竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第33話 森の主

 俺達は、先行して森へ入った竜機兵達を追って森の奥へ奥へと向かっていた。木々の隙間に潜むモンスターを狩りながら。

 

『ショウゴ! 奥にもナーガロンが!』

 

「分かってる!」

 

 ティアマトの声で機体を左へ。ワイヤークローを大木へ撃ち込み、スラスターを噴射。ナーガロンが発射した溶解液を回避し、一気にヤツの元へ。実体剣でその首をはね飛ばした。

 

「ギシャ!?」

 

『背後にも2体いるわよ!』

 

「サンキューヴィヴル!」

 

 倒したナーガロンの体を踏み台に跳躍。一回転してヴァース・ショットを展開。上下反転する世界でナーガロン達へ銃口を向ける。

 

『これで!!』

 

 ティアマトの声と共に連射されたマナ粒子の弾丸。それがナーガロンを飲み込み、ナーガロン達はその身を爆ぜた。

 

『ギィ!?』

『ギジャアぁ!?』

 

 着地した瞬間、AIが声を上げる。

 

〈300ポイント獲得。合計獲得ポイント3700ポイントへ到達しました〉

 

『こちら側には……もういませんね』

 

「ヴィヴル! カズマ! そっちはどうだ!?」

 

 木々の隙間からヴィヴルが手を振る。彼女の周囲には複数のナーガロンが倒れていた。向こうも上手く対処したみたいだな。

 

『少し偵察してくるわ!』

『ショウゴと姫さんは休んどけ!』

 

 ヴィヴルがスラスターをふかせて森の奥へ跳躍する。数秒もするとスラスターの音が聞こえなくなり、広い森の中に俺達だけが残された。

 

 俺達の周囲にも敵の気配は無し。はぁ……やっと気を抜ける。森に入ってから戦闘続きだったしな。流石に気を張りすぎたか。

 

 シートの下をまさぐって皮袋を手に取る。その中から古竜鋼(ドラグナイト)を加工して作られた水筒を取り出し、フタを開けて一口飲む。口にしてみるとすぐに甘みと酸味が付いている事に気が付いた。すごいスッキリした味だな。スポーツドリンクみたいだ。

 

『……』

 

 ん? なんだか胸の辺りがソワソワする。精神リンクか? ティアマトが何か言いたい事があるのかも。

 

 もう一度水筒を見る。味の付いた飲み物……。

 

「もしかして、ティアマトが作ってくれたのか? この飲み物」

 

『そうです。ど、どうですか……? アンヘルさんに聞いて作って見たのです。レモルの果実とハチミツで疲労軽減の飲み物を作ってみたのですが……』

 

 この皮袋は長期戦になるからってライネさんが渡してくれた物だ。きっと、ティアマトが用意した物を預けてたんだな。

 

「美味いし体も少し楽になったかも。ありがとな、ティア」

 

『ふわぁ……!』

 

 胸の奥が急に暖かくなる。精神リンクから伝わるティアマトの気持ち。それを感じていると、ここがモンスターが闊歩する森の中だって事を忘れそうだ。

 

 彼女はコホンと咳払いを1つすると、真剣な声になった。

 

「そうです、私達の順位はどれほどなのでしょう?」

 

 戦士としての意識もしっかりしてる。ホント強くなったよなティアマト。俺もしっかりしないと。

 

「AI、現在のポイント順位は分かるか?」

 

〈共有データベースと照合。更新情報を検知。ただいまのポイント順位を読み上げます。1位、竜騎兵ツィルニトラ4200ポイント。2位、竜機兵ティアマト3700ポイント。3位、竜機兵ヴィヴル3600ポイント。4位──〉

 

「2位、か。ここから、巻き返さないとな」

 

 ユウとツィルニトラが1位……上手くやったつもりだけどそれも超えてくる。簡単には超えられないって事かよ……ポイント差は少しだけど、きっと2人ならさらに突き放してくるはずだ。

 

 ……負けない。ティアマトの努力を絶対無駄にはさせない。だから俺は……!!

 

『ショウゴ? ほら見て下さい。私達は2位。このままキープできれば本選に上がれます。ショウゴなら大丈夫ですから』

 

 ティアマトの言葉でハッとする。ダメだダメだ。ユウ達を意識しすぎて視野が狭くなるところだった……。

 

「そうだな、勝負の場所はここじゃない」

 

『そうです。ユウさんとの勝負は本選。私が絶っ対にショウゴを勝たせますからね!

