竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第13話 夜の修行開始です♡

 ハインズの家に来た翌日。

 

 俺達は朝からハインズの領内で戦闘訓練をしていた。

 

『ワイヤークローに頼りすぎだ!!』

 

 ワイヤークローを放った直後、ハインズ機にそれを掴まれ、思い切り引き込まれる。バランスを崩した所へ飛び込むハインズ。ヤツの放った斬撃を跳躍で躱し、全身のスラスターで姿勢制御、空中から斬撃を放つ。ハインズはそれを機体の上半身を仰け反らせて回避し、左腕を突き出した。展開するヴァース・ショット。その銃口がティアマトの頭部を狙う。

 

『ショウゴ! こちらも!!』

「ああ!!」

 

 空中で右腕装甲を展開。ヤツの頭部へ銃口を向ける。

 

〈着地まで3秒。衝撃に備えて下さい。3、2、1──〉

 

 AIのカウント合わせて身構える。両手の魔法陣を操作し、銃口を展開。着地と同時にヴァース・ショットを放つ。しかし、着地した瞬間、ティアマトの足元が若干フラついた。

 

『しまっ……!?』

 

『姫の課題は見えたな』

 

 ティアマトの右腕から連続で放たれるヴァース・ショット。だがハインズは、数ミリ頭部をズラすだけでその弾丸を回避、そのままスラスターを噴射して前方へ飛び込んでくる。

 

「踏み込みと回避を同時に!? マジかよ……!?」

 

『お前は気が抜けているぞショウゴ!! 先日の気合いはどうした!?』

 

 ハインズが切り上げの斬撃を放つ。実体剣の一撃で、俺達は上空へ吹き飛ばされた。

 

『きゃああああああああ!!?』

 

「くっ……姿勢制御! 追撃に備えるぞ!」

 

 各部スラスターをふかして地面へと着地する。しかし、完全のバランスを取り戻す事はできず、ティアマトはガクリと膝を付いた。

 

「クソ、まだだ。次はもっと……」

『今度は……!!』

 

 言いかけた所でハインズ機が手で制した。

 

『いや、午前はここまでだ』

 

 ハインズはそう言うと剣を地面へと突き刺した。ハインズ機の視線の先には、1人の女性がいた。草原で両手をブンブンと振り、バスケットを持った女性が。

 

 

「お兄ちゃん!! お昼持って来たよ〜!!!」

 

 

 オレンジ色の長い髪を風に揺らしながら、女性は元気な声を上げた。背が高くてスラッとした女性。頭の角はアシュタルと同じくらいの長さ。その人はバスケットを左腕に下げてブンブンと右手を振ってきた。

 

 

『アンヘルが来たな』

 

 

 

 

◇◇◇

 

 修行は一時中断して、アンヘルさんが持って来てくれたお昼をみんなで食べる事になった。

 

「準備するから待っててね〜」

 

 アンヘルさんが小脇に抱えていた布を取り出す。ハインズがそれをヒョイと奪って地面へ敷くと、アンヘルさんはキュッと眉根を寄せた。

 

「もう! お兄ちゃんがやったら私の仕事無くなっちゃうじゃん!」

 

「そう言うな」

 

 子供のように怒るアンヘルさん。ハインズは苦笑しながら昼の準備をしている。

 

「ティアマト姫の分もあるから料理人達に言って沢山作って貰ったんだ〜」

 

「気が利くな、アンヘルは」

 

「えへへ! そうでしょ? もっと褒めてもいいよ!」

 

 子供っぽいアンヘルさんを見るハインズの優しげな顔……なんか、意外だな。ハインズがこんな顔するなんて。仲が良い兄妹だな。

 

 ん?

 

 あれ? 違うよな? だってアンヘルさん角があるし、ハインズは俺の世界の人間だ。兄妹なはずがない。それに、年齢的にも兄妹に見えないよな……?。

 

 もう一度、アンヘルさんの事を思い返してみる。

 

 アンヘルさんはハインズの屋敷に住んでいる女性だ。昨日紹介して貰ってから俺達の世話をしてくれる。ハインズは何かに付けてアンヘルさんの事を気にかけているように見えるけど、ホント……どういう関係なんだ?

