竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第27話 約束

 〜ショウゴ・ハガ〜

 

 ムシュフシュを倒してから数時間後。地面へ落下したムシュフシュはトルテリア軍が回収。襲ってきた敵ではあるけど、ヨルムンガンド達と同じ古竜の生き残りであった事もあり、トルテリアが手厚く葬ると言っていた。

 

 残った飛竜達は、ヨルムンガンドとレビアタンが咆哮を上げると我先にと逃げていった。怯える彼らに少し同情してしまう。襲撃を切り抜けた俺達はと言うと、トルテリアの船竜用の港にいた。戦闘を終えたヨルムンガンドを休ませるために。

 

 うつ伏せになるヨルムンガンド。ハインズ達のワイヴァルスがそこへ補給物資を搬入していく。

 

 俺とティアマト、アシュタルは階段を降り、通路へと出ていた。ツィルニトラ達に別れを告げる為に。

 

 ヨルムンガンドの顔を横に見る通路。彼女のバイザーにボワリと光が浮かび、ツィルニトラへと視線を向けた。

 

"ツィルニトラ女王……本当に申し訳無い。妾の甘さ故に貴国を危険に晒してしまった"

 

 ヨルムンガンドを見上げるツィルニトラがふっと笑みを浮かべる。竜機服を着た彼女は、なぜか晴れやかな顔をしていた。

 

「気になされるなヨルムンガンド殿。貴殿が何もしなくとも、いずれあの竜は我らを襲ったであろう」

 

"そうだよ〜ヨルちゃん。レビアタンは可愛いからクソムシュちゃんが狙って来たかも!? あんなジジイお断りだけど〜"

 

 ゲートの外……トルテリアの空を気持ち良さそうに泳ぎながら、レビアタンはクククと笑う。微笑みを浮かべたままその光景を見ていたツィルニトラは、アシュタルへと視線を向けた。

 

(ゆえ)に責任の所在は不問としないか? 我らトルテリアはアシュタル殿達のお陰で救われた。これは紛れもない事実だ。それで良いではないか」

 

「しかし……」

 

 申し訳なさそうな顔をするアシュタル。ユウは、そんな彼女に向かってニカリと笑みを浮かべる。

 

「ツィルはこんな顔してるけどさ〜ショウゴ達が助けに来てくれる前は結構不安にしていたぜ? だからツィルの本音だと思うよ、王女様」

 

「ユウ殿……お優しいお言葉をありがとうございます」

 

 アシュタルが深々と頭を下げる。王女に頭を下げさせてしまったからか、ユウは両手をブンブンと振った。

 

「いやいや! ほら! ツィルは結構誤解されるタイプなんで!」

 

「やめよユウ。そのような事を言うのは」

 

「え? だってさ、精神リンクで」

「やめよ」

 

 張り付いたままの顔でツィルニトラが否定する。彼女が否定するのを怪訝な顔で見つめるユウ。ユウのヤツ……ツィルニトラが面子を守りたいのに気付いていないのか?

 

 2人を見ていたティアマトが吹き出してしまう。

 

「ぷっ、くふふ……す、すみません! 仲が良さそうなのでつい……!」

 

 ツィルニトラはジトリとユウを睨むと、また元の威厳ある顔付きに戻る。そして、ティアマトの手をそっと取った。

 

「ティアマト姫。貴殿の力、しかと見させて貰った」

 

 ツィルニトラがティアマトと俺をゆっくり見渡す。

 

「姫もショウゴ殿も素晴らしい才に満ち溢れている。もう一度礼を言おう。助けてくれて……ありがとう」

 

 優しく、だけどその威厳を崩さず微笑むツィルニトラ。ティアマトは両眼にウルウルと涙を溜めた。

 

「ツィルニトラ様……私に才能などというお言葉は恐れ多いです……」

 

「何を言う。人を見る目無くして女王は務まらぬ。姫、戦える事を楽しみにしているぞ? 同じ竜機兵として、共に全力を尽くそう」

 

「……はい! ありがとうございます!」

 

 ティアマトは自分にできることを探してずっと悩んでいたからな。あんなにもみんなを魅了するツィルニトラから認められて……嬉しかったのかも。

 

 俺も、ユウに言わなきゃならない事があるよな……。

 

「あ、あのさ……ユウ」

 

 ユウへ向き直る。俺は、再会した時にユウへ言った言葉を思い出してバツが悪くなり、目を逸らしてしまう。そこから、飛竜達との戦いの中で思った色々な事が自分の中で渦巻いた。

 

「なんだよ?」

 

 だけど、言わなきゃならない。これは俺の中の気持ちを言葉にする事だ。俺にとって大切な……だから俺は、素直に思う事をユウへ告げることにした。

 

 

「俺は絶対に愛機を変えない」

 

 

 突然そんな事を言われたからか、不思議な顔をするユウ。しかし、すぐに何の話か分かったようで、真剣な顔で俺の眼を覗き込んた。

 

「何でそう思うんだ?」

 

