竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第32話 ハーモラの竜機兵

 開始宣言と共にティアマトを飛翔させる。

 

 周囲を確認すると、竜機兵は俺達には目もくれずに森林エリアを目指していた。開始早々仕掛けてくるヤツもいるかと思ったが、流石にそれは無いか。ウルベルトの説明した内容だと、ある程度モンスターを倒してから竜機兵を襲った方が有利に運べるしな。

 

 なら、自分達が有利になるよう立ち回るだけだ。

 

「森林エリアへ向かうぞ」

 

『私達は森での戦いが得意だから……ですよね?』

 

「そう、それを生かさない手は無いよな」

 

 

 この世界の木々は竜機兵を覆い隠すほど巨大だ。慣れていない参加者じゃ森に潜むモンスターはすぐに見つけられないはず。反面、俺達の国はタリア大森林に囲まれたアシュタリア王国。木に囲まれた地形での戦闘訓練も散々やってきた。慣れた場所で戦うのは常套手段だぜ。

 

 スラスターを最大出力に。遅い機体を追い越して森へ向かう。しかし、4足歩行の機体や、細見の機体は移動速度が速い。俺達を追い越していく機体もあった。

 

『あ! 追い越されちゃいますよ!?』

 

「別にいいさ。今は焦る時じゃない」

 

 各機体を観察する。見たところ、遠距離系の武装を持つ機体は少ないみたいだ。さて、他の竜機兵のお手並み拝見といくか。

 

『行くぜ行くぜ行くぜ~!!』

『優勝は私が貰うよ!』

『若いモンには負けん!!』

『速攻で予選突破してやる!!!』

 

「お、おい……いきなり突っ込むのかよ」

 

 地上にいた4機の竜機兵は、一切周囲を警戒せず森の中へと突撃していく。あの感じじゃ索敵もしてないぞ。森での戦闘は敵から先制を受けやすいってのに……大丈夫かよアイツら。

 

 

『あ~あ。あんなのじゃ予選突破どころか即リタイアね』

 

 

 甲高い声が聞こえて振り返る。すると、上空に銀色の竜機兵が見えた。ゆっくりと降下するソイツは、俺達の隣までやって来て、動きを止めた。

 

『ふふん! でも、アンタ達は違うみたいね!』

 

 この機体……スタート地点にいたヤツだな。他の機体よりも大型だったから覚えてる。

 

 全身を鎧で覆ったような姿。シルバーの機体色に青い指し色。ティアマトよりも背が高く、両拳にガントレットのような装甲があるが……他に装備の類は無い。格闘主体の竜機兵か。

 

『ヴィヴル、攻撃されるかもしれへんのに話しかけるなって』

 

 竜機兵から男の声が聞こえる。この話し方……関西人か? 声から考えるに、年齢も俺よりずっと上みたいだ。

 

『大丈夫よカズマ。この人達アシュタリアの人達よ? そんなことする訳無いわ』

 

 ヴィヴルと呼ばれた竜機兵はチカチカと黄色いツインアイを点滅させ、女の子の声を発した。舌足らずな幼い声だ。竜機兵だとこんな見た目なのに子供なのか? 変わったヤツもいるもんだな。

 

『アシュタリアのショウゴとティアマト姫でしょ? ムシュフシュ退治の一件は知ってるわ。伝説級の古竜を倒すなんてすごいわね、アンタ達』

 

 ティアマトがコクピットにだけ響く声で話しかけてくる。

 

(空賊の件はともかく、ムシュフシュの一件は情報が広まっていないはず。この方達の国はよほど有能な間者(スパイ)がいると思われます)

 

 って事は国としての力が強いって事か。そんな国の竜機兵……かなりの実力者かも。

 

『私はハーモラのヴィヴル。このおじさん声の人は搭乗者のカズマよ』

 

『誰がおじさんや!』

 

『だって事実じゃない』

 

『ぐ、ぬぬぬ……このガキ……!?』

 

 なぜが登場者と竜機兵が揉めている。困惑してその様子を見ていると、AIが補足を入れてくれた。

 

