黒いバイクは、三日後に再び現れた。
その日は朝から空が重かった。
雨が降るほどではない。
だが、雲が低く、道路の上に湿った空気がまとわりついていた。
第三交通機動隊の車庫では、白バイ隊員たちが出動前の点検をしている。
千速は白バイの横にしゃがみ込み、タイヤを確認していた。
「新井」
「はい!」
「今日の路面、乾いてるように見えて滑るぞ」
「分かってます」
「分かってる奴ほど滑る」
「えぇ……」
新井は困った顔をした。
近くで点検していた朝倉玲奈が小さく笑う。
千速はそれに気づき、視線を向けた。
「朝倉」
「はい」
「お前もだ。湿気のある日は、白線とマンホールを見るな。見るだけで寄っていく」
玲奈は真面目に頷いた。
「はい。視線を置きすぎないようにします」
「そうだ。怖いところを見るな。行きたいところを見ろ」
新井が横でぼそっと言う。
「小隊長、たまに格好いいこと言いますよね」
千速が振り返る。
「たまに?」
「あ、いえ、いつもです」
「今日の午後、追加訓練」
「何でですか!」
玲奈がまた少し笑った。
その笑顔は自然に見えた。
少なくとも、千速にはそう見えた。
配属から数日。
玲奈は隊に馴染みつつあった。
新井とも会話するようになり、他の隊員からも「真面目な新人」として受け入れられている。
千速も、玲奈の走りを認め始めていた。
ただし、完全に信用したわけではない。
奏斗の言葉が残っている。
――朝倉さんが俺に、公安にもいたのかと聞いた。
あれから千速は、玲奈を少し注意して見るようにしていた。
だが、目立った不審な動きはない。
むしろ、玲奈は真面目すぎるほど真面目だった。
報告書の修正も早い。
訓練の復習もしている。
千速の指導を聞き流さない。
だからこそ、千速は余計に難しいと思っていた。
疑う理由が弱い。
だが、完全に見過ごすには、奏斗の違和感が気になる。
「小隊長?」
玲奈に声をかけられ、千速は顔を上げた。
「何だ」
「出動前ブリーフィング、始まります」
「ああ」
千速は立ち上がり、白バイのタンクを軽く叩いた。
「行くぞ」
「はい」
午前九時過ぎ。
第三交機は市内の幹線道路で巡回と交通指導に入った。
千速、新井、玲奈の三名は、それぞれ少し距離を置いて配置についていた。
前回の危険運転事件を受け、黒い大型二輪に関する警戒も続いている。
玲奈は無線を確認しながら、周囲の車の流れを見ていた。
速度の出し過ぎ。
車線変更。
歩行者の動き。
路駐車両の影。
そのすべてを、表情を変えずに追う。
新井は少し離れた位置から玲奈の様子を見て、無線で千速に言った。
『小隊長、朝倉さん、落ち着いてますね』
千速は短く返す。
「余計なことを言うな。自分の周りを見ろ」
『はい……』
玲奈が少し笑いそうになった時だった。
遠くから、低い排気音が聞こえた。
玲奈の顔が変わる。
それは普通のバイクの音ではない。
抑え込まれたような、しかし一気に吹け上がる音。
前回の事故現場で聞いた音と似ていた。
玲奈は無線に手をかける。
その瞬間、黒い大型二輪が交差点の向こうから現れた。
黒い車体。
黒いジャケット。
黒いフルフェイスヘルメット。
ナンバーはまた泥で汚れている。
バイクは車列の間を縫うように抜け、赤に変わりかけた信号へ突っ込んだ。
「黒い大型二輪、発見」
千速の声が無線に飛ぶ。
「全員、深追いするな。状況報告優先」
玲奈はすぐに答えた。
「朝倉、視認しました。対象は港北方面へ進行中」
新井も続く。
『新井、後方から確認。速度上昇中です!』
黒いバイクは、明らかに白バイを意識していた。
