竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

1 / 13
第1話 え? 美少女に迫られるんだが?

 

「はぁ!? ロボット……!?」

 

 目の前には18メートルはあるエメラルド色の巨人が立っていた。

 

『はい♡ 私に乗って下さい♡』

 

 そこから聞こえる女の子の声……まさか女の子がロボットへ変身するなんて。なんで俺、こんなことになってんだ?

 

 話は数分前に遡る──。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「やっとお会いできましたねショウゴ♡」

 

 ゲーセンに行った帰り道。突然不思議な光に包まれ、気がついたら知らない場所に立っていた。

 

 目の前には、にこやかな笑みを浮かべる女の子がいた。10代か20代か、俺とそれほど歳の離れていない女の子が。

 

「アナタに、その……お願いが……」

 

 恥ずかしそうにチラチラと俺を見るその子。だけど、その子は俺と少し違っている。

 

 淡い緑色の長い髪、金色の瞳に瞳孔が猫のように鋭い。フンワリとした白いドレスを着ていて……頭には2本の小さな()がある。うねりを持っていて、先端が上を向いているツノが。

 

 コスプレには見えない質感……だけど目の前にその子は確かに存在していて、その子に名前を呼ばれて余計に混乱してしまう。

 

「え、俺の事知ってるの?」

 

「もちろんです! アナタの名前はハガショウゴ。私の1つ上で19歳の日本人。ご両親と揉めた事で家を飛び出し、今は一人暮らしで……自宅と職場を往復する毎日を送っておられます……でも、そんなアナタにはある特技があります! ゲーム「バトリオン・コア」という特技が!!」

 

 早口で俺の事を話し出す女の子。その様子に気味の悪さを覚えた。実家を出てからはバイト以外、誰にも会っていないはずなのに。なんでそんな事まで知ってるんだよ?

 

 俺の不安をよそに女の子が捲し立てるように続ける。

 

「そう! そしてショウゴはそのバトリオン・コアで日本大会2位(・・)の実力者! ですがアナタの周りの人達は、その事を誰も知らない。誰もアナタを認めていない。あんなに努力して技術を磨いたのに! ……あぁ、なぜなのですか!」

 

 2位(・・)という言葉に胸がズキリと傷む。だけど、突然興奮してキレ散らかす女の子に、胸の痛みより先に「なぜ?」という言葉が頭を巡る。

 

「ショウゴは好きな物に懸命に向き合っているのに! なぜそれを誰も分からないのですか! ああ腹立たしい! バカです! バカ者達です! 許せません!!」

 

「えぇ……? なにその熱量……怖いんだけど……」

 

 彼女の言うバトリオン・コアとは、ゲームセンターに設置されたコクピットシート型筐体(きょうたい)の対戦ロボットゲームだ。

 

 コクピットシートとAR技術を組み合わせた「本物」的な操縦体験。動きと共にシートが動き、砲弾の衝撃まで感じる興奮、愛機バルディアを操る爽快感に、ロボットを通じて自分の体が拡張される感覚。

 

 元々ロボットアニメやゲームが好きだった俺は、あの筐体が大好きだ。愛してると言っても過言じゃない。あのコクピットにいる時だけは、本当の俺でいられる場所だと……そう思ってる。

 

 だけど、その事は誰にも言っていない。バイト先でバカにされても、元同級生達から見下されても、親から見放されても、それだけは絶対に言わなかった。言ってしまうと俺の楽しみが奪われると思ったから。

 

 抑圧されて、自分の事を否定されるのは、もう沢山だから。

 

 だけど……なんでバトリオン・コアの事まで……。

 

「知っています。アナタの事ならなんでも……」

 

 俺の事を潤んだ瞳で見つめる彼女。徐々に怖くなって来る。身に覚えがないのに親しみのような物を向けてくるこの子に。

 

「っていうか、ココ、どこだ?」

 

 周囲を見る。よく見ると、そこは石造りの壁に覆われた広い空間だった。天井は高く、暗がりになっていてどこまで続いているのか分からない。内装から頭に浮かんだのは神殿のようなイメージ。奥に扉のようなものがあるが、異様に大きい。一体何が出入りする扉なんだ?

