっ‥‥‥アベルくんは無事なんですか!?」

 

 その空気を壊したのは、事件の被害者であるアリシア。

 

「‥‥‥ごめん。何も知らないんだ。俺たちもアベルの事が知りたくて、ここに来たんだ」

 

 ノールが穏やかな笑顔を作り、アリシアの前にしゃがみ込む。フィーアも同様に、彼女の前にしゃがんで目を合わせる。

 

「俺たちはアベルと同じ冒険者で、パーティーを組んでいる。昨日、何があったか聞かせてくれないか。昨日あった騒動の首謀者って、本当に」

 

 ーーーガチャッ。

 

 ノールの声は、扉の音によって遮られる。

 

「あ、失礼。腰を折ってしまいましたね。ですが話があるので、お邪魔しますよ〜」

 

 現れたのは、ボサボサの茶髪に顎の無精髭が印象的な、身なりを意識していないような30歳前後の男。

 

「俺はアストリア王国騎士団、五番隊の隊長をしているハーティアと申します。今、昨日の首謀者である少年の()()が終わりましてね」

 

 ハーティアは頭を掻きながら呟くと、室内の空気がざわめく。

 裁判という重々しい言葉に、ノールたちは息を呑んだ。

 

「その結果‥‥‥彼は殺人未遂の実刑が課せられました」

 

 ハーティアの口から、簡潔な結論が発表される。

 

「ーーーなんでッ!!?」

 

 真っ先に反応したのは、アリシアだった。

 彼女は眉を顰め、これ以上ないほど睨みつける。

 だが、ハーティアの態度は変わらない。

 

「多数の重傷者を出した残虐性から、危険因子だと判断ーーー2日後に、処刑されるそうです」

 

 ハーティアの言葉は、あまりに淡々としていた。

 

「判決があまりにもおかしいです!!! 彼に何の罪があると言うんですかッ!!!?」

 

 アリシアの大声が室内に響き渡る。彼女の全身から魔力を滲み出し、周囲が冷たくなっていく。

 

「彼女の言うとおりです。不可解な点が多すぎる。王国軍は何が正しいか分からないほど、落ちぶれてしまったんですか?」

 

 それはノールも同じだった。

 目を細めて怒りを露わにし、暴言を吐く。

 

「ハッ、何が王国騎士団よ。エリートだかなんだか知らないけど、結局は王家や貴族の権力に逆らえない犬じゃないの??」

 

 特に過敏に反応したのは、フィーアだった。

 

「この子を命懸けで助け出したアベルが極刑? はぁ?? 平民を馬鹿にしてんの???」

 

 もはや嫌悪感を少しも隠さず、暴言を吐きまくっていた。

 

「お前ら落ち着け。別にこいつが処遇を決定したわけじゃない。伝えに来ただけの奴を、一方的に責めるのは酷だろ」

 

 ただ1人、バンギネスは仲間を落ち着かせるように淡々と話す。だが、彼の両拳は震えている。

 

「まあ、王国騎士団や王国軍の奴に不信感を抱くのは仕方ないがな」

 

 そして一瞥し、ハーティアを睨み付けていた。

 

「‥‥‥俺から言えるのは、申し訳ないという事だけです。お悔やみ申し上げます」

 

 ハーティアは軽く頭を下げると、踵を返して扉を開けた。もう、全てが終わったのだ。

 

「アベルくんっ‥‥‥アベルくんっ!!」

 

「何が王国騎士団よっ!!!? 権力の犬畜生団に改名しろ無能集団がッ!!!」

 

 直後に響くアリシアの大声、フィーアの暴言。

 それを背中に浴びながら、ハーティアは扉を閉める。

 

「‥‥‥ったく。今のままじゃ、善悪の判断すら出来やしない。だから貴族は癪に障るんだよ」

 

 そして溜め息を吐いて頭を掻きながら、彼はふらふらと歩き出すのだった。

 

「悪いな‥‥‥少年」

 

 

 

 その後。

 アリシアとノールたちは、必死に判決の不信感を訴えた。だが、状況は一変せず‥‥‥2日が経つ。

 

「うそっ‥‥‥」

 

 アリシアが、地面に両膝を落とす。全身が震え、視界が滲む。息が、苦しくなっていく。

 

「ーーーいやぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

    金髪少年の生首が、周囲の目に晒された。

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