速度を上げすぎず、捕まりそうで捕まらない距離を保つ。
まるで誘っている。
千速はそれを見抜いた。
「挑発に乗るな。新井、前に出すぎるな」
『了解!』
「朝倉、右側車線の一般車に注意。対象は次の交差点で切る可能性がある」
「了解」
玲奈は即座に右側車線へ視線を向けた。
黒いバイクは次の交差点に近づく。
右折か。
直進か。
左折か。
通常なら、信号と車の流れを見て判断する。
だが、その瞬間。
玲奈は無意識に、左側の細い道路へ目を向けた。
黒いバイクがまだ動きを見せる前に。
次の瞬間、黒いバイクは急激に左へ倒れ込み、細い道路へ飛び込んだ。
「対象、左折!」
玲奈の報告は早かった。
早すぎるほどだった。
千速もすぐに反応する。
「朝倉、距離を保て。新井、先回りできるか」
『一本先の通りに出ます!』
黒いバイクは狭い生活道路へ入った。
両側に住宅。
歩行者もいる。
速度を出せば危険だ。
千速は歯を食いしばる。
「対象、住宅街へ進入。追跡速度を落とす。歩行者優先」
玲奈は千速の後方についた。
「了解」
黒いバイクは、住宅街の道を迷いなく進む。
右。
左。
さらに右。
そのラインは、単に逃げているものではない。
白バイが追いづらい角度を選び、車止めや一方通行の手前で速度を落とさせる。
道を知っている。
かなり詳しく。
千速は無線で言う。
「対象は土地勘あり。無理に詰めるな」
玲奈はその後ろで、黒いバイクの動きを見つめていた。
曲がるタイミング。
ブレーキの入り方。
視線の向き。
どこかで見た癖。
そんな気がした。
だが、それを考える余裕はない。
黒いバイクは、急に歩道寄りへ寄った。
前方には宅配トラックが停まっている。
右側から抜けるか。
左側の狭い隙間を行くか。
千速は瞬時に判断する。
「右から来る」
だが、黒いバイクは左のわずかな隙間へ車体を滑り込ませた。
歩道との距離はぎりぎり。
白バイでは追えない。
千速は即座に制動する。
「追跡一時中断。歩道側危険」
玲奈も止まった。
だが、その瞬間。
黒いバイクは振り返るように少しだけ速度を落とした。
まるで、白バイが止まるのを確認したようだった。
新井の声が無線に入る。
『対象、一本先へ出ました! こちらから確認!』
千速がすぐに返す。
「追うな、位置だけ送れ」
『了解!』
黒いバイクはその後、幹線道路へ戻った。
だが数分後、工事中の高架下へ入り、防犯カメラの死角で姿を消した。
追跡は打ち切りになった。
事故は起きなかった。
けれど、犯人は確実に白バイを挑発した。
そして、白バイの追跡限界を試していた。
午後。
捜査一課では、黒いバイクの再出現により、横溝の機嫌が悪くなっていた。
「同じ奴だな」
モニターを見ながら、横溝が低く言う。
奏斗は映像を確認していた。
今回は白バイのドライブレコーダー映像もある。
千速の白バイ。
玲奈の白バイ。
新井の白バイ。
それぞれの視点から、黒いバイクの動きを追える。
三森が映像を並べて表示した。
「こちらが萩原警部補、こちらが朝倉巡査長、こちらが新井巡査部長の映像です」
横溝が腕を組む。
「犯人、相当走れるな」
奏斗は静かに頷いた。
「白バイがどこまで追ってくるかを知っています」
「元白バイか?」
「可能性はあります。ただ、白バイ隊員というより、追われ慣れている印象です」
三森が映像を止めた。
「ここです。朝倉巡査長の報告、かなり早いです」
画面には、黒いバイクが交差点へ近づく場面が映っている。
まだ車体は直進の姿勢だ。