 

「おいひぃです♡」

 

 ティアマトの声で思考が中断される。およそ姫に見えない所作で両手に持ったサンドイッチを頬張るティアマト。す、すげぇ食うな……おい……。

 

 アンヘルさんが持ってきてくれた量もそれを食べるティアマトも異常だ。一体いくつ食べたんだ? もうこれで5個は食べたよな?

 

「ほらほら、ショウゴも食べて〜」

 

 アンヘルさんに勧められて包みを1つ手に取る。ズッシリと重いサンドイッチ。それを持った瞬間、自分が空腹だった事を思い出した。

 

「ボリュームすごそうだな……」

 

「とってもおいしいですよ♡ 野生味があってお城では食べられない味です!」

 

「褒めてるのかそれ?」

 

 モリモリと食べ続けるティアマトは放っておいてサンドイッチの包みを開ける。野菜と一緒に焼いた鶏肉みたいなのが挟んであるな。この肉……油が滴っていかにも美味そうだ。

 

 確かにティアマトの言う通り、城で食べた料理の中にはこんなの無かった。もっとパサついている肉だったし。

 

「この世界のごはんが嫌いなのぉ?」

 

 ふと見るとアンヘルさんが不思議そうな顔で俺を見ていた。怒っていると言うよりは本気で不思議に思っている顔。

 

 なんというか、仕草とか、話し方が妙に幼い気がする。変わった人だな、この人。

 

「い、いえ……頂きます!」

 

 サンドイッチを一口齧る。シャキシャキしたレタスをもっと軽くした食感に、焼いた肉の肉汁滴る旨みが合わさって……美味い。このトマトみたいなヤツも、独特な風味があるけどそれが良いアクセントになってる。

 

「うま……!? コレ、何を挟んであるんですか!?」

 

「それはねぇ。リトスの葉とマリメイトの実、それと〜君たちが倒したヒュドラムの肉を挟んであるんだよ!」

 

「ひゅ、ヒュドラムの……肉!? そんなの食えるのか!?」

 

 あのモンスターが食えるなんて……というか、そうやって知ると美味いのがなんか悔しいな……!

 

 驚いているとハインズがふっと笑った。

 

「こんな上物は中々ない。お前達が2体もヒュドラムを倒してくれたおかげで、この国の人間達は美味い飯にありつけてるさ」

 

「そうなのか? なんか、そう考えたら酒場で見たおっさん達や兵士達にも感謝して貰いたいよな、なぁティアマト?」

 

「ふぇ? 何かいいまひた?」

 

 ティアマトは食う事に夢中になって話を聞いて無かったみたいだ。

 

「食い過ぎだろ……」

 

「竜機兵へ回帰すると大量のマナ粒子を消費する。それを1番効率よく摂取できるのは、こういうモンスターの……いや、竜の肉だ」

 

 ハインズが言うと、隣にいたアンヘルさんがウンウンと頷いた。

 

「いやぁマナ粒子が溜まるまで……食欲の歯止めが効かなくなるんだよね。太らないから良いけどさ〜」

 

「あれ? なんでアンヘルさんが頷いているんですか?」

 

 

「なんでって、私はビルの竜機兵だからねぇ」

 

 

「ええ!? アンヘルさんが竜機兵!!?」

 

 

 

 そ、そうか! ハインズが前回の竜闘の儀に出たのなら、竜機兵に乗っていてもおかしく無いよな!?

 

 いくら量産機のワイヴァルスで強いからって、そのままじゃ他の国へ遅れをとるだろうし。だけど、なんで今は竜機兵にならないんだろう? 1度出場したらもう出られないみたいなルールがあるんだろうか?

 

「アンヘルさんとハインズはなんで次の竜闘の儀に出ないんですか?」

 

 質問すると、アンヘルさんはキョトンとした顔をした。

 

 

「えっとね。私は出たいんだけと、ビルがいなくなっちゃったの」

 

 

「え?」

 

 ビルがいない? え、ビルってハインズの事だよな? どういう事だ?

