数か月後。
押村奏斗は、いつもと同じ朝を迎えていた。
特別なことは何もない。
薄い曇り空。
少し湿った空気。
駅へ向かう人の流れ。
改札を通る電子音。
ホームに滑り込む電車のブレーキ音。
いつもと同じ。
だからこそ、誰も疑わなかった。
神奈川県警捜査一課警部補、押村奏斗。
その男がこの日を境に、表の世界から消えることを。
電車は朝の通勤客で混み合っていた。
奏斗は吊革につかまり、窓の外を流れる景色を見ていた。
スーツ姿の会社員。
制服の学生。
スマホを見つめる人々。
眠そうに目を閉じる老人。
日常そのものの光景だった。
だが、奏斗の視線がふと足元で止まる。
座席の下。
紙袋が置かれていた。
誰かの忘れ物に見える。
けれど、奏斗はすぐに違和感を覚えた。
置き方が不自然だった。
奥へ押し込まれているわけではない。
かといって、足元に置いて忘れたようにも見えない。
人目につきにくい位置に、意図的に置かれている。
奏斗は周囲を確認した。
誰も紙袋に注意を払っていない。
次の駅までは、あと数分。
奏斗は静かにしゃがみ込んだ。
近くの乗客が怪訝そうに見る。
「すみません」
奏斗は短く声をかけ、紙袋へ手を伸ばした。
中を確認した瞬間。
彼の表情が変わった。
そこに入っていたのは、爆発物だった。
詳細を見なくても分かる。
これは忘れ物ではない。
誰かが、ここに置いた。
人を殺すために。
奏斗はすぐに周囲へ声をかけた。
「この車両から移動してください」
近くの乗客が困惑する。
「え?」
「不審物です。落ち着いて、隣の車両へ移動してください」
奏斗は警察手帳を示した。
その瞬間、周囲の空気が変わる。
ざわめき。
不安。
押し寄せる視線。
奏斗は声を荒げなかった。
「走らないでください。押さないでください。順番に移動を」
その冷静な声に、乗客たちは少しずつ動き始めた。
奏斗は車掌へ連絡を取るよう近くの乗客に頼み、紙袋から目を離さなかった。
爆弾のそばには、一台のスマートフォンが入っていた。
その画面が、突然光った。
着信。
非通知。
奏斗は数秒だけ画面を見つめた。
そして、通話ボタンを押した。
『押村奏斗警部補』
変声された声だった。
奏斗は静かに答える。
「誰だ」
『その紙袋を持って、次の駅で降りろ』
「乗客を巻き込む気か」
『お前が従えば、誰も死なない』
奏斗は周囲の避難状況を確認した。
乗客は隣の車両へ移動している。
完全ではないが、混乱は抑えられている。
『駅で降りたら、指定する場所へ向かえ。警察へ連絡すれば爆発する』
奏斗は低く言った。
「目的は何だ」
『お前だよ、押村奏斗』
通話はそこで切れた。
電車が次の駅へ近づく。
奏斗は紙袋を持ち上げた。
重さはある。
手の中に、人の命を奪うための悪意がある。
だが、奏斗の指は震えなかった。
扉が開く。
奏斗は乗客を先に降ろし、自分もホームへ出た。
ホームの防犯カメラが、彼の姿を捉える。
紙袋を持った刑事。
その顔は冷静だった。
あまりにも冷静だった。
その知らせが神奈川県警に届いたのは、それから数分後だった。
「電車内で不審物。発見者は押村警部補です」
捜査一課が騒然となる。
横溝重悟は椅子から立ち上がった。
「押村が?」
「はい。不審物を持って次の駅で降車。その後、連絡が取れていません」
横溝の顔色が変わる。
「馬鹿野郎……何やってやがる」
すぐに捜査員が動き出す。
駅の防犯カメラ。
通話履歴。
爆発物処理班への連絡。
周辺警戒。
だが、奏斗はすでに駅から出ていた。