〈天空国家ハーモラ。大陸の南に浮かぶ国です〉

 

 天空国家ってそんな国があるのかよ。想像しただけで見てみたくなる国だな……い、いや。今はそんなこと考えてる場合じゃない。

 

『アンタ達、私達と組まない? ここの森って一筋縄じゃいかなそうだし』

 

 ヴィヴルという名前の竜機兵がビシリと指を差してくる。協力……か。開始早々そんなシチュエーションに出くわすなんてなぁ。

 

 どうする? 得意な森林エリアでわざわざポイントを分配する意味はあるのか? だけどなぁ……モンスターが多すぎて1機じゃ対応できない場合もある。後から協力しようなんてむしのいい話は乗ってくれないだろうし……。

 

『ね~! 協力するのしないの!? あまり時間食いたく無いんだけど!?』

『むこうにも考えがあるんやから急かすなって』

 

 また言い合いを始めるヴィヴルとカズマ。なんか調子が崩れるな……。

 

「ティアマトはどう思う?」

 

『ハーモラは調和と平穏を好む国……国柄から信用できるかとは思いますが……』

 

 ティアマトも迷ってる感じか。なら、ちょっと吹っ掛けてみるか。

 

「協力って言うけどさ。初対面の相手だろ? ポイント獲得してから襲ってくる可能性もある。即決はできないな」

 

『ふぅん? 別に私はどっちでもいいけど? 勘違いされたままはシャクだから教えてあげる』

 

 ヴィヴルは腕を組んでツンと顔を逸らした。ゴツい機体に女の子の仕草……なんだかチグハグな機体だな……個性といえばそれまでだけど。

 

 というか、こういう動きをしてるってことは精神リンクを使って搭乗者に指示を出してるって事だよな? それだけ精神の接続率が高いって事だ。無意味なように見えてとんでもなく高度な技術だぞ。そんな実力を持つヤツらってことかよ。

 

 ヴィヴルは俺達をビシリと指した。

 

『襲う襲われるの話ならリスクは私達も同じ。しかも、私達はアンタ達の情報を知っていると開示した上で接触したの。これって誠意だと思わない?』

 

「確かに……そうだな。わざわざムシュフシュの事を言うメリットが無い」

 

『ま、俺らは効率よくポイント稼ぎたいってだけや。未練はないから断って貰っても構わんで』

 

『せっかく私が交渉してるんだからその言い方は無いでしょ!?』

 

 カラカラと笑うカズマ。それにヴィヴルが文句を言い出し、また言い合いを始める2人。この雰囲気、嘘をついている風には感じないな。

 

『……ショウゴ。私は彼女達を信用しても良いかなと思います』

 

「だな。俺もそう思う」

 

 俺達の答えを聞いて満足したのか、ヴィヴルのツインアイがキラリと光る。

 

『決まりね。森林地帯はモンスターがたんまりいるはずよ。考えなしに入ったら集中砲火を浴びて即リタイア。いい判断だと思うわ』

 

 ヴィヴルがそう言った時、森から叫び声が聞こえた。

 

『ぎゃああああああああ!!』

『どっから攻撃してくるんだよ!?』

『に、逃げなきゃ……!?』

『どけ! ワシが先……じゃああああ!?』

 

 声から察するに、さっき森に入っていった奴らだな。ヴィヴルの言う通りの展開になったみたいだ。

 

「AI、魔力感知術式頼む」

 

〈術式を起動します。森林内へ複数の魔力反応を感知。熱源感知術式を併用。生体反応あり〉

 

『ショウゴ、森の入り口にモンスターの影が見えました』

 

 モニターに映る森の入り口。ティアマトの視界が魔法の影響でサーモグラフィーのようになると、木々の隙間に青い何かが蠢いているのが見えた。竜のような角を持っているけど、体に手足は無くて大蛇のようなモンスターが。

 

〈蛇竜ナーガロン。儀式データベースへ接続。各個体100ポイントが割り振られているようです〉

 