 

「うぅ……ビルに会いたいよぉ……どこに行っちゃたのぉ……?」

 

 アンヘルさんの様子が急におかしくなる。目に涙を溜めて今にも泣きそうな顔に。ティアマトもその様子を見て困惑している。俺達は思わず顔を見合わせてしまった。

 

 熱に浮かされたようにブツブツと何かを呟くアンヘルさん。彼女は顔をしかめて頭を押さえた。

 

 

「あう……頭痛い……何これ……?」

 

 

 ハインズがアンヘルさんの背中を摩る。アンヘルさんを労るように。

 

「大丈夫だ。すぐに帰って来る」

 

「ホント……?」

 

「ああ」

 

「良かったぁ〜! お兄ちゃん、ビルが帰って来た時は教えてね!」

 

 先ほどの雰囲気に戻るアンヘルさん。ハインズは、話題を変えるように咳払いした。

 

「それよりも、竜闘の儀の内容を説明しよう」

 

 何も言えなくなってしまう。少なくとも、今この場でアンヘルさんについて何かを聞くのは良くないかもな……。またアンヘルさんの様子がおかしくなるかもしれないし。

 

(聞くなら今度にしよう)

(そうですね……)

 

 ティアマトに耳打ちして俺達は竜闘の儀の話を聞く事にした。

 

「竜闘の儀って一昨日の決闘みたいな内容なんだろ?」

 

「そう、だがそれは本戦に入ってからだ。まずは足切りがある」

 

 ハインズが続ける。竜闘の儀はこの大陸の各国が出場する大規模な儀式。参加数も多く、大陸にある国全てが納得のいく結果でなければならない。そのために儀式は主に3段階に分かれるらしい。

 

 まずは予選。コレは足切りを含めて全参加者が同時に参加する。定められたエリア内に強力なモンスターが複数放たれ、討伐数に応じた得点を得る。討伐が肝だけど妨害や共闘も許されたバトルロイヤルのようなルール。そしてその中から上位4ヶ国の代表が本戦へ上がる。

 

 次に本戦。これは残った4ヶ国による総当たり戦だ。先日の決闘と同じルールだが、戦場の規模が違ようだ。タリア大森林など決められたエリア全域で戦う。ゲリラ戦や遠距離からの砲撃など、より戦略の幅が求められる。

 

 そして決勝。総当たり戦から勝ち星の多い上位2ヶ国が最後の決闘を行い、勝った方が大陸の覇者となる。優勝した国は4年間大陸を実質支配できるという。

 

「予選は長時間に渡る狩りになる。その為には2人の基礎体力を上げることが先決だ。明日からは午前中は2人別々に訓練をする。そして午後は竜機兵の戦闘訓練。しばらくはこのメニューでお前達を鍛える」

 

「基礎を上げるかぁ……」

「私は何をすれば良いのですか?」

 

「ティアマト姫はアンヘルと共に基礎体力訓練。ショウゴは俺と剣術訓練だ」

 

 剣術か。こっちとしても願ったり叶ったりだな。ハインズの動きで分かるが、生身での感覚は絶対生きるはずだ。俺がバトリオン・コアでは鍛えられなかったもの……絶対物にしてやるぜ。

 

 自分に気合いを入れる。ふと横を見ると、ティアマトは俺とは対照的に涙目になっていた。

 

「た、体力訓練? そういうのは苦手で……」

 

 ティアマトの言葉にハインズの眼光が鋭くなる。ティアマトは小さく「ひっ」と悲鳴を上げた。

 

「姫、午前の戦闘訓練……何度もフラついていたようだが?」

 

「うっ!? そ、それは……!?」

 

「竜機兵になった時、体力は人の数万倍になる。しかし、その慢心が今日のような動きになるんだ。それが本番に出てしまったらどうなる? お前達が目指す優勝はそんなにも甘いものだと?」

 

「うぅっ!!?」

 