スマートフォンに、再び着信が入る。
奏斗は応答する。
『駅前の通りを右へ。タクシーには乗るな。徒歩で向かえ』
「どこへ行かせる」
『言われた通りに歩け』
奏斗は無言で歩き出した。
朝の街。
誰もがいつも通り通勤し、学校へ向かい、店を開けている。
その中で、奏斗だけが紙袋を持ち、指示された道を進んでいた。
通話は何度も切れ、何度もかかってきた。
『次の交差点を左』
『歩道橋を渡れ』
『公園を抜けろ』
『振り返るな』
奏斗は従った。
その様子は、街中の防犯カメラに断片的に残った。
だが、決定的な瞬間だけが抜け落ちていた。
まるで、誰かがあらかじめカメラの死角を知っていたかのように。
そして奏斗は、海沿いの古い廃ビルへ誘導された。
かつて倉庫として使われていた建物。
今は取り壊し予定で、人の出入りはない。
スマホが鳴る。
『中へ入れ』
奏斗は廃ビルを見上げた。
曇った空の下、古いコンクリートが黒く沈んでいる。
彼は何も言わずに中へ入った。
その頃。
萩原千速は第三交通機動隊の詰所にいた。
書類を確認していた手が、突然止まる。
胸騒ぎがした。
理由はない。
ただ、嫌な感じがした。
その直後、重悟から電話が入った。
千速はすぐに出る。
「重悟?」
『千速、落ち着いて聞け』
その言い方で、千速の顔から表情が消えた。
「何があった」
『押村が、電車内で不審物を見つけた』
「奏斗が?」
『中身は爆発物らしい。乗客を避難させたあと、不審物を持って駅で降りた』
千速は椅子を蹴るように立ち上がった。
「何で一人で持ってくんだよ!」
『犯人から着信があった。誘導されてる。今、追ってる』
「場所は!」
『まだ追跡中だ。お前は待機しろ』
「ふざけんな!」
千速の怒鳴り声が詰所に響いた。
新井が驚いて振り向く。
千速はスマホを握りしめた。
「私も行く」
『来るな。爆発物が絡んでる。現場が分かり次第――』
電話の向こうで、誰かの叫び声がした。
そして、重悟の声が途切れる。
数秒後。
低い爆発音が、通話越しに聞こえた。
千速の呼吸が止まった。
「……重悟?」
返事がない。
「重悟!」
ようやく、雑音の向こうから重悟の声が戻る。
『廃ビルで爆発……押村が中に……』
千速の視界が揺れた。
「嘘だろ」
『千速、まだ確認中だ。お前は――』
千速は電話を切った。
ヘルメットを掴む。
新井が叫ぶ。
「小隊長!」
「どけ!」
「行くんですか!」
「当たり前だ!」
千速は白バイへ走った。
誰も止められなかった。
廃ビル周辺は、すでに警察車両と消防車両で封鎖されていた。
黒煙が立ち上っている。
ビルの一部は崩れ、窓ガラスは吹き飛び、外壁には焦げ跡が広がっていた。
千速の白バイが規制線の手前で急停止する。
ヘルメットを外すより早く、彼女は走り出した。
「奏斗!」
警備の警官が止めようとする。
「萩原警部補、危険です!」
「どけ!」
「二次爆発の恐れがあります!」
千速は規制線を掴んだ。
その向こうで、横溝重悟が彼女に気づく。
「千速!」
重悟は駆け寄り、千速の肩を掴んだ。
「行くな!」
「離せ!」
「まだ中に入れねぇ!」
「奏斗が中にいるんだろ!」
重悟の顔が歪んだ。
その表情を見た瞬間、千速は息を呑んだ。
「……いるんだな」
重悟は答えられなかった。
千速はもう一度、爆発した廃ビルを見た。
黒煙。
焦げた臭い。
崩れたコンクリート。
消防隊員の怒号。
警察無線のざわめき。
そして、その中に奏斗の姿はない。
千速は重悟の手を振りほどこうとした。
