Dragon Ball KY   作:だてやまと

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仲間一武道会

 ナメック星に向かう戦士を決めるために仲間達だけの武道会を行うことになり、戦士たちはヤムチャの提案によりパパイヤ島に向かった。

 パパイヤ島といえば、天下一武道会の会場がある。どうせだからそれぐらいの余興は良いだろうという計らいであった。

 会場の使用が可能かどうかはわからなかったが、幸いなことに前回にマジュニアことピッコロが会場を荒野に変えなかったので、修繕が進んで、平時は練習試合の会場となったりしているようである。

 長らく審判を務めるおっちゃん。どんな超常現象的な試合展開でも実況まできちんとこなす彼は、すっかり悟空たちのファンであり、会場を少し借りたいと申し出ると、自分が観戦する権利と引き換えにあっという間に許可を取り付けてくれた。

「いやあ、君たちの戦いが見れるならば安いものさ」

 世の中には自分が夢中になれるものの為ならばあらゆる労力を惜しまない人間がいる。ブリーフ博士や審判のおっちゃん。そしてクリリン達も例に漏れない。それぞれ分野は違えど、そこに何かしらの共通する意識があり、だからこそ馬が合う。

「いやあ、それにしても凄い面々だね。九人いるけど、どうするんだい。前回優勝者の悟空君がシード選手になるというのはどうだろう」

 集まった九人のうち、悟空と天津飯は優勝経験者であり、ピッコロは準優勝。クリリン、ヤムチャ、チャオズは本戦出場経験がある。前回は予選で敗れたチャオズではあるが、審判からみても、前回よりも目に見えて覇気が違う。天津飯にくっついている存在だったのが、一人の戦士として立っていることがわかった。

「どうしようかな。ベジータとピッコロは行くのが決まってるけど」

 クリリンが二人を見るが、二人とも参加するつもりで来ている。くだらない余興とは思いつつ、ベジータはパワーアップした力を試してみたく、また、ここで勝てばいまいちサイヤ人の王子を尊敬しない不敬者たちを黙らせることが出来るとも考えている。

「良い機会だ。サイヤ人の王子たるオレがナンバーワンだということを教えてやろう」

「十日前にナンバーワンでないことが証明されたはずだが」

 速攻で天津飯に切り返されて、ベジータはまたこいつかと怒りをあらわにする。毎回毎回、本当に空気の読めない男である。

「いいだろう。殺されたいようだな」

「いや、死にたくはないが……まあいいだろう。一回戦はオレとベジータにやらせてくれ」

 勝手に組合せを決めてしまうあたり、やはり空気の読めない天津飯であるが、チャオズの超能力で組合せを勝手に決めたこともあるあたり、どうやら習慣化してしまっているらしい。後に悟空もウーブと戦うためにブウに頼んで組合せを勝手に決めているあたり、戦いそのもの以外に関しては本当にダメ人間の集まりでもある。

 クジを作る必要はなさそうだと審判が思っている横で、ピッコロはちらりとラディッツを見て、にやりと笑う。

「弱虫。いい加減にどちらが悟飯の師匠に相応しいか決めてやろう」

「ふん、顔色が悪いぞ緑色……ああ、元からだったか?」

 どうやら組合せは両者の合意で決める方向のようだ。以前からライバル視していた二人が決着をつけるべく、バチバチと火花を散らす。

 これは願ってもいない展開だと思ったのがクリリンとヤムチャである。ヤムチャは引き分けになりつつもベジータとの因縁を果たしたが、まだ悟空と戦うという目的が残っている。

 クリリンも長年の親友と久しぶりに真剣勝負をしてみたい。やはり修行の一環としての組み手と試合は異なるのだ。効率的な修行を求めた結果、試合形式ということをしていないだけに、この機会を逃せばいつになるかわからない。

 だが、積年の因縁は彼らだけに留まらない。チャオズもまた、輝かしい経歴にはじめて傷を付けた男との因縁があったのだ。

「クリリン。今度こそボクが勝つ」

「……へへ。算数の修行はしてきただろうな?」

 挑戦を無碍にできないのが戦士である。悟空と戦いたいとは思うが、チャオズも基礎戦闘力を上げて界王拳を使い、さらには超能力によるトリッキーな戦法まで駆使する強敵に違いない。ナメック星に行くのが自分だったとして、チャオズの超能力はグルドに対する良い経験にもなるだろう。