 ティアマトが涙目でプルプル震える。そうだったのか。竜機兵でも本人の体力的な影響受けるんだなぁ……。

 

「あ〜まずは体を動かすことに慣れてからかな?」

 

 アンヘルさんが笑顔のままティアマトの肩をバンバン叩く。

 

「姫はどんな事が好きなの〜? トレーニングに取り入れたら姫も修行しやすくなるかも?」

 

 アンヘルさんの質問にティアマトが腕を組んでウンウン唸る。そして、パッと顔を明るくして答えた。

 

「ショウゴに乗って貰う事です♡」

 

「へ?」

 

 アンヘルさんが口をあんぐりと開ける。いや、ティアマト。そういう話じゃないだろ……。

 

「く、フフッ……そっかそっか! 私もビルを乗せるの好きだったから分かるよその気持ち、クフフ……!」

 

 声を押し殺すように笑うアンヘルさん。彼女は何かを思い付いたのかティアマトに耳打ちする。

 

「だったらまずは夜にこうすれば……お互いの精神接続も上がるから……ゴニョゴニョ」

 

 アンヘルさんがティアマトに何かを耳打ちする。すると、急にティアマトの顔がボッと赤くなった

 

「ッ♡♡♡!!? ホントですか!?♡」

 

「もちろん。ショウゴにも頑張って貰わないといけないけどね〜」

 

「わ、私! がんばります!!!」

 

 ティアマトの気合いが異常に上がる。あまりの変わりように若干引いてしまう。ティアマトは俺の腕をがっと掴んだ。

 

「た、た、楽しみにしていて下さいねショウゴ? もうどれだけ激しくても気絶しませんから♡」

 

 熱が籠った瞳、紅潮した頬。あまりの迫力に身を引こうとしたら、手をギュッと握られて逃げられなかった。

 

「ふ、ふふ。ショウゴ? 今日の夜、早速やりますからね♡。ふ、ふふふふ……♡」

 

 

 ……操縦の事だよな?

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 その日の夜。

 

 

「は……うっ……ショウゴ……そろそろ……うっ、限界、です……」

 

 ティアマトの体がフルフルと震える。両脚を抱え込んで彼女の体を逃げられないようにした。

 

「ちょっ、待って……はぁ……き、キツイ、です……奥がもう、痙攣して……あっ」

 

「お前がやろうって言うからやってるんだろ。もうちょっと頑張れよ。俺もキツいんだから」

 

 正直、俺も腰がヤバイ。あと、女の子の体にこんな事するなんて経験無いからめちゃくちゃ恥ずかしいだぞ、こっちも。

 

「はっ……あ、ああ……もう、ダメッ……ダメです……あ、あ、あああ……あ!」

 

 プルプル震えていた腕が限界を迎え、ティアマトの体がバタリと倒れ込む。

 

 アンヘルさんが言っていた夜の修行……それは、俺がティアマトの両脚を持って、ティアマトは腕だけで部屋の中をグルグル回るというものだった。確か手押し車とかいうトレーニングだったよな? だけど、3周目あたりでティアマトはもう限界のようだ。

 

 アンヘルさん、さすがにいきなりはお姫様のティアマトには無理だって。

 

「あ、明日もやります……! 絶対手伝って下さい……ね?」

 

 息も絶え絶えのティアマト。その顔は夜に見るにはちょっと俺には少し刺激が……。

 

「あ! なんで顔を背けるんですか!? 明日も手伝ってくれるんですよね? 修行ですよ!」

 

「わ、分かってるって!」

 

 ティアマトはやましいことなんて何1つ言ってないのに、俺はなんだか申し訳無い気持ちになった。

 

 

 




〜ティアマト〜

ハァハァ……夜の修行すごかったです♡
これを毎日やったら私……どうなってしまうのでしょうか……? あ! いけません! 予告をしないと!

次回、アンヘルさんが工房へ検査に行く事になり屋敷には私達だけに。私とショウゴは気になっていた事をハインズに聞いてみることにします。彼の話す過去には恐るべき敵の姿が……。


次回、「アンヘルの謎」


絶対見て下さいね♡
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