竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第15話 戦艦竜ヨルムンガンド、発進です♡

 ハインズの元で修行を初めて2ヶ月が経った。

 

 俺とティアマトはそれぞれ朝は走り込みと剣術訓練、午後は竜機兵でハインズとの戦闘訓練を行った。剣だけの訓練もあれば空中戦や射撃のみの闘いも。初めて触る武器の訓練もあったりして結構面白い。

 

 流石に、相手を拘束して風船で包み込む「バルランチャー」とかいう武器の訓練には困惑したけど。モンスターな狩りに使う武器なのか? あれ。

 

 とにかく。6日修行して1日は休息。それを60日間繰り返したことで俺達の動きは飛躍的に良くなった。

 

 で、俺達の個別の課題だった剣術と体力訓練はと言うと……。

 

「ハァ!!」

 

 木剣でハインズへ切り掛かる。ハインズは俺の剣を弾くと、俺に脚をかけた。バランスを崩した瞬間、のど元に木剣の剣先が突き付けられる。

 

「生身の戦闘ではまだまだだな。機体での訓練は格段に良くなったが」

 

「う、うるさいな。生身だとまだ思ったように体が動かないんだ……よ!」

 

 無駄口を叩いた瞬間、ハインズの剣を払う。

 

「……ほう」

 

「降参するまで終わらないって言ったのはハインズだよなぁ!?」

 

 ハインズとの打ち合いに転じる。頭部、胴体、腕部……竜機兵での戦闘時をイメージする。生身ではワイヤークローを使えない。剣だけで倒すには……。

 

「これで……!!」

 

 ハインズの脚を狙う。横なぎに一閃。それがハインズを捉えたと思った瞬間──。

 

「剣術訓練をマトモに受けられる体力が付いた事だけは……成長だな!」

 

 ハインズがバックステップし俺の剣撃を避ける。そして着地と同時に踏み込み。頭へ一撃与えられる。ヘルメットを突き抜けて、頭に木剣の衝撃が響いた。

 

「痛てぇ!?」

 

 衝撃に目の前がチカチカする。俺は思わず地面に尻餅をついてしまう。ハインズが追撃してくるのを見てあわてて「参った」と告げた。

 

「諦めが早いじゃないか」

 

 ハインズは、肩に木剣を担いで俺に手を差し出した。その手を掴むとグッと持ち上げられる。

 

「太刀筋が甘いから避けられるんだ」

 

「く、クソ……!!」

 

 ティアマトに乗ってたら絶対今ので決められたのに……! やっぱ生身の方が難しいぞ……。

 

「だが、狙いは良かった」

 

「マジ!? やったぜ!」

 

 あの鬼みたいに厳しいハインズに褒められるなんて……! 2ヶ月の成果が出たかも!

 

 喜んでいるとハインズがどこかを見た。

 

「姫様も見違えたな」

 

 ハインズの視線を追うと、走り込みをするティアマトが見えた。体にピタリと合う機兵服を着たティアマトは、アンヘルさんに声をかけられながら走っている。

 

「姫様〜あともう少しだよ〜!」

 

「はぁ……はぁ……うっ……はぁ……」

 

 2ヶ月前と同じように眼を潤ませながら走るティアマト。それでも屋敷周辺のコースを10周目……これで10kmは走ったはずだ。ペースはゆっくりだけど、初日は1周も走れなかったことを考えるとすごく成長したな。

 

「2人とも基礎力はかなり上がった。そろそろ実戦を含めた修行もできそうだな」

 

「実戦……?」

 

 その意味を聞こうとした時、頬に風を感じた。見上げると、上空からワイヴァルスが飛んでくるのが見えた。曇り空の中を走る鈍い銀色の機体。それが徐々に大きくなってくる。

 

 頭部に走る緑のライン。アレは……ダーナの機体か。

 

「姫様〜! ショウゴ殿〜!」

 

 ダーナ機が手を振る。それを見たハインズは、口の端を歪めた。

 

「来たぞ。実戦(・・)の機会がな」

 

 

 ……。 

 

 

 ダーナが屋敷に来た理由、それは王女アシュタルの外交の段取りのためだ。前回竜闘の儀の覇者、トルテリア王国。その女王に事前協議を申し込んだところ、条件付きで会談の席を設けてくれる事になったらしい。

 

 ダーナが書類を見ながらハインズへ必要事項を伝えていく。

 

「……と、段取りはこのようにお願いします。出発は3日後の明朝。『ヨルムンガンド』の発着場にて。ハインズ様。姫様とショウゴ殿はいかがですか?」

 

「問題無い」

 