しかし玲奈の白バイのカメラは、左側の細い道路へわずかに向いている。
その直後、黒いバイクが左折する。
三森が首を傾げる。
「朝倉巡査長、曲がる前に左を見ていますね」
横溝が奏斗を見る。
「お前が言ってたやつか」
奏斗は答えないまま映像を戻した。
もう一度見る。
さらにもう一度。
「予測としてはあり得ます」
奏斗は言った。
横溝が低く返す。
「あり得る、か」
「はい。対象の速度、車線位置、前方の車列を見ると、左へ逃げる可能性は高い」
「お前なら予測するか」
「します」
「千速なら」
「するでしょう」
横溝は少し苛立つ。
「じゃあ問題ねぇじゃねぇか」
奏斗は画面から目を離さない。
「ただ、朝倉さんは新人です」
「そこか」
「ええ」
三森が映像をさらに進める。
今度は住宅街の場面。
黒いバイクが宅配トラックの左側へ滑り込む。
千速は追跡を止める。
玲奈も止まる。
横溝が言う。
「千速の判断は妥当だな」
「はい。歩道側に入った時点で白バイは追えません」
「犯人はそれを知ってる」
「おそらく」
奏斗は映像の端を見ていた。
玲奈の白バイは、千速よりほんの少し早く減速に入っている。
まるで、黒いバイクが左の隙間へ入ると分かっていたように。
いや。
それも予測の範囲だ。
優秀ならできる。
できてしまう。
だからこそ、厄介だった。
横溝が低く聞く。
「押村」
「はい」
「朝倉は、犯人の動きを知ってたと思うか」
奏斗は長く沈黙した。
簡単には答えられない。
答えれば、それは玲奈を疑うことになる。
しかも、千速の部下を。
「まだ分かりません」
「そうか」
横溝はそれ以上責めなかった。
代わりに、モニターを見ながら言った。
「だが、俺も少し気になった」
奏斗が横溝を見る。
「警部もですか」
「お前のせいでな」
横溝は苦々しく言った。
「最初から怪しい目で見たくはねぇ。千速の部下だしな。だが、あの新人、反応が良すぎる」
三森が小さく言う。
「本当に優秀なだけかもしれません」
横溝は頷く。
「ああ。だから表立っては何もしねぇ」
奏斗は静かに言った。
「千速に共有します」
横溝はすぐに頷いた。
「そうしろ。今度は黙るなよ」
「はい」
「硬ぇ」
「……分かった」
三森が少しだけ笑った。
そのわずかな空気の緩みの中でも、奏斗の目は映像から離れなかった。
黒いバイク。
黒いヘルメット。
そして、その動きを先読みするような朝倉玲奈。
まだ線にはならない。
だが点は、少しずつ増えていた。
夕方。
第三交機の訓練後、千速は玲奈を車庫の外へ呼んだ。
「朝倉」
「はい」
玲奈はヘルメットを抱えたまま、千速の前に立つ。
今日の追跡の緊張がまだ抜けていないのか、少し顔色が硬い。
千速はその顔を見てから言った。
「午前の追跡、どう思った」
玲奈はすぐには答えなかった。
「……相手は、白バイの動きを分かっていました」
「そうだな」
「追われる道を選んでいました。逃げたいというより、試しているように見えました」
「私も同じだ」
千速は白バイに軽く寄りかかる。
「お前自身の動きは?」
玲奈は少し考えた。
「小隊長の指示には従いました。距離も詰めすぎていません」
「それはできてた」
「ですが……」
「続けろ」
玲奈は目を伏せた。
「曲がる方向を予測して、少し先に見すぎました」
千速は表情を変えなかった。
「自覚はあるんだな」
「はい」
「なぜ左だと思った」
「前方の車列と信号、それから対象の車体の位置です」
「それだけか」
玲奈は一瞬だけ黙った。
本当に一瞬。
だが、千速は見逃さなかった。
「朝倉」
「……すみません」