 

 今の目的は本選に出場すること。4位以内に入ればいいんだ。アイツらを意識しすぎないようにしよう。

 

「……ありがとな」

 

『い、いえ……私は思った事を言ったまでですから……」

 

 急にティアマトが照れ出したので思わず吹き出してしまう。

 

「もう! なぜ笑うのですか!?」

 

「わ、悪かったって」

 

 照れ隠しとは言えず、とにかく怒るティアマトをなだめながら魔法陣を操作する。

 

 目の前に表示されるモンスターリスト。他のエリアのモンスターも倒された事で、運営を通して俺達にもモンスターのポイント数が共有される。それに目を向けると、ユウ達以外の参加者は1体100ptのモンスターとはまだ接触していないようだ。

 

 これは想像以上にチャンスかも。ここでポイントを稼げば、他のヤツらを一気に突き放せる。

 

「森林エリアに来たのは正解だったみたいだな。他のエリアよりも相当効率がいいぞ」

 

『私たちのおかげでもあるでしょ?』

 

 振り返ると、偵察を終えたヴィヴルが戻って来ていた。

 

「そうだな。2人が協力してくれたおかげでナーガロン達の狙いが分散できてる。俺達だけじゃもっと苦労してた」

 

『へっへーん! このヴィヴル様にかかればざっとこんなものね! ……と言いたいところだけど、ちょっと来てくれない? ヤバいモンスターを発見したの』

 

「ヤバいモンスターって?」

 

 質問すると、ヴィブルの搭乗者であるカズマは困ったような声を上げる。

 

『倒した敵を吸収するボス格を見つけたんや。そのボスに竜機兵達が捕まっとる。あのままじゃ盾にされて攻撃できへんで』

 

 竜機兵を盾に……? その捕まったヤツらはどうなるんだ?

 

〈解。性質から大型モンスターのアヴェルガだと推測します。捕らえた獲物を生きたまま体へ取り込み、弱らせてから捕食します〉

 

『ほ、捕食!? 捕まった人達は大丈夫なのですか!?』

 

 ティアマトの心配そうな声。AIは彼女に言い聞かせるように情報を告げた。

 

《解。獲物が弱り切ったところを捕食する為、竜機兵が捕食されるには20時間以上時間があると考えられます〉

 

『良かった……ですが、モタモタしてはいられませんね」

 

「AI、そいつの攻撃方法は?」

 

〈近年では目撃情報が少ないため、詳しい攻撃方法不明〉

 

 実際戦わないと分からないってことか。とにかく今はソイツの元へ向かうのが先決か。

 

「案内してくれヴィヴル!」

『オッケー! ついて来て!』

 

 ヴィヴルの後について森の奥へ。彼女が立ち止まったのに合わせて体勢を低くする。木々の隙間を覗くと、大型のモンスターが見えた。

 

「竜と亀が混ざったみたいなヤツだな」

 

 俺達が以前戦ったヒュドラムに近い大きさのモンスター。全高はティアマトの1.5倍。全長3倍はある。2つの竜の首に、甲羅を背負ったような形状。その甲羅には無数に穴が空いており、捕まった4機の竜機兵がそこに埋め込まれていた。

 

 アイツら……俺達を追い抜いて森に入った奴らだ。

 

 首から上だけ外に出している竜機兵達。その内の1機が俺達に気付いて声を上げた。

 

『た、助けて……!! 搭乗者も他の機体もみんな気絶しちゃったみたいなの!!』

 

「待ってろ! 今助ける!」

 

 跳躍してヤツの甲羅に張り付く。囚われた竜機兵の顎を掴み、思い切り引っ張る。ギリギリという金属音を立てながら、捕まっていた竜機兵の上半身が穴の中から現れた。

 

『いけますよショウゴ!! このまま引っ張れば……!』

 

 ティアマトがさらに力を込めたその時、穴の中から無数の触手が現れ、脱出しようとした竜機兵を絡めとってしまう。

 

『いやぁああああああああ!?』

 

 竜機兵が甲羅の中へと引きずり込まれていく。他の穴からも触手が現れて、今度は俺達を狙う。捕まる前に甲羅を蹴って後方へ飛び退く。

 

 ヴィヴルの元へ着地する。アヴェルガはそれ以上攻撃はせず、俺達をジッと睨み付けたまま動きを止めた。

 

『助け……て……』

 

