竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第19話 絶対女王ツィルニトラ現る

 空賊との戦いから10日。俺とティアマトは、ハインズ達と空中戦の訓練をしながら旅を続けた。

 

 そして、いよいよその日はやって来た。

 

"見えて来た。トルテリア王国じゃ"

 

 ヨルムンガンドがポツリと呟く。ブリッジの周囲にあったモニターに魔法陣が浮かび、それが窓へと変化する。俺とティアマトは窓から外を見た。

 

「すっげぇ……滝の上に国があるぞ」

 

「あれがトルテリア王国です。前回の覇者であり、現在最も発展した国……何度見ても素晴らしい景色ですね」

 

 地平線の向こうに見える国、トルテリア王国。それは巨大な滝の上に作られた国だった。断崖絶壁の上に見えるのはトルテリア城を中心とした城壁に囲まれた国。その城壁に設けられた戦艦竜用の巨大な港。アシュタリア方面からあの国に入ろうとしたら、あの港から入る他ないのか。そりゃ戦艦竜で来る事になるよな。

 

「あ、見て下さいショウゴ!」

 

 ティアマトが遠くを指す。そこにはワイヴァルスをもっと細身にしたような機体が編隊を組んで飛んでいた。

 

 色は赤色。機体各部のエッジが効いた造形。頭部はバイザータイプ。細いバイザーから青い光を放つ姿がイカしてるな。姿勢制御用のスラスターにはフィンが付いており、盾を装備。その盾には剣がマウントされていた。あの持ち手の形状からしてストームブレードか? 

 

「へぇ……トルテリアの機体は機動力がありそうだな!」

 

「ふふっ、反応すると思いました♡」

 

 ティアマトと話していると、いつの間にかハインズが隣に立っていた。

 

「アレがトルテリアの偽竜兵『ドレイガル』だ。性能予測はできるか? ショウゴ」

 

 性能か。あの機体から見るに……。

 

「恐らく機動力で敵を翻弄するタイプかな。装甲の薄さを盾でカバーしてる。武器のストームブレードは重量を上げないようにするためだと思う」

 

 答えたら、ハインズがふっと笑みを浮かべた。

 

「観察力がいい。流石だな」

 

 俺は笑みが溢れそうになるのを隠して窓の外へ顔を向けた。簡潔だけど、褒めてくれた……ハインズに認めて貰えると、やっぱうれしいな。

 

「すごいですショウゴ! 私にも後で相手の性能の見抜き方を教えて下さい!」

 

 ティアマトが腕に抱き付いてくる。社交用のドレスを着てるからいつもより一段とき、きれ……い、いや! 今はそんな事考えてる場合じゃないだろ、俺。

 

「あ、ああ……そ、そうだな。こ、今度教えるから」

 

「はい♡」

 

 背筋に悪寒が走ってそれとなくティアマトから離れる。振り返ると、中央の椅子に座っていたアシュタルがジロリと俺を睨んでいた。

 

「な、なんだよその顔……」

 

「いいえ? 仲がよろしくて結構ですね」

 

 いや、全く笑ってねぇんだけど……。

 

 明らかに不機嫌なアシュタルだが、ティアマトはそれに気付かないように嬉しそうにアシュタルに話し始めた。

 

「はい♡ 昨日も夜の修行をしたのです♡」

 

「夜の修行……? 一体何なのそれは?」

 

 アシュタルの眼光が鋭くなる。え、なんで俺を睨んで言うの? 俺何も悪い事してないぞ!?

 

「ショウゴが私の両脚を押さえ付けて動くのです♡ 激しい運動なので私……毎回痙攣してしまうほどになってしまうのです♡」

 

「え!? おい! 誤解を生むような事言うなよ!?」

 

 それだと俺が動いてるみたいに聞こえるじやゃん!? あれは俺がお前の脚を持って「お前が」腕だけで部屋の中を歩き回るっていう修行だろ!

 

 言おうとした瞬間、ティアマトは不思議そうに首を傾げた。

 

「え? 誤解ってどんな誤解をされるのですか?」

 

 曇りのない眼で俺を見つめるティアマト。そんな眼をするなよ……余計に答え難いだろ……。

 

「ふふ……そう……ふふふ……ふ」

 

 あ、アシュタルが……真顔なのに笑い声を上げている……? あの顔、絶対なんか勘違いされてるぞ!!