 ハインズが書状に目を向けながら答える。彼の返答に、ダーナは胸を撫で下ろした。

 

「良かった……トルテリアとの会談は2人の同席が条件でしたから。まったく、ツィルニトラ女王は何を考えられているのか……」

 

「互いに戦力を開示する事で腹を割って話をしよう……そういうメッセージだと俺は思うがな」

 

「それなら良いのですが……」

 

 書状を見ていたハインズが眉をひそめる。

 

「ん? 王女の護衛が6機か……部隊編成はアシュタル王女が?」

 

「はい。最小限の兵備でと」

 

「トルテリアに敵対の意思を見せない為か……だが、空賊への対処を考えると配置は……」

 

 ハインズが考えこむようにブツブツと1人ごとを言う。俺としては色々聞きたいことがあるけど、真っ先に聞きたい事があった。最初にダーナが言っていた名前に、発着場という言葉……ロボ好きなら反応してしまいそうな話を。

 

「なぁティアマト? ヨルムンガンドってなんだ?」

 

 ティアマトは俺の質問を待っていたのか、嬉しそうな顔をする。そ、そんなに分かりやすいかな、俺……。

 

「ヨルムンガンドは我が国の戦艦竜(・・・)です。戦争で使われることはなくなったものの、こうやって王族の外交に使われるのですよ」

 

「せ、戦艦竜!?」

 

 急激にテンションが上がってしまう。なんだよ! その心をくすぐる言葉は!?

 

「大型古代竜に艦橋と機体用格納庫を設置した個体ですね。知能も高く、アシュタリアの民にも親愛を抱いているので、こうやって共生契約を結んでいるのです」

 

 すげぇ……この世界だと生きた戦艦に乗るのかよ……めちゃくちゃワクワクして来たぜ……!

 

 ハインズとダーナを見る。早く戦艦竜の所へ連れて行ってくれないかなぁ〜。

 

「ダーナ、人員の一部変更を。メンバーはこの人選で頼む」

 

 ハインズがメモ書きをダーナへ渡す。ダーナは、胸に手を当てるとピシリと背筋を伸ばした。

 

「お任せを! 姫様、ショウゴ殿。また3日後に!」

 

 駆け出したダーナはワイヴァルスに乗って城の方向へと飛び立った──。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 そして、待ちに待った3日後。

 

 俺は、竜機兵化したティアマトに乗り、発着場に来ていた。

 

『俺は積荷のチェックをする。戦艦竜を見学するのはいいが、出発前には必ず格納庫に来いよ2人とも』

 

 そう言うと、ハインズのワイヴァルス・カスタムが大きく跳躍する。すっかり仕事モードだなハインズ。屋敷を出る前はアンヘルさんが寂しそうにしていて後ろ髪引かれていたのに。

 

 恋人というより子供を残してく親みたいだったな。アレは。

 

 それにしても……。

 

「うわぁ〜ヤベェぞ、コレ」

 

 俺は、発着場に寝そべっている巨大な()へ目を向けた。

 

 竜の両眼にはバイザーが付いていて、全体的に機械と融合したような造形をしていた。胴体には艦橋(ブリッジ)やら砲塔が付いている。あれってどれくらいの威力あるんだろ? 同じサイズの竜も倒せそうだな!

 

 本体後方に視線を向ける。そこに設置された格納庫にはいくつもハッチが付いており、ワイヴァルス達が物資を運び混んでいた。

 

 

『あれが戦艦竜ヨルムンガンドです』

 

 

 ティアマトの誇らしげな声。あの戦艦竜は、もしかしたらこの国の武力の象徴なのかもしれないな。

 

「デカッ!? 全長何メートルあるんだよ!?」

 

〈解。ヨルムンガンドの全長は300メートル。艦橋と格納庫を担う胴体部分は160メートル。大陸に4体のみ存在する「弩級戦艦竜(どきゅうせんかんりゅう)」となります。機体最大収納数12機〉

 

 AIがすぐさま答えてくれる。さ、300メートル……!? 確かガン◯ムのホワイトベー◯が262メートルだったよな? 設定や映像では見たことあるけど、実際ロボットを搭載できる戦艦ってこんな迫力があるのかよ……!?

