「ティアラ盗難事件の犯人は、あなただ…藤井ともか」
ひなたが名指ししたティアラ泥棒。それはまりの友人である筈のともかだった。
「そんな、ともかが!?」
「…や、やだなぁ!ティアラはポーチに入らなかったでしょ?外に持ち出す事なんて…」
「いいや、ティアラは持ち出されてなんかいない」
「は…?」
「という事は…ティアラはまだこの部屋にあるって事ですか?」
「でもひなた、ティアラが持ち出されていないなら、ティアラは今どこにあるの?」
「あんなならわかる筈だ。今朝の事を思い出してみなよ」
「今朝の事…あっ、もしかして!」
そう言ってあんなは控室に置いてあったブーケに手を入れる。あんながブーケから手を取り出すと、その手にはティアラが握られていた。
「それは、私のティアラ!?」
当然このティアラはまりの物だ。今朝方、あんなのバースデーケーキを買った帰りにひなたとあんなは髪に結んでいたリボンを失くして泣いていた女の子と出会い、あんなが近くの植え込みから女の子のリボンを見つけてあげたという出来事があった、この出来事ヒントとなったのだ。
「ともかさん…ブーケを自分に投げてほしいと頼んだあなたはコッソリブーケにティアラを隠し、ブーケトスの時にブーケを受け取ったらティアラを抜き取るつもりだった。どうですか?ともかさん…いや、
「「えっ…!?」」
ひなたが発した衝撃的な一言にあんなとみくるは勿論、ともか以外の全員が驚きを隠せないでいた。そんな中ともかはどこか不気味な笑みを浮かべ、ひなたを称賛するかのように拍手をしていた。
「フフフ…まさか手口を見抜いただけではなく、この僕の完璧な変装まで見抜くとはね…どうしてわかったんだい?」
「僕の知り合いに変装の達人が居てね、そいつのおかげで変装術を見破るのに自信があるんだよ。それにまりさんの話だと、本物のともかさんは遅刻の常習犯だった…例え何か企もうと、人の癖は簡単に直せるものじゃない…だから思ったんだよ。君は本当にともかさんなのかってね」
「なるほど…名探偵の曾孫というのは、伊達じゃなかったみたいだね」
そう言ってともかに変装していた何者かは服を脱ぎ捨てた。ともかが居た場所にはマントを羽織り、仮面をつけた男が立っていた。
「僕の名はニジー!怪盗団ファントムの、怪盗さ!」
どうやらこの男はニジーと言う名前の様だ。
「頂くよ?」
ニジーは一瞬であんなの側に行き、、彼女の耳元にそう囁いた。
「…あっ!ティアラが!?」
そう、あんなが持っていた筈のティアラがニジーに奪われたのだ。控室の窓が開いていたのを見るに、ニジーはそこから逃げたようだ。
(なるほど、あの窓から飛び降りたって事か…だけどここは二階。簡単に逃げられる高さじゃない…それでも尚逃げられたという事は、あのニジーという怪盗は只者じゃなさそうだ…久しぶりだ、こんなにワクワクする出来事は…!)
「ひなた、みくるちゃん!追いかけよう!」
「あ、はい!」
「ん」
それからひなた、あんな、みくるの三人は木々の中でニジーを追いかけていた。
「速い…これじゃ追いつけないよ…!」
「ひなたさん…もうあそこまで…!」
みくるの言う通り、ニジーに最も近い場所を走っているのはひなた。
「驚いたよ…まさか僕にここまで追いついているなんてさ」
(運動にはそこそこ自信があるんだけど、彼の走るスピードは僕より速いみたいだ…さて、どうやって追いつくか…)
「「わぁぁーーーーっ!!」」
「ん?」
どうやってニジーに追いつこうかと思考を巡らせていたひなただったが、その前にポチタンに引っ張られていたあんなとみくるが大ジャンプでニジーに追いついた。
「ワオ…」
「フフッ、中々困ったベイビー達だ」
「ティアラを返して!」
「それは出来ない相談だ。このティアラには、マコトジュエルが宿っているからね」
「マコトジュエル…?」
するとニジーはティアラに手を掲げ、そこから取り出したかのようにダイヤの様な物がニジーの手に握られていた。
「花嫁のティアラを想う気持ちがこのマコトジュエルを引き寄せた…このジュエルを頂く事が、僕達の目的なのさ!…そうだ、三人も観客がいるんだ。これから素敵なショーを開くとしよう!」
そう言いながらニジーはどこからか取り出したバラをティアラに突き刺した。
「嘘よ覆え!いでよ、ハンニンダー!」
「ハンニンダァーーーーーー!!」
ティアラは怪物に姿を変え、雄たけびを上げた。
「な…なに、アレ…!?」
「ファントムが新たに開発したハンニンダーさ。さぁ、ショータイムだよ!」
「ハンニン…ダァー!!」
ハンニンダーと呼ばれた怪物はマントから斬撃のような物を出し、それで周辺の木々を切り倒した。
「な…なんとかしなきゃ!」
「な、なんとかって…!」
冷や汗をかきながらもあんなはハンニンダーを睨むが、今のハンニンダーの攻撃を見たみくるは恐怖で震えてしまっていた。
「っ…!」
(あのひなたも震えてる…やっぱり怖いんだよね…なんとか…なんとかしないと…!)
