竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第23話 女王様ってこんなに……っ!?

 

 俺はティアマトとブリッジの右端へと移動した。ここなら戦闘を中継する球体を見ながらブリッジの正面モニターも視界に入れられる。戦闘の全体像を把握できる位置だ。

 

「私とツィルニトラ様、どれほどの差があるの……?」

 

 ポツリと呟くティアマト。彼女も知りたいってことか。あの2人の実力が。

 

 俺は、再び球体へ目を向けた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 『はぁ!!!』

 

 ストールが右腕の装甲を展開し、ヴァース・ショットを連射する。ツィルニトラが黒い翼をはためかせ、その銃撃をクルクルと回転しながら回避していく。

 

 一見して優雅に舞っているように見えるが、スラスターによる急加速、翼を利用した旋回に姿勢制御……複数の動きを同時にしなければできない動きだ。あんなのどうやって制御してんだよ、ユウ。

 

『これで!!!』

 

 ストールが中距離まで踏み込み、右腰のワイヤークローを放つ。ツィルニトラがそれを回避したのを狙ってか、ストールはヴァース・ショットの照準を右へ逸らし、さらに連射。すぐさまスラスターをふかしてツィルニトラの元へと踏み込んだ。

 

『貰った……!!』

 

 ストールが左腕の盾からストーム・ブレードを引き抜き、風の刃を展開。高速の連撃を放つ。速い……実体剣とは違う動き。ストームブレードの軽さもあるが、あんな太刀筋を出せるなんて……さすがハインズと引き分けた騎士だな。

 

『見事だストール』

 

 ツィルニトラが片方の剣だけでその斬撃をいなしていく。的確にストールの斬撃角度を見極め、実体剣を当てることで軌道を変える。あんなのはバトリオン・コアでは見なかった動きだ。今の動きの主体はツィルニトラか? ユウの動きとは若干クセが違う。竜機兵側から操作指示を出せるのかも。

 

『ふん!!』

 

 何度目かの剣先がぶつかった瞬間、ストールが蹴りを放つ。ツィルニトラは翼で受け止めたものの、その威力に吹き飛ばされてしまう。ストールが両腕のヴァース・ショットを構え、マナ粒子の銃弾を浴びせた。漆黒の竜機兵は、飛ばされながらもなお銃撃を回避していた。

 

 

 ブリッジから兵士達の声が聞こえる。

 

 

「おい、女王押されてないか?」

「相手が前回優勝者のストール卿だからな。流石にヤツのが実力は上か?」

 

 

 ……違うな。俺が見た限り、ツィルニトラに反撃の意思は見えない。敢えてストールに戦闘の主導権を渡しているんだ。ヤツの攻撃を見極めるために。そして恐らく……これから行われる自分の戦闘を印象付けるために。

 

 球体の映像が彼女を拡大する。ツィルニトラのバイザーがボワリと赤く光り、彼女達の声が聞こえた。

 

 

『ふむ。そろそろ反撃に転じるか。いけるな?』

 

『ああ、もうストールの癖は分かったからな!!』

 

 

 球体の中で、ツィルニトラがクルリと回転し、ストールへと構える。先程の蹴りでかなり距離を離されてしまってるな。ここから射撃戦に入るか?

 

 そう考えていた時、ユウが叫んだ。

 

 

『ツィル! 共鳴接続(バーストリンク)を使う!!』

『良いぞ。来るが良い、ユウ』

 

 

 バーストリンク……なんだそれ、聞いた事もないぞ。

 

 瞬間、ツィルニトラの機体全体に紫の光の線が入った。体に走る光の線。それが足先から頭まで、まるで呼吸をするように明滅する。

 

「あれは……」

 

 ティアマトが両手で口元を押さえる。

 

「分かるのか?」

 

「ツィルニトラ女王の体を伝うあの光……ライネに聞いた事があります。共鳴接続(バーストリンク)、周囲のマナ粒子に共鳴を引き起こし、力に変えると……」

 

 共鳴を引き起こす? ユウが飛ばされたのも俺と同じ時期のはずだ。その短期間でそんなにもツィルニトラと心を通わせたのか?