 

「アナタを召喚したのです。私達の世界へ」

 

「召、喚……?」

 

 別の世界に……そんなマンガみたいな事あり得るのか? いや、あれは転生だったか? 俺は俺のままだよな?

 

 自分の両手を見てみる。服はゲーセンを出た時と同じ。上下の黒いジャージのままだ。自分の体を見回していると、目の前の女の子はクスリと笑って手で口元を押さえた。

 

「世界間転移魔法の原理をお話しても分かりませんよね。ただ1つ事実なのはそう、私がアナタを召喚したこと。アナタをずっと見ておりました……そして思ったのです。アナタにこそ、私の元へ来て欲しい、と」

 

 女の子が少し頬を赤らめて俯く。彼女は深呼吸すると、うやうやしく頭を下げた。

 

 

「初めましてショウゴ。私はティアマト・リ・アシュタリア。アシュタリア王国の第二王女です」

 

 

 ティアマトという女の子が再び俺を見つめる。見つめるというか、すごい熱の籠った視線で。

 

 なんだその反応……? え? さっき親しみだとか思ったけど……そうじゃなくて俺、この子に好かれてる? そういやさっき「ずっと見ていた」とか言ってたよな。もしかして、ストーカー?

 

「そ、そんなに見つめられたら……恥ずかしい、です……!」

 

 顔を真っ赤にして手で顔を覆うティアマト。うぅん……その様子はとてもメンヘラやストーカーには見えない。純朴(じゅんぼく)そうな女の子と言った様子だ。角が生えてる事以外は。

 

 彼女は真っ赤になった顔をブンブン振って咳払いした。

 

「ほ、本題に入りましょう! アナタにはあるお願いがあってここへ来て頂きました!」

 

「なんだよお願いって?」

 

 ティアマトという女の子は、モジモジしながら言葉を絞り出した。

 

 

「お、お願いはですね……私に乗って(・・・)欲しいのです……ッ♡」

 

 

「は? え? それってどういう……」

 

 

 ティアマトは、一言「がんばれ、私」と呟くと、俺に背を向けてドレスを脱ぎ始めた。

 

 

「ちょ!? なにやってんの!?」

 

「ふ、服を破らない為……です!」

 

 

 すぐ脱げるような構造になっていたのか、スルスルと下ろされていくドレス……慌てて目を背けようとした時、ある物が目に入ってしまう。

 

「なんだあれ……文字、か?」

 

 ティアマトの背中には、古代文字のような物がビッシリと刻まれており、その文字の1つ1つが緑色の光を放っていた。彼女は胸のまえで両手を組んで、ポツリポツリと言葉を紡ぎ始める。

 

 

「我らが父よ。竜神イァク・ザァドよ。我が肉体を真の姿へ回帰させたまえ。我が名はティアマト・リ・アシュタリア。竜の子にして鉄の巨人となった者。今、彼の者の鎧に──」

 

 

 呪文のような物を唱え終えた彼女は、最後に一言呟いた。

 

 

回帰魔法・竜機兵(リグナリオ・オブ・ドラゴレギス)

 

 

 瞬間、ティアマトの体が虹色の粒子になって空中へと飛んでいく。

 

「き、消えた……!?」

 

 粒子が頭上に集まっていく。それが眩い光を発したと思った次の瞬間、巨大な脚が現れた。

 

「私を見て下さい……♡」

 

 神殿内に轟音が響く。上を見上げると「それ」はいた。

 

 エメラルド色をした装甲に、所々金色が装飾された「鋼鉄の巨人」が。

 

 ゲームの時の癖で、機体の各部から性能を推測してしまう。あの大きさ……実家の6階建てマンションと同じくらいか? 全高18メートルはありそうだ。一見すると人型ロボのようだが、どこか生物的にも感じる。

 

