竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第3話 戦闘中に変な声出すなよ!?

『姫様はこちらへ! 早く!!』

 

 銀色の機体に案内されるように建物を出た俺達。扉を抜けるとその先には森が広がっていた。

 

「この森、とんでもなくデカいぞ……」

 

 森の木々はロボットになったティアマトよりもさらにデカい。それがいくつも並び立つ様子は圧巻だ。しかし、そんな感動を打ち消すように森の中を咆哮が響く。

 

「グオオオオオオォォォ!!!」

 

 森の奥から聞こえる戦闘音、何かを薙ぎ倒す音。さっき、モンスターが近付いていると言っていたが、既に接敵しているみたいだ。

 

「なぁ、ヒュドラムってなんだ?」

 

『ヒュドラムは多頭竜です。私達のように知能が発達せず、人の姿へ進化しなかったもの……私達はそれらをモンスターと呼んでいます』

 

 モンスター? この世界だと竜の事をそう呼ぶのか? ていうか、その理屈でいくとティアマトって竜なのか? 人の姿もこの姿も全然竜っぽくないんだけど……。

 

 

「ギュオオオオオオオオオオオォォォ!!!」

 

 

 思考を遮るように一際大きな叫び声が聞こえ、銀色の機体がこちらへ吹き飛ばされてきた。

 

『ショウゴ! あの者を受け止められますか!?』

 

「やってみる!!」

 

 ペダルと両手の魔法陣を操作し、隣にいた女性の機体を突き飛ばす。そして、飛んで来た機体をティアマトの両腕で抱き止めた。

 

『う、ひ……姫様? 搭乗者は無事に……?』

 

『はい。やられた者は?』

 

『私が見ただけでも5機が戦闘不能になりました。うっ……規格外のヒュドラムが2体おります。1体目はなんとか追い払いましたが、2体目が……姫様は早く撤退を……』

 

 熟練の戦士のような、壮年の男性の声。普段なら強そうな声をしているであろう男は、弱り切っている様子だった。コクピット内にティアマトの声が響く。

 

『ショウゴ、お願いします。力を貸して。このままヒュドラムを倒さなければ、死者が……』

 

「あの声の主を倒すって? そんなの……」

 

 ……あれ?

 

 初めての戦闘で、モンスターがいるって言うのに……不思議と俺、落ち着いてる? そりゃ怖いけど、全く動けないほどじゃない。なんでだ?

 

〈解。搭乗者は今、この世界の住人であるティアマトと精神をリンクさせています。戦闘耐性の同期により未知への恐怖、戦闘への不安は緩和されています〉

 

「マジかよ。精神接続って言ってたけど、そんな事まで影響受けるのか」

 

 目を閉じてみると、俺の中にティアマトの感情が伝わる。悲しみ、焦り、怒り……そして、誰かを守りたいという気持ち。

 

 

 それを目の当たりにして、俺は……。

 

 

「俺は……」

 

 

 逃げ出すような気にはなれなかった。

 

 

 なりたくなかった。先ほど見たティアマトが歩いて、動いて、喜んでいた時の事を思い出して。

 

 ここでティアマト達を見捨てて俺だけ元の世界へ返せっていうのも気分悪いしな。

 

 相手はモンスターだ。人じゃない。せっかく本物のロボットに乗れたって言うのに、ここでビビって戦わないようじゃバトリオン・コアのランカーとしての名が泣くからな。

 

「……いいぜ」

 

『ほ、本当ですか!? ありがとうございます!』

 

 嬉しそうな彼女の声に少しだけ胸の奥が熱くなった。さっき感じた彼女の内面。誰かに傷付いて欲しくないという想い……それは本物だと俺は思う。変な子だけど、繋がった事で少しだけ彼女の事が分かった気がする。

 

「……っと、それより仲間がいるんだろ? 撤退指示出してやってくれ」

 

『ハッ!? そうですね……!』

 

 ティアマトが銀色の機体に肩を貸して起き上がらせ、2機に向かって指示を出した。

 

『ドラムとダーナは負傷者の救護を。ヒュドラムは私とショウゴが倒します』

 

『ひ、姫様が……!?』

『しかし……!?』

 

 

 狼狽えるように心配する男女の兵士。ティアマトは、彼らの機体を抱き起こすと、安心させるように言った。

 

 

『大丈夫。私にはショウゴがいます。ショウゴはすごいのです! バトリオン・コアでチーター(・・・・)が出ても狩ってしまうほどの腕前なのですから!』

 

