竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第25話 ツィルニトラとユウ

 

『ユウ、下だ』

『オッケー!!』

 

 ツィルニトラが中型飛竜に落下攻撃を仕掛ける。スラスターを全て消した自由落下の刃。それが飛竜の首元に深々と突き刺さった。竜の悲鳴が聞こえる中、ツィルニトラがその背を蹴って飛翔。瞬間、6体の小型飛竜がツィルニトラへ喰らいつこうと襲いかかる。

 

『ユウ!』

『分かってる……よっ!!』

 

 クルリと身を捩って飛竜達の隙間を抜ける竜機兵ツィルニトラ。彼女は、その手の実体剣で2体の飛竜を一太刀の元に斬り伏せる。残った飛竜達は体を反転し、再びツィルニトラを狙った。

 

「ギアァ!!!」

 

 飛竜が四方向へ分かれ、上下左右から火球を放った。

 

『オールレンジ攻撃かよ!』

 

『何だそれは?』

 

『あれ? ツィルには言って無かったか? オールレンジ攻撃はガンダ⚪︎っていう作品のさぁ! サイコ⚪︎ュ兵器のさぁ〜!』

 

 ユウが熱を入れて作品解説を始める。しかし、操縦の手は一切緩む事は無く、火球をヒラリと躱わしていく。クルリと上下反転して火球を回避したツィルニトラ。その刃が波動斬を放ち、小型飛竜を真っ二つにする。

 

『ひとぉつ!!』

 

『そのガンなんとかという物語の真似はやめよ。鬱陶しいぞ』

 

『え〜!? テンション上がって来たのにさぁ……!?』

 

 無駄口を叩きながらもユウの四肢は完全にツィルニトラを制御している。反転、急加速、急停止……まるで重力を感じさせない動き。その操縦技術にツィルニトラは内心深い親愛を抱いていた。過去の男達(搭乗者)とは全く違うユウ・シライという青年に。

 

 過去竜機兵として抱いていた物足りなさ、全力を出す前に相手が根を上げてしまうことへのもどかしさ。欲求不満を満たし、自分を乗りこなすこの青年こそ、自分を満たす運命の相手だと、ツィルニトラは心から信じていた。

 

 だからこそ、彼らは無駄口を叩き合っていても一切精神接続率を落としていなかった。

 

 さらに数を増やす飛竜達。それを真っ二つに切り裂き、貫き、倒していく。ツィルニトラは恍惚とした気分に満たされ、自分の意思に反して叫んでいた。

 

『最高だユウ……!! 私は今、最高に昂っているぞ!!』

 

 その想いが自身の搭乗者へ確かに伝わる。精神リンクを通じて彼女の高揚感が。

 

『んん? 良かったぜ! 俺も楽しすぎて最っ高にテンション上がってるからな!!』

 

 ……多少ズレてはいるが。

 

 ユウもまた同じくしてツィルニトラを運命の相手だと思っていた。自分の持てる操縦技術全てを持ってしてなお、伸びを期待できる相手に。

 

 ユウは元の世界において王者であった。ロボット対戦ゲーム「バトリオン・コア」において、彼は日本大会で優勝し、さらに非公式試合で、世界大会に名を連ねるランカー達を何度も下していた。

 

 そんな彼にとって、日本大会以降のイベントは興味が無かった。対戦者は向こうから現れる。無名の新人も、世界ランカーも、誰もユウの心を燃やしてくれる事は無かった。

 

 そして、ある時を境に彼は退屈という言葉を覚えた。自分に勝るプレイヤーが現れぬもどかしさ。唯一認めたライバルも、そのこだわり故に成長には時間がかかると思えた。

 

 ユウの操縦する機体は性能をすべて引き出してしまい、これ以上強くなることはできない。

 

 退屈。限界を知るということは退屈なのだ。

 

 彼の場合は「他者が自分についてこれない」という意味での限界なのだが。

 

 だが、ツィルニトラは違う。乗った瞬間、彼には分かった。この暴れ馬のような機体には……彼女には限界が無い。自分が強くなった分だけ、どこまでも強くなってくれる。自分の渇きにも似た退屈を満たしてくれると。

 

 この想いが共鳴したが故に、2人は精神接続率100%を超えた世界へと至ったのだ。

 

 

 彼らの常時接続率は120%。

 