 対戦カードが次々と決まっていき、残るは悟空と悟飯。そしてヤムチャである。

 ヤムチャとしては当然、悟空との対決を望むわけであるが、悟飯がシード選手というのも不思議な話である。どうしたものかと考えていると、やはりここは父親なのだろう。悟空が晴れやかな笑みで悟飯を指名した。

「悟飯には父ちゃんを超えてもらいてえ。それが今日かどうかはわかんねえけどな」

「お父さん。本気でやるの?」

「安心しろ。界王拳は使わねえ。けど、それ以外は真剣勝負だ」

 無論、骨肉の争いというわけではなく試合としての真剣勝負である。悟飯も偉大で優しい父親の期待に応えるべく、こくりと頷く。結局、残ったのはヤムチャということになったのだが。

「ああ、もしオラが悟飯と勝ったら、ヤムチャと試合がしてえな。お互いに修行らしい修行もしてねえ頃に戦ったっきりだったし」

 この言葉に、ヤムチャは悟飯に申し訳ないと思いながらも、悟空の勝利を願うのだった。

 

 かくして、組合せはくじ引きではなく各々の同意によって決まり、試合順は第一試合に天津飯対ベジータ。第二試合にピッコロ対ラディッツ。第三試合にクリリン対チャオズ。第四試合に悟空対悟飯となった。ヤムチャは悟空と悟飯の勝ったほうと戦い、勝てば準決勝進出となるので、実質シードというよりも、悟空か悟飯が一試合多くこなす計算になる。

 審判がうきうきと武舞台に立ち、ルールを説明する。基本的に天下一武道会と同じであるが、使用料金を取らない代わりに会場を壊さないことだけは厳命した。

「壊した奴は留守番確定だぞ」

 クリリンの言葉に、戦士たちから不平が漏れるが、流石に飛び込みの上に無料で使わせてもらっているので、壊してしまうのはいただけない。取り分けベジータは不満そうであるが、兎にも角にも、ここで勝利しておかねばこの先の発言力やリーダーシップに多大なる影響を及ぼすことは必至である。たとえ一人であろうがフリーザを上手く出し抜いてドラゴンボールを集めることは可能であろうが、己と同等の力を持つ地球人たちと協力して、この戦士としては甘すぎる面々を出し抜いて永遠の命を手に入れることのほうが簡単である。

 ある程度、信用を得ておかねばならない。発言力を持ち、事をスムーズに運ぶようにしなければならない。戦士たちにとって、発言力は強さに大きく依存するものだ。勝ってはじめて意見を言えると、少なくともベジータはそう考えている。

 幸い、相手は天津飯という三つ目族の末裔らしき男だ。ヤムチャがおそらくナンバーワンであろうと勝手に決め付けたベジータは、にやりと笑みを浮かべて武舞台に立った。

「クリリン、少しいいか?」

 天津飯は武舞台に立つと、実質この試合を取り仕切る形となっているクリリンに声をかけた。

「真剣勝負に水を差すのもどうかと思うが、やはり気を探れないのは致命的だ。ベジータはスカウターを使って良いことにしたいのだが、どうだろう?」

 なるほど、確かに実力は伯仲していようとも、気を探れないようでは話にならない部分がある。スカウターに頼りすぎるのは愚の骨頂であるが、今回限りにして使用するのは問題ないはずだ。

「対戦相手の天さんが良いって言ってるんだ。いいんじゃないか?」

 クリリンは即答したが、これに気を悪くしたのが当のベジータである。格下がまさか、自分にハンデが必要だと言ってきたのである。これほどまでにコケにされたのは初めてのことかもしれない。頭に血が上り、思わず「必要ない」と叫ぶ。

「いいのか。やるからには短所を突くぞ?」

「オレに弱点などない!」

 天津飯としては善意での忠告なのである。特に友好的に接してやる必要は無いのだが、一年間も共に修行したラディッツがベジータを仲間として温かく迎え入れるようにと、ベジータも根っからの悪人ではないと説明して回っている。また、共にカリン塔で超神水を呷り、死の淵で新たなる力に目覚めたという親近感もある。