「謝るな。答えろ」
玲奈はゆっくり息を吸った。
「前回の逃走と似ていたので」
千速の目が細くなる。
「前回?」
「最初の事故の時です。あの時も、対象は左へ逃げました。今回も同じように、白バイが追いにくい細い道を選ぶと思いました」
千速は黙って玲奈を見た。
筋は通っている。
不自然ではない。
むしろ、現場をよく見ている証拠だ。
「なるほどな」
玲奈は少しだけ肩の力を抜いた。
「勝手な判断でした」
「勝手ではない。予測は必要だ」
千速は続ける。
「ただし、予測に身体が先に引っ張られるな。違った時に戻れなくなる」
「はい」
「お前は反応が早い。それは武器だ。でも、早すぎる反応は、時々ミスに見える。あるいは、別のものに見える」
玲奈の顔がわずかに強張った。
千速は淡々と続けた。
「周りから見た時の話だ。覚えておけ」
「……はい」
「今日はよくやった。だが、よくやったで終わらせるな。報告書には、自分が何を予測してどう動いたかも書け」
「分かりました」
千速は少しだけ表情を緩めた。
「怖かったか」
玲奈は意外そうに顔を上げる。
「え?」
「黒いバイクを追った時だ」
玲奈は少し迷ってから、正直に言った。
「怖かったです」
「何が」
「相手が、こちらの限界を知っているように走っていたことです」
千速は頷いた。
「いい怖がり方だ」
「いい、ですか」
「怖いものを正しく怖がれる奴は、無茶しない」
玲奈は千速を見る。
その言葉は、玲奈の中に深く落ちた。
自分は本当に怖かったのか。
それとも、怖がるふりをしただけなのか。
分からなかった。
千速は続けた。
「朝倉」
「はい」
「相手が何を知ってようが、こっちはこっちのルールで走る。相手の土俵に乗るな」
「はい」
「お前は私の後ろを走れ。勝手に前へ出るな」
「承知しました」
玲奈は深く頭を下げた。
千速はその姿を見て、短く言った。
「よし。今日は上がれ」
「はい。お疲れさまでした」
玲奈が去った後、千速は白バイのミラーに映る自分の顔を見た。
険しい顔をしている。
「……奏斗のこと、言えねぇな」
考え込みすぎている。
そう思った。
その夜。
千速が帰宅すると、奏斗はすでに部屋にいた。
キッチンから湯気が上がっている。
「ただいま」
「おかえり」
「今日は早いな」
「横溝警部に追い出された」
「よくやった、重悟」
奏斗は少しだけ困った顔をした。
「俺ではなく、横溝警部を褒めるのか」
「お前は放っておくと帰らないからな」
千速は上着を脱ぎ、手を洗ってから食卓についた。
今日は焼き魚と味噌汁だった。
「お、魚」
「肉が続いたから」
「いいな」
千速は箸を取りながら、すぐに本題に入った。
「黒いバイクの映像、見たか」
「ああ」
「朝倉の動きも?」
「見た」
千速は奏斗を見る。
「どう思った」
奏斗はすぐには答えなかった。
千速は箸を置く。
「言え。黙るなって言っただろ」
奏斗は静かに頷く。
「朝倉さんは、対象の左折をかなり早く予測していた」
「本人も自覚してた」
「そうか」
「前回の逃走と似ていたから予測したと言っていた。筋は通ってる」
「通っている」
「でも、お前はまだ引っかかってる」
「引っかかっている」
千速は少しだけ息を吐いた。
「正直でよろしい」
奏斗は味噌汁を置きながら言った。
「ただ、今日の動きだけなら説明はつく。優秀な隊員なら予測できる範囲だ」
「じゃあ問題なし?」
「問題なしとは言えない」
「面倒な答えだな」
「すまない」
「謝るな」
いつものやり取り。
だが、今夜は少し空気が重い。
千速は魚を一口食べた。
