Dragon Ball KY   作:だてやまと

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長らく離れていた二次創作に挑戦。
原作コミック準拠で、アニメ版は基本的に考慮しません。GTもかなり無視してます。


from:現代

 いつもいつも親友に置いていかれる。どれだけの苦労を重ねて、どれだけの傷を負っても。

 常人には到底辿りつけない境地に達していても、それでも親友は、いつだってその先を行っている。

「そう思い詰めるなよ。お前だって凄いと思うぜ」

 気さくな友人は、いつだって肩に手を置いて慰めてくれる。だが、嫌だ。いつだって親友に助けてもらい、ただ横で眺めているだけなんて耐えられるはずが無い。

「仕方ないさ。オレ達は地球人。あいつらサイヤ人は生まれついての戦闘民族。それに加えて、悟空はあのベジータさえ天才だって認めるレベルなんだろ。いくらオレ達が努力したって、どうしようもないぐらいに差が出来ちまったんだよ」

「でも、ヤムチャさん。オレは思うんですよ。悟空が小さかったときには、そりゃオレ達よりも強かったけど……今みたいな差は無かった。悟飯は子供の頃から凄かったけど……結局ブウも、全部悟空が倒したんだ。あの頃だって武天老師さまの厳しい修行をしてたのに、悟飯のような強さには至らなかった」

 クリリンはすっかり老いた手を眺めながら、隣に並ぶヤムチャを盗み見た。彼もまた戦いを離れ、随分と年老いた。未だに若い女と遊んでいるようだが、それも空しさを紛らわせるためだろう。サイヤ人やブウのような存在が無ければ、彼もまた地球では最も強い男の一人には違いないのだから。飽くなき闘争心を秘めていなければ達することのできない境地に至った一人なのだから。

 西の都の片隅にある、小さな酒場。二人は地球人としては桁外れの強さを持ちつつも、最強とは程遠い存在だ。数十年の付き合いと似た境遇から、世界が平和になり、それぞれがそれぞれの生活をしていく中でも、何かと連絡を取り合っていては、このように酒を舐めながら懐かしさに目を細めることが増えていた。

「覚えてますか。ラデイッツに悟空が殺されて、オレ達が神様の神殿に登ったときのこと」

「そりゃ覚えてるさ。あの頃はベジータも敵だったんだよな」

「じゃあ、その後は……サイバイマンに殺されて、界王様のところに行ったんでしたよね?」

 クリリンの問い掛けに、ヤムチャは苦笑いを浮かべる。思えば、あの頃から自分は一度も勝っていない。隣にいるクリリンはその後、ナメック星にて最長老に潜在能力を引き出して貰って、更に強くなったというのに。

「嫌なことを思い出させるなよ」

「違いますよ。むしろ、逆です。ヤムチャさん達は、悟空よりも早くに蛇の道を通り抜けたんでしょう?」

「あ、ああ。悟空は半年掛かったんだっけな。オレ達は一ヶ月もかかっていない」

「それに、ナッパとかいうハゲが言ってましたよ。サイバイマンはパワーだけならラディッツと同等だって。オレ達は、あの頃はまだ悟空の強さにたどり着いていたんだ。先に行くのは悟空でも、ちゃんと追いかけられていた……悟空より後でも、悟空より短期間でクリアしてきた」

 クリリンの言葉に、ヤムチャは頷く。悟空とピッコロが二人がかりでようやく倒したラディッツと、同じだけの戦闘力を持つサイバイマンを、天津飯は一方的に。ヤムチャも油断して相打ちとなったが、クリリンは纏めて数匹を倒したのだ。悟空も既に大人になっており、才能が開花するには十分すぎる年齢になっていただろう。それなのに、自分たちは追いついていた。

「……そりゃ、超サイヤ人になられちゃ敵わないけど……一人だけ、可能性を提示してくれたんです」

「可能性?」

「ええ。あの悟空が、育てれば自分と拮抗すると確信した少年。ウーブですよ。彼はブウの生まれ変わりらしいですけど、肉体はれっきとした地球人です。オレ達と同じですよ」

「……そうかもしれないけど、今更だぞ。もう俺たちもトシだ。神龍に頼んで、若返らせて貰うにしても……すっかり平和になっちまったこの世界で、ストイックに修行ばかりはできないさ」