 それでも、跳ねつけるということは、それだけ自信があるのか、たとえ無くてもハンディキャップなど邪道だと思う戦いに対する誇りなのだろうと解釈した。その実、戦争に汚ねえもクソもあるかというのがベジータの思考回路であり、隙あらば出し抜く気まんまんであるが、天津飯はその辺りには疎い。

 ただし、戦士として当然ながら、真剣勝負ならば手を抜くような愚かしい真似はしない。

「では、本気で行くぞ」

「ふん、好きにしろ。どうせオレには勝てん」

 潜在能力が開放されたベジータは、元々の才能もあって飛躍的に戦闘力を伸ばしたという自負がある。一対一であれば、ヤムチャにすらもう負けないという自信もあった。

 一方、天津飯は油断とは無縁のストイックな性格であり、ベジータの強さも知っている。三つの目をぎらりと光らせて、精神を集中する。二人の用意が整ったと、審判が実に嬉しそうに武舞台の中央に立つ。観客は当然誰も居ない――と思いきや、たまたま通りかかった若者が、物珍しそうにこちらを見ていた。かなり濃い顔つきで剛毛なのかアフロヘアーに青髭で、筋骨隆々としている。おそらく格闘家なのだろう。彼の今後の成長につながるならばと、折角なので実況も加えることにする。

 審判はサングラスの上から装着したスカウターのスイッチを入れる。好意的に会場を貸してくれた審判に、より戦闘を楽しんでもらおうと悟空が貸したのである。これならば、戦士たちと同じように戦闘力を測りながらの実況まで可能である。試しに自分を測ってみたところ、5と出た。暢気に談話しているクリリンは5000ほどと、その力の差にますます嬉しさはこみ上げる。

 そうなのだ。このような圧倒的な強さが存在して、そんな雲の上の戦士たちが拮抗した実力を競わせるのが天下一武道会なのである。それを間近で観戦できるからこそ、この職業に就いたのだ。

「第一試合。天津飯選手対ベジータ選手。試合開始!」

 明瞭にして、力強い審判の声が吸い込まれそうな青空の下響き渡った。

 

 真剣勝負ならば、あらゆる技を用いて勝利に結びつける。それが天津飯の持論である。

 試合開始の合図と同時に両手を額に掲げ、先ほどの忠告を無視した愚か者に制裁を与える。

「太陽拳!」

 まばゆい閃光が放たれる。いわば猫騙しに近い不意打ち気味の行動であるが、誰も天津飯を責めはしない。気を探れない強敵相手に視界を奪うことなど当然の戦略である。

 だが、ベジータも既に太陽拳は先の戦いで経験している。チャオズがナッパとの戦いで使用して、手玉に取った技である。

 対抗策は単純で、目を閉じて顔を腕で覆えば、いくら強烈な光であっても目が眩むことはない。不意打ちに成功したと思い込んでいる天津飯にカウンターを決めてしまえば、勝利は早くもベジータの手中に転がり込む。

 だが、ベジータの予想は裏切られることになる。天津飯はかつて、悟空に太陽拳を見切られて手酷いダメージを食ったことがある。おそらくは対処してくるであろうと読み、太陽拳を放った瞬間に突撃。視界を奪われなかったかわりに、目を閉じていたベジータの腹に界王拳3倍のボディブローを叩き込む。

「おぐっ!?」

「排球拳、いくわよ~っ!!」

 ヤムチャに狼牙風風拳があるのならば、天津飯には排球拳がある。思い切り蹴り飛ばして宙を舞ったベジータを掬い上げるようなレシーブ。そして、上空高く舞い上げるトス。とどめに渾身の力を込めたアタックを狙う。

 バレーボールではコート内に入れるのが目的のアタックであるが、この勝負は武舞台の外に落とせば勝ちとなる。しっかりと狙いを定めて、強烈なアタックを場外狙って打ち込む。

 少々アホ臭い技に思える排球拳だが、敵を空中に舞い上げて、身動きが取れないところにトドメの一撃を加えるという単純ながら効果的な戦法を軸に作られた、侮れない技である。悟空にもかなりのダメージを与えた経験もあり、天津飯の完全なる趣味から派生した技にしては強力だ。