「凄い…!」
「「「…へ?」」」
「ハンニンダー?」
ひなたが震えながら発した一言にあんなとみくる、更にはニジーとハンニンダーまでもがポカンとしていた。当のひなたの表情はあまり変わっていないが、ハンニンダーを見るその目は今までで一番輝いているように見えた。
「まさか怪物を生み出す事が出来るなんて…人間の技術で到底出来る事じゃない。怪盗団ファントムというのは常識では考えられない技術を持っているのか…是非その謎を解明してみたいな!」
これまでの口数の少なさはどこへやら、とても早口で喋っていた。
「もう、こんな時にまた始まったよぉ…」
「ちょっとひなたさん!状況わかってますか!?」
「わかってるよみくるさん。とはいえこの非科学的な事にワクワクしてしまうんだ…わかるだろう、この気持ち!?」
「わかりませんよ!?」
流石にひなたの暴走にみくるはついていけない様だ。
「…とはいえ、ティアラ盗難及び怪物化を見過ごす事は出来ないね…あんなとみくるさんはこの場から逃げた方が良いよ」
「逃げろって、ひなたさんはどうするんですか!?」
「足止め」
そう言いながらひなたはハンニンダーの元へ向かっていった。
「「ひなた(さん)!?」」
「ハンニン、ダァーーー!!」
ハンニンダーは自身に向かってきているひなたに対し斬撃を飛ばすが、ひなたはローリングやジャンプを駆使してそれを避けていく。
「…あまりこの手は使いたくないが仕方ない。ハンニンダー!あそこにいるベイビー二人を捕らえるんだ!」
「っ!」
「ハンニンダー!!」
ハンニンダーはあんなとみくるの元まで向かっていき、二人を捕らえようとする。
間一髪のところでひなたが二人の前に出るが、代わりにひなたがハンニンダーの手に捕らわれてしまった。
「「ひなた(さん)!!」」
「やっぱりね。君の様なベイビーなら必ず二人の前に出ると思ったよ…さて、探偵ごっこはもう終わりだ」
そう言いながらニジーはみくるを見る。
「君の怯える瞳が全てを物語っている。君は探偵じゃない…探偵気取りの真っ赤な偽物さ」
「気取りなんかじゃないよ!」
ニジーの言葉を否定したのはあんなだった。
「気取りなんかじゃない…本物だよ!だって、みくるちゃんにはまりさんを助けたいって気持ちがあったもん!みくるちゃんは絶対に、名探偵になれる!」
「…あんなの言う通りだ」
続いてひなたも口を開く。
「少ししか見てないけど、みくるさんはみくるさんなりに操作をしていた。確かに名探偵と呼ぶにはまだまだ未熟だよ…けど、それで名探偵じゃないって否定する権利は、君にはない」
「あんなさん…ひなたさん…」
「名探偵?…流石にありえないよ。僕の手口を見破った事は褒めてあげるけど、君も人を見る目が…」
すると何を思ったのか、ニジーはひなたをジッと見ていた。
「…君、レディだろう?」
どうやらニジーはひなたが女の子だと気づいたようだ。
「気づいてなかったんだ…」
「え…えっ…?レディ…?…女の子ぉ!?」
「みくるちゃん、気持ちはわかるけど落ち着いて…?」
「まぁ、そんな事は今となっては関係ないね…ハンニンダー、やっちゃって」
「ハンニンダー!!」
「ん…!」
ハンニンダーはひなたを捕らえている手に力を入れ、ひなたを握り潰そうとする。あまりの激痛に流石のひなたも顔を歪ませていた。
「やめて!」
それを見て見ぬふりが出来ず、あんながハンニンダーの元へ行っていた。
「これ以上ひなたを苦しめたら、絶対に許さない!」
「あん…な…」
「フッ、強がっているみたいだけど、君も本当は怖いんだろう?」
「っ…怖いよ…怖いけど、ティアラを取り返したい!困ってるまりさんを、大切なひなたを助けたい!みくるちゃんと一緒に!」
そう言いながらあんなはみくるに手を差し伸べる。
「一歩踏み出せば、答えはついてくる…一歩の勇気が答えになる!…だよ!」
「あんなさん…私も昔、名探偵に助けてもらった…だから、今度は私が名探偵になって、みんなを助けたい!」
そう言ってみくるはあんなの手を取った。
「一歩の勇気が…」
「答えになる!」
「「私達で、取り返す!!」」
すると光が放たれ、あんなが持っていたペンダントが懐中時計のような物に変化した。どうやらみくるも同じ物を持っているようだ。
やがて光が収まると、あんなとみくるが居た場所には二人の少女の姿があった。
主人公強め要素あまり無くね?と思ったそこのあなた!もうしばらくお時間を!