 

 

『竜機兵ツィルニトラ、参る』

『行くぜぇーーーーー!!!』

 

 

 2人の声が同時に響く。瞬間、ツィルニトラが一気に加速した。ストールのヴァース・ショットの迎撃を身を捩らせるだけで躱わし、さらに加速する。漆黒の竜機兵が飛んだ後、大空に紫色の軌跡を描いた。

 

『くっ……速い!?』

 

 ストールの声に焦りが生まれる。雷のようにジグザグに飛行するツィルニトラ。紫の光が空を走る。ストールが銃撃を放ってもその軌道は捉えられず、ワンテンポ遅れてから銃弾が放たれる。ツィルニトラは、一瞬にしてストールとの距離を詰めた。

 

『しまっ!?』

 

『躱わしてみせよ!!』

 

 ツィルニトラが二対の剣を交差させる。ストールは避けきることができず、ツィルニトラの斬撃を盾で受け止めた。しかし、盾でもなお威力を殺し切る事ができず、ストールの盾が切り裂かれてしまう。

 

「実体剣で……あれほどまでの威力を……」

 

 ティアマトが絶句する。ストールも相当な力量を持っているけど、格が違いすぎる。

 

『私は……負けない!!! うおおおおおおおおおおお!!!』

 

 ストールが雄叫びを上げて斬撃を放つ。ストームブレードの軽さを活かした神速の一撃。刀身にオーラのようにマナ粒子を纏った一撃は、確実にツィルニトラの首を捉えていた。

 

 俺の想像よりも速い……!? あんなの避け切れないだろ!?

 

「奥の手か……中々良い判断だが、私には効かぬ」

 

 ツィルニトラが呟いた瞬間──。

 

 漆黒の竜機兵の体はユラリと滲み(・・・・・・)、ストールの斬撃は空を切った。再び現れるツィルニトラの姿にブリッジ内は大きくざわつく。

 

 

「消えた!?」

「いや違うぞ、分身だって!?」

「ぶ、分身……!? あんな事ができるのですかハインズ様!?」

 

 

 その場にいた全員がハインズへ視線を向けるた。ハインズの頬に一筋の汗が流れる。

 

「あそこまで安定して共鳴接続を使えるとは……彼女達は、精神接続100%を超えた領域にいる」

 

 精神接続100%を超えた領域……ハインズから見てもやっぱり特別なのか、あの2人は。

 

 球体の中でストールが必死の攻撃を繰り出す。斬撃、ワイヤークロー、ヴァース・ショット。そのどれもがツィルニトラの実体を捉える事なく、ダメージを与えられない。

 

 そして、ストールが渾身の斬撃を放つ刹那、ツィルニトラの一閃でマゼンダ色の右腕が空を舞う。ストールの右腕は、その剣ごと奪われてしまった。

 

『ぐぅ……!?』

 

『もうアンタは詰んでるぜ!!』

 

 ユウが叫ぶ。それでもなおストールは雄叫びを上げた。

 

『私にもプライドがある!! たとえ女王様と言えど最後の一瞬まで勝利を諦めん!!」

 

 ストールが後方へ飛び、左腕のヴァース・ショットの銃口を展開する。

 

 アイツ、ヴァース・キャノンを使う気か。

 

『ツィルニトラ様!! 貴女が真に闘う者ならば正面から迎え撃ってみせろ!!!』

 

 ストールはツィルニトラを逃さない為に……自分の全力の一撃を当てる為に敢えて挑発したのか。

 

『うおおおおおおおおおおおお!!!』

 

 眩い光を放つマナ粒子。俺とティアマトにとっても必殺の一撃。ストールはそれを主君へ向けて……発射する。

 

 放たれるマナ粒子の砲弾。ツィルニトラを飲み込むほどまでに膨れ上がった一撃が彼女へ襲いかかる。

 

『ユウ、分かっているな?』

『まかせとけツィル!!』

 

 ヴァース・キャノンが向かう中、ツィルニトラが右手の実体剣を天高く掲げた。その刃がマナ粒子を帯びる。

 

 

波動斬(はどうざん)

 

 

 ツィルニトラが右手の剣を一閃する。放たれたマナ粒子が、波動の刃となってヴァース・キャノンへと直撃する。次の瞬間、マナ粒子の砲弾が真っ二つに引き裂かれてしまう。

 

『なんだと!!?』

 

 ストールの驚愕の声。騎士の最後の一撃はツィルニトラの両脇を掠め、その身体を傷付ける事は叶わなかった。

 

『その力、しかと見届けさせて貰った』

 

 再び距離を詰めるツィルニトラ。切り裂かれるストールの翼。ストールが反撃に出ようとした瞬間、その脇腹にワイヤークローを撃ち込まれる。横に薙ぎ払われ、ストームの行動がキャンセルされてしまう。

 

『ぐぅ!?』

 

 ストールが苦しみの声を上げる。ツィルニトラの剣線が十字を描く。吹き飛ぶ左腕と右脚。反撃の手段を失ったストール。ツィルニトラは彼女へ賛辞を送るようにポツリと呟いた。

 

 

『飽くなき勝利への執念。見事だ、ストールよ』

 

 

 一閃。ストールの首が切断される。空中を舞う頭部。その瞬間、上空を飛んでいたレビアタンがクルクルと周囲を回りながら降りて来た。

 

 

"勝負あり〜!! 女王様つよ〜い!!"