 竜機兵が飲み込まれてしまう。先程と同じように顔だけ出た状況。完全に拘束されてるな。自力の脱出は無理だろ、あのままじゃ。

 

『うぇえええ……なんですかあの趣味の悪いモンスターは……』

『キッショ。ドン引きだわぁ……』

 

 ティアマトもヴィヴルも明らかに引いている。流石に甲羅の中に触手があるとは思わなかったな。イソギンチャクみたいな……。い、いや考えないでおこう。俺もそういう海洋生物みたいな造形は苦手なんだ。

 

『運営が私たちの動きを把握してるとは思うけど、救援が来るまで時間がかかりそうね。何より、あんな大物放っておく手は無いわ』

 

 ヴィヴル達が言った瞬間、ティアマトが声を荒げる。

 

『ヴィヴルさん! 捕まっている人がいるんですよ!? そんな言い方は……」

 

「ちゃんと助けるって。そんなに怒らないでよティアマト姫」

 

 ヴィヴルがモンスターへと一歩近付く。再び俺達に反応したアヴェルガは、警戒するように2本の首をユラユラと揺らしている。

 

『あの動き、自衛のためだけに攻撃するみたいや。大方、捕まったヤツらからちょっかい出したんやろうな』

 

 呆れたようにカズマが呟く。敵の能力を確かめずに仕掛けたってことかもな。

 

 だけど、彼らを助けようとして分かった事がある。アイツは自分の意思で甲羅の触手を操作してる。自動制御じゃないみたいだ。そうじゃなきゃ甲羅に取り付く前に攻撃するはずだし。

 

『考えはありますかショウゴ?』

『ショウゴの指示のおかげでナーガロンも倒せたし、作戦は任せたわ』

 

 ティアマトとヴィヴルに言われ、敵の動きを観察する。おそらく、戦闘時はあの2本の首で戦うだろう。だけど、それだけじゃなさそうだ。さっきの触手は攻撃手段にも使えると考えた方がいい。

 

 あの甲羅にはまだ5つも穴が空いている。あそこから触手を伸ばして攻撃する可能性が高い。その攻撃はヤツの意思で放たれる、と。加えた甲羅で防御力は高そうだ。

 

 救出は2機いれば問題なさそうだ。後はヤツをどう倒すか……どうする?

 

『くっ……人質を取ってくる分ムシュフシュよりタチが悪いですね……!」

 

 ティアマトが苛立たしげに呟く。

 

 ムシュフシュ? ……ムシュフシュか。

 

 そうだ。体内に取り込むモンスターなら、あの時の戦いの応用で行けるな。

 

「……俺とティアマトがヤツを引き付けるから、その隙にヴィヴル達は取り込まれた機体を救出してくれ。攻撃に集中していれば甲羅の方の触手は手薄になるはずだ」

 

『それだとアンタ達が危険な目に合うじゃない』

 

『大丈夫です。私達の方が機動性は高いですから翻弄するのは任せて下さい。ですよねショウゴ?』

 

 ティアマトも、俺が何を考えているのか分かっているみたいだな。

 

「ああ。これがこの場で取れる最も効果的な戦い方だ。ヴィヴルとカズマは全員助けてから援護してくれればいい」

 

 触手も多いだろうが、やってみせる。信じろ。俺とティアマトの力を。

 

『男気あるな兄ちゃん……分かった! 救出は俺達に任せとけ!』

『助けたらちゃんと援護するから! ポイント独り占めしないでよね!!』

 

 ヴィヴル達がスラスターをふかして森の奥へと消える。待つこと数秒。アヴェルガの前へと歩を進めると、ヤツは俺達へ狙いを絞った。

 

「グオオオオオオオオオオ!!!」

 

 低い咆哮が森の中にこだまする。大気が震え、それだけでアヴェルガはボスクラスの敵だと分かった。

 

「行くぞ!!」

『倒してみせます!!』

 

 

 俺達は、アヴェルガへ向かって突撃した。

 




────────

〜ティアマト〜

ショウゴに褒められて幸せな気分になっていたら、ボスと戦うことに……!?アヴェルガ……なんだか恐ろしいモンスターです!特にあの触手!あぁぁぁ……考えただけで恐ろしい……絶対捕まりたくないです!絶対!

次回、主を倒せ!

え? ワザと触手に捕まる? 何を言っているのですかショウゴ!?

 じ、次回も絶対見てくださいね……?
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