 数は相当多そうだな。ヴィヴルの武装を聞いて役割分担するのが無難か。

 

「ヴィヴルの装備を教えてくれ。俺達は森の戦いに慣れてる。ポイントが稼ぎたいなら荒稼ぎさせてやるよ」

 

『オッケー♪』

『ショウゴの指示に従うで』

 

 俺達は、森に入ってからの動きを打ち合わせした。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 ──数分後。

 

 

『今だ!!!』

 

 ヴィヴルと共に森へ突撃する。俺達に気付いたのか、木々の隙間に潜んでいたナーガロン達が俺達に攻撃を始めた。

 

『ギシャアアアアアアアアア!!!』

 

 ナーガロンが何かを放つ。回避すると、俺達の後方にそれが直撃する。直後、ジュワリという音と共に木に穴が空いた。

 

『うおっ!? 危ないやんけ!?』

『カズマ! ビックリしてないで追撃に備えなさいよ!』

 

 ……なんか、戦闘中も賑やかなヤツらだなぁ。

 

『見て下さいショウゴ! 大木が!?』

 

 ティアマトの声で大木へ目を向ける。強靭な表皮を持つこの世界の大木が、ドロドロに溶けてしまっている。これは……溶解液か?

 

 ヤバい攻撃してくるなアイツら。これは早く対処した方がいい。ヴィヴル達の攻撃ならこの地形を利用して広範囲攻撃ができるはず。

 

「ヴィヴル! 右前方の大木を頼む!! 溶解液の影響で脆くなってるはずだ!」

 

『まかせて!!』

 

 ヴィヴルが大木に向かい、拳を構える。銀色の右腕に集約するマナ粒子。拳のガントレットと右肘の装甲が展開し、マナ粒子が爆発を引き起こす。

 

 

『ガイストブレイカー!!!』

 

 

 少女の絶叫。瞬間、ヴィヴルの機体後方で爆風が巻き起こり、巨大な拳が放たれる。その威力は凄まじく、竜機兵を優に超える大きさの大木を叩き折った。

 

『まだや!』

 

 カズマが叫ぶ。ヴィヴルが放った衝撃波が幾重にも波を起こし、周囲の大木へ直撃する。木々を巻き込みながら衝撃が波及していく。次々と破壊される大木達。無数の大木が倒れていく姿は、木々の津波が巻き起こっているように見えた。

 

「ギシャアアアアアアアアアアア!!!?」

 

 大量のナーガロンが大木の波に飲み込まれ、押し潰されていく。それと同時にモンスターの体から光が溢れ、ヴィヴルに吸い込まれていった。

 

『すごい威力……です』

 

 ティアマトが絶句する。あの技……威力だけでいけばフルチャージしたヴァースキャノン以上……竜機兵はガンダ◯のようなリアルロボット系だと認識していたけど、アイツらの一撃は間違いなくマジン◯ーやグレ◯ラガンに近いスーパーロボット系だ。

 

 武装以上の力を出せるのは間違いない。本気を出したらどんな風になるのか想像もつかない。やっぱりアイツらは相当な実力者だな。ここでやり合う展開にならなくて良かったぜ。

 

『やりぃ~♪ 見た見たカズマ!? 修行の成果出たわね!』

『こらヴィヴル! 戦闘中に気を抜くなといつも言っとるやろ!!』

 

 カズマが言った瞬間、攻撃を逃れたナーガロン達が一斉にヴィヴルへ狙いを定めた。複数の溶解液が同時にヴィヴルへ向かう。

 

『シャアアッ!!』

 

『わわわっ!!? まだこんなにいたの!!?』

 

 面食らったようなヴィヴル。彼女が紙一重で溶解液を回避する。が、雨のように発射される溶解液を前に徐々に逃げ場を失っていく。

 

 

『ちょっと! この体(・・・)じゃ避けきれないわよ!』

 

 

 ん? この体ってどういう事だ? 竜機兵の体ではってことか? それにしてもなんか違和感があるな……。

 

 