「探す」
「千速!」
「探すんだよ!」
「今入ったらお前まで死ぬ!」
その言葉で、千速の動きが止まった。
死ぬ。
その単語が、嫌に鮮明に響いた。
研二。
陣平。
爆発。
煙。
届かない場所。
過去の記憶が一気に押し寄せる。
千速の膝が、わずかに崩れた。
重悟が支える。
「千速……」
千速は震える声で言った。
「またかよ」
重悟は何も言えなかった。
「また爆発で……また、私の前から……」
千速は廃ビルを見つめたまま、息を乱す。
「奏斗……」
名前を呼んでも、返事はない。
捜索は数時間に及んだ。
爆発の中心部付近から、押村奏斗の所持品と思われるものが見つかった。
破損した腕時計。
焦げた警察手帳の一部。
スーツの布片。
そして、本人のものと一致する痕跡。
遺体は、完全な形では見つからなかった。
爆発の規模と火災の影響で、確認には時間がかかるとされた。
だが、現場の状況は絶望的だった。
押村奏斗警部補は、爆発に巻き込まれ死亡した可能性が極めて高い。
その報告が出た時、捜査一課は沈黙した。
誰も声を出せなかった。
横溝は拳を握りしめ、壁を殴った。
「ふざけんな……」
部下たちは誰も止めなかった。
止められなかった。
第三交通機動隊では、新井が報告を聞いて顔を真っ白にした。
「押村警部補が……?」
千速は何も言わなかった。
ただ、椅子に座ったまま、一点を見つめていた。
泣かない。
叫ばない。
壊れたように静かだった。
新井が恐る恐る声をかける。
「小隊長……」
千速は低く言った。
「仕事に戻れ」
「でも」
「戻れ」
その声に、新井は何も言えなくなった。
千速は立ち上がる。
「私は現場に行く」
「現場って……」
「奏斗が最後にいた場所だ」
誰も止められなかった。
夜。
爆発現場には、まだ焦げた臭いが残っていた。
規制線の外に、千速は一人で立っていた。
遠くに捜査員の姿がある。
横溝は少し離れた場所で、彼女を見ていた。
千速は地面に落ちた小さな破片を見つめている。
奏斗が、ここにいた。
爆弾を持って。
犯人に誘導されて。
誰にも言わずに。
一人で。
「馬鹿野郎……」
千速の声は震えていた。
「一人で行くなって、言っただろ」
返事はない。
「黙るなって、言っただろ」
黒く焼けた廃ビルは、何も答えない。
千速は拳を握る。
「何でだよ、奏斗」
その時、背後から横溝が近づいた。
「千速」
「重悟」
「帰れ。今日はもう無理だ」
「無理なのはそっちだ」
千速は振り返らない。
「奏斗は、何で一人で動いた」
横溝は低く答える。
「乗客を守るためだ」
「それは分かる」
「犯人に誘導された」
「それも分かる」
千速は振り返った。
その目は赤くない。
涙はない。
だからこそ、重悟は胸が締めつけられた。
「でも、何か変だ」
横溝の眉が動く。
「何?」
「奏斗が、完全に一人で抱え込んで死ぬか?」
「……あいつは抱え込むタイプだ」
「知ってる」
千速は低く言った。
「でも、最近は違った。少なくとも、私には言うようにしてた」
横溝は黙った。
千速は続ける。
「何かがおかしい」
「千速」
「私は、あいつが死んだってまだ認めてねぇ」
重悟の目が揺れる。
「現場状況は――」
「分かってる!」
千速は怒鳴った。
そして、すぐに声を落とす。
「分かってるよ。爆発した。所持品も出た。痕跡もある。普通なら死んでる」
「なら」
「でも、奏斗の声が聞こえねぇ」
重悟は言葉を失った。
千速は廃ビルを見る。
「変だろ。こんな時に、まだ冷静に考えてる自分がいる」