 

 これは、歴代の竜闘の儀でも類を見ない数値であった。

 

『ツィル!!』

『分かっている!』

 

 ツィルニトラの腰から放たれたワイヤークロー。それが小型飛竜の胴体に突き刺さる。機体を回転させて横に薙ぎ、他の飛竜に激突させ、もがく飛竜達へ波動斬を浴びせる。女王が飛竜達を蹂躙していく。周囲を覆い尽くすほどの飛竜は、かなりの数を減らしていた。

 

 ツィルニトラによって勝利が見えたと思ったその時──。

 

 

「ギアアアアアァァァァッ!!!」

 

 

 数体の小型飛竜が、体を破壊されてなおしがみついて来た。血を吐きながら、攻撃するでもなくツィルニトラの動きを塞ぐ飛竜達。その異様さに2人は初めて焦りを抱いた。

 

『なんだこの動き……!?』

『生ける者の行動ではないぞ』

 

 ツィルニトラの周囲を新たな小型飛竜が旋回し、その口を開く。彼らは、自身の体に魔法陣を浮かび上がらせ「何か」を吸収し始める。ユラユラと漂う虹色の粒子を。

 

『アイツら……マナ粒子を吸ってるのか?』

『……ユウ、共鳴接続(バーストリンク)は使えるか? 突破するぞ』

 

 ユウが接続を深く繋げようとする。

 

 が。

 

『……ダメだ、使えない』

 

 しがみつく飛竜を振り解き、ツィルニトラが波動斬を放つ。しかしマナ粒子の斬撃は、放った直後に霧散してしまった。

 

『ヤツら、周囲のマナ粒子を吸って私達の弱体化を……?』

 

 彼女の周囲を飛ぶ小型飛竜は、ツィルニトラの周囲からマナ粒子を吸い取り、彼らの能力を弱体化させたのだ。

 

 彼らの共鳴接続(バーストリンク)や波動斬は、周囲のマナ粒子へ精神接続の余波を与えて力に変える。それ故に、大気中のマナ粒子量が少なくなってしまえば発動できなくなってしまう。その弱点を突かれたのだ。

 

 そして、マナ粒子を吸う飛竜も、ツィルニトラを拘束する飛竜にも共通点があった。目が赤く光っているという共通点が。2人がその事に気付いた時、背後に強烈な一撃が加えられた。

 

『ぐっ……!?』

『なんだ!?』

 

 後方から放たれた火球。それが小型飛竜を巻き込みながらツィルニトラへ直撃する。巻き起こる爆風に、吹き飛ばされるツィルニトラ。そこへマナ粒子を吸った小型飛竜達が彼女の元へ組みついた。

 

「ギアアアアアァァァァッ!!!」

 

『またか…鬱陶しい!!』

 

 ツィルニトラが飛竜達を振り解こうとするが、できない。ガッシリと組み合った飛竜達は、ワイヤークローを撃ち込もうとも体に穴が開こうとも絶対にツィルニトラから離れない。そこへさらなる火球が撃ち込まれる。

 

『ぐううううぅぅっ……!?』

『ツィル!?』

 

 小型飛竜が溜め込んだマナ粒子が炎へ変換され、猛烈な爆風が巻き起こる。機体が焼かれダメージを負うツィルニトラ。ツィルニトラが視線を向けると、そこには戦艦竜(・・・)が飛んでいた。ショウゴ達を襲った戦艦竜、ムシュフシュが。

 

『戦艦竜……か』

 

 ツィルニトラの言葉にムシュフシュはニヤリと笑みを浮かべた。彼は口を歪め、顎でどこかを指す。ツィルニトラが視線を向けると、自分たちを中心に、辺り一体を無数の飛竜達が包み込んでいることに気が付いた。

 

 彼女達を中心に旋回する竜達。その数は百や二百では効かない。さながら竜の竜巻の中に閉じ込められたようだ……とツィルニトラは思った。

 

『やはり貴様が人の群れの長か。そのマナ粒子の濃さ……我の検知魔法も衰えておらんな』

 

 ムシュフシュの眼が赤く光り、さらなる小型飛竜が彼らに襲いかかる。小型飛竜は、彼女達を逃さないようがっしりと組み付き、その動きを防いでしまう。

 

