竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第31話 思わぬ新ルール

 竜闘の儀開催通知が来てから1週間後。

 

 俺達は戦艦竜ヨルムンガンドへ乗って、予選が行われるヲルスの領地へと入った。荒野の国、ヲルス家盟国(かめいこく)。荒野を生きる複数の部族がまとまってできたという国だ。

 

 竜機兵になったティアマトに乗って格納庫で出撃の時を待っていると、ヨルムンガンドのため息が聞こえた。

 

"チラホラ森や谷はあるが……荒野に砂漠とつまらん土地じゃのう"

 

 魔法陣を操作して窓の外へと目を向ける。モニターに映る景色。ヨルムンガンドの言う通り、ヲルスの大部分は褐色の大地だ。

 

 中央に広がる荒野。それを真っ直ぐに切り裂くような深い渓谷。西には森。北に砂漠はあるけど……。アシュタリアやトルテリアのように資源に恵まれている感じはしないな。

 

「ヲルスの人達はなんでこんなところに住んでるんだ?」

 

『国というものはそこで暮らす人々の歴史と一体となっています。割り切って新天地を目指すというのは難しいものですよ』

 

 ティアマトが教えてくれる。そんなもんかな……前の世界にいた時はそんなの考えた事もなかった。でも、普通のヤツはそうなのかも。いきなり他所で暮らせなんて言われてもすぐ適応できないか。

 

 感心しているとティアマトは「あ」と声を漏らした。

 

『す、すみません! 私がショウゴをこの世界に召喚したのに……』

 

「気にしてないって。俺はこの世界が気に入ってるし、むしろ感謝してるくらいだ」

 

『ショウゴ……』

 

 そう、ティアマトと接して1年。俺はここで生きると決めた。元の世界にいた時のように親に決められた訳じゃない。自分の意識で考えて、自分で答えを出したんだ。だから……向こうの世界にもう未練は無い。

 

「ほら、それより出撃するぞ」

『……はい♡』

 

 ティアマトが嬉しそうな声を上げる。そんな彼女に恥ずかしいセリフを言いそうになって、やめておいた。これから予選だからな。いつまでも気を抜いてる場合じゃないぞ。

 

「ハッチ開けるわよ!」

 

 俺達の会話が終わるのを待っていたかのようにライネさんが格納庫のハッチを開ける。彼女が親指を立てるジェスチャーをしたので、俺も魔法陣を操作してティアマトの親指を立てる。

 

 その時。通信が入り、ハインズの声がコクピットに響き渡った。

 

『予戦を突破するには協力も必要だ。だが、相手はよく見極めろ。裏切られる可能性もあるからな』

 

 予選はモンスター討伐による選別だ。日没までにモンスターを討伐して、ポイントの多い上位4ヶ国が本戦に出場できる。より強いモンスター、より多くのモンスターを倒したヤツが先へ進む。

 

 そうなると、ハインズの言うように協力しなきゃいけない場面も生まれるだろうな。モンスターの群れを1機で相手するのは流石に辛いだろうし。

 

 だけど裏切られて大物を横取り……なんてされる可能性もある。信用できるヤツを見極めて、必要があれば協力しよう。トルテリアのユウ達とも協力する必要も出るかもな。シャクだけど。

 

「分かってるってハインズ」

『決して油断致しませんから』

 

『そうだ。お前達なら……ん?』

 

 ハインズが通信の向こうでゴソゴソやっている。何かと思ってしばらく待っていると、今度はアシュタルの声がした。

 

『アナタ達の実力を皆に見せつけてあげなさい。きっと、ツィルニトラ様も余裕ではいられないはずです』

 

『お姉様……』

 

 コクピット内でティアマトのツインアイがジワリと滲む。精神リンクを通じてティアマトの嬉しい気持ちが伝わってきた。

 

『ティアマト、失敗を恐れてはダメですよ? 実力を発揮できればアナタは誰にも負けはしない。(わたくし)が保証致します』

 

『はい! 全力で戦います!』

 

『それと……ショウゴ』

 

「なんだよ?」

 

『この場にいない父に変わってもう一度頼みます。妹をお願いします。アナタも……気を付けて』

 

「任せとけって!』

 

 通信を切ってハッチの上に乗る。俺は、気合いを入れて叫んだ。これから俺達の戦場へ向かう為の言葉を。

 

 

「ショウゴ・ハガ! 竜機兵ティアマト! 発進する!!」

『行きます!!!』

 

 

 跳躍して翼を展開。風に乗って飛行する。振り返って手を振ると、ヨルムンガンドが前脚で答えてくれた。

 

 

「行くぜ! ティア!」

『はい! 絶対勝ちましょう! ショウゴ!』

 

 

 スラスターを全開にする。俺達は、指定されたポイントへと向かった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 数分飛行し、俺達はスタート地点に到着した。森林エリアに近い荒野。そこにポツリと球体が浮かんでおり、その周囲を囲むように様々な形状の機体が集まっていた。

 

 細長い機体、アルマジロみたいに丸い機体。4脚の機体や下半身が蛇みたいな機体もいる。

 

『あの機体……大きくないですか?』

 

 ティアマトの視線の先には大型の人型機が腕を組んでいた。全高はティアマトの1.2倍程度だけど、ガッシリとした銀色の装甲の影響か、この機体の何倍にもあるように感じさせる。それに加えて、大きな両拳……どこからどう見ても格闘機だな、アレ。

 

 銀色の竜機兵と目が合う。やば、観察してたのがバレたか? 気まずいな……。

 

 それとなく中央の球体に視線を戻して、横目で竜機兵達を観察する。他の竜機兵は、観察なんてする様子もなく開始の時を待ち続けているようだった。

 

「AI。このエリアに竜機兵は何機いる?」

 

〈索敵します。球体周囲に10機。別エリアの機体を含めると合計40機の機体が確認できます〉

 

 40機……この中から本戦に上がれるのは4機か。

 

『小さな国からも参加する者もいます。それほどまでに各国は竜闘の儀を重要視しているという事ですね』

 

 当然だけど全員本気で勝ちに来るってことだよな。なら、効率を優先するヤツらは相当いるはず。最初から本気出してかないと。

 

 そうだ。ユウ達は?