 激しいアタックにベジータはやはり中々のダメージを食らうが、舞空術にて場外負けを辛うじて避けて、武舞台に舞い戻る。流石にこれだけで勝てるとも思っていなかった天津飯も武舞台に立つ。

「小癪な真似を……」

「スカウター、今から使っても構わんぞ?」

「ほざけッ!」

 ベジータが全力で天津飯に突っ込んでいく。審判のスカウターに表示されたベジータの戦闘力は5万2000。対する天津飯は界王拳を5倍まで高めて迎撃する。負荷が少なく長時間の戦闘も可能な3倍から、かなり消耗するものの、ベジータの気を超えることができるであろう倍率に引き上げたのだ。天津飯の読みは正しく、スカウターには11万という数値が出る。ちなみにスカウター。ラディッツが装着していたものを改造して量産されたが、これから先を見越したクリリンの助言で、3億程度までは計測できる仕様となっている。

「おっと、これは凄まじい。戦闘力10万を超えた天津飯選手。5万のベジータ選手、分が悪いか!?」

 審判の解説に度肝を抜かれて慌てて正面突破を中止するベジータだが、天津飯はその隙を見逃さない。一気に距離を詰めて格闘戦にもつれこむ。

 当然ながら、単なる打撃戦ならば戦闘力の高い天津飯が圧倒的に有利である。辛うじて防いでいたベジータだが、次第に天津飯の攻撃についていけなくなり、地味ながらダメージを重ねられていく。

「ぐ、ぬっ!」

「おおっと。これはベジータ選手厳しい。天津飯選手の猛攻に為す術がありません!」

「黙れクズがあ!!」

 自分の負けっぷりを解説されて、ベジータは思わずギャリック砲を打ち込んだ。会場が壊れることなどお構いなしであったが、壊してはならないと天津飯が咄嗟に空中に移動して、ギャリック砲が会場に被害を及ぼさないように気遣う。ただし、それが災いして避ける術がない。

「おおおっ!!」

 全力でギャリック砲を押さえ込む天津飯を見て、ベジータはまさかの形勢逆転に勝機を逃さないようにと全力でギャリック砲を放射し続ける。

「お、おい……会場が壊れるぞ!」

「知ったことか。強い者が勝つのだ!」

 わざわざ会場を傷つけないために空中に舞った天津飯は、流石にこの言葉には怒りを示した。気遣った結果が、恩を仇で返す行為である。もう許さんと、界王拳を最大値である10倍にまで引き上げて、ギャリック砲を片手で握りつぶした。

「……は?」

 必殺技がまるで風船のように潰されたをみて、ベジータは目を疑った。まったく意味がわからない。だが、仕方がないことであろう。10倍界王拳を使った今の天津飯の戦闘力は22万である。元の歴史であればギニューすら軽くあしらうレベルだ。

「覚悟しろ!」

 天津飯が今度こそとばかりに、10倍界王拳のまま突っ込んでくる。流石にこれは不味いが、ベジータにできることは、既に迎撃以外にないのである。だが、ベジータもまた不屈の闘志を持つ戦士であり、ただ単に迎撃するだけでは勝てないことを理解して、打開するべく賭けに出る。

 天津飯に全てが劣っているわけではない。気のコントロールをするからこそ、天津飯は強いのだ。界王拳を見よう見まねで成功させることなど出来ないが、一点に気を集中させることぐらいならば出来るのではないかと、右腕に気を集中させようと試みる。

 幾度と無く説明したが、ベジータは天才である。紛れもない、本物の天才である。

「これが気か!!」

 危機に追い込まれ、その戦闘本能が足りなかったモノを喚起させる。敵が強ければ強いほど己もまた強くなるのがサイヤ人であり、それは何も死に直前した場合のみではない。

 気を感じるという、他の戦士たちにとっては当然とも言える技能を、長い修行ではなく刹那の境地において会得したベジータは、本能的に右腕に気を集中させて、天津飯の一撃を辛うじて受けきった。