 

(お、おいティアマト? もっと具体的に言えって! アシュタル怒ってるぞ絶対!)

 

(そんな事ありませんよ? この前お姉様が褒めてくれたではありませんか! お姉様は不器用なお方だから……だから私達の頑張りをお認めになってくれているのですよきっと♡ もう♡ お姉様ったら♡)

 

 照れるように両頬を押さえるティアマト。反面、アシュタルはピクピクと眉が痙攣している。どうにかここを切り抜けないと……。

 

「でもですね、お姉様?」

 

 お、良かった……ティアマトから補足して貰えば空気も変わるはず。

 

 

「そのおかげでショウゴと私はより深く繋がる事ができるようになりましたよ♡」

 

 

 やめろおおおおおお!!! 余計に勘違いされるような言い方するんじゃねぇええええ!!!

 

「繋が……繋がっているの? ツナ、ツナ、繋が……」

 

 真顔のまま、うわ言のようにブツブツ呟くアシュタルと、のほほんとした笑みを浮かべて、絶対それに気付いてないであろうティアマト。冷や汗が取らない。なぜかブリッジの人達も憐れむような表情で見て来るし……なんで俺がこんな気分にならなきゃいけないんだよ。

 

 その時、場の空気を変えるようにハインズが呟いた。

 

「迎えが来たようだ。皆、気を引き締めろ」

 

 窓から外を見ると、ドレイガル達がヨルムンガンドの近くにやって来た。その内の1機が前に進み出る。額にツノ飾りが付いた機体が。隊長機か?

 

 全員の意識がその機体へ向けられ、強制的に話も打ち切られた。ありがとう、トルテリアの隊長さん。アンタのおかげで俺は助かったよ……。

 

 隊長機は俺達に向けて優雅な仕草で一礼した。

 

『ようこそトルテリアへ。ただいまより入門ゲートへ案内致します』

 

"うむ、頼んだぞ"

 

 隊長機に付いて飛行するヨルムンガンド。案内されたゲートは他の入門口より一際大きい場所だった。ヨルムンガンドがそこへゆっくりと近付き着陸する。

 

 しばらくして、武装していないドレイガル達が退船用の階段を入り口に設置してくれる。作業が完了すると、年老いたお爺さんがブリッジへと上がって来た。

 

「ホッホッホ……お久しぶりですのうアシュタル様」

 

「ガラバリィ様。前回の竜闘の儀以来ですね」

 

「いやはや、今回もお手なみ拝見とさせて頂きましょうかの。どうぞどうぞ。女王様がお待ちです。紅茶と茶菓子を用意させましょう。緊張されておりますか? なぁに、姫様と女王は歳も同じ頃。友人へ会いに来たつもりでリラックスなさって下さい! ほっほっほ」

 

「そのような恐れ多い事を……ですがありがとうございます。ガラバリィ様にそう言って頂けますと心が休まりますわ」

 

「ほほっ! それは嬉しいお言葉! いやぁこのガラバリィ、我が姫が女王となられてからはすっかりやる事が無くなってしまいましてなぁ〜……先日の社交の場合に置いても女王様は完璧な立ち振る舞いでブツブツ……我が眼に入れても痛くない、いや眩しすぎて我が眼が燃え尽きてしまいますなブツブツ……」

 

「そうなのですか。それはすばらしいですね」

 

 な、なんかめちゃくちゃ話す爺さんだな……アシュタルも聞いてるようで受け流してるみたいだ。

 

 2人のやり取りを見守っていると、ティアマトが耳打ちして来た。

 

(大臣のガラバリィ様です。とにかく話の継ぎ目が無い方なのでお話する際は注意して下さいね)

 

 大臣なんだなこの人。でも、ガラバリィさんの話によると女王は相当やり手みたいだ。この国の女王ってどんな人なんだろうか?