 まぁ、今はいいか。ここでヴィヴル達がやられたら次に集中砲火を浴びるのは俺達だ。ナーガロン達がヴィヴルを狙ってる間になんとかしねぇと。

 

 

「ティア! ヴァース・ショットだ!!」

『私達の出番ですね!!』

 

 

〈両腕装甲を展開〉

 

 AIの声で、ガチャリと両腕に銃身が展開する。背面の翼を開いてペダルを踏み込む。スラスターからマナ粒子が勢いよく噴射され、一気に加速。奴らの背後を飛行しナーガロン達へヴァース・ショットを浴びせていく。

 

「うおおおおおおおおお!!!!」

 

「ギシャアア!!?」

「ギアァァァ!?」

「ギィ!!?」

「ギシィアアア!!?」

 

 周囲を旋回しながら、姿を現したナーガロン達を狙い撃ちにしていく。上空から弾丸の雨を浴びたナーガロン達が吹き飛んでいく。ヤツらの体が光り輝き、ティアマトに吸い込まれていく。

 

〈モンスター討伐。ポイントを集計します〉

 

 ヴィヴル達に吸い込まれた光と同じ。この光がポイントを表しているのか。なら……。

 

「1体も逃すかよ!! 右後方に3体!」

『はい!!』

 

 ティアマトがクルリと身を翻してヴァース・ショットを撃ち込む。3体をまとめて貫通する銃弾。貫かれたナーガロンは絶叫しながら息絶えた。

 

『ショウゴ! 攻撃が来ます!』

「ああ!!」 

 

 ワイヤークローを撃ち込み急速巻き取り。無理矢理ティアマトの軌道を変えてナーガロン達が放った溶解液を回避。溶解液の射出方向からヤツらの位置を特定し、ヴァース・ショットを撃ち込む。

 

「ギジャアァ!?」

「ギィイイイ!!?」

 

「逃すなティア!!」

「実体剣で!!」

 

 ティアマトが実体剣を抜き、残ったナーガロンに投擲。脳天から実体剣が突き刺さったナーガロンは、声を上げる事なく大地へ倒れ込んだ。

 

 

『す、すご……ナーガロンをあんなに……』

『ヴァース・ショットって通常装備やったよな……?』

 

 

 全てを倒し終えた瞬間、AIの声が聞こえた。

 

〈ナーガロン撃破。数22。儀式規定により2200ポイントが本機に加算されます〉

 

『やりました!! 大量獲得ですよショウゴ!!』

 

『……そ、そうね! こっちも2100ポイントも稼げたわよ!』

 

 声を弾ませるティアマトとヴィヴル。お互い1機で突入していたら相当苦労してただろうし、いい感じにコンビネーション組めて良かったな。

 

 しかし喜んだのも束の間。ティアマトが不思議そうに呟いた。

 

『……それにしても、先ほど悲鳴を上げていた機体達が見当たりませんね』

 

 ティアマトが周囲を見渡す。確かにそうだ。先に飛び込んだヤツらがやられた形跡もない。逃げたのか?

 

『おいショウゴ! こっちきてくれ!』

 

 カズマに呼ばれて振り返ると、ヴィヴルが森の奥でしゃがみこんでいた。近くまで行くと、地面に竜機兵の足跡が。踏み荒らしたようなそれは、森の奥へと続いていた

 

『よりにもよって森の奥に進んでる……相当混乱してたみたいね』

 

 クソッ、他にどんなモンスターがいるか分からないってのに。

 

 ……仕方ない。

 

「助けてやった方がいいな。万一死人でもでたらヤバいだろ」

 

 ヴィヴル達と共に、俺とティアマトは森の奥へと向かった。

 




〜ティアマト〜

ショウゴが言っていたリアルとかスーパーってなんなのでしょう? ショウゴはすぐに知らない言葉を言いますね……博識です♡

 まだまだ予選はこれから。ヴィヴルさん達もすごい技を持っていますが私達も負けませんよ!

 ……それにしても先に突入した人達、どこに行ったのでしょう? なんだか嫌な予感がします。

次回、森の主

次回も絶対見て下さいね♡
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