 

 もう一度周囲を見渡す。だけど黒い竜機兵……ツィルニトラの姿が無い。いるのは間違いないはずだけど、別エリアなのかも。

 

 

 周囲を見渡していると、球体がボワリと光り輝いた。中が眩しく光り、オカッパ頭の少年が映り込む。額に角を生やした少年。彼は幼い声でありながら、荘厳な口調で話し始めた。

 

『各国から集まった竜機兵と搭乗者の諸君。私は竜闘の儀を取り仕切る不老竜(ふろうりゅう)、ウルべルトである。これより竜闘の儀、予選に関する規定を伝える』

 

「不老竜?」

 

 疑問に思うと、AIが補足を入れてくれる。

 

〈解。不老竜人種は竜人の中で、稀に生まれる長寿の個体です。不老竜の特徴は額に角。さらに不老竜はある一定の年齢から老いる事がなくなります〉

 

 AIがさらに補足してくれる。そんな不老竜達は竜闘の儀を管理する役割を負うらしい。正直、こんな子供が取り仕切ってるとは思わなかったな。いや、子供ってだけで実際はすごい年上なのかも。

 

 ウルべルトという少年が予選のルールを話し出す。

 

 時間は明日の日没まで。狩りをしていいのは日中だけ。夜の間は行動してはならず、行動した者は運営によって補足され、即刻退場になる。

 

 この荒野エリアを中心に、渓谷エリア・森林エリア・砂漠エリアの4エリアを舞台に予戦は行われる。各エリアへの移動は自由。

 

 モンスターには得点が割り振られていて、各機体はそれを狩ってポイントを集める。そして、終了時に合計得点が高い4ヶ国が本戦に進む。

 

 ……いかにも競技って感じだな。でも、ハインズに聞いていた通りの内容だ。これなら──。

 

 

『ただし、今回より2つの新ルールを儲けた』

 

 

 新ルール? そんなのがあるのか。

 

 ウルベルトが紙を取り出し、新ルールを説明する。

 

『1つ。大型モンスターの討伐時は多くの攻撃を加えた物から順にポイントが加算される。協力して討伐した者達でポイントを分け合って貰う』

 

 ウルベルトが手をかざすと、水球に魔法陣が浮かび上がり、竜機兵達へ光が降り注ぐ。光に当たると、コクピットに「0pt」という表示が映し出された。

 

 

『今、諸君に施した魔法によって自動でポイントが集計される。我ら管理者の共有記憶領域にアクセスする事で現状の順位も確認可能だ。そして……2つ目のルールだな』

 

 ウルベルトがコホンと咳払いをして、真っ直ぐにこちらを見つめる。その表情はゾッとするほど冷たいものだった。

 

 

『他の機体を倒した者、降参させた者には、倒した竜機兵が獲得していたポイントを引き継いでもらう』

 

 

『え……!? そんなの! 妨害の域を超えています!』

 

 ティアマトの言う通りだ。そんなの何の為に……?

 

 ザワザワと騒ぎ出す参加者達。それを遮るようにウルベルトが補足を入れる。

 

『近年の竜闘の儀は本戦に上がる国が集中している。加えて、前2回は本戦に進んだ国が全て同じであった。これは問題だ。その格差を是正する為、試験的に規定を取り入れる。小国はこの機会を生かすように』

 

『マジかよ! 俺達にもチャンス来たぞこれ!』

『本戦上がればこっちのもんだよ!』

『ラッキー!! 絶対突破してやるぜ!!』

 

 ウルベルトが言った瞬間、一部の竜機兵達が騒ぎ出す。格差の是正だって? モンスター狩りに集中しすぎて不意打ちなんか受けたりしたら、せっかく掴みかけた本選への切符を失うってことかよ。

 

『そんなこと……』

 

 ダメだ。俺が弱気になればティアマトまで不安になる。妨害がある事なんて分かっていただろ。それが少し変わっただけだ。

 

「大丈夫だ。俺達なら」

『……はい♡』

 

 操作魔法陣がギュッと俺の指を締め付ける。それに応えるように魔法陣に差し込んだ指へ力を込める。精神リンクを通して、ティアマトが俺を信じてくれているのを感じた。

 

〈精神接続率110%へ上昇。共鳴領域に突入〉

 

 共鳴接続(バースト・リンク)も使える。緊張するな。イレギュラーな事があったとしても、俺達なら問題なく予選を突破できるはずだ。

 

 

『それではこれより竜闘の儀を開始する!!』

 

 

 ウルベルトの声で雄叫びが上がる。周囲の竜機兵は、一斉に行動を開始した──。

 




〜ティアマト〜

そんな新ルールがあるなんて……協力も裏切りも起きて大変なことになりそうです!

次回、得意なフィールドで闘うため森へ向かう私達。そんな私達に声をかける人が……?新たな出会いの予感です!

次回、ハーモラの竜機兵

次回も絶対見て下さいね♡
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