 

 

 

 

◇◇◇

 

「さぁさぁ。ではみなさま、コチラへ」

 

 ガラバリィさんが案内してくれた部屋。そこは中が会議室のようになっている場所だった。中央に大きな丸テーブル。後ろの棚にはこの国の戦艦竜だろうか? 竜の像が飾られていた。

 

 ガラバリィさんに勧められて俺達はテーブルへと着く。最奥にアシュタル。その左手にティアマトと俺が座る。ハインズはアシュタルの背後に立って両手を後ろに組んだ。

 

「2人とも。私が言った事、忘れぬように」

 

 アシュタルにはこの国の女王に余計な事を言うなと言われた。俺達の弱みなんて握られたら、竜闘の儀で必ずトルテリアはそこを突いてくるからと。もう戦いは始まってるんだな……。

 

「はい、お姉様」

「気を付けるよ」

 

 俺達がアシュタルへ言った時、入り口にいた兵士が扉を開く。アシュタルが立ち上がるのを真似て、俺とティアマトも立って女王を待った。

 

 

 ゆっくり開く扉。そこから、美女が現れた。全身真っ黒の美女が。

 

 

「よく来てくれたアシュタル殿。そのようにかしこまらずとも良い。皆席に着いてくれ」

 

 

 凛とした声。長い黒髪に黒いドレス。しかし、彼女の肌は雪のように白くて、周囲が明るく感じるほどのオーラを放っていた。うねった長い角に、紫色の瞳。その瞳孔は、ティアマトと同じように細くなっている。射抜かれそうな瞳……浮かべた笑みから彼女の持つ絶大な自信が垣間見えた。

 

 近くにいた者が椅子を引き、女王が腰掛ける。

 

「初めての者もいるな。ようこそ我が国へ。(わたし)がこの国の女王。ツィルニトラ・ジル・トルテリアだ」

 

 その美貌に、醸し出される自信に、思わず飲まれそうになる。アシュタリアの王様やアシュタルとも違う王の雰囲気。一目見ただけで、彼女が普通の人では無い事が分かった。

 

貴君(きくん)は角を持っておらぬな。召喚人(しょうかんびと)か?」

 

 突然話しかけられた事に驚いてしまい、思わずアシュタルを見てしまう。彼女は俺を紹介するように言葉を告げた。

 

「そうです。コチラは我らの召喚人(しょうかんびと)、ショウゴ・ハガ。我が妹ティアマトの搭乗者です」

 

「なるほど……貴君()ショウゴか。ふふっ良い眼をしているな」

 

「あ、ありがとう……ございます」

 

 ん? 今のツィルニトラ女王の言い方……なんか引っかかるな。俺を知っていたみたいな……。

 

「そして、ティアマト姫。まさか姫が竜機兵とは。ククッ、次の竜闘の儀は面白くなりそうだ」

 

 ツィルニトラが笑いを噛み殺したように言う。

 

 ティアマトがアシュタルを見る。アシュタルがコクリと頷いたのを確認してからティアマトが口を開いた。

 

「あの……ツィルニトラ様? 貴国の竜機兵はどなたが出場されるのですか? 前回大会のようにストール卿が?」

 

「いや、今年はストールは出場させぬ」

 

「トルテリア最強の騎士と名高いストール卿を出場させない……と?」

 

 アシュタルが驚いたような声を出す。後ろにいたハインズも意外だったようで、考え込むようにしている。そんなにすごいヤツだったのか?

 

(なぁティアマト? そのストールってヤツは強いのか?)

 

(ストール卿は前回竜闘の儀の優勝者です)

 

 優勝者? って事はハインズと相打ちになったヤツか……じゃあ1番実績あるヤツを出さないって事かよ。なんでだ?

 

「で、では誰が次回大会に参加するのですか?」

 

 ティアマトの質問にツィルニトラは脚を組み、不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「私だ。私が竜機兵として出場する」

 

 

 女王ツィルニトラは……自分が出場すると、俺達にそう告げてみせた。

 

 

 

 

 




〜ティアマト〜

ま、まさか女王様自らが出場するなんて……!?

でも待って下さい。女王様が竜機兵なら、一体誰が乗るのですか? そう考えていた私達の前にある人物が現れます。その姿を見たショウゴは驚いた顔をして……?

次回、「女王の搭乗者」

絶対見て下さいね♡
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