 見た事のない質感。でも間違いない……俺が空想してやまなかったサイズ感。それが目の前にある。

 

 胸が高鳴ってくる。さらに他の部位へも視線を向けてしまう。足は鉤爪のようになっており、背中には折りたたまれているが……竜の翼のような意匠が。

 

 下から見上げているから分かるが、背面に大型の推進装置(スラスター)がある。恐らく背面スラスターと翼で飛ぶんだろう。よく見ると、機体各部に小型の姿勢制御用スラスターも。空中戦が得意なのか? それに、あれだけスラスターがあれば動きの自由度はかなり高いはず。

 

 全体のシルエットはどことなく女性的で、左胸を隠すように特徴的な装甲が付いている。頭には2本の角。鼻と口の無いマスクタイプの顔には、少し優しげな金色のツインアイが輝いていた。そこで改めて俺は感じた。目の前に現れた物が何なのかを。

 

 

「はぁ!? ……ロボット!?」

 

 

◇◇◇

 

 ──これが、この数分間で俺の身に起こったことだ。まさかこんな事になるなんて……。

 

 

『ショウゴ。共に闘いましょう? 1年後に行われる大陸の覇権をかけた闘い……「竜闘の儀」を!』

 

 

 

「お、お願いって……俺にティアマトに乗って戦えってコト!?」

 

『はい♡ 私に乗って下さい♡』

 

 ロボットに変身したティアマト。その姿のインパクトに疑問とか、色んな事が頭から吹き飛んでしまう。

 

 彼女が膝を付き、巨大な手がゆっくりと俺の前に差し出される。俺達しかいない神殿内に、ティアマトの声が反響した。

 

『どうぞ。こちらへ』

 

 正直言って、俺のテンションは急激に上がっていた。本物のロボが現れた事に。

 

『怖がらないで? 大丈夫ですよ。だから来て……?』

 

 彼女の声に誘われるように、恐る恐るティアマトの手に乗ってみる。彼女の指先から機械音が響き、その指に包み込まれてしまう。

 

 俺が落ちないように気を遣ってくれたのか、慎重に立ち上がるティアマト。地面から離れて行く事にものすごい興奮を覚えてしまう。

 

「マジかよこれ!」

 

 頬をツネっても夢じゃない。本物のロボットに……!? ずっと夢見た事が現実に!?

 

『ホントです! ショウゴの夢が叶いますよ! ロボットに乗るという夢が!』

 

 嬉しそうな声を上げながら、彼女はコクピットへと案内してくれた。

 

 ヤバイ……!! 俺が本物のロボに乗る? 手のひらに伝わるひんやりした金属の質感、ティアマトの指の隙間から頬を伝う風の感触。高所にいるという実感。い、生きてて良かったぁ……!

 

 コクピットシートへの期待感に胸が膨らむ。俺の中で熱い何かが込み上げて来る……!!

 

 

 俺は今、幸せの絶頂にいた。

 

 

 が。

 

 

 俺を包んでいた手が開かれる。開かれた先で自分が今どこへ居るのかが分かってしまう。

 

 

『ここです。ど、どうぞ……中へ……♡』

 

 

 ティアマトのロボ形態。その下腹部の少し下、いや……股関節? に手が添えられていた。

 

 

「えぇ……?」

 

 

 つまり、俺は今、巨大な女性型ロボの、というか、女の子の、その……ソコ(・・)に立ち尽くしてた──。

 

 





〜ティアマト〜

え? ここどこですか?

あとがき……? 私に何か話せと言うのですか? なんでもいい? 思った事を話せば良いのですね? お願いも忘れずに? え、お願いってこれを言うのですか?

うぅ〜恥ずかしいですが、頼まれたからには全力でやってみせます……!


ティアマト、いきます!


初めて間近で見たショウゴの凛々しいお顔……私興奮して倒れそうになってしまいました。次回はいよいよショウゴが私の中へ……? 2人が繋がる(・・・)瞬間、た、楽しみです……!


次回、「え!? コクピットってソコ!?」

絶対見て下さいね♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。