 

 しかも弩級戦艦竜? またまた燃えるワードが! 弩級って確か戦艦のサイズを現す言葉だよな? 俺の世界とは法則性が違うのかな? 後でティアマトに教えて貰おう。

 

『ふふっショウゴ、嬉しそうです』

〈ショウゴ・ハガの心拍数上昇。興奮状態にあると思われます〉

 

「だってさ! こんなの見た事ないから! ヤバい……ティアマトを初めて見た時以上の衝撃かも……!」

 

『そ、それは聞き捨てなりませんね!? 私よりヨルムンガンドの方が良いという事ですか!?』

〈ティアマト・リ・アシュタリアの心拍数も上昇。嫉妬の感情によるものだと思われます〉

 

 え!? 嫉妬……!? 待て待て待て! 俺はそんなつもりじゃ……!?

 

 モニターがジワリと滲む。ティアマトは目に涙を溜めながら地団駄を踏んだ。

 

『う〜!! 大きさは私じゃ勝てないですしぃ〜……!』

 

「ちょっ、聞けって!」

 

 俺がティアマトとの出会いが如何に特別なのかを力説していると、ヨルムンガンドのバイザーがボワリと光る。横長のスリットに赤い球体が灯り、それがジロリと俺達を見た。バイザーのせいで一つ目の竜に見える。なんだか、それだけ見ると怪獣みたいだ。

 

"竜機兵……この感覚、ティアマト姫か"

 

「あ、頭の中で声がする!?」

 

 頭の中に響く声。それは落ち着いた女性のような声だった。

 

『ヨルムンガンドは思念を飛ばして話をするのです』

 

 ヨルムンガンドはクククと声を上げると、大きな口を歪めた。

 

"妾が声を上げると小さき者共が怯えるのでな"

 

 声を上げるだけで怯える? な、なんてスケール感なんだよ……!

 

「え、でもさ。なんでこんなに大きいのに人に協力してるんだ? これだけ大きかったら人とか簡単に支配できそうだけど」

 

"支配か。そのような事はもう沢山だ。妾は支配するよりも、共に生きたい"

 

 んん? 長生きそうだし昔なんかあったのかもな。

 

"そのような事よりも、そろそろ妾の中へ来るがよい。皆待っておるぞ"

 

 ヨルムンガンドの胴体後方……格納庫へつながるハッチからダーナ機が上半身を出して手を振っている。

 

「それじゃあ乗せて貰うぜ!」

『お願いしますヨルムンガンド!」

 

"ははっ、元気な子らじゃのう。任せておくがよい!"

 

 ティアマトのスラスターをふかして跳躍し、翼を展開。ヨルムンガンドの後方へと飛んでハッチへ着艦する。

 

 広い格納庫の中へと入ると、ハインズ機とダーナ機……他3機のワイヴァルスと技術士達が機体を格納庫壁面へ固定している。技術士達の中にはティアマトを診てくれたライネさんもいた。

 

「こうやって慌しくしてるのを見ると、スゲー雰囲気あるな」

 

 誘導にしたがってティアマトを格納庫壁面へと寄せ、取手を掴む。

 

『間も無く発進です♡ ショウゴもしっかり捕まっていて下さいね?」

 

 ティアマトに言われて深く座り直し、魔法陣を握り締める。

 

「あ〜めちゃくちゃ楽しみだなぁ!」

 

 格納庫の技術士達が魔法陣を展開して操作する。すると、左右に展開していた6つのハッチが閉じていく。

 

 

"保護術式展開(ほごじゅつしきてんかい)"

 

 ヨルムンガンドが呟くと、格納庫内が赤い光に包まれる。保護? 飛んでる時に俺らを守ってくれるのかな?

 

〈解。艦内に擬似重力発生。ショウゴ・ハガの認識で相違ありません〉

 

「へぇ、そんな事までしてくれるのかよ。スゲェなぁ」

 

 全てのハッチが閉じ切ると、頭の中にヨルムンガンドの声が響いた。

 

 

"戦艦竜ヨルムンガンド、飛翔する。総員怪我をせぬようにな"

 

 

 フワリとした浮遊感の後、大きな翼が羽ばたく音が聞こえ始める。俺達を乗せたヨルムンガンドは、トルテリアへ向けて飛び立った。

 

『ショウゴの気持ちすごく感じます。ワクワクしてます?』

 

「こんなのワクワクしない方がおかしいだろ!」

 

 初めての戦艦、未知の国……俺の心臓は、今、最高に高鳴っていた。

 

 

 

 




〜ティアマト〜

ふふっ♡ ショウゴが可愛くて私まで嬉しくなっちゃいます♡

あ!予告ですね!

ヨルムンガンドへ乗った私達はお姉様に呼ばれてブリッジへ。我が国が誇る戦艦竜についてみなさんどうぞご覧下さい♡ ですが、何やら不穏な空気も……?

次回、「トルテリアへ向かいましょう♡」

絶対見て下さいね♡
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