「それでいい」
重悟は低く言った。
「お前が壊れたら、押村が怒る」
千速は小さく笑った。
「怒るかな」
「ああ。静かに怒る」
「想像できるな」
その笑いはすぐに消えた。
千速は拳を握ったまま、暗い廃ビルを見つめ続けた。
だが、千速の違和感は、証拠にはならなかった。
翌日。
押村奏斗警部補の死亡は、正式に扱われることになった。
報道では、こう伝えられた。
神奈川県警の刑事が、通勤中の電車内で不審物を発見。乗客を避難させた後、犯人に誘導され、廃ビルで爆発に巻き込まれ死亡したとみられる。
勇敢な刑事。
乗客を救った警察官。
殉職。
そんな言葉が並んだ。
けれど、千速はテレビを消した。
殉職。
その言葉が嫌いだった。
研二にも使われた。
陣平にも使われた。
そして今度は、奏斗に使われる。
何度聞いても、慣れるわけがない。
横溝は捜査本部で、爆弾犯の追跡に全力を注いでいた。
だが、不自然なほど手がかりは少なかった。
爆弾の部品は出所不明。
スマホは匿名で購入されたもの。
通話記録は巧妙に偽装。
廃ビルへ誘導するルートは、防犯カメラの死角を縫っていた。
まるで、最初から「押村奏斗が死んだ」という事実だけを残すために組まれたようだった。
横溝は資料を見つめ、低く呟いた。
「犯人は何者だ……」
その背後で、誰にも知られずに動いていた者たちがいる。
警察庁警備局。
通称、ゼロ。
一か月前。
警察庁の一室。
押村奏斗は、古谷と向かい合って座っていた。
部屋に窓はない。
机の上には、数枚の資料だけが置かれていた。
古谷は静かに言った。
「押村警部補。あなたに、表の身分を捨ててもらいます」
奏斗は資料を見つめた。
そこには、今回の偽装計画の概要が書かれていた。
電車内の不審物。
爆発物処理を装った誘導。
廃ビルでの爆発。
死亡扱い。
身元の痕跡。
報道統制。
戸籍上の処理。
県警内部への情報遮断。
あまりにも綿密だった。
奏斗は静かに問う。
「千速や横溝警部には?」
古谷は答えた。
「知らせません」
「なぜ」
「痕跡が残るからです」
古谷の声は冷たい。
「あなたが生きている可能性を、誰かが知っていれば、必ず揺らぎが出る。疑い、探し、守ろうとする。それは敵にとって手がかりになります」
奏斗は黙った。
古谷は続ける。
「ゼロになるということは、誰にも帰れないということです」
「……」
「恋人にも。上司にも。仲間にも」
奏斗の脳裏に、千速の顔が浮かんだ。
怒った顔。
笑った顔。
白バイに乗る横顔。
夜道で手を握ってくれた時の温度。
そして重悟。
荒っぽく、口は悪いが、いつも部下を見ている上司。
新井や三森。
捜査一課の仲間たち。
すべてを捨てる。
死んだことにする。
生きている痕跡は、一切残さない。
古谷は静かに言った。
「決めるのはあなたです」
奏斗は資料から目を上げた。
「これは命令ではないのですか」
「命令ではありません。志願という形になります」
「卑怯ですね」
古谷は少しだけ笑った。
「よく言われます」
奏斗はしばらく沈黙した。
その沈黙の中で、彼はすでに答えを出していた。
なぜゼロになる決意をしたのか。
その理由は、まだ誰にも話していない。
千速にも。
重悟にも。
そして、この時点の古谷にも、すべては話していなかった。
奏斗は静かに言った。
「分かりました」
古谷の目がわずかに細くなる。
「引き受けるのですか」
「はい」
「後戻りはできません」
「承知しています」
「萩原警部補は、あなたの死を信じます」