 バトリオン・コアのチーターの話? 確かにチーター……「データを不正改造したプレイヤー」には遭遇した事あるけど……そんな事も知ってんのかよ。

 

「AIに分かるか?」

 

〈質問事項はティアマト・リ・アシュタリアの私的記憶領域に関わる為お答えできません〉

 

 聞きたかったらティアマトに直接聞けってことか。

 

 不思議に思う俺をよそに、兵士の2機も困惑したように顔を見合わせた。

 

『チーターとは?』

『また姫様は訳の分からない事を……』

 

『なんですかその反応は! その時のショウゴは本当に……コホン! それより早く! 王女の命令を聞かぬとあらばそれなりの考えがありますよ!』

 

 ピシャリと言い放つ彼女。ドラム機とダーナ機は渋々と言った様子で森の中へ走って行く。凛としたティアマトの声。それは先ほどまでの彼女からは想像もできない姿だった。

 

 その時、再び森の中から雄叫びが聞こえた。空へと放たれる稲妻。突然の閃光に、周囲は真っ白な光に包まれる。

 

『電撃ブレスまで? ただのヒュドラムではありませんね……!』

 

 他の兵士達は今も戦ってるみたいだ。早く行かないとな。

 

 

「行くぞティアマト!!」

『はい、ショウゴ!!』

 

 

 ペダルを踏み込み、背中のスラスターを起動する。一気に跳躍し、俺達は森の奥へと飛び込んだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「ギュオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 

『想像よりも……ずっと大きい……です』

 

 

 雄叫びを上げる敵の姿に、ティアマトが絶句する。森の奥にいるヒュドラム。それは黒い体に力強い4本の脚、7本の頭を持つ化け物だった。

 

 ティアマトの言う通り……まさしくモンスターのような造形。全高だけならティアマトの1.5倍くらいだけど、全長なら何体分だ? 普段の俺なら見ただけで失神してしまうだろう。今も怖くないと言えば嘘になる。

 

〈遠ざかっていく熱源体を感知。1体は逃走したようです〉

 

「逃走? あの兵士達が追い返したのか」

 

 目線だけで奥の機体達を見る。先程の2機が他の機体を抱き起こしている。中には手足を失っている機体も……7機でやっと1体追い返せるほどの強敵ってことか。

 

 ……だけど今、俺は平常心で、ティアマトに乗っている。それも、「脳への操作方法の書き込み」とかいうので、今の俺は完全に「バトリオン・コアの操作感覚」でティアマトを操作できる。自分の力を完全に発揮できる状態でだ。

 

 それなら俺は……やれる。

 

 自分に言い聞かせる。俺はロボなら誰にも負けない、大会でアイツ(・・・)に負けた時……もう二度と負けないと誓っただろ。

 

 深呼吸し、自分に言い聞かせるように、ティアマトへ声をかける。

 

 

『安心しろティアマト。もうお前の体の事は理解した。俺()は、絶対に負けない」

 

 

『〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡ッ!?』

 

 

 なんだ!? なんか急に変な感覚が……!?

 

 

〈竜機兵ティアマトの精神状態に異常発生。極度の興奮状態にあると思われます。精神リンクシステムにより機体性能を引き上げます。機動性5%上昇。出力5%上昇〉

 

 

「なんだよそれ!?」

 

 

 そう思った瞬間、ヒュドラムが俺達の存在に気付いて襲いかかった。7本の頭が上下左右から押し寄せて来る。

 

 

「グルオオオオオオオオオオォォォ!!!」

 

 

「言ってる場合じゃないか!」

 

 ペダルを踏み込み、機体をバックステップさせる。着地と同時に左へ。

 

「なんだこれ……!? さっきまでと反応速度が……!!?」

 

 体に猛烈なGがかかる。背中のスラスターの反応が断然速いぞ……!?

 

 

『はぁはぁ……!? ショウゴ……私を……私を導いて……♡』

 

 

 ティアマトは熱に浮かされているような声だけど……AIが言っていた能力上昇の効果か!? 

 

「ぐぅ!?」

 

 急ブレーキをかけてヒュドラムの食らいつきを回避する。再びスラスターをふかしてバックステップ。やっぱりすげぇ……バトリオン・コアの時の感覚よりもずっと。ティアマトは自由に体を動かせないって言ってたけど、本当は凄い機体なんじゃないか?