 

 

「世辞はいらん。レビアタン。ストールを格納庫へ」

 

"ハイハーイ! ストちゃんも頑張ったねぇ"

 

 レビアタンが損傷したストールを両手で掬い上げ、格納庫のハッチを開く。その中から2機のドレイガルが現れてストールを格納庫へと連れていった。

 

 その様子を見届けたツィルニトラ。彼女は、天へ向かって両手を広げる。

 

 

『今、この瞬間をもって私とユウが竜闘の儀への参加権を勝ち取った! 皆に約束しよう! 決してトルテリアの名に恥じぬ戦いをすると! そして、皆へ勝利の栄光を!!!』

 

 

"女王様ぁ! みんなの声が聞こえるよ!"

 

 レビアタンが魔法名を告げると、周囲へ大量の魔法陣が浮かんだ。そこから割れんばかりの声援が周囲へ響く。トルテリア国内にいる国民達の声が。

 

 ツィルニトラを讃える声、ユウを応援する声、戦いに賛辞を送る声。それらが熱狂の渦となって辺りに渦巻く。

 

 ヨルムンガンドの中にいた俺達は、全員が言葉を失っていた。

 

"まったく……派手な輩が多い国じゃのう"

 

 ヨルムンガンドの声でみんな我に返る。中央の椅子に座っていたアシュタルが乾いた笑い声を上げた。隣に控えていたハインズは、怪訝な様子で彼女へ視線を送る。

 

「アシュタル様、どうしたのですか?」

 

「笑うしか無いのです。ツィルニトラ様のお心があまりにも真っ直ぐだからこそ……」

 

 ツィルニトラの行動は全部正面突破の正攻法だ。勝利を自分の力で勝ち取る、俺達に奥の手すら曝け出す。自分に得があるようなそぶりは一切感じない。感じないからこそ、力量差を見せ付けられた気がする。

 

 これはなんというか、劣等感を持たされるだろうな、アシュタルも。

 

 

「しかしこれこそ……世界の模範たる姿なのかもしれません」

 

 

 世界の行末を決める竜闘の儀。それをまるでエンタメのように楽しみ、戦い、そしてみんなを率いる。竜闘の儀なんて競技で世界をまとめられるのか最初疑問だったけど、こんな熱量があるからこそできる事なのかもな。

 

 ティアマトが俺の手をギュッと握る。彼女は目の端に涙を溜めていて、でも、真っ直ぐ真剣な表情でツィルニトラを見つめていた。

 

「どうした?」

 

「私……あの方とちゃんと戦えるか不安です。だけど、勝ちます。絶対……!!」

 

 その言葉は、俺にも向けている気がする。

 

 ……そうだよ、俺達はアイツらと戦うんだ。褒めてばかりじゃダメだ。ヤツらの動きは見た。強さも共鳴接続もだ。次の段階はそれをどう超えるか、そこへ思考を割くべきだな。

 

 

 そんな事を考えていた時、突然、レビアタンの声が周囲へ響き渡った。

 

 

"アレ!? 魔力の塊みたいなこの感覚……なにか近付いて来るよ!?"

 

 

 レビアタンが前脚で東の彼方を指す。そこには地平線が広がっていた。いや、黒い線……? よく目を凝らすと、それは蠢いている無数の何かに見える。あれは……クソ、遠すぎてよく見えない。

 

 

"望遠魔法を使う。皆正面モニターへ来るがよい"

 

 

 ヨルムンガンドの言葉でブリッジにいた皆がモニター前へ集まる。拡大される映像。そこには、見覚えのある「戦艦竜」が映っていた。背中の砲塔が折れ曲がっているが……忘れもしない、俺達を襲ってきた戦艦竜の姿が。

 

「ムシュフシュ……!? なんでこんな所に!?」

 

 しかもヤツは、様々な種類の飛竜を従えていた。竜機兵より大型の個体から、騎乗用の小型飛竜まで。俺達が撃退した時は砲塔は無傷だった事から考えると……アイツ、力で野生の飛竜を従えたのかよ。

 

 

"彼奴め、同族のよしみで見逃してやったものを……自我が復讐に取り込まれておる……"

 

 

 悔しそうに呟くヨルムンガンド。アシュタルは、ヨルムンガンドに拡声魔法の使用を指示し、ツィルニトラへと呼びかけた。

 