奏斗の指がわずかに動いた。
古谷は続ける。
「横溝警部も、新井巡査部長も、三森巡査部長も。全員があなたを失ったと思う」
奏斗は目を伏せた。
「それでも、必要なら」
古谷は静かに問う。
「本当にできますか」
奏斗は答えた。
「できます」
その声は揺れなかった。
揺らしてはいけなかった。
ゼロになるために。
表の自分を殺すために。
そして現在。
廃ビルの爆発から数日後。
押村奏斗の葬儀は、身内と関係者だけで静かに執り行われた。
棺の中に、完全な遺体はない。
それでも、形式は進む。
遺影には、警察手帳用に撮られた真面目な顔の写真が使われた。
千速は喪服姿で、遺影の前に立っていた。
顔色は悪い。
だが、泣いてはいない。
重悟はその隣に立つ。
「千速」
「何だ」
「無理するな」
千速は遺影を見つめたまま言った。
「無理しなきゃ立ってられねぇよ」
重悟は何も言えなかった。
焼香の煙が静かに上がる。
同期たち。
捜査一課の仲間。
第三交機の隊員たち。
皆、押村奏斗の死を悼んでいた。
三森は泣いていた。
新井も唇を噛みしめている。
横溝は最後まで泣かなかった。
ただ、遺影の前で深く頭を下げた。
千速はその後、ゆっくり遺影の前へ進んだ。
「奏斗」
小さな声だった。
誰にも聞こえないほどの。
「私はまだ、納得してねぇ」
遺影の中の奏斗は何も言わない。
千速は白い花を置いた。
「でも、今は……」
言葉が詰まる。
初めて、目に涙が浮かんだ。
「今は、さよならって言うしかねぇんだな」
花を置いた手が震える。
「馬鹿野郎」
その言葉だけを残して、千速は下がった。
同じ時刻。
どこかの地下通路。
一人の男が、黒いスーツ姿で歩いていた。
髪型も、眼鏡も、服装も、以前とは違う。
顔つきもわずかに変えられている。
だが、その目だけは変わらない。
押村奏斗だった。
いや。
もう、その名前は使えない。
彼は立ち止まり、壁に設置された監視カメラを見上げた。
古谷が隣に並ぶ。
「今日で、押村奏斗は完全に死にました」
奏斗は何も言わない。
古谷は続ける。
「後悔していますか」
少しの沈黙。
奏斗は静かに答えた。
「後悔する資格はありません」
「そうですか」
「千速は」
言いかけて、奏斗は口を閉じた。
その名前を出してはいけない。
もう、自分は彼女の恋人ではない。
神奈川県警捜査一課の押村奏斗でもない。
古谷はあえて何も言わなかった。
奏斗は深く息を吐く。
生きている痕跡は残さない。
連絡もしない。
姿も見せない。
声も届かせない。
千速が泣いていても。
重悟が怒っていても。
仲間たちが悲しんでいても。
戻らない。
戻れない。
それが、ゼロになるということだった。
古谷は一枚の身分証を差し出した。
そこには、押村奏斗とは違う名前が記されていた。
「これが、今日からのあなたです」
奏斗はそれを受け取った。
指先に、ほんのわずかな震えがあった。
だが、すぐに止めた。
「任務は」
古谷は静かに答えた。
「すでに始まっています」
奏斗は顔を上げた。
その目は、刑事だった頃よりも深く、冷たく、遠い場所を見ていた。
神奈川県警捜査一課警部補、押村奏斗。
彼は爆発で死んだ。
そう記録される。
そう信じられる。
そうでなければならない。
そして。
誰にも知られず、彼はゼロになった。
表の世界に残したものを、すべて切り捨てて。
たった一つ、胸の奥に消せない名前を抱えたまま。
千速。
その名を、二度と呼べない場所へ。
奏斗は静かに歩き出した。