 

「ティアマト! 反撃するぞ!!」

 

『はぁ、はぁ……うっ♡ すごい……!』

 

 興奮しているのかまともに会話出来ない様子のティアマト。彼女の代わりにAIへ武器の在処を聞く。

 

 

「補助AI!! 武器は何かあるか!?」

 

 

〈解。背面にストーム・ブレード。両腰にワイヤークロー、両腕にヴァース・ショットが装備されています。脳内へ情報を送ります〉

 

 頭の中に装備の位置と武器性能がよぎる。この状況、牽制で近接戦をするにはリスクがデカい。実質俺達だけで複数を相手にすることになるからな。なら、遠距離攻撃と機動性で攻めるしかない。

 

「ヴァース・ショットを使う!!」

 

 脳裏にヴァース・ショットの展開方法が浮かぶ。左手の魔法陣を左へ15度回転、親指で手元へ浮かんだ文字をタップすると、ガコンという音と共に左腕のハッチが開いた。

 

 

〈左腕ハッチオープン。いつでも発射できます〉

 

 

「グルオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 展開した瞬間、7つの首の1つが大口を開けて襲いかかって来る。俺は、その口めがけてヴァース・ショットの銃口を向けた。そのまま魔法陣を握りしめて思い切り手前に引く。

 

『ひうっ!?』

 

 間の抜けたようなティアマトの声。左腕から無数の光の弾丸が発射される。その弾丸が直撃した瞬間、ヒュドラムの首の1つが爆発し、跡形もなく吹き飛んだ。

 

 

「グギャアアアアアアアアアアァァァァァァァァァアアアッ!!?」

 

 

 巻き起こる爆風。その威力にヒュドラムは大きくのけ反り、大樹に体を激突させた。

 

『ひ、姫様……?』

『ヴァース・ショットであんな威力が出るなんて……』

 

 兵士達の声が聞こえる。やっぱりだ……ティアマトは他の機体とは何かが違う。彼女の自己認識以上に。そんなティアマトに乗って、振り回されるだけとか無いだろ、俺。俺がティアトの全部を引き出してやる……!!!

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!」

 

 

 悲鳴を上げる残り6つの首。目を血走らせた首が同時に俺達へと襲いかかった。

 

「ティアマト! 右へ飛ぶぞ!!」

 

『へ……!? ひっ!?』

 

 コクピット内で立ち上がり、全体重を乗せた状態で両手の魔法陣を手元へ引き寄せる。同時に右のぺダルを勢いよく踏み込み、機体を右へ飛び込ませる。スゲェ! 思った以上の反応速度、加速!! 俺まで自由な感じがする!! これなら……勝てるぞ!

 

 

「グギャアアアアアアアアア!!!」

 

「当たるかよ!!」

 

 力一杯魔法陣を引き込み、機体各部の姿勢制御スラスターを展開。空中でティアマトの姿勢を制御し、ヤツらの喰らい付きを回避する。左脇をすり抜ける3つの首。右腕の装甲にヒュドラムの鱗が掠め、機体全体に振動が走る。半歩遅れていたら食いつかれていたな……だけど、そのおかげでヤツに隙が生まれた。

 

 並んだ3つの首。さっきの一覧にあったあの武器を組み合わせて反撃する。ティアマトの出す威力なら一網打尽にできるはずだ……!!

 

「うおおおおお!!!!」

 

『ショウゴ……!? 激しっ……!? 激しすぎますぅ……♡』

 

「集中できないから声抑えてろ!!」

 

 興奮のあまり思わず声を荒げてしまう。空中でスラスターを噴射して再び体勢を立て直し、両腰に装備されたワイヤークローを発射する。

 

「グギャアアッ!?」

 

『んふっ……♡ くっふ……♡』

〈竜機兵ティアマトの興奮値が上昇。機動性さらに10%上昇〉

 

「うるせぇ!!」

 

 ワイヤークローがヒュドラムの首の1つに突き刺さる。手元の魔法陣を引き、閉じていたクローを展開。しっかりと首の根元に固定されたのを確認した瞬間ワイヤーが張りつめ、延伸力を感じながら着地する。着地と同時に再びスラスターを全開にする。背後から猛烈な風が巻き起こり一気に加速した。

 

 

『ん゛うッ♡』

 

 

 ティアマトの声と同時に、魔法陣に差し込んでいた指が何かにギュッと締め上げられる感覚がした。

 

「な!? キツ!? 持ってかれる……!?」

 

 襲いかかる重力と、指を締める圧力に耐えながらペダルを踏み込む。ヤツらの首をすり抜けると同時に跳躍。空中で一回転して着地した。ワイヤーが3つの首を締め上げる。悲鳴を上げるヒュドラムの首達が、ティアマトの視界越しに見えた。

 

「ストーム・ブレード出せ!!!」

 

〈ストーム・ブレード展開〉

 

 AIの声がした後、翼の根本にあるハッチが開き、ストーム・ブレードの持ち手が右肩に現れる。それをガシリと掴んで一気に引き抜く。

 

〈嵐刃術式起動。刀身を展開します〉

 

 AIの声に合わせてストーム・ブレードに魔法陣が浮かび、風の刃が形成される。さっき脳裏に浮かんだ通り。これなら……!!