 そうだ。クリリンの言葉は全て、どうやっても届かなかった過去の自分を悔いているだけの、単なる懐古である。すっかり平和に慣れて、かなりおっかないものの美人の妻を娶り、娘にも恵まれた自分が、再び修行に身を入れられるであろうか。答えは否だ。

 燃え滾る闘志などではないのだ。単なる後悔なのだ。だからこそ、クリリンは思う。どうして、あの頃の自分は弱かったのかと。親友がボロボロになって戦う横で、ただ眺めることしか出来なかったのかと。

「悟空への劣等感だけじゃないな、クリリン。お前は……悟空を助けたかったんだろう」

「ええ。できれば時間を戻したいぐらいですよ。流石に、それは神龍でも出来ないでしょうけど」

「ん。出来るんじゃないのか?」

 ヤムチャがあっさりと言うのを、クリリンは信じられないという目で見た。

 神龍は神の力を超えることは出来ない。神様は人をよみがえらせることは出来ないが、神龍はできるという矛盾は差し置いてもだ。

「いやほら、未来のトランクスがやってきたのは、タイムマシンだろ。ブルマが作ったって聞いたけど、荒廃した未来でだって作れるようなモノならさ、神龍にだって似たようなこと出来るんじゃないか。若返らせることだって出来るなら、全部纏めて元に戻すこともできるだろうし」

 唖然とするクリリンに、ヤムチャはあっけらかんとした様子で説明する。なるほど、確かにそうだ。理屈としては、不可能ではない。

 ただし、時間を戻してしまうとなると、またサイヤ人と死闘を繰り広げて、再びフリーザと戦い、セルやブウという手も足も出ない敵を眺めるだけの日々となってしまう。あの頃だって、ギリギリだったのだ。悟空がもしも負けてしまうとなると、平和な未来を壊してしまうことになる。

「ま、夢物語だな。それにオレ達だって頑張ったから、この未来があると信じたいぜ」

 ヤムチャが自嘲気味に呟くと、クリリンもまた苦笑いを浮かべた。

 そうだ。これが正しい未来だ。この結末を勝ち取ったのは、決して悟空一人の力ではないはずだ。サイヤ人だけではないはずだ。

「だから、そうだな。もしも神龍に頼むんだったら、こうだ。たとえ歴史が変わっても、この世界には影響のないように。そうして、オレ達をあの頃に戻してくれって頼むんだ」

 ヤムチャの言葉は、例え話だ。どう足掻いても、自分たちはサイヤ人のように強くはなれないだろう。

 だが、もしも。もしも強くなれるのであれば。

 あの頃に戻り、親友と肩を並べて、助け合いながら地球を救うのも悪くは無いと、クリリンは思った。

 

 

『御安い御用だ。その願い、聞き届けた』

 

 

 或いは、空耳だったのだろうか。それとも白昼夢だったのだろうか。

 ふと気付いたときには、隣に居たはずのヤムチャが消えていた。否、先ほどまで自分たちが居たのは西の都の酒場だったはずだ。それなのに、どうしてだろうか。カメハウスにいる。

「へ……?」

 クリリンは驚いて辺りを見回すが、確かにカメハウスだ。しかも、身体の様子が先ほどとは違う気がする。老いたりとは言えど鍛え上げた筈の肉体ではなく、若々しいが頼りない。気の総量は落ちているが、力には満ち溢れている。まるで若い頃の自分だ。