『知っているぞ? 貴様達の技、力、全てな。遠方より見させて貰った。手の内を曝け出すとは馬鹿な事を……マナ粒子を奪えば貴様はただの人形だ』

 

 ニヤリと笑みを浮かべるムシュフシュ。戦艦竜は、ツィルニトラへ向かって名乗りを上げた。

 

『我こそは魔王竜ドレッドノート様の配下が一人、豪将ムシュフシュである! 人の群れの長よ! 貴様の命、貰い受ける!!』

 

 ムシュフシュは、ツィルニトラとストールの決闘を通して彼女の能力を分析し、ツィルニトラ単体を狙う作戦を決行したのだ。千年以上の時を生きる古竜の知識から、周囲のマナ粒子ごと彼女を弱体化させる方法を。

 

『歴史の敗北者か……愚かな。今の時代を理解できておらぬようだ』

 

『うざい攻撃するよなぁ、豪将なら正面から戦えよ』

 

 なおも余裕を見せる2人。しかし、そこに焦りが含まれているのをムシュフシュは見逃さなかった。ムシュフシュはフンと鼻を鳴らし、後方にある格納庫のハッチを展開。その中の暗闇から、無数の赤い瞳がギラリと光る。

 

『不敬な口を利く者どもを抑えつけよ』

 

 ムシュフシュの格納庫から無数の小型飛竜達が飛び出す。その瞳から怪しい光を放ちながら無数の小型飛竜がうねりとなってツィルニトラへ襲い掛かる。大量の小型飛竜が彼女の身動きを奪ってしまう。

 

『……分かったぞ。この者達は「従属」の魔法をかけられている。ムシュフシュの道具に成り下がっているな』

 

『同族を壁扱いかよ!』

 

『同族? そのような下等生物どもと同じにするな。我は古竜。この世界原初の種にして頂点に君臨するものだ!』

 

 戦艦竜ムシュフシュが口を開く。迸る雷光。ムシュフシュは、近距離によるブレス攻撃でツィルニトラを確実に殺す攻撃を仕掛けるつもりだった。自らの仲間を巻き添えにして。

 

 

『死ね』

 

 

 ポツリと呟くムシュフシュ。口から迸る雷光。ツィルニトラの分身では避け切れない広範囲での攻撃。電撃ブレスが今まさに放たれようとしていた。

 

『クソ……どうする……?』

 

 ユウの頬に汗が伝った次の瞬間──。

 

 ムシュフシュの胴体にマナ粒子の砲弾が直撃する。その威力は戦艦竜の放つマナ粒子砲にも匹敵するほどの威力。並みの飛竜なら消し飛んでもおかしくないほどの攻撃だった。

 

 

『グアアアアアアアアアァッ!?』

 

 

 体をくの字に曲げるムシュフシュ。爆風で吹き飛ばされる小型飛竜達。自由になった隙にツィルニトラが羽ばたき、戦艦竜から距離を取る。

 

『この威力……ヴァース・キャノンか』

 

 ツィルニトラの視界には、竜の竜巻に飛び込んできた竜機兵の姿があった。

 

『ギリギリ間に合ったな!!』

『上手くいきましたね!!』

 

 機体から聞こえる若い男女の声。ツィルニトラは思わず笑い声を漏らした。アシュタリアの者達ならば、彼らを送って来るだろうとは考えていたが……このタイミングで現れてくれるとは……と。

 

 彼らに感謝しなければならないな……ツィルニトラは、小さな声でそう呟いた。

 

『ククッ、良い一撃だったぞ2人とも』

『やるじゃんショウゴ!』

 

 

 エメラルド色の竜機兵を見ながら、彼らは……胸を躍らせていた。

 

 

 自分たちの魂を熱く焦がしてくれるほどの逸材が、好敵手(ライバル)がこの世界に現れたことに。

 

 

 

 

 




ギリギリ間に合いました……良かった。でもこうしてはいられません!ムシュフシュを倒してこの襲撃を終わらせないと!

次回はムシュフシュとの戦いです。協力して戦う2体の竜騎兵。しかし、戦艦竜であるムシュフシュには致命的なダメージが与えられません。そんな時、ショウゴがある作戦を提案して……? ち、ちょっとショウゴ!? そんな作戦本当に大丈夫なのですか!?

次回、「竜嵐の消える時」

絶対見て下さいね♡
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