「俺とお前は違う。お前にとって機体を乗り換える事が正解でも、俺にとっては違うんだ」

 

 ずっと言葉にできなかったこと。ずっと言いたかったこと。バトリオン・コアの日本大会の後にユウから言われた「勝つために機体を乗り換えろ」という言葉。ずっとモヤモヤしていた。自分が否定された気がして、ユウに負けたという事実が……ヤツの方が正しいと突き付けている気がして。

 

 だけど今、俺は思う。

 

 ティアマトへ目を向ける。ティアマトは、俺にとって大事な事をもう一度教えてくれた。自分にとって愛機という存在が、なぜ大切なのかを。

 

 一緒に強くなって、一緒に戦って、一緒に勝つ。そこには想いがある。俺から機体への想い。そして……ティアマトから俺への想い。それがあるから俺は戦える。それを俺自身が否定してしまったら……俺は戦えないんだ。

 

「だから」

 

 拳を握り締め、ユウの胸元へ突き出す。これは俺の宣言だ。俺が俺であるために絶対に言わなきゃいけない事だ。

 

「俺は……俺とティアマトは、お前達に勝って優勝してみせる。絶対に」

 

 今俺が心から思うのはこの言葉だ。俺はティアマトと一緒に優勝する。ユウがその壁になるなら……最高だ。彼女への誓いを果たす事が、俺のリベンジを果たす事にもなるから。

 

 

「証明してやる。俺の道は間違いじゃないって」

 

 

 ユウは、不敵な笑みを浮かべるとズイッと顔を近付けてみた。

 

 

「やってみろよ? 俺()は負けない。本戦に上がってこなかったら許さないからな」

 

「ああ」

 

 ユウが俺の胸をトンと叩く。楽しみだと言わんばかりの笑顔。本気で俺と戦いたいと思っている顔。ユウもツィルニトラも、俺とティアマトと戦いたいと思ってくれている。それは素直に……嬉しかった。

 

「さて、補給は終わったようです。行きましょう2人とも」

 

 アシュタルに言われ、最後に別れを告げて俺達はヨルムンガンドの中へと戻った。

 

 

 そうして俺達は別れた。

 

 

 再会した時、本気で戦うために。

 

 

 課題は山積みだけど、何をするべきかは見えた。見てろよ、今度会うときはお前たちの度肝を抜いてやる。

 

 

◇◇◇

 

 

"じゃ、ヨルちゃんを国境まで送ってくね~!!"

 

 

 レビアタンとドレイガル達がヨルムンガンドと編隊を組む。ツィルニトラがガラバリィ大臣へ指示を出すと、港に残ったトルテリアの者達は慌ただしく撤収作業を始めた。

 

 兵士達が行き交う喧騒の中、去っていくヨルムンガンドを見送るツィルニトラ。彼女は、周囲の様子をうかがってからユウの手を握った。

 

「楽しみだな、ユウ」

 

「あと10ヶ月、あの2人ならもっと強くなってるはず。待ちきれないぜ〜!」

 

 そう、2人は楽しみなのだ。今回見せたショウゴの機転と、ティアマトの力……彼らは成長すれば、必ず自分達に匹敵する力を持つようになると。彼らはそう感じていた。

 

「ユウに聞きたい事がある」

 

「ん?」

 

「ショウゴ殿は『絶対に愛機を変えない』と言っていたが、何かあったのか?」

 

 ユウは肩をすくめた。

 

「元の世界でプレイしてたゲームでさ、ショウゴは乗っている機体を頑なに代えなかったんだ。だから、アイツがもっと強くなれるよう助言した」

 

「ふぅん……」

 

 ジトリと睨むツィルニトラ。その顔を見てユウはふっと笑みを浮かべる。

 

「心配しなくてもツィルから乗り換える気なんてないって。ツィルは最高の竜機兵だからな!」

 

「当たり前だ。女王の私がありながら浮気など……決して許さぬ」

 

「怖えぇ……!?」

 

 ツィルニトラはクルリと振り返って扉へ入っていく。怒っているような口調であったが、彼女の口元は緩んでいた。

 

「待てってツィル〜!」

 

 ユウがツィルニトラを追いかける。彼女と出会った事によって……ユウも、ショウゴの気持ちが分かるようになっていた。

 

 しかし、彼は敢えてそれをショウゴへ伝えなかった。

 

 全てはユウの目的の為。最高の舞台で、最高の機体であるツィルニトラへ乗り、最高のライバルである2人を迎え撃つ。

 

 

 ユウ・シライにとってもそれは、最もワクワクする瞬間だった。

 

 

 

 

 

 




ツィルニトラ様との約束、ショウゴからユウさんへの誓い……。今回の訪問で、私たちは少し前に進めたかもしれません。ここからさらに頑張らないと!!

 次回は第一部の最終話です。アシュタリアへ帰った私たちの日常。ショウゴは私の事を気にかけてくれているみたいです。私も勇気を出して……ほんのすこし、前に進もうと思います♡


次回、第一部最終話「竜の姫に俺は乗る!」


絶対見てくださいね♡
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