『ツィルニトラ様。我らを襲った竜が向かっております。我らへ復讐に来た様子……ツィルニトラ様は後退を。貴国の領土から引き離します』

 

 球体に映るツィルニトラ。彼女は東へと視線を向けると、アシュタルを諭すように告げた。

 

『……いや、よく見るがよいアシュタル殿。あの竜達の狙いは貴殿らではない』

 

『なんですって……?』

 

 水平線の彼方で竜達が2手に分かれていく。まるで俺達を避けるように。それは俺達の背後にあるトルテリアへ進路を取っているように見えた。

 

『奴らの狙いは我が国のようだ。アシュタル殿こそ引くが良い。我が領地で要人に死なれては困る』

 

 アシュタルが俺達を見る。ティアマトも、ハインズも、ダーナも、全員彼女へと頷いた。アシュタルはコクリとみんなへ頷いて返すと、再び声を上げる。

 

『ツィルニトラ様、ならば私達も共に戦わせて下さい』

 

 竜機兵ツィルニトラが肩をすくめた。

 

『責任など感じずともよい』

 

『いいえ。これは我らがあの竜を討たなかった故の事態……ここで戦わぬ「女王」に大陸の者達を従えて?』

 

 その言葉に、ツィルニトラがピクリと反応する。すげぇ……アシュタルのヤツ、相当な啖呵切ったな。竜闘の儀への宣戦布告だぞ、それ。

 

 だけど、ここまでツィルニトラを見た限り、あの女王は闘争本能を刺激される事が好きなはず。アシュタルがここまで言って断るなんてしないだろうな。

 

『……いいだろう。そちらの竜機兵の力も見せて頂くとするか。レビアタンは全ハッチを開け! 総員戦闘体制へ移行せよ!!』

 

 アシュタルがホッと胸を撫で下ろす。その様子を見ていると、アシュタルがジトリと俺を睨んだ。

 

「……なんですか?」

 

「やるじゃんアシュタル」

 

「……!? み、皆早く戦闘配置につきなさい!」

 

 上擦ったような声。アシュタルの指示でブリッジ内が慌ただしくなる。俺達もハインズ達へ続いて格納庫へ向かって駆け出した。

 

 

"ウ〜! ウ〜! 総員戦闘体制に移行!! ハッチ開けるよ!!"

 

 

 遠くからレビアタンの声が聞こえる。通路の窓をチラリと見ると、レビアタンの格納庫のハッチが開き、トルテリア軍のドレイガル達が出撃を始めていた。

 

 ハインズとダーナの後を追っていると、昨日の夕焼け市の光景が脳裏によぎる。トルテリアの人達が楽しそうにしている姿が。ムシュフシュの野郎、逆恨みで関係無い人達を狙うなんて許せねぇ……!!

 

「ショウゴ、姫」

 

 考えていると、ハインズが俺とティアマトを呼んだ。

 

「2人は俺達が出撃してから2分後に出撃しろ。俺達が竜の群れを惹きつけ、道を開ける」

 

「2分後? どういう事だよハインズ?」

「同時に出撃した方が……!」

 

 ハインズの指示に頭に疑問符が浮かぶ。こちらを見ないまま、ハインズが続ける。

 

「違う。2人にはツィルニトラ女王を守って貰いたい」

 

 女王を?

 

「今回のムシュフシュの動き……何か嫌な予感がする。ヨルムンガンドとレビアタンを分断しているような……万が一にも女王の身に何かあってはいけないからな」

 

「確かに、女王の身に何かあれば……」

 

 ティアマトが顔を青くする。そうか、そうだよな。もしそんな事になったらトルテリアとの中は最悪になっちまう。いくら強いユウ達だって、戦艦竜相手じゃ分が悪いかもしれない。そう考えると、竜達が進路を変更したタイミングもおかしい。まるで俺達に見せ付けるようだった。「これから国を襲う」とでも言いたげに。

 

「……分かった。俺とティアマトでアイツらを援護する」

 

 ティアマトもコクリと頷く。見てろよムシュフシュ。何考えているがしらねぇが、絶対後悔させてやるからな……!!

 

 

 

 

 




〜ティアマト〜

決闘の余韻もなく襲いかかるとは……それも他の人をを狙うなんてムシュフシュは最低です!絶対倒して止めてみせます!!

次回、出撃する私とショウゴ。飛竜達と闘う中、目の前で竜達が竜巻のように回転を始めて……? あ! 女王様がその中に誘導されてしまってます!?

次回「女王を狙う影」

絶対見て下さいね♡
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