「朝倉は、相手が白バイの限界を知ってるのが怖かったと言っていた」
奏斗は黙って聞く。
「私は、それをいい怖がり方だと言った。怖いものを正しく怖がれる奴は無茶しないって」
「君らしい指導だ」
千速は少しだけ口元を緩めた。
「だろ」
それから、すぐに真顔になる。
「でもな、奏斗」
「何だ」
「朝倉の反応が早すぎる時があるのは、私も分かってる」
奏斗の目が動く。
千速は続ける。
「だから見てる。部下として。小隊長として。お前の違和感も込みで」
「ありがとう」
「礼はいらない」
「分かっている」
千速は箸を持ったまま、少し迷うように視線を落とした。
「ただ、あいつが本当に真面目に白バイやろうとしてるのも分かるんだ」
奏斗は静かに頷いた。
「そうか」
「そこが難しい」
「人は一つの顔だけではない」
千速は奏斗を見た。
「公安っぽいな」
「そうかもしれない」
「でも、今のは少し分かる」
千速は味噌汁を飲んだ。
「朝倉が何か隠してるとしても、それが全部嘘とは限らない。小隊長としては、そこを間違えたくない」
奏斗は言葉を選ぶように、少し間を置いた。
「君は、正しく見ようとしている」
「できてるかは分からない」
「できている」
千速は顔を逸らした。
「だから、そういうのを急に言うな」
「すまない」
「謝るな」
奏斗は少しだけ笑った。
千速もつられて少し笑った。
それだけで、部屋の空気が少し緩んだ。
だが、問題が消えたわけではない。
黒いバイク。
朝倉玲奈。
そして、まだ見えない背後。
千速は食事を再開しながら言った。
「次に黒いバイクが出たら、たぶんもっと派手に来る」
奏斗は頷いた。
「ああ。今回は白バイの反応を見ただけに見える」
「挑発か」
「あるいは下見」
千速の目が鋭くなる。
「次が本番か」
「その可能性がある」
「なら、こっちも準備する」
「無茶はするな」
千速はじろりと奏斗を見た。
「それ、お前にだけは言われたくない」
奏斗は黙った。
千速は少しだけ笑う。
「でも、言われたことは覚えとく」
「助かる」
「礼は」
「いらない」
「よし」
同じ夜。
朝倉玲奈は、自宅の机で報告書を書いていた。
今日の追跡。
対象の挙動。
自分の予測。
千速から言われた注意。
ペンが止まる。
早すぎる反応は、別のものに見える。
玲奈はその言葉を書きかけて、やめた。
スマートフォンが震える。
差出人名はない。
やつの反応は。
玲奈は少し迷ってから入力する。
警戒は強まっている可能性あり。直接接触は控えるべき。
返信はすぐに来た。
控えるな。次は会話を作れ。糸口を探せ。
玲奈は画面を見つめる。
会話を作れ。
簡単に言う。
だが、あの男は簡単な相手ではない。
こちらの言葉の端を拾う。
視線も、間も、言い換えも。
それに。
玲奈は、机の上に置かれた訓練ノートを見た。
千速の言葉が並んでいる。
相手の土俵に乗るな。
お前は私の後ろを走れ。
怖いものを正しく怖がれ。
玲奈は小さく息を吐いた。
「小隊長の後ろ、か」
その場所は、少しだけ温かかった。
千速の後ろを走っている時だけ、玲奈は本当に白バイ隊員でいられる気がした。
スマートフォンが再び震える。
朝倉。返答しろ。
玲奈は目を伏せ、短く打った。
了解。機会を作ります。
送信。
画面を消す。
部屋は静かだった。
玲奈は訓練ノートを閉じ、明日の勤務表を見る。
午前、巡回。
午後、捜査一課との合同確認。
「次は、会話を作る」
そう呟いた声は、任務を確認するためのものだった。
けれど、その奥にある迷いは、昨日より少しだけ濃くなっていた。