「な、なんと戦闘力5万のベジータ選手、22万の天津飯選手の一撃を食い止めました!」

「くっ、なんてヤツだ。戦闘中に気を操ることができるようになっちまうなんて」

「オレはサイヤ人の王子ベジータ様だ。なめるなよッ!」

 ベジータの気を込めた反撃に、天津飯は直撃はまずいと後ろに引いて仕切りなおす。だが、新たなる才能の開花に逸ったベジータの勢いは止まらず、追撃に出る。

 面白くなってきたと、天津飯はこれを迎え撃つ。戦闘力に4倍の開きはあるが、一撃に気を込めたベジータの拳は、少なく見積もっても5万で済む威力ではない。

 天津飯も当然、気を集中させた一撃を放つことは出来るが、消耗する上に、現段階で地力が勝っている。それに加えて界王拳は全身の気を飛躍的に増大させる技であり、かめはめ波のように放出するならば兎も角、肉体に留めつつ維持させることは難しい。

 右腕一本だけで言えば、ベジータの攻撃力は今の天津飯に十分なダメージを与える破壊力を秘めている。審判のカウンターもベジータの右腕に20万近い戦闘力が集中していると表示された。

「これは凄い。勝負は依然わからない形へと変化していきます!」

 ベジータが目くらましに小さな気弾を撒き散らし、その光の中を突き進んで右の拳を天津飯に突きたてようとする。しかし、それを待ち受けるのは天津飯の必殺技、どどん波である。

 拳の先目掛けて放たれたどどん波に、ベジータの右腕は弾かれる。これを好機と見て、天津飯は一気に勝負を決めようと、多彩な技の中から、最も相応しいものを選んだ。

「狼牙、風風拳!」

 天津飯は、一度見た技ならば即座に自分のものにしてしまう器用さがある。無論、限界はあって界王拳の習得には時間が掛かったのだが、狼牙風風拳は技術こそ詰まっているものの、別に特殊な修行が必要な必殺技ではなく、平たく言えば急所狙いの連打である。

 だが、それでもヤムチャにとって狼牙風風拳は必要な技であり、その獲物を狩る能力は凄まじいものがある。天津飯も組み手で幾度と無くヤムチャの隙がなく、それでいて致命傷を常に狙うこの技を喰らって、その性能をよく知っていた。

 もはや、常人に見えるようなシロモノではない戦闘である。

 たまたま通りかかっただけの男――最近、格闘家としての才覚を顕し、期待の新星と呼ばれている男。リングネームをサタンという――は、武舞台にいたはずの二人が消えて、あちこちで空気が破裂するような振動を感じるだけだった。

「なんだ。映画の撮影か」

 中々迫力のある映画になりそうだと、サタンは暢気に公開を楽しみにする。武舞台の上ではあるが格闘技とは思えないので、SFか何かだろう。だが、もしも格闘技を主題にしているのであれば、最近人気が出始め、幾つもの大会で優勝している自分を主役にしても良さそうなものである。妻に先立たれ、男手一つで一人娘を育てつつ格闘家として頂点を極めつつあるサタンである。映画の主役となれば安全かつ多大な収入となり、一人娘の願いである「自分も強くなりたい」という願いのために、新しい設備を購入することだってできるだろう。

 しかし、武舞台に立っていた二人は、時折力比べをするように組み合うときだけ姿を現している。消えたり現れたりを繰り返すということは、かなりの速度であろう。或いは自分よりも早いかもしれない。

「……陸上選手か何かか。俳優にしちゃハゲとチビだしな。しかし、主演を狙うとなれば、あれぐらいの速さがいるのか……ビーデルのためにも、そのあたりのトレーニングを追加してみるか」

 常人レベルで言えば間違いなくトップの強さを誇る後の世界チャンピオンは、この頃はまだ胡坐をかくだけの実績も無く、真面目であった。彼もまた努力なくして勝者とはなっていない。

 凄まじい迫力の映画撮影から、今後の格闘家としての自分に何かプラスがあるかもしれないと、サタンはただ一人の観客として二人の試合を見守るのだった。




戦士なのかどうか疑問ですが、サタン大好きです。この頃には悟飯と同い年のビーデルも生まれ、まだチャンピオンでないので真面目なはずです。
まあ、活躍する機会があるかは不明ですが。


ええと、感想をいただけるのは嬉しいことですし、ありがたいのですが、あんまり先の予想を書かれると、非常にやりにくいです。
あと、今のうちにセルの破壊とか、クリリンがサイヤ人になったりはしません。地球人が頑張る話です。

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