 

 跳躍とスラスター噴出を同時に行い、ヤツの頭上に飛び上がる。腰のワイヤークローが再びピンと張り詰める。直後全スラスターをオフに。体が浮くような感覚を味わいながらティアマトが落下する。ストーム・ブレードを構え、俺はジャンプ斬りを放った。

 

 

「うおおおおおおおらぁああぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

 

 ストーム・ブレードの刃がヒュドラムに直撃する。魔法陣を通して手元に伝わる切断の感触。ワイヤーによって締め上げられた3つの首は、風の刃によってまとめて叩き斬られた。

 

 

「ギアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!?」

 

 

 森に轟く絶叫。身の危険を感じて後方に飛ぶ。着地した瞬間、残った4つの首が口を開いた。眩い閃光……さっきの電撃ブレスか!?

 

 

「ギュア!!!」

 

 

 放たれる電撃。バリバリと轟音を響かせながら俺達に向かう電撃が周囲を真っ白に染め上げる。

 

『ブレスが!? 退避しろ!!』

『しかしダーナ様!? まだ動けない者達が!?』

 

 悲鳴を上げる兵士達。クソ、避ければ兵士達が巻き添えを喰らう。どうする……?

 

 ふと視線を向けると、ヒュドラムの首が目に入った。ワイヤークローを突き刺した首。それが地面に転がっているのを。

 

「ワイヤークローを巻き取るには……これか!」

 

 右手の魔法陣を右へ20度回転させ人差し指と中指に力をかける。首に突き刺さったワイヤークローが急激に巻き取られ、切断したヒュドラムの首が手元に引き寄せられる。

 

「グオオオオオオァァァァ!!!」

 

「盾になってくれよ!!!」

 

 電撃ブレスが巻き取った首に直撃し、辺りを照らす。巻き起こる爆発。一瞬死んだかと思ったが……俺の意識はまだあった。閃光が止むと、目の前には黒焦げになった首が転がっていた。なんとかなったか……!

 

「グオォ!?」

 

 面食らうヒュドラムの首の付け根に照準を合わせ、ヴァース・ショットを連射。爆風で2本の首が空中に舞い上がる。

 

「うおおおおおおお!!!!」

『ま、マズイです!?♡ あ、ぁ……!!♡』

 

 一気にヒュドラムまで踏み込む。ヤツが放った反撃の牙を紙一重で躱し、ストームブレードでその首を跳ね飛ばした。

 

「ギィアアアアアアアアア!!?」

 

 空中を舞う最後の首。轟音を立てて倒れ込むヒュドラムの体。その瞬間、周囲の兵士達が一斉に声を上げた。

 

 

『あ、あの男、たった1機でヒュドラムを倒すとは……』

『なんという力だ……アレが本当に、ティアマト様の力なのか……?』

 

 

 ザワザワと響く声。なんて言ってるんだ? よく聞こえねぇ……。

 

 俺は、兵士達の声を無視して森の奥へと目を向けた。たしか、もう1体は逃げたと言っていたよな。

 

「逃げたヤツ、追いかけた方がいいか」

 

〈解。この場で追撃するのはオススメできません。敵の巣を探す事を提案致します〉

 

「ん? なんでだよ?」

 

〈ティアマトの精神状態では連続での戦闘には耐えられないと判断致します〉

 

 

『ショウゴ……ショウゴ……はぁはぁ……これ以上は……はぁ♡」

 

 

 ティアマトの声を聞いた瞬間、確かに戦闘は無理だなと思った。

 




〜ティアマト〜

さすがに私も慣れて来ましたよ……! あとがきですよね。

あとがきあとがき……え? お願いも? 分かりました!

初戦闘いかがでしたか? ショウゴの激しさに思わず私も昇……コホンッ! 気絶してしまいました。こ、これは慣れるまで大変かも……♡

次回は逃げたヒュドラムを追いかけるお話。ショウゴがなぜこの世界に召喚されたのか、私がなぜショウゴの事を知っているのかも分かるかもしれません。

次回、「激しいのが好みって何の話!?」

絶対見て下さいね♡
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