「い、いや……違うぞ。まるで若い頃じゃない……これは、本当に若い頃の……」

 咄嗟に周囲を見渡して、鏡を探す。都合よく全身を映すものを見つけて、その前に身を晒したときに、クリリンは思わず飛び上がっていた。

 若い。否、幼くすらある。すっかり懐かしくなった坊主頭に、ウーロンと変わらぬほどの体躯。

 この頃は。そうだ、この肉体の頃を、覚えている。

 悟空がピッコロ大魔王と戦い、打ち勝った後だ。自分は一度タンバリンという魔族に殺されて、ドラゴンボールで蘇った直後だ。

「まさか、本当に神龍が……いや、でもまさか。あの時はドラゴンボールも集めてなかったし、願いがかなうはずが無い」

 状況を整理しようとして、クリリンはハタと気付く。なるほど、これは夢だ。酒に酔い、懐かしい思い出に浸っていた所為で、こんな夢を見てしまっているのだ。

 だが、それにしてもリアルな夢だ。まるで本当に時を遡ったようですらある。

「へへ。この頃はまだ、空も飛べなかったんだよな」

 なんだか懐かしくなって、気を集中させてみる。やはり、全盛期は愚か、年老いた頃のほうがよほど強い。だが、身体を浮かせる程度は出来そうだった。

「お、浮いた浮いた」

 元々、気をコントロールさえすれば、空を飛ぶことはできる。悟飯の妻になったビーデルですら出来ていたことなのだ。彼女もまた中々に強かったが、この頃のクリリンのほうがよほど強い。

「へへ。身体は弱いけど、気のコントロールは感覚だしな。長年の経験は生きるってことか」

 試しに外に出て、手のひらに気を集中させる。自分が編み出した必殺技で、こればかりはフリーザにさえ通用した気円斬である。

 気そのものが少ないためにかなり小さいが、これは気の大きさに威力が依るではなく、気を薄く引き延ばし、回転させることによって切り刻む技である。

「たあっ!」

 中空に目掛けて放つと、見事に飛んでいくではないか。夢にしても、この若さで気円斬を使いこなしていると思えば気分はいい。

「なんと、死ねばパワーアップでもするんかいのう」

 気分良く空中で彼方へと消え去る気円斬を見送っていると、後ろから声がした。亀仙人がクリリンの気に気付いたらしく、ひょっこりと顔を出していた。

「武天老師さま」

「うむ、舞空術といい、先ほどのものも見事な技じゃ。いつの間に身に付けおったんじゃ?」

「あ、あはは。隠れた修行の成果ってやつですよ」

 クリリンは地面に降り立ち、一礼をする。いつまで経っても見た目の変わらない亀仙人に、周囲は特別驚くことも無かったが、自分も年老いてみて初めて、この人は幾つなのだろうかと疑問を覚える。

「しかし、これではもうワシが教えることなど無いのう。カリン塔に登り、さらに修行に続けるか?」

 亀仙人の言葉に、クリリンはこれから先にどのような展開が待っていたのかを思い出す。三年後に行われる天下一武道会で、再び――今度はクリリンも良く知るピッコロと悟空が戦うのだ。否、その前に自分もピッコロと戦う。

「勿論ですよ」

 クリリンが言葉を発そうとしたときに、先にその台詞を奪った男が居た。聞きなれた声であるが、まだ若い。振り返ると、ヤムチャがそこに立っていた。天津飯との試合で折れた足がまだ癒えていないらしく、松葉杖をついているが、顔は溌剌としていた。

「いつまでも悟空に遅れを取るわけにはいきませんからね。クリリン、早速行こう」

 ヤムチャが笑顔で松葉杖をつきながらクリリンに並ぶ。そして、ふわりと身体を浮かべて、するすると上空へと昇っていった。

「なんと、ヤムチャまでが舞空術を。少し見ただけでもう自分のものにしてしまいおったか」

「は、はは。まあ、そういうことです。では、私も行ってまいります」

 クリリンは苦笑いを浮かべながらも、トンと地面を蹴ってヤムチャに並ぶ。ヤムチャがにやりと笑うと、クリリンもそれに答えるように笑った。

「どうやら、願いがかなってしまったようだな。何故かは知らんが、こうなったからにはオレはとことんやるつもりだ」

「オレも、もしかすると夢じゃなくて、本当にそうかもしれないって思ってたところです。やりましょう、ヤムチャさん。目標は……」

「わかっている。まずは次の武道会だろう。オレはシェン……神様に。お前はピッコロに。それぞれ勝って、その次は……オレ達で勝負だ。勝ったほうが悟空と対決できるってことだな」

 ヤムチャの顔には、沸々と込み上がってくる闘志が隠し切れずにいた。やはり、彼もまた戦士なのだ。はっきりとついてしまった実力差に諦めてしまっていたものが、彼の胸にも戻ってきていたのだ。

「行きましょう。こうしちゃいられない……悟空は神様のところで修行している筈です。まずは、そこまで追いつかないと」

「ああ。まずはカリン塔を制覇だな」

 クリリンとヤムチゃはガシッと拳を叩きあい、果てしなく広がる大空に